問32 確定税額の計算:(1)確定税額に100円未満の端数が生じる場合

(問) 経営贈与承継期間経過後、経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等の一部を譲渡したため、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額を算出したところ、算出された金額に100円未満の端数が生じた。
 次の場合、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額はいくらになるのか。

・譲渡直前の猶予中贈与税額 10,000,000円
・譲渡の直前の特例受贈非上場株式等の数 600株
・譲渡した特例受贈非上場株式等の数 200株

(答)

10,000,000円(猶予中贈与税額)×200株(譲渡した特例受贈非上場株式等の数)/600株(譲渡直前の特例受贈非上場株式等の数)
≒ 3,333,333.333円

※ 算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた額と規定されている(措令40の8丸25)。

 したがって、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、3,333,300円となる。

(解説)

  • 1  経営贈与承継期間経過後に経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等の一部を譲渡した場合の納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、措置法第70条の7第6項第2号及び措置法施行令第40条の8第25項の規定により、特例受贈非上場株式等を譲渡する直前の猶予中贈与税額に、次の算式により算出された割合を乗じた金額が、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額とされている。
    (算式) 譲渡等した特例受贈非上場株式等の数又は金額/譲渡等の直前における特例受贈非上場株式等の数又は金額
  • 2  なお、これにより算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた額と規定されている(措令40の8丸25)。

(参考) 措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》

問33 確定税額の計算:(2)合併により認定贈与承継会社が消滅した場合

(問) 経営贈与承継期間経過後、認定贈与承継会社である甲株式会社は、吸収合併存続会社(会社法749丸1)である乙株式会社に吸収合併され消滅することとなった。甲株式会社の株式について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている場合、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額はいくらになるのか。

【合併の状況】

  • ・合併前の甲株式会社の資産の額及び負債の額(簿価)
    イ 資産の額 100,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・合併がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲株式会社の資産の額及び負債の額(評価基本通達に基づく評価額)
    イ 資産の額 120,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・合併に際して乙株式会社から甲株式会社の全株主に交付された資産の内訳
    イ 乙株式会社の株式 1,000株(額面50,000円)
    ロ 金銭 30,000,000円
  • ・合併直前の猶予中贈与税額 10,000,000円
  • ・合併直前の特例受贈非上場株式等の数 600株

(答)

 10,000,000円(合併直前の猶予中贈与税額)×30,000,000円(全株主に交付された金銭)/(120,000,000円−20,000,000円)(※)

(※) 合併がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲株式会社の資産の額から負債の額(資産及び負債の価額は、いずれも評価基本通達に基づく評価額)を控除した額

= 3,000,000円

 したがって、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、3,000,000円となる。

(解説)

  • 1  経営贈与承継期間経過後に認定贈与承継会社が合併により消滅した場合の納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、措置法第70条の7第6項第3号及び措置法施行令第40条の8第26項の規定により、合併がその効力を生ずる直前の猶予中贈与税額に、次の算式により算出された割合を乗じた金額が、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額とされている。
    (算式)  吸収合併存続会社等が、消滅する認定贈与承継会社のすべての株主等に対し交付しなければならない金銭等の額/合併前純資産額(注) 「合併前純資産額」とは、合併がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における認定贈与承継会社の純資産額(資産の額から負債の額を控除した残額をいう。)をいう。なお、ここにいう資産及び負債の価額は、いずれも各資産及び各負債をそれぞれ評価基本通達に基づき評価した価額となる。
  • 2  なお、これにより算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てることに留意する(措令40の8丸26)。

(参考) 措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》

問34 確定税額の計算:(3)会社分割により吸収分割承継会社の株式を株主が取得をした場合

(問) 認定贈与承継会社である甲株式会社は、経営贈与承継期間経過後、会社分割に際し吸収分割承継会社(会社法757)である乙株式会社の株式の交付を受け、その一部を甲株式会社の株主に配当することになった。甲株式会社の株式について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている場合、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額はいくらになるのか。

