問54 「特定同族株式等の贈与の特例(相続時精算課税)」の適用を受けた株式がある場合の「小規模宅地等の特例」の不適用

(問) 子Aは、父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式について「特定同族株式等の贈与の特例(相続時精算課税の特例)」(※)の適用を受けている。
 父の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告に際し、当該株式について「相続税の納税猶予の特例」(措法70の7の2丸1)の適用を受けない場合には、「小規模宅地等の特例」(措法69の4丸1)の適用を受けることはできないが、当該株式について「相続税の納税猶予の特例」の適用を受ける場合は小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのか。

※ 「特定同族株式等に係る相続時精算課税の特例(平成21年改正前措法70の3の3丸1)」又は「特定同族株式等に係る相続時精算課税の特別控除(平成21年改正前措法70の3の4丸1)」の特例をいう。

(答)

 子Aが特定同族株式等である甲株式会社の株式について相続税の納税猶予の特例の適用を受けるか否かにかかわらず「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできない。
 また、この場合に、子A以外の相続人等が相続等により取得をした小規模宅地等についても「小規模宅地等の特例」の適用はない。

(参考)
特定同族株式等の贈与の特例(相続時精算課税) 小規模宅地等の取得者 小規模宅地等の特例の適用の可否
適用者 相続税の納税猶予の特例の適用の有無
子A 子A
子A、他の相続人
他の相続人
子A
子A、他の相続人
他の相続人

(解説)

  • 1  「特定の贈与者から特定同族株式等の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」及び「特定同族株式等の贈与を受けた場合の相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の特例」は、平成20年12月31日の期限到来をもって廃止された(平成21年改正前措法70の3の3・70の3の4)。
  • 2  ところで、平成21年改正前措置法第69条の4第5項においては、「第1項の規定は、同項の相続に係る被相続人から相続又は遺贈により財産を取得をした者(当該被相続人から相続税法第21条の9第3項(第70条の3第1項又は第70条の3の3第1項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける財産を贈与により取得をした者を含む。)が第70条の3の3第1項又は第70条の3の4第1項の規定の適用を受け、又は受けている場合には、適用しない。」と規定されている。
  • 3  また、平成21年改正措令附則第43条第7項においては、「平成21年改正法による改正後の措置法第69条の4第1項又は第69条の5第1項の規定は、これらの規定の相続(平成21年4月1日以後に開始するものに限る。)に係る被相続人から相続又は遺贈により財産の取得をした者(当該被相続人から相続税法第21条の9第3項(平成21年改正前の措置法第70条の3第1項又は第70条の3の3第1項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける財産の贈与による取得をした者を含む。)が平成21年改正前措置法第70条の3の3第1項又は第70条の3の4第1項の規定の適用を受けた場合には、適用しない。」と規定されている。
  • 4  したがって、上記2及び3の規定により、被相続人から相続若しくは遺贈又は相続時精算課税に係る贈与により財産を取得をしたいずれかの者が、当該被相続人である平成21年改正法附則第64条第7項に規定する特定同族株式等贈与者から平成20年12月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした同条第6項に規定する特定同族株式等(以下「特定同族株式等」という。)について平成21年改正前措置法第70条の3の3第1項又は平成21年改正前措置法第70条の3の4第1項の規定の適用を受けている場合には、相続税の納税猶予の特例の適用の有無にかかわらず、当該被相続人から相続若しくは遺贈又は相続時精算課税に係る贈与により財産を取得をしたすべての者について平成21年改正前措置法第69条の4第1項及び措置法第69条の4第1項の規定の適用はない。
  • 5  さらに、平成21年改正前措置法第70条の3の3第1項又は平成21年改正前措置法第70条の3の4第1項の適用を受けた特定同族株式等に係る会社と異なる会社に係る平成21年改正前措置法第69条の4第1項及び措置法第69条の4第1項に規定する特例対象宅地等を当該被相続人から相続又は遺贈により取得をした場合であっても上記4と同様になる。

(参考) 措置通69の4−39《平成21年改正前措置法第70条の3の3又は第70条の3の4の規定の適用を受けた特定同族株式等について措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けた場合の小規模宅地等の特例の不適用》

問55 平成21年3月31日以前に死亡した被相続人の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告において「相続税の納税猶予の特例」の適用を受けた場合の「特定事業用資産の特例」の適用の可否

