問 被相続人甲は、自己の所有する土地(600平方メートル)の上に建物1棟を所有し、その建物について下図のように利用していた。
 配偶者乙と子丙は、土地及び建物の共有持分2分の1をそれぞれ相続により取得し、相続税の申告期限まで有している。
 乙は、上記建物に申告期限まで引き続き居住しているほか、甲の貸付事業を丙とともに引き継ぎ、乙・丙ともに申告期限まで引き続き貸付事業の用に供している。また、甲が上記建物で営んでいた書籍・雑誌小売業については丙が事業を承継し、申告期限まで引き続き営んでいる。
 この場合に小規模宅地等の特例の対象(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等)として選択できるのはどの部分か。

複数の利用区分が存する場合の図

 甲と乙の居住の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 20,000,000円
 甲の貸付事業の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 15,800,000円
 甲の書籍・雑誌小売業の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 20,000,000円


 本件の場合の乙及び丙が取得した宅地を「特定事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」、「貸付事業用宅地等」及び「それ以外の宅地等(減額対象とならないもの)」に区分すると次のとおりとなる。

〔乙が取得した宅地〕
 特定居住用宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(3F部分の床面積)÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(乙の持分))=100平方メートル

 貸付事業用宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(2F部分の床面積)÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(乙の持分))=100平方メートル

 それ以外の宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(1F部分の床面積))÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(乙の持分))=100平方メートル

※ 乙は、甲の書籍・雑誌小売業を承継していないことから乙が取得した部分のうち1F部分に相当する部分(100平方メートル)は特定事業用宅地等には該当しないため、当該部分(100平方メートル)については小規模宅地等の特例の適用はない。

〔丙が取得した宅地〕
 特定事業用宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(1F部分の床面積)÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(丙の持分))=100平方メートル

 貸付事業用宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(2F部分の床面積)÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(丙の持分))=100平方メートル

 それ以外の宅地等に該当する部分
 600平方メートル(宅地の面積)×(200平方メートル(3F部分の床面積)÷600平方メートル(建物の総床面積))×(1÷2(丙の持分))=100平方メートル

※ 丙が取得した部分のうち3F部分に相当する部分(100平方メートル)は特定居住用宅地等の要件を満たしていないことから当該部分(100平方メートル)については、小規模宅地等の特例の適用はない。

 上記のとおり、乙が取得した宅地(600平方メートル×1/2=300平方メートル)のうち「3F部分」に相当する部分(100平方メートル)が特定居住用宅地等として、「2F部分」に相当する部分(100平方メートル)については貸付事業用宅地等として、また、丙が取得した宅地(600平方メートル×1/2=300平方メートル)のうち「1F」に相当する部分(100平方メートル)については特定事業用宅地等として、「2F部分」に相当する部分(100平方メートル)については貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を選択することができる。
 ただし、小規模宅地等の特例の適用に当っては、限度面積要件があるため、乙及び丙が取得した部分のうち特例の選択が可能な部分のすべてを小規模宅地等の特例の適用対象として選択することはできない。
 仮に、乙が取得した部分のうち特定居住用宅地等(100平方メートル)のすべてと貸付事業用宅地等(100平方メートル)のうち66.66平方メートル、丙が取得した部分のうち特定事業用宅地等(100平方メートル)のすべてを選択して、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その1))、第11・11の2表の付表2の2(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その2))及び第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))の記載は次頁のとおり。

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