【会社分割の状況】

  • ・乙株式会社が甲株式会社から承継した資産の額及び負債の額(簿価)
    イ 資産の額 30,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における乙株式会社が甲株式会社から承継した資産の額及び負債の額(評価基本通達に基づく評価額)
    イ 資産の額 25,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・会社分割に際して甲株式会社が乙株式会社から交付を受けた同社の株式の数 2,000株(額面50,000円)
  • ・上記のうち甲株式会社が同社の全株主に配当した乙株式会社の株式の数 1,000株(額面50,000円)
  • ・会社分割前の甲株式会社の資産の額及び負債の額(簿価)
    イ 資産の額 120,000,000円
    ロ 負債の額 40,000,000円
  • ・会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲株式会社の資産の額及び負債の額(評価基本通達に基づく評価額)
    イ 資産の額 110,000,000円
    ロ 負債の額 40,000,000円
  • ・会社分割直前の猶予中贈与税額 10,000,000円
  • ・会社分割直前の特例受贈非上場株式の数 600株

(答)

【猶予中贈与税額】10,000,000円×(((【承継純資産額】25,000,000円−20,000,000円)×(1,000株(甲社の全株主に配当した乙社株式の数)/2,000株(乙社が甲社に交付した乙社株式の数)))/(110,000,000円−40,000,000円)(※))

(※) 会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲株式会社の資産の額から負債の額(いずれも評価基本通達に基づく評価額)を控除した額

≒ 357,142.857円

(注)算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた額と規定されている(措令40の8丸28)。

 したがって、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、357,100円となる。

(解説)

  • 1  経営贈与承継期間経過後に認定贈与承継会社が会社分割をした場合の納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、措置法第70条の7第6項第5号及び措置法施行令第40条の8第28項の規定により、会社分割がその効力を生ずる直前の猶予中贈与税額に、次の算式により算出された割合を乗じた金額が、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額とされている。
    (算式) (分割前純資産額×(認定贈与承継会社から当該認定贈与承継会社のすべての株主等に対し配当された吸収分割承継会社等の株式等の数又は金額/吸収分割承継会社等から当該認定贈与承継会社が交付を受けた当該吸収分割承継会社等の株式等の数又は金額))/分割前純資産額(注)
    1 「承継純資産額」とは、吸収分割承継会社等が認定贈与承継会社から承継した資産の当該会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における価額から当該吸収分割承継会社等が当該認定贈与承継会社から承継した負債の同日における価額を控除した残額をいう。
    2 「吸収分割承継会社等」とは、措置法第70条の7第6項第5号の上欄に規定する吸収分割承継会社等をいう。
    3 「分割前純資産額」とは、会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における認定贈与承継会社の純資産額をいう。
    4 上記注1の「承継した資産の当該会社分割がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における価額」及び「承継した負債の同日における価額」並びに上記注3の「純資産額」を算定する場合における各資産及び各負債の価額は、いずれも評価基本通達に基づき評価した価額となる。
  • 2  なお、これにより算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた額と規定されている((措令40の8丸28)。

(参考) 措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》

問35 確定税額の計算:(4)組織変更に際し株主に金銭の支払いがあった場合

(問) 経営贈与承継期間経過後、認定贈与承継会社である甲合名会社は、組織変更を行い乙株式会社となり全株主に対し金銭を交付することとした。甲合名会社の出資について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている場合、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額はいくらになるのか。

【組織変更の状況】

  • ・組織変更前の甲合名会社の資産の額及び負債の額(簿価)
    イ 資産の額 100,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・組織変更がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲合名会社の資産の額及び負債の額(評価基本通達に基づく評価額)
    イ 資産の額 120,000,000円
    ロ 負債の額 20,000,000円
  • ・組織変更に際して全株主に交付された金銭 30,000,000円
  • ・組織変更直前の猶予中贈与税額 10,000,000円
  • ・組織変更直前の特例受贈非上場株式等の数 600口

(答)

 10,000,000円(組織変更直前の猶予中贈与税額)×30,000,000円(全株主に交付された金銭)/(120,000,000円−20,000,000円)(※)

(※) 組織変更がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における甲合名会社の資産の額から負債の額(いずれも評価基本通達に基づく評価額)を控除した額

= 3,000,000円

 したがって、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、3,000,000円となる。

(解説)

