(特定貸付者の範囲)

70の6の3-1 措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付者」とは、措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けを死亡の日まで行っていた者をいうのであるが、次の(1)から(5)までに掲げる者が死亡の日までに、それぞれに掲げる規定に係る貸付けを行っていた場合には、当該者は措置法第70条の6の3第1項に規定する特定貸付者に含まれることに留意する。

  • (1) 措置法第70条の6第10項の規定の適用を受ける農業相続人
  • (2) 措置法第70条の4第8項の規定の適用を受ける受贈者
  • (3) 措置法第70条の6第27項の規定の適用を受ける農業相続人(当該農業相続人の死亡の日まで行われていた貸付けが措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けにより行われていた場合に限る。)
  • (4) 措置法第70条の4第21項の規定の適用を受ける受贈者(当該受贈者の死亡の日まで行われていた貸付けが措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けにより行われていた場合に限る。)
  • (5) 措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受ける農業相続人
(新設)

(説明)

 平成21年度税制改正では、相続税の納税猶予の適用を受ける農業相続人(以下「猶予適用者」という。)が特例農地等(市街化区域内農地等を除く。)のうち農地又は採草放牧地の全部又は一部について、措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付け(以下「特定貸付け」という。)を行った場合において、特定貸付けを行った日から2月以内に特定貸付けを行った旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その特定貸付けに係る地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権(以下「賃借権等」という。)の設定はなかったものと、農業経営は廃止していないものとみなされ、引き続き相続税の納税猶予を適用することができる特例が創設された(措法70の6の2丸1)が、これに併せ、被相続人から相続又は遺贈により取得した農地又は採草放牧地についての措置法第70条の6の規定の適用は、次のとおりとされた。

  • (1) 措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けを行っている者(以下「特定貸付者」という。)が死亡した場合において、当該特定貸付者の相続人が当該特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地を相続又は遺贈により取得をしたときは、当該特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地は当該特定貸付者がその死亡の日まで農業の用に供していたものとみなして、措置法第70条の6の規定を適用する(措法70の6の3丸1)。
  • (2) 農業を営んでいた個人で措置法令第40条の7の3第1項各号に掲げる者(以下「農業経営者」という。)又は措置法第70条の6第1項に規定する農業相続人(以下「農業相続人」という。)が死亡した場合において、当該農業経営者又は農業相続人の相続人が当該農業経営者又は農業相続人から相続又は遺贈により取得をした農地又は採草放牧地について相続税の申告書の提出期限までに特定貸付けを行ったときは、当該農地又は採草放牧地は当該相続人の農業の用に供する農地又は採草放牧地に該当するものとみなして、措置法第70条の6の規定を適用する(措法70の6の3丸2)。

    (注) 措置法令第40条の7の3第1項各号に掲げる者とは、次の者をいう。

    • 丸1 その生前において有していた農地及び採草放牧地につきその死亡の日まで農業を営んでいた個人(当該個人に係る第一次農業相続人を含む。)
    • 丸2 措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付を行っている者
  • (3) 措置法第70条の4第1項本文の規定の適用を受ける受贈者に係る贈与者が死亡した場合において、当該受贈者が同項本文の規定の適用を受ける農地等のうち農地又は採草放牧地について当該贈与者の死亡に係る相続税の申告期限までに特定貸付けを行ったときは、当該農地又は採草放牧地は当該受贈者の農業の用に供する農地又は採草放牧地に該当するものとみなして、措置法第70条の6の規定を適用する(措法70の6の3丸3)。

 70の6の3-1では、措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付者」とは、措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けを死亡の日まで行っていた者をいうことを留意的に明らかにするとともに、次の丸1から丸5までに掲げる者が死亡の日までに、それぞれに掲げる規定に係る貸付けを行っていた者も措置法第70条の6の3第1項に規定する特定貸付者に含まれることを留意的に明らかにした。

  • 丸1 措置法第70条の6第10項の規定の適用を受ける農業相続人
  • 丸2 措置法第70条の4第8項の規定の適用を受ける受贈者
  • 丸3 措置法第70条の6第27項の規定の適用を受ける農業相続人(当該農業相続人の死亡の日まで行われていた貸付けが措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けにより行われていた場合に限る。)
  • 丸4 措置法第70条の4第21項の規定の適用を受ける受贈者(当該受贈者の死亡の日まで行われていた貸付けが措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けにより行われていた場合に限る。)
  • 丸5 措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受ける農業相続人

(措置法第70条の6の3第1項に規定する特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地)

70の6の3-2 措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地」とは、同項に規定する特定貸付者の死亡の日において、当該特定貸付者により特定貸付けが行われていた農地又は採草放牧地をいい、当該特定貸付者が当該農地又は採草放牧地について措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受けているかどうかは問わないことに留意する。

(新設)

(説明)