(問) 子Aは、父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式について「特定受贈同族会社株式に係る届出書(平成21年改正前措置法69の5丸10)」を税務署に提出し、かつ、平成21年改正法附則第64条第2項に掲げるすべての要件を満たしている。
 父の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告に際し、子Aが、当該相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式について「相続税の納税猶予の特例」(措法70の7の2丸1)の適用を受ける場合に、次の株式について、子A又は子Bは、それぞれ「特定事業用資産の特例」(平成21年改正前措法69の5丸1)の適用を受けることができるか。

  • (1) 子Aが父に係る相続により取得をした甲株式会社の株式
  • (2) 子Aが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式で、「相続税の納税猶予の特例」の適用を受けることができなかった当該株式
  • (3) 子Aが父に係る相続により取得をした乙株式会社の株式
  • (4) 子Aが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした乙株式会社の株式
  • (5) 子Bが父に係る相続により取得をした甲株式会社の株式
  • (6) 子Bが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした乙株式会社の株式
  • (7) 子Bが父に係る相続により取得をした乙株式会社の株式
  • (8) 子Bが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした乙株式会社の株式

(注)

  • 1 子A及び子Bともに、父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式及び乙株式会社の株式については、「特定受贈同族会社株式に係る届出書」を税務署に提出している。
  • 2 子Aは、相続により取得をした株式について「相続税の納税猶予の特例」の適用を受けない。

(答)

 問について、「特定事業用資産の特例」の適用関係は次のとおりとなる。

  子A 子B
甲株式会社の株式
(子Aが納税猶予を適用)
(1)相続により取得→不可 (5)相続により取得→不可
(2)贈与により取得→不可 (6)贈与により取得→可
乙株式会社の株式
(納税猶予の適用者なし)
(3)相続により取得→可 (7)相続により取得→可
(4)贈与により取得→可 (8)贈与により取得→可

(解説)

  • 1  平成21年改正法附則第63条第2項においては、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)の規定は、平成20年10月1日以後に相続又は遺贈により取得をする平成21年改正法附則第63条第1項に規定する非上場株式等(以下「非上場株式等」という。)に係る相続税について適用することとされている。
  • 2  また、平成21年改正法附則第64条第1項に規定する特定事業用資産相続人等が平成21年3月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした同項に規定する特定受贈同族会社株式等について平成21年改正前措置法第69条の5第10項の書類を提出し、かつ、当該特定受贈同族会社株式等に係る特定贈与者(平成21年改正法附則第64条第2項に規定する特定贈与者をいう。)が平成20年10月1日以後に死亡している場合において、当該特定事業用資産相続人等が措置法第70条の7の2第1項の適用に係る要件及び平成21年改正法附則第64条第2項に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該特定受贈同族会社株式等(平成21年改正令附則第43条第1項((非上場株式等についての相続税の課税価格の計算の特例等に関する経過措置))の規定により選択した選択特定受贈同族会社株式等に限る。)は当該特定贈与者から相続(当該特定事業用資産相続人等が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得をした非上場株式等とみなされて、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用があることとされている(平成21年改正法附則64丸2、措置通69の5−19参照)。
  • 3  ところで、相続又は遺贈により取得をする非上場株式等について、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける場合、当該非上場株式等に係る会社の株式等については、平成21年改正前措置法第69条の5第1項の規定は適用しないこととされている(平成21年改正法附則63丸2)。また、上記2により特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等について措置法第70条の7の2の規定の適用を受ける場合には、(当該特定事業用資産相続人等について)平成21年改正前措置法第69条の5第1項の規定は適用しないこととされている(平成21年改正法附則64丸3)。さらに、特定受贈同族会社株式等について平成21年改正法附則第64条第2項の規定の適用により措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける場合には、当該特定贈与者から相続又は遺贈により取得をする株式等(当該特定受贈同族会社株式等に係る会社の株式等に限る。)については、平成21年改正前措置法第69条の5第1項の規定は適用しないこととされている(平成21年改正令附則43丸3)。
  • 4  したがって、上記1の平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間に死亡した被相続人から当該死亡に係る相続若しくは遺贈により取得をした非上場株式等又は相続開始日前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした平成21年改正法附則第64条第1項に規定する特定受贈同族会社株式等について、当該取得をしたいずれかの者が当該死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告において措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける場合には、当該適用を受ける者については当該被相続人から相続又は遺贈により取得をした非上場株式等及び相続時精算課税に係る贈与により取得をした特定受贈同族会社株式等のすべてについて、また、当該適用を受ける者以外の者については当該被相続人から相続又は遺贈により取得をした非上場株式等について、平成21年改正前措置法第69条の5第1項の規定の適用はない。
  • 5  また、平成21年4月1日以後に死亡した被相続人から当該死亡に係る相続又は遺贈により取得をした非上場株式等又は平成21年3月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした特定受贈同族会社株式等について、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける場合には、当該適用を受ける者については当該特定受贈同族会社株式等のすべてについて平成21年改正前措置法第69条の5第1項の規定の適用はない。
  • 6  なお、上記の4又は5の判定は、会社ごとに行うこととなる。

