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- 《非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例関係》
問49 既に贈与税の納税猶予の特例等の適用を受けている場合
(答)
(1)から(3)のいずれの場合についても、子Aは、「贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例」(措法70の7の4
)の適用を受けることができる。
なお、子Aが母から相続又は遺贈により取得をした(同一の会社である)甲株式会社の株式については、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2
)の適用を受けることはできない。
(解説)
- 1 措置法第70条の7の4第5項において「第1項の規定は、被相続人から相続又は遺贈により取得をした非上場株式等(前条第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされたものを含む。次項において同じ。)に係る会社の株式等について、第1項の規定の適用を受けている他の経営相続承継受贈者又は第70条の7第1項の規定の適用を受けている同条第2項第3号に規定する経営承継受贈者若しくは第70条の7の2第1項の規定の適用を受けている同条第2項第3号に規定する経営承継相続人等がある場合(第1項の規定の適用を受けようとする者が当該経営承継受贈者又は当該経営承継相続人等である場合を除く。)には、当該非上場株式等については、適用しない。」と規定し、同一の会社について贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例、贈与税の納税猶予の特例又は相続税の納税猶予の特例のいずれかの特例の適用を受けている者がいる場合には、当該納税猶予の特例の適用を受けている者以外の者は、当該同一の会社の株式等について納税猶予の特例の適用を受けることはできないこととされている。すなわち、1社1人というのが原則となる。
- 2 したがって、問については、措置法第70条の7の4第5項かっこ書により、(1)から(3)のいずれについても、子Aは、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。
-
3 なお、措置法第70条の7の2第1項かっこ書において「次条(措置法第70条の7の3)第1項の規定により当該被相続人から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる同項の特例受贈非上場株式等に係る認定承継会社の株式等を除く。」と規定されており、子Aが母から生前贈与により取得をし、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている特例受贈非上場株式等については、措置法第70条の7の3第1項の規定により、母の相続開始の時において母から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされることから、子Aが母から相続又は遺贈により取得をした甲株式会社の株式について相続税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。
(注) 措置法第70条の7の4第6項においても同趣旨の規定が置かれている。
(参考) 措置通70の7の4−9《既に非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例等の適用を受けている他の者がいる場合等》、措置通70の7の2−3《相続税の納税猶予の対象とならない非上場株式等》
問50 限度数要件:相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた特例受贈非上場株式等がある場合
(答)
子Aは、父の相続の開始の時に有していた特例受贈非上場株式等6,000株の全部について、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4
)の適用を受けることができる。
なお、この場合に、子Aは、父から相続により取得をした甲株式会社の株式1,000株について、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2
)の適用を受けることはできない。
(解説)
- 1 措置法第70条の7の4第1項の規定の適用を受けるためには、措置法第70条の7の3第1項の規定の適用により同項の贈与者から相続又は遺贈により取得をしたとみなされた特例受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限る)のうち、特例の適用を受けるもの(一定の部分に限る。)として相続税の申告書に措置法第70条の7の4第1項の規定の適用を受ける旨の記載(この特例の適用を受けるものとして記載された非上場株式等を「特例相続非上場株式等」という。以下同じ。)をし、相続税の申告期限までに当該申告書を提出する必要がある。
- 2 贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4
)の適用を受けることができる特例受贈非上場株式等の数又は金額は、次に掲げる区分に応じ、次に掲げる算式により算出された株式の数又は出資の金額に達するまでとなる。
- (1) 当該特例受贈非上場株式等の特例対象贈与の直前において、当該経営相続承継受贈者が有していた措置法第70条の7の4第2項第1号に規定する認定相続承継会社(以下「認定相続承継会社」という。)の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。以下同じ。)がある場合 ・・・ A×2/3−B
- (2) 当該特例受贈非上場株式等の特例対象贈与の直前において、当該経営相続承継受贈者が有していた認定相続承継会社の非上場株式等がない場合 ・・・ A×2/3
(注) Aは、当該相続の開始の時における当該認定相続承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の総数又は総額