 措置法第70条の6の3第1項では、特定貸付者が死亡した場合において、当該特定貸付者の相続人が特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地を相続又は遺贈により取得をしたときは、当該特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地は当該特定貸付者がその死亡の日まで農業の用に供していたものとみなして、措置法第70条の6の規定を適用することとしている(措法70の6の3丸1)。
 この場合において、措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地」とは、特定貸付者が措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受けている農地又は採草放牧地であるのかどうか疑義が生ずる。70の6の3-2では、措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地」とは、同項に規定する特定貸付者の死亡の日において、当該特定貸付者により特定貸付けが行われていた農地又は採草放牧地をいい、当該特定貸付者が当該農地又は採草放牧地について措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受けているかどうかは問わないことを留意的に明らかにした。
 なお、措置法第70条の6の3第1項に規定する「特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地」には、措置法第70条の6の2第1項各号に掲げる貸付けのほか、被相続人が行っていた次の貸付けが行われていた農地又は採草放牧地も含まれる。

  • (1) 農地法等の一部を改正する法律(平成21年法律第57号)(以下「改正農地法」という。)による改正前の農業経営基盤強化促進法(以下「旧基盤強化法」という。)第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のために都道府県農地保有合理化法人(同法第7条第1項の承認を受けた法人(同法第5条第2項第4号ロの規定により農業経営基盤強化促進基本方針に定められた者に限る。)をいう。)に対して行った貸付け((4)に該当するものを除く。)
  • (2) 旧基盤強化法第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のため旧市町村農地保有合理化法人(同法第7条第1項の承認を受けた法人(同法第6条第3項の規定により農業経営基盤強化促進基本構想に定められた者に限ります。)をいう。以下同じ。)に対して行っていた貸付けのうち、旧市町村農地合理化法人が、改正農地法附則第12条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされている旧農地売買等事業(旧基盤強化法第4条第2項第1号に規定する農地売買等事業をいう。)を実施している場合におけるその貸付け((4)に該当するものを除く。)
  • (3) 旧基盤強化法第4条第2項に規定する農地保有合理化事業のため旧市町村農地保有合理化法人に対し行っていた貸付けのうち、旧市町村農地合理化法人が、農業経営基盤強化法第11条の9第1項の規定により農地利用集積円滑化事業規程(同項に規定する農地利用集積円滑化事業規程をいう。)の承認を受けている場合におけるその貸付け((4)に該当するものを除く。)
  • (4) 旧基盤強化法第20条に規定する農用地利用集積計画の定めるところにより行っていた貸付け

(「相続又は遺贈により取得」の意義)

70の6の3-3 措置法第70条の6の3第1項及び第2項に規定する「相続又は遺贈により取得」には、措置法第70条の5第1項の規定により相続又は遺贈により取得したとみなされる場合の取得は含まれないことに留意する。

(新設)

(説明)

 措置法第70条の6の3第1項及び第2項の規定の対象となる農地又は採草放牧地は、相続又は遺贈により取得したものに限られるのであるが、この場合において、措置法第70条の5第1項の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされる農地又は採草放牧地が含まれるかどうか疑義が生じる。70の6の3-3では、措置法第70条の6の3第1項及び第2項に規定する「相続又は遺贈により取得」には、措置法第70条の5第1項の規定により相続又は遺贈により取得したとみなされる場合の取得は含まれないことを留意的に明らかにした。
 なお、措置法第70条の5第1項の規定により相続又は遺贈により取得しものとみなされる農地又は採草放牧地につき当該取得したものとみなされる基因となった贈与者の死亡に係る相続税の申告期限までに特定貸付けを行ったときには、措置法第70条の6の3第3項の規定の適用があることとなる。

(相続税の申告期限までに行われた特定貸付け)

70の6の3-4 措置法第70条の6の3第2項の規定は、同項に規定する相続又は遺贈により取得した農地又は採草放牧地について同項に規定する相続税の申告期限までに特定貸付けを行ったときに限り適用があることに留意する。
 したがって、特定貸付けが相続税の申告期限までに行われていない場合には、同項の規定の適用はないこととなる。

(注) 措置法第70条の6の3第3項の規定の適用も同様であることに留意する。

(新設)

(説明)

 措置法第70条の6の3第2項の規定は、相続又は遺贈により取得した農地又は採草放牧地を同項に規定する相続税の申告期限までに特定貸付けを行ったときに限り適用があることから、70の6の3-4では、そのことを留意的に明らかにした。
 なお、同条第3項の規定の適用も同様であることから、注書きにおいて留意的に明らかにした。

(特定貸付けが行われた特例農地等について相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき価額)

70の6の3-5 措置法第70条の6の3の規定の適用を受ける農地又は採草放牧地について、相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき価額は、当該相続税の課税価格の計算に係る被相続人の死亡の日における当該農地又は採草放牧地の時価によることに留意する。

(新設)

(説明)