  • 1  経営贈与承継期間経過後に認定贈与承継会社が組織変更をした場合の納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額は、措置法第70条の7第6項第6号及び措置法施行令第40条の8第29項の規定により、組織変更がその効力を生ずる直前の猶予中贈与税額に、次の算式により算出された割合を乗じた金額が、納税の猶予に係る期限が確定する贈与税の額とされている。
    (算式) 認定贈与承継会社から当該会社のすべての株主等に対し交付された金銭等の額/組織変更前純資産額 (注)「組織変更前純資産額」とは、組織変更がその効力を生ずる日の属する年の前年の12月31日における認定贈与承継会社の純資産額(資産の額から負債の額を控除した残額をいう。)をいう。  なお、ここにいう資産及び負債の価額は、いずれも各資産及び各負債をそれぞれ評価基本通達に基づき評価した価額となる。
  • 2  なお、これにより算出された金額に100円未満の端数があるとき又は100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた額と規定されている(措令40の8丸29)。

(参考) 措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》

問36 確定税額の計算:(5)会社の純資産額の計算

(問) 措置法第70条の7第5項及び同条第6項の規定により、猶予中贈与税額の一部について納税の猶予に係る期限が確定する場合の確定税額の計算において、会社の「純資産額」を算定する場合に、会社が3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利並びに家屋及びその附属設備の価額は、通常の取引価額に相当する金額によって評価することになるのか。

(答)

 会社の純資産額については、各資産及び各負債をそれぞれ評価基本通達に照らして評価する。したがって、会社が3年以内に土地及び土地の上に存する権利並びに家屋及びその附属設備を取得又は新築している場合であっても、通常の取引価額に相当する金額により評価する必要はない。

(参考) 措置通70の7−29《納税猶予税額の一部について納税猶予の期限が確定する場合の贈与税の額の計算》

問37 経営承継受贈者又は贈与者が死亡した場合の猶予中贈与税額に相当する贈与税の免除

(問) 特例受贈非上場株式等について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている場合において、経営承継受贈者又は当該経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合、猶予中贈与税額に相当する贈与税の免除に関する手続はどのようにすればよいのか。

(答)

 経営承継受贈者又は当該経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)又は当該経営承継受贈者が、その死亡の日から6月を経過する日までに贈与税の免除を受けようとする旨その他一定の事項を記載した届出書(以下「免除届出書」という。)を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている。
 この場合において、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)又は当該経営承継受贈者は、当該免除届出書と共に、当該経営承継受贈者又は当該経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した日の直前の措置法第70条の7第2項第7号に規定する経営贈与報告基準日の翌日から当該死亡した日までの間において、当該経営承継受贈者又は特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が、措置法第70条の7第5項又は第6項に規定する納税の猶予に係る期限の確定事由に該当していないかどうかの有無その他一定の事項を明らかにする書類を当該免除届出書に添付しなければならないこととされている(措法70の7丸16、措令40の8丸34)。

問38 納税者からの申請による免除(1)

(問) 経営贈与承継期間内に、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始の決定がなされた。この場合、猶予中贈与税額に相当する贈与税について免除申請することができるのか。

(答)

 特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始決定があった場合の猶予中贈与税額に相当する贈与税に係る免除申請は、経営贈与承継期間の末日の翌日以後に生じた一定の事由に限られる。したがって、問については、経営贈与承継期間内に生じた事由であることから、猶予中贈与税額に相当する贈与税ついて免除申請を行うことはできない。

(解説)

  • 1 経営贈与承継期間内に、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始の決定がなされた場合、当該事由は措置法第70条の7第4項第8号に規定する「当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が解散をした場合」に該当するため、当該事由が生じた日から2月を経過する日(当該事由が生じた日から2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日)をもって納税の猶予に係る期限が到来する。
  • 2  ところで、経営贈与承継期間の末日の翌日以後に、贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける経営承継受贈者又は特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が、措置法第70条の7第17項各号に掲げる一定の事由に該当することとなった場合(その該当することとなった日前に同条第12項の規定の適用があった場合及び同日前に同条第13項又は第15項の規定による納税の猶予に係る期限の繰上げがあった場合を除く。)において、当該経営承継受贈者が、同条第17項各号に掲げる事由に該当することとなった日から2月を経過する日までに、同項各号に定める贈与税の免除を受けたい旨、免除を受けようとする贈与税に相当する金額及びその計算の明細その他一定の事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、同条第18項の規定により、当該申請書の提出を受けた税務署長は、当該申請書に記載された事項について調査を行い、当該申請書に係る申請期限の翌日から6月以内に、同条第17項各号に定める贈与税の免除をした旨、又は当該申請書に係る申請を却下した旨及びその理由を当該経営承継受贈者に対し通知することとされている。

