問 被相続人甲は、自己の所有する土地(400平方メートル)の上に建物1棟を所有し、甲が発行済株式総数の60%の株式を有する会社A社に対してその建物を相当の対価を得て貸し付けていた。
 A社は、甲から借受けた建物の1階を日用雑貨小売業の店舗として利用し、2階をB社に貸し付けている。
 甲の子乙(乙は相続税の申告期限においてA社の役員となっている。)及び子丙(丙は相続税の申告期限においてA社の役員ではない。)は、甲がA社に貸し付けていた建物とその敷地について、各々2分の1を相続により取得した。
 また、乙及び丙は、相続開始時から申告期限まで引き続きその建物をA社に貸し付けており、A社は申告期限まで引き続きその建物の1階を日用雑貨小売業の店舗として利用し、2階をB社に貸し付けている。
 この場合、小規模宅地等の特例の適用対象として選択できる部分はどの部分か。

混在する特定同族会社事業用宅地等と貸付事業用宅地等の図


 特定同族会社事業用宅地等に該当するためには、その宅地等が「法人の事業の用に供されていた宅地等」であるという要件がある(措法69の43三)。
 この場合の「法人の事業」からは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業が除かれている(措法69の4まる3一、措令40の2まる4)。
 また、特定同族会社事業用宅地等に該当するためには、「当該宅地等を相続又は遺贈により取得した当該被相続人の親族(申告期限において当該法人の法人税法第2条第15号に規定する役員(清算人を除く。)である者に限る。)が相続開始時から申告期限まで引き続き有し、かつ、申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されているもの」という要件がある(措法69の4まる3三、措規則23の2まる4)。
 したがって、本件の場合、乙が相続により取得した部分(400平方メートル×1/2=200平方メートル)のうち、A社が日用雑貨小売業の店舗として利用している部分(100平方メートル)は、特定同族会社事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を選択することができる。
 また、丙が相続により取得した部分(400平方メートル×1/2=200平方メートル)のうち、A社が日用雑貨小売業の店舗として利用している部分(100平方メートル)は、丙が申告期限においてA社の役員になっていないため特定同族会社事業用宅地等には該当しないものの、A社がB社に貸し付けている部分(200平方メートル)と同様に、貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を選択することができる。
 ただし、小規模宅地等の特例の適用に当っては、限度面積要件があるため、乙及び丙が取得した特例の選択が可能な部分のすべてを小規模宅地等の特例の適用対象として選択することはできない。
 仮に、特定同族会社事業用宅地等(100平方メートル)と貸付事業用宅地等(300平方メートル)のうち限度面積要件を満たした150平方メートルを選択(選択に当たっては、乙の取得した部分について75平方メートル、丙の取得した部分について75平方メートルとする。)して、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その1))、第11・11の2表の付表2の2(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その2))及び第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))の記載は次頁のとおり。

〔特定同族会社事業用宅地等に該当する部分〕
 400平方メートル×(300平方メートル(特定同族会社の日用雑貨小売業の用に供されている部分の床面積)÷600平方メートル(特定同族会社に貸し付けられている建物の総床面積))×(1÷2(乙の持分割合))=100平方メートル
 乙・・・100平方メートル

〔貸付事業用宅地等に該当する部分〕
 400平方メートル×(300平方メートル(特定同族会社の貸付事業の用に供されている部分の床面積)÷600平方メートル(特定同族会社に貸し付けられている建物の総床面積))×(1÷2(乙の持分割合))=100平方メートル
 400平方メートル×(300平方メートル(特定同族会社の貸付事業の用に供されている部分の床面積)÷600平方メートル(特定同族会社に貸し付けられている建物の総床面積))×(1÷2(丙の持分割合))=100平方メートル
 400平方メートル×(300平方メートル(特定同族会社の日用雑貨小売業の用に供されている部分の床面積)÷600平方メートル(特定同族会社に貸し付けられている建物の総床面積))×(1÷2(丙の持分割合))=100平方メートル
 乙・・・100平方メートル、丙・・・200平方メートル

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