(参考) 措置通69の5−17《措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けた場合の特定事業用資産の特例の不適用》

  • 1 平成21年3月31日以前相続開始分
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    (画像)1 平成21年3月31日以前相続開始分
  • 2 平成21年4月1日以降相続開始分
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    (画像)2 平成21年4月1日以降相続開始分

問56 選択特定受贈同族会社株式等について相続税の納税猶予の特例の適用を受ける場合の限度数要件の判定

(問) 子Aは、父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式200株について「特定受贈同族会社株式に係る届出書(平成21年改正前措法69の5丸10)」を税務署に提出し、かつ、平成21年改正法附則第64条第2項に掲げるすべての要件を満たしている。
 この場合において、父の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告に際し、特定受贈同族会社株式等200株全部について相続税の納税猶予の特例の適用を受けることとした場合、相続により取得をした甲株式会社の株式について同特例の適用を受けることができるのは何株か。
 なお、甲株式会社の株式は、すべて完全議決権株式である。

  • ・甲株式会社の発行済株式の総数 900株
  • ・相続開始の直前に子Aが保有していた株式の数(特定受贈同族会社株式等200株を含む。) 500株
  • ・父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした株式で「特定受贈同族会社株式等に係る届出書」を税務署に提出している株式200株のうち、相続税の納税猶予の特例の適用を受ける株式(選択特定受贈同族会社株式等)の数  200株
  • ・父から相続により取得をした株式(甲株式会社)の数 400株
  • ・相続開始の直前において父が保有していた株式の数 400株

(答)

 子Aが父から相続により取得をした甲株式会社の株式400株の内、相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式の限度数は、100株である。

(解説)

  • 丸1 甲株式会社の発行済株式総数の3分の2 600株(900株×2/3=600株)
  • 丸2 特例の適用を受けることができる限度株式数 600株−(500株−200株)=300株(注) 相続の開始の直前において子Aが有していた甲株式会社の株式が500株あるので、その場合には、発行済株式総数の3分の2からその数を控除した後の数が限度数となる。問については、特定受贈同族会社株式等の200株全部について相続税の納税猶予の特例の適用を受けるため、その場合には、相続の開始の直前において子Aが有していた甲株式会社の株式500株から相続税の納税猶予の特例の適用を受ける選択特定受贈同族会社株式等の数を除外することとなる(平成21年改正法附則令43丸4)。
  • 丸3 子Aが、父から相続により取得をした甲株式会社の株式400株の内、相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる限度数
    300株−200株(選択特定受贈同族会社株式等の数)=100株

問57 選択特定受贈同族会社株式等について相続税の納税猶予の特例の適用を受ける場合の被相続人の同族内筆頭株主等要件の判定

(問) 次のように、選択特定受贈同族会社株式等について相続税の納税猶予の適用を受ける場合、措置法施行令第40条の8の2第1項第2号の要件(同族内筆頭株主等要件)の判定における「被相続人が有する認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数」はどのように判定するのか。

【子Aが相続税の納税猶予の適用を受ける場合】

  • ・甲株式会社の発行済株式の総数(すべて完全議決権株式である。) 1,000株
  • ・父(被相続人)が相続開始の直前に有していた株数 300株
  • ・子Aが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株数 300株
  • ・子Aが父に係る相続により取得をした甲株式会社の株数 300株

(注)

  • 1 父は相続開始の直前において甲株式会社の代表権を有しているものとする。
  • 2 子Aは、父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした甲株式会社の株式については、「特定受贈同族会社株式に係る届出書(平成21年改正前措法69の5丸10)」を税務署に提出しており、かつ、平成21年改正法附則第64条第2項に掲げるすべての要件を満たしている。

(答)