(参考) 措置通70の7−19《解散等をした場合の意義》、措置通70の7−38《破産免除等の申請書が申請期限までに提出されない場合等》

問39 納税者からの申請による免除(2)

(問) 経営贈与承継期間経過後に、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始の決定がなされた。ところで、当該事由が生じた日から2か月を経過した後に猶予中贈与税額に相当する贈与税について免除申請を行ったが、当該申請は認められるか。

(答)

 特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始決定があった場合の猶予中贈与税額に相当する贈与税に係る免除申請書は、当該事由が生じた日から2月以内に提出しなければならない。したがって、問については、免除申請に係る期限を経過しているため、猶予中贈与税額に相当する贈与税について免除申請を行うことはできない。
 なお、当該申請書の提出に関し、その提出がなかった場合のゆうじょ規定は法令上設けられていない。

(解説)

  • 1  経営贈与承継期間の末日の翌日以後に、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の非上場株式等の全部の譲渡等をした場合又は特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について破産手続開始の決定若しくは特別清算開始の命令があった場合など一定の事由に該当する場合には、納税の猶予に係る期限が到来する贈与税のうち一定の金額が税務署長の通知により免除される(措法70の7丸17丸18)。
  • 2  上記1の贈与税の免除を受けるには、経営承継受贈者は、免除事由に該当することとなった日から2月を経過する日(その該当することとなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日。)(以下「申請期限」という。)までに当該免除を受けたい旨、免除を受けようとする贈与税に相当する金額及びその計算の明細その他の措置法規則第23条の9第30項に規定する事項を記載した申請書(当該免除の手続に必要な書類として同条第31項に規定する書類を添付したものに限る。)を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(措法70の7丸17)。
  • 3  したがって、上記2の申請書が当該申請期限までに提出されない場合には、措置法第70条の7第17項の規定の適用を受けることはできない。
  • 4  また、当該申請書の提出に関し、その提出がなかった場合のゆうじょ規定は法令上設けられていない。

(参考) 措置通70の7−38《破産免除等の申請書が申請期限までに提出されない場合等》

問40 特例受贈非上場株式等の修正(1):申告期限後における特例受贈非上場株式等の数又は金額の変更の可否

(問) 子Aは、期限内申告において贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式数の一部について同特例の適用を受けていたが、認定贈与承継会社である甲株式会社の株式の評価について簡易な誤りが判明したことから修正申告書を提出し、当該修正申告書の提出に伴い増加する贈与税の額について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることとなった。
 この場合に、子Aは、特例の適用を受けることとして期限内申告において選択した株式の数についても併せて変更(増減)することができるか。

(答)

 期限内申告において贈与税の納税猶予の特例の適用を受けた特例受贈非上場株式等に係る簡易な評価誤りについて修正申告書を提出し、当該修正申告書の提出に伴い増加した贈与税の額について納税猶予の特例の適用を認めることは例外的な取扱いとして認めているものであり、期限内申告において適法に選択された特例受贈非上場株式等の数又は金額を申告期限後において変更することはできない。 