 措置法第70条の6の3第1項の規定では、特定貸付者が死亡した場合において、当該特定貸付者の相続人が当該特定貸付者から特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地を相続又は遺贈により取得したときは、当該特定貸付けを行っていた農地又は採草放牧地は当該特定貸付者がその死亡の日まで農業の用に供してしていたものとみなされることとされていることから、当該農地又は採草放牧地の相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき価額は、その地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権の設定はないものとしたところの自用地としての価額によるのではないかとの疑義が生ずる。
 また、同条第2項又は第3項の規定の適用を受ける場合、当該適用を受ける農地又は採草放牧地は、農業経営者若しくは農業相続人又は贈与者の死亡の日まで、当該農業経営者若しくは農業相続人又は受贈者が自己の農業の用に供しており、その後、相続税の申告期限までに特定貸付けを行うことにより措置法第70条の6の3の規定の適用を受けることから、当該規定の適用を受ける農地又は採草放牧地について、相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき価額は、その貸付けの態様に応じた当該農地又は採草放牧地の時価によるのではないかとの疑義が生ずる。
 しかし、措置法第70条の6の3の規定は、措置法第70条の6の規定の適用に当たっての規定であり、相続税法第22条の規定については触れられていない。そのため、措置法第70条の6の3の規定の適用を受ける農地又は採草放牧地について、相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき価額は、当該相続税の課税価格の計算に係る被相続人の死亡の日における当該農地又は採草放牧地の時価によることとなる。70の6の3-5では、そのことを留意的に明らかにした。

(特定貸付けに係る権利設定に関する届出書が提出されない場合)

70の6の3-6 措置法第70条の6の3の規定は、同条第4項の規定により読み替えて適用する措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受けようとする者が同項の届出書(以下70の6の3-6において「届出書」という。)を提出することにより適用があるが、当該届出書が提出されない場合の措置法第70条の6の規定の適用は、次に掲げるところによることに留意する。

  • (1) 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が同条第1項に規定する相続税の申告書(70の6の3-6において「相続税の申告書」という。)の提出期限以前となる場合において、当該相続税の申告書に届出書が添付されていない場合 措置法第70条の6の規定の適用はないことに留意する(措置法第70条の6の2第5項の規定の適用がある場合を除く。次の(2)において同じ。)。
  • (2) 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が相続税の申告書の提出期限後となる場合において、当該相続税の申告書に措置法令第40条の7の3第3項に規定する書類を添付して当該相続税の申告書が提出され、特定貸付けを行った日から2月以内に届出書が提出されない場合 措置法第70条の6の規定の適用はないものとして取り扱う。

(注) 上記の場合において、相続税の申告書に特定貸付けを行った農地又は採草放牧地につき措置法第70条の6第1項の適用を受けようとする旨の記載がない場合、同条第30項に規定する書類又は措置法令第40条の7の3第3項に規定する書類の添付がない場合には、措置法第70条の6の規定の適用はないことに留意する。

(新設)

(説明)

 措置法第70条の6の3の規定は、措置法第70条の6の2第1項に規定する届出書(以下「届出書」という。)を提出することにより適用があるが、当該届出書の提出については次のとおりとされている。

  • 丸1 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が相続税の申告書の提出期限以前となるとき 届出書を相続税の申告書に添付して提出(措置令40の7の3丸2
  • 丸2 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が相続税の申告書の提出期限後となるとき
     相続税の申告書に措置法第70条の6の2第1項の規定の適用を受ける旨及び届出書の提出予定年月日その他財務省令で定める事項の記載がある書類を添付して提出し、その後、特定貸付けを行った日の翌日から2月以内に届出書を提出(措置令40の7の3丸3、措法70の6の2丸1

 70の6の3-6では、措置法第70条の6の適用に当たり、届出書が提出されない場合には、次のとおり取り扱うことを留意的に明らかにした。

  • (1) 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が同条第1項に規定する相続税の申告書の提出期限以前となる場合において、当該相続税の申告書に届出書が添付されていない場合 措置法第70条の6の規定の適用はないこと(措置法第70条の6の2第5項の規定の適用がある場合を除く。次の(2)において同じ。)
  • (2) 特定貸付けを行った日の翌日から2月を経過する日が相続税の申告書の提出期限後となる場合において、当該相続税の申告書に措置法令第40条の7の3第3項に規定する書類を添付して当該相続税の申告書が提出され、特定貸付けを行った日から2月以内に届出書が提出されない場合 措置法第70条の6の規定の適用はないこと

 なお、上記(1)又は(2)の場合において、相続税の申告書に特定貸付けを行った農地又は採草放牧地につき措置法第70条の6第1項の適用を受けようとする旨の記載がない場合、同条第30項に規定する書類又は措置法令第40条の7の3第3項に規定する書類の添付がない場合には、措置法第70条の6の規定の適用はないことことから、注書きにおいてそのことを留意的に明らかにした。