Bは、当該経営相続承継受贈者が当該特例対象贈与の直前において有していた当該認定相続承継会社の非上場株式等の数又は金額(当該特例対象贈与の時から当該相続の開始の直前までの間に当該特例受贈非上場株式等に係る会社の株式等の併合があったことその他の措置法規則第23条の12第1項((非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予))に定める事由により当該特例受贈非上場株式等の数又は金額が増加又は減少をしている場合には、当該贈与又は減少をした後の数又は金額に換算した数又は金額)
- 3 この場合に、認定相続承継会社が2以上ある場合の当該「特例相続非上場株式等」の判定は、それぞれの認定相続承継会社ごとに行うことに留意する必要がある。
- 4 また、上記2の(1)又は(2)により計算されたA×2/3の数又は金額に1株又は1円未満の端数がある場合には、その端数は切り上げることとなる(措令40の8の3
)。
- 5 問について、子Aは、贈与税の納税猶予の特例の適用期間中に甲株式会社の株式4,000株を譲渡しているが、措置法施行令第40条の8第41項の規定により、特例受贈非上場株式等以外の株式から譲渡したものとみなされることから、父の相続の開始の時に有していた特例受贈非上場株式数は6,000株となる。
また、子Aは、父からの贈与の直前に甲株式会社の株式を2,000株有していることから、上記2の(1)に該当する。したがって、
15,000株(相続の開始の時における甲株式会社の発行済株式総数)×2/3−2,000株 = 8,000株
となることから、子Aについて贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式等の限度数は、8,000株となる。
したがって、子Aが、父の相続の開始の時に有していた特例受贈非上場株式等は6,000株であるので、この6,000株の全部について、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4
)の適用を受けることができる。
(注) 平成X1年9月の父からの贈与後に、子Aが母から相続により取得をした株式等の数及び父から相続により取得をした株式等の数は、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けるに当たり考慮する必要はない。
- 6 なお、子Aは、父から甲株式会社の株式1,000株を相続により取得をしているが、子Aは既に父から贈与を受けた甲株式会社の株式について贈与税の納税猶予の特例(措法70の7
)の適用を受け、父の相続開始により、父から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる(措法70の7の3
)特例受贈非上場株式等を有していることから、措置法第70条の7の2第1項かっこ書の規定により、父から相続により取得をした甲株式会社の株式1,000株について相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2
)の適用を受けることはできない。
(参考) 措置通70の7の4−11《70の7の2関係通達の準用》、措置通70の7の2−3《相続税の納税猶予の対象とならない非上場株式等》
問51 相続税の課税価格に算入される特例受贈非上場株式等の価額等:(1)贈与者の相続の開始前に譲渡等があった場合
(答)
-
1 子Aについて贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる非上場株式等の数・・・・・ 5,000株
(注) 相続開始時における認定相続承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の3分の2を限度とする。
- 2 相続税の課税価格の計算の基礎に算入される価額・・・・・ 20,000,000円
(算式)
納税猶予期間中に確定した税額
・・・17,200,000円×5,000株÷10,000株=8,600,000円
相続開始の時における猶予中贈与税額
・・・17,200,000円−8,600,000円=8,600,000円
相続税の課税価格の計算の基礎に算入される価額
40,000,000円【特例受贈非上場株式等に係る贈与時の価額】 × 8,600,000円【相続開始の時における猶予中贈与税額】÷17,200,000円【当初の納税猶予税額】 =20,000,000円
(解説)
- 1 措置法第70条の7の3第1項は、「第70条の7第1項の規定の適用を受ける同条第2項第3号に規定する経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合(・・・)には、当該贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、当該経営承継受贈者が当該贈与者から相続(当該経営承継受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により同条第1項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限り、合併により当該特例受贈非上場株式等に係る同項の認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該特例受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるものとする。次条において同じ。)の取得をしたものとみなす。この場合において、その死亡による相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算するものとする。」と規定し、猶予中贈与税額に対応する特例受贈非上場株式等については、贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされ、その場合の相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算することとされている。