(参考) 措置通70の7−6《修正申告等に係る贈与税額の納税猶予》

問41 特例受贈非上場株式等の修正(2):贈与者の相続の開始に伴い遺留分減殺請求がなされた場合の贈与税の納税猶予の特例関係

(問) 子Aは、父から認定贈与承継会社に係る非上場株式等の贈与を受け、適法に贈与税の納税猶予の特例の適用を受けていたが、贈与者である父が死亡したため、特例の適用を受けていた猶予中贈与税額に相当する贈与税について免除届出書等必要な書類を提出し、免除された。
 ところで、贈与者である父の死亡に係る遺産の相続に関し、子Aに対し遺留分権利者である子Bから遺留分の減殺請求がなされ、子Aは亡くなった父から贈与を受けた特例受贈非上場株式等の一部を子Bに返還した。
 この場合に、子Aが子Bに対し特例受贈非上場株式等の一部を返還することにより、子Aが適用を受けていた贈与税の納税猶予の特例について、措置法第70条の7第1項に規定する特例の対象となる贈与に係る要件を満たさないこととして遡及して取り消されることになるのか。
 また、子Aが特例受贈非上場株式等を子Bに返還したことにより、当初の贈与税の申告における課税価格及び贈与税額が過大となったときは、子Aは、相続税法第32条第3号の規定に基づき更正の請求をすることができるのか。

(答)

 子Aが適法に受けていた贈与税の納税猶予の特例の適用について、特例適用時に遡及して取り消されることはない。
 なお、子Aは、特例受贈非上場株式等を子Bに返還したことにより、当初の贈与税の申告に係る課税価格及び贈与税額が過大となったときは、相続税法第32条第3号の規定に基づき更正の請求をすることができる。

  • (注1) 子Aが贈与者である父の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告において措置法第70条の7の4(贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例)の規定の適用を受けている場合には、遺留分の減殺請求があったことにより、子Aは遺留分権利者である子Bに対し返還した特例相続非上場株式等を有しないこととなるため、当該返還した株式等に係る特例相続非上場株式等は、贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例の対象とならない。したがって、子Aは、特例相続非上場株式等を返還したことにより、父の死亡による相続又は遺贈に係る相続税の申告における課税価格及び相続税額が過大となったときは、相続税法第32条第3号の規定に基づき、当該相続税の申告について更正の請求をすることができる。
  • (注2) 特例受贈非上場株式等の返還によらず、現金等価額による弁償があった場合も上記と同様である。

(解説)

  • 1  特定遺贈及び遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分減殺請求により遺留分権利者が取り戻した財産がどこに帰属するのかについて、判例は、取り戻した財産は、遺産分割の対象となる「遺産」には帰属しないとし、遺留分権利者の固有財産として直接帰属するとしている。 (参考) 昭和51年8月30日最高裁第二小法廷判決(昭和50年(オ)第920号)では、「遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得をした権利は遺留分を侵害する限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するものと解するのが相当」としている。
     また、平成8年1月26日最高裁第二小法廷判決(平成3年(オ)第1772号)では、「遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解するのが相当である。その理由は次のとおりである。特定遺贈が効力を生ずると、特定遺贈の目的とされた特定の財産は何らの行為を要せずして直ちに受遺者に帰属し、遺産分割の対象となることはなく、また、民法は、遺留分減殺請求を減殺請求をした者の遺留分を保全するに必要な限度で認め(1031条)、遺留分減殺請求権を行使するか否か、これを放棄するか否かを遺留分権利者の意思にゆだね(1031条、1043条参照)、減殺の結果生ずる法律関係を、相続財産との関係としてではなく、請求者と受贈者、受遺者等との個別的な関係として規定する(1036条、1037条、1039条、1040条、1041条参照)など、遺留分減殺請求権行使の効果が減殺請求をした遺留分権利者と受贈者、受遺者等との関係で個別的に生ずるものとしていることがうかがえるから、特定遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解される。そして、遺言者の財産全部についての包括遺贈は、遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもので、その限りで特定遺贈とその性質を異にするものではないからである。」としている。
  • 2  問は、子Aが亡父から受けた生前贈与に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使したものであるが、判例に沿って整理した場合、遺留分の減殺請求があったことにより遺留分権利者である子Bに対し返還した特例受贈非上場株式等は、その返還時にいったん遡及的に贈与者である父の所有に帰属するものではないと考えることが適当であることから、子Aが適用を受けていた贈与税の納税猶予の特例について、遡及して措置法第70条の7第1項に規定する特例の対象となる贈与の要件を満たしていたかどうかを判定する必要はないものと考えられる。したがって、子Aが適法に受けていた贈与税の納税猶予の特例の適用については、特例適用時に遡及して取り消されることはない。