 相続開始の直前において被相続人が有していた甲株式会社の株式に係る議決権と被相続人が生前に子Aに対し贈与をした特定受贈同族会社株式等に係る議決権の数の合計により、措置法施行令第40条の8の2第1項第2号の要件(同族内筆頭株主等要件)の判定を行う。
 したがって、600株(300株【父(被相続人)が相続開始の直前に有していた株数】+300株【子Aが父から相続時精算課税に係る贈与により取得をした株数】)により判定を行うこととなる。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7の2の規定の適用対象となる非上場株式等は、原則として、被相続人から相続又は遺贈により取得をしたものに限られるのであるが(措置通70の7の2−3参照)、特定事業用資産相続人等が平成21年3月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした特定受贈同族会社株式等について平成21年改正前措置法第69条の5第10項の書類を提出し、かつ、当該特定受贈同族会社株式等に係る特定贈与者が平成20年10月1日以後に死亡している場合において、当該特定事業用資産相続人等が措置法第70条の7の2第1項の適用に係る要件及び平成21年改正法附則第64条第2項に掲げる要件のすべてを満たすときは、同項に規定する選択特定受贈同族会社株式等は当該特定贈与者から相続(当該特定事業用資産相続人等が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得をした非上場株式等とみなされて、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用があることとされている(平成21年改正法附則64丸2)。
  • 2  また、上記1により措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける場合には、平成21年改正措令附則第43条第4項の読み替え規定により、措置法令第40条の8の2第1項第2号の要件(同族内筆頭株主等要件)の判定においては、「被相続人が有する認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数」に、平成21年4月1日前に相続時精算課税に係る贈与をした上記1の特定受贈同族会社株式等に係る議決権の数が含まれることとされている。
  • 3  したがって、問については、相続開始の直前において被相続人が有していた甲株式会社の株式に係る議決権(300株)と被相続人が生前に子Aに対し贈与をした特定受贈同族会社株式等に係る議決権(300株)の数の合計600株により、措置法施行令第40条の8の2第1項第2号の要件(同族内筆頭株主等要件)の判定を行うこととなる。

(参考) 措置通69の5−19《平成21年改正前措置法第69条の5第10項の書類を提出した特定受贈同族会社株式等についての相続税の納税猶予の適用》

問58 特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等について相続税の納税猶予の特例の適用を受ける場合の相続税法の適用関係

(問) 特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等について、平成21年改正法附則第64条第2項又は第7項の規定により「相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)」の適用を受けた場合、当該特例の適用を受けた株式等は、相続税の申告書上、本来の相続財産として記載するのか。それとも相続時精算課税適用財産として記載するのか。

(答)

 平成21年改正法附則第64条第2項又は第7項の規定の適用を受けた特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等は、相続時精算課税適用財産として相続税法の規定の適用を受ける。したがって、相続税の申告書においても、相続時精算課税適用財産として記載することとなる。

(解説)