- 2 問については、子Aが贈与税の納税猶予の特例の適用を受けた特例受贈非上場株式等10,000株のうち、5,000株を経営贈与承継期間経過後に譲渡していることから、贈与者の相続開始時に有していた5,000株が相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる。
なお、この内、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用対象となるのは、相続開始時における認定相続承継会社(甲株式会社)の発行済株式数(15,000株)の3分の2に達するまでであることから、問については、15,000株×2/3=10,000株が限度数となる。
したがって、子Aは、相続開始時に有していた特例受贈非上場株式等5,000株の全部について贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4
)の適用を受けることができる。
- 3 また、この場合の相続税の課税価格の計算の基礎に算入される当該特例受贈非上場株式等の価額は、20,000,000円となる。
(算式)
40,000,000円【特例受贈非上場株式等に係る贈与時の価額】 × 8,600,000円【相続開始の時における猶予中贈与税額】÷17,200,000円【当初の納税猶予税額】 =20,000,000円
(参考) 措置通70の7の4−1《特例相続非上場株式等の意義》、措置通70の7の3−1《措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる特例受贈非上場株式等の価額の計算》
問52 相続税の課税価格に算入される特例受贈非上場株式等の価額等:(2)贈与者の相続の開始前に合併により認定贈与承継会社が消滅している場合
(問) 経営贈与承継期間経過後、認定贈与承継会社である甲株式会社は、特例受贈非上場株式等に係る贈与者について相続が開始する前に、乙株式会社により吸収合併され消滅している。
次の場合に、「贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例」の対象となる非上場株式等の数及び相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額はいくらか。
特例受贈非上場株式等(甲株式会社) 10,000株
特例受贈非上場株式等に係る贈与時の価額 40,000,000円(@4,000円)
贈与税の納税猶予の特例適用時に猶予された贈与税の額 17,200,000円
吸収合併に際し、経営承継受贈者は、吸収合併存続会社である乙株式会社から、当該乙株式会社の株式5,000株と金銭を受領している。(注)経営承継受贈者は乙株式会社の株式5,000株を贈与者の相続開始時において保有している。
吸収合併に際し、吸収合併存続会社である乙株式会社は、消滅する甲株式会社のすべての株主に対し総額10,000,000円を金銭で支払っている。
認定贈与承継会社の合併前純資産額は、240,000,000円である。
相続開始時における認定相続承継会社である乙株式会社の発行済株式数
(議決権に制限のないもの) 15,000株
(注) 経営承継受贈者は贈与者から甲株式会社の株式等について贈与を受ける直前、甲株式会社の株式及び乙株式会社の株式を有していない。
(答)
- 贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の対象となる非上場株式等の数
・・・・・ 乙株式会社の株式等 5,000株
(注) 相続開始時における認定相続承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の3分の2以内に限られる。
- 相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額
・・・・・ 38,333,488円
(算式)
-
合併時における猶予中贈与税額に係る確定税額の計算(措置通70の7−29)
17,200,000円×10,000,000円÷240,000,000円≒716,666.666円
したがって、確定税額は716,600円となる。
-
相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額(措置通70の7の3−1)
40,000,000円×(17,200,000円−716,600円)÷17,200,000円≒38,333,488円
したがって、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額は38,333,488円となる。
(解説)
- 1 措置法第70条の7の3第1項は、「第70条の7第1項の規定の適用を受ける同条第2項第3号に規定する経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合(・・・)には、当該贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、当該経営承継受贈者が当該贈与者から相続(当該経営承継受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により同条第1項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限り、合併により当該特例受贈非上場株式等に係る同項の認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該特例受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるものとする。次条において同じ。)の取得をしたものとみなす。この場合において、その死亡による相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算するものとする。」と規定し、猶予中贈与税額に対応する特例受贈非上場株式等については、贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされ、その場合の相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算することとされている。