  • 1  特定受贈同族会社株式等については、平成21年改正法附則第64条第2項の規定により、「前項に規定する場合(当該特定受贈同族会社株式等の贈与をした者(以下この項及び第4項において「特定贈与者」という。)が平成20年10月1日以後に死亡した場合に限る。)において、当該特定贈与者に係る特定事業用資産相続人等が次に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該特定事業用資産相続人等は、当該特定受贈同族会社株式等(この項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択したものに限る。以下この項及び第4項において「選択特定受贈同族会社株式等」という。)を当該特定贈与者から相続(当該特定事業用資産相続人等が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得をした非上場株式等とみなして、新租税特別措置法第70条の7の2の規定の適用を受けることができる。」とし、また、特定同族株式等については、同条第7項の規定により、「前項に規定する場合(当該特定同族株式等の贈与をした者(以下次項までにおいて「特定同族株式等贈与者」という。)が平成20年10月1日以後に死亡した場合に限る。)において、当該特定同族株式等贈与者に係る特定受贈者が次に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該特定受贈者は、当該特定同族株式等贈与者からの贈与(旧租税特別措置法第70条の3の3第3項第1号ロに規定する選択年中における当該特定同族株式等の最初の贈与の日から同項第4号に規定する確認日(第4号において「確認日」という。)までの間に行われたものに限る。)により取得をした株式又は出資(当該特定同族株式等に係る会社のもののうち、この項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択したものに限る。以下次項までにおいて「選択特定同族株式等」という。)を当該特定同族株式等贈与者から相続(当該特定受贈者が当該特定同族株式等贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得をした非上場株式等とみなして、新租税特別措置法第70条の7の2の規定の適用を受けることができる。」とし、一定の要件を満たす場合には、相続税の納税猶予の特例を適用することとして選択した特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等を相続又は遺贈により取得をしたものとみなして措置法第70条の7の2の規定の適用を受けることができると規定している。
  • 2  ところで、特定受贈同族会社株式等及び特定同族株式等について、平成21年改正法附則第64条第2項又は第7項の規定により相続税の納税猶予の特例の適用を受ける場合に、上記「1」のとおり、同項の規定により、当該株式等を当該特定贈与者から相続(又は遺贈)により取得をした非上場株式等とみなしていることから、当該相続税の納税猶予の特例の適用を受ける特定受贈同族会社株式等及び特定同族株式等が本来の相続財産として相続税法の規定の適用を受けることになるのか、あるいは、あくまで相続時精算課税適用財産として相続税法の規定の適用を受けることになるのかについては疑義が生ずるところである。
  • 3  しかしながら、平成21年改正法附則第64条第2項又は第7項の規定では、「相続(又は遺贈)により取得をしたものとみなして、新租税特別措置法第70条の7の2の規定の適用を受けることができる。」と規定しており、言い換えれば、措置法第70条の7の2の規定を適用するに当たっては、当該株式等を当該特定贈与者から相続(又は遺贈)により取得をしたものとみなすということであり、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)の適用を受けることを選択した特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等を本来の相続財産とみなすとはしていない。
  • 4  したがって、問について、相続税の納税猶予の特例の適用を受けることを選択した特定受贈同族会社株式等又は特定同族株式等は、相続税法上、あくまで相続時精算課税適用財産であることに変わりはない。(注) 相続税の申告書においても、相続時精算課税適用財産として記載しなければならないことに留意する必要がある。

問59 特定受贈同族会社株式等である医療法人の出資と相続税の納税猶予の特例の適用関係

(問) 相続人Aは、被相続人である父から生前に甲医療法人に係る出資の贈与を受け、当該取得をした甲医療法人に係る出資について「特定受贈同族会社株式に係る届出書(平成21年改正前措置法69の5丸10)」を税務署に提出している。
 ところで、この贈与を受けた甲医療法人に係る出資について、平成21年改正法附則第64条第2項の規定に基づき相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)の適用を受けることはできるのか。

(答)

 相続人Aが被相続人から贈与を受けた甲医療法人に係る出資について相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)の適用を受けることはできない。

(解説)

  • 1  平成21年改正法附則第63条第2項においては、措置法第70条の7の2第1項の規定は、平成20年10月1日以後に相続又は遺贈により取得をする平成21年改正法附則第63条第1項に規定する非上場株式等に係る相続税について適用することとされている。
  • 2  また、平成21年改正法附則第64条第1項に規定する特定事業用資産相続人等が平成21年3月31日以前に相続時精算課税に係る贈与により取得をした同項に規定する特定受贈同族会社株式等について平成21年改正前措置法第69条の5第10項の書類を提出し、かつ、当該特定受贈同族会社株式等に係る特定贈与者(平成21年改正法附則第64条第2項に規定する特定贈与者をいう。)が平成20年10月1日以後に死亡している場合において、当該特定事業用資産相続人等が措置法第70条の7の2第1項の適用に係る要件及び平成21年改正法附則第64条第2項に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該特定受贈同族会社株式等(平成21年改正令附則第43条第1項((非上場株式等についての相続税の課税価格の計算の特例等に関する経過措置))の規定により選択した選択特定受贈同族会社株式等に限る。)は当該特定贈与者から相続(当該特定事業用資産相続人等が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得をした非上場株式等とみなされて、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用があることとされている(平成21年改正法附則64丸2、措置通69の5−19参照)。
  • 3  問について、相続税の納税猶予の特例は、措置法第70条の7の2第2項第2号に規定する非上場株式等について適用されるものであること。また、医療法人は、医療法により認可、設立された法人であり「会社」ではないので、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)の対象とされる中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第1条第2項に規定する「中小企業者」にも該当しないことから、相続税の納税猶予の特例の適用の前提となる円滑化法規則第7条第3項の規定に基づく経済産業大臣の認定を受けることはできない。
     したがって、相続人Aが被相続人から贈与を受けた甲医療法人に係る出資について相続税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。