- 2 問について、経営贈与承継期間経過後、認定贈与承継会社である甲株式会社は、特例受贈非上場株式等に係る贈与者について相続が開始する前に、乙株式会社により吸収合併され消滅していることから、措置法第70条の7の3第1項かっこ書、措置法規則第23条の11及び同法規則第23条の9第9項の規定により、合併により特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が消滅した場合には、当該特例受贈非上場株式等に相当するものとして、当該合併により経営承継受贈者が取得をした当該合併により存続する会社の株式等を相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる。したがって、問については、合併により取得をした乙株式会社の株式5,000株が贈与者の相続開始時に有する特例受贈非上場株式等となり、相続開始時における認定相続承継会社である乙株式会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の3分の2に達するまでの部分について贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。
- 3 またこの場合に、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額は、合併により納税の猶予に係る期限が確定した贈与税額に係る部分は除かれることから、
-
合併時における猶予中贈与税額に係る確定税額の計算(措置通70の7−29)
17,200,000円×10,000,000円÷240,000,000円≒716,666円
したがって、確定税額は716,600円となる。
-
相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額(措置通70の7の3−1)
40,000,000円×(17,200,000円−716,600円)÷17,200,000円≒38,333,488円
したがって、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の 価額は38,333,488円となる。
(参考) 措置通70の7の4−1《特例相続非上場株式等の意義》、措置通70の7の3−1《措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる特例受贈非上場株式等の価額の計算》、措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》
問53 相続税の課税価格に算入される特例受贈非上場株式等の価額等:(3)贈与者の相続の開始前に合併により認定贈与承継会社が消滅している場合(特例の適用を受けてから3年以内に贈与者が死亡している場合)
(問) 認定贈与承継会社である甲株式会社は、経営贈与承継期間中、特例受贈非上場株式等に係る贈与者について相続が開始する前に、乙株式会社に吸収合併(当該吸収合併は、措置法第70条の7第4項第13号に規定する「適格合併をした場合」に該当するものとする。)され消滅している。
なお、当該贈与者は、経営承継受贈者が贈与税の納税猶予の特例の適用を受けてから2年後に死亡しているが、次のように、「贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例」の対象となる特例受贈非上場株式等の一部(2,500株)についてのみ納税猶予の特例の適用を受けることとした場合、特例の適用を受けた特例相続非上場株式等とそれ以外の株式等は、相続税の申告書上、どのように記載すればよいのか。
特例受贈非上場株式等 10,000株
特例受贈非上場株式等に係る贈与時の価額 40,000,000円(@4,000円)
贈与税の納税猶予の特例適用時に猶予された贈与税の額 17,200,000円
吸収合併に際し、経営承継受贈者は、吸収合併存続会社である乙株式会社から、当該会社の株式を5,000株と金銭を受領している。(注) 経営承継受贈者は乙株式会社の株式5,000株を贈与者の相続開始時において保有している
吸収合併に際し、吸収合併存続会社である乙株式会社は、消滅する認定贈与承継会社のすべての株主に対し総額10,000,000円を金銭で支払っている。
認定贈与承継会社の合併前純資産額は、240,000,000円である。
相続開始時における認定相続承継会社である乙株式会社の発行済株式数
(議決権に制限のないもの) 15,000株(注) 経営承継受贈者は贈与者から甲株式会社の株式等について贈与を受ける直前、甲株式会社の株式及び乙株式会社の株式を有していない。
特例相続非上場株式等の株式数 2,500株
(答)
- 1 贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4
)の適用を受ける特例相続非上場株式等及び同特例の適用を受けない特例受贈非上場株式等は、いずれも措置法第70条の7の3第1項に規定する特例受贈非上場株式等に該当し、かつ、同項の規定により、当該贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされることから、本来の相続財産と同様に、申告書第11表に記載する。
なお、この場合、措置法第70条の7の3第1項かっこ書、措置法規則第23条の11及び同法規則第23条の9第9項の規定により、吸収合併存続会社の株式等が相続又は遺贈により取得をしたものとみなされることから、申告書第11表には、「乙株式会社 5,000株 38,333,488円」が記入される。
- 2 また、吸収合併により納税の猶予に係る期限の一部が確定した贈与税の額に相当する甲株式会社の株式等の価額は、相続税法第19条の規定により、相続開始前3年以内に暦年課税により贈与を受けた財産に該当することから、申告書第4表の「2」(暦年課税分の贈与税額控除額の計算書)及び第14表の「1」(純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定財産価額の明細)に記載する。なお、この場合、申告書第14表には、「甲株式会社 10,000株 1,666,512円」が記入される。
(解説)
- 1 措置法第70条の7の3第1項は、「第70条の7第1項の規定の適用を受ける同条第2項第3号に規定する経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合(・・・)には、当該贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、当該経営承継受贈者が当該贈与者から相続(当該経営承継受贈者が当該贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により同条第1項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等(猶予中贈与税額に対応する部分に限り、合併により当該特例受贈非上場株式等に係る同項の認定贈与承継会社が消滅した場合その他の財務省令で定める場合には、当該特例受贈非上場株式等に相当するものとして財務省令で定めるものとする。次条において同じ。)の取得をしたものとみなす。この場合において、その死亡による相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算するものとする。」と規定し、猶予中贈与税額に対応する特例受贈非上場株式等については、贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされ、その場合の相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき当該特例受贈非上場株式等の価額については、当該贈与者から同項の規定の適用に係る贈与により取得をした特例受贈非上場株式等の当該贈与の時における価額を基礎として計算することとされている。
- 2 問について、経営贈与承継期間中、認定贈与承継会社である甲株式会社は、特例受贈非上場株式等に係る贈与者について相続が開始する前に、乙株式会社により吸収合併(措置法第70条の7第4項第13号に規定する「適格合併をした場合」に該当する。)され消滅していることから、措置法第70条の7の3第1項かっこ書、措置法規則第23条の11及び同法規則第23条の9第9項の規定により、合併により特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が消滅した場合には、当該特例受贈非上場株式等に相当するものとして、当該合併により経営承継受贈者が取得をした当該合併により存続する会社の株式等を相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる。したがって、問については、合併により取得をした乙株式会社の株式5,000株が贈与者の相続開始時に有する特例受贈非上場株式等となり、相続開始時における認定相続承継会社である乙株式会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の3分の2に達するまでの部分について贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。
- 3 この場合に、措置法第70条の7の3第1項の規定により、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額は、合併により納税の猶予に係る期限が確定した贈与税額に係る部分は除かれることから、
合併時における猶予中贈与税額に係る確定税額の計算(措置通70の7−29)
17,200,000円×10,000,000円÷240,000,000円≒716,666円
したがって、確定税額は716,600円となる。
相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額(措置通70の7の3−1)
40,000,000円×(17,200,000円−716,600円)÷17,200,000円≒38,333,488円
したがって、相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の 価額は38,333,488円となる。
- 4 また、吸収合併により納税の猶予に係る期限の一部が確定した贈与税の額に相当する甲株式会社の株式等の価額は、相続税法第19条の規定により、相続開始前3年以内に暦年課税により贈与を受けた財産に該当することから、申告書第4表の「2」(暦年課税分の贈与税額控除額の計算書)及び第14表の「1」(純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定財産価額の明細)に記載されることとなる。なお、この場合、申告書第14表には、「(株)甲株式会社 10,000株 1,666,512円」が記入される。
(算式)
合併時における猶予中贈与税額に係る確定税額 716,600円
措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされ相続税の課税価格の計算の基礎に算入される特例受贈非上場株式等の価額 38,333,488円
合併により取得をした乙株式会社の株式数 5,000株
相続開始時に現に有する株式等の数 5,000株
措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる株式等の数 ・・・ 乙株式会社の株式等 5,000株
相続税法第19条の規定により、相続開始前3年以内に暦年課税により贈与を受けた財産として、相続税の課税価格に加算される株式等の銘柄、株式等の数及び株式等の価額
甲株式会社の株式等 10,000株 1,666,512円(40,000,000円−38,333,488円)
(参考) 措置通70の7の4−1《特例相続非上場株式等の意義》、措置通70の7の3−1《措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得をしたものとみなされる特例受贈非上場株式等の価額の計算》、措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》