問22 贈与税の納税猶予の特例の適用を受けない場合の相続時精算課税の適用

(問) 贈与税の納税猶予の特例と相続時精算課税の適用について、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとして選択した株式等と贈与税の納税猶予の特例の適用を受けないこととして選択しなかった同じ会社の株式等がある場合、特例の適用を受けないこととして選択しなかった株式等について相続時精算課税を適用することができるか。

(答)

 特例の適用を受けないこととして選択しなかった株式等については、相続時精算課税の規定を適用することができる。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第3項では、「次に掲げる者が、その者に係る相続税法第21条の9第5項に規定する特定贈与者からの贈与により取得をした非上場株式等について第1項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等については、同法第2章第3節の規定は、適用しない。
    • 一 相続税法第21条の9第5項(第70条の3第1項において準用する場合を含む。)に規定する相続時精算課税適用者
    • 二 第1項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等を贈与により取得をした日の属する年中において、当該特例受贈非上場株式等の贈与者から贈与を受けた当該特例受贈非上場株式等以外の財産について相続税法第21条の9第2項(第70条の3第1項において準用する場合を含む。)の届出書を提出する者」
    と規定し、特定贈与者からの贈与について既に相続時精算課税の適用を受けている者又は特例受贈非上場株式等の贈与者から贈与を受けた当該特例受贈非上場株式等以外の財産について相続時精算課税の適用を受ける旨の届出書を提出する者が、当該特定贈与者から贈与により取得をした非上場株式等について贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける場合には、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとして選択した株式等、すなわち特例受贈非上場株式等については相続税法第2章第3節《相続時精算課税》の規定は適用しない(暦年課税が適用される)こととされている。
  • 2  したがって、措置法第70条の7第1項の規定により贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる限度数(又は限度額)を超えた部分に係る株式等、あるいは、同特例の適用を受けることができる限度数(又は限度額)内の株式等であっても贈与税の納税猶予の特例を受けないこととして選択しなかった株式等は「特例受贈非上場株式等」に該当しないことから相続時精算課税の適用を受けることができる。

(参考) 措置通70の7−15《相続時精算課税適用者等に係る贈与税の納税猶予》

問23 贈与税の納税猶予税額の計算:(1)相続時精算課税適用者が贈与税の納税猶予の特例を適用する場合

(問) 相続時精算課税適用者である子Aは、特定贈与者である父から次の資産の贈与を受けた。この場合、贈与税額及び贈与税の納税猶予税額はどのように計算するのか。

【取得をした資産の内訳等】
・現金 10,000,000円
・上場会社の株式 5,000,000円
・非上場会社の株式(贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとしてすべて選択) 10,000,000円
・過去の年分の申告において控除した相続時精算課税特別控除額の合計額 15,000,000円

(注) 上記資産の価額は、評価基本通達により算定。

(答)

 現金及び上場会社の株式については、相続時精算課税を適用して贈与税額を計算し、贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける非上場会社の株式は「特例受贈非上場株式等」に該当するため、暦年課税により納税猶予税額を計算する。

(解説)

  • 1  問について、特定贈与者から贈与により取得をした各資産について、暦年課税又は相続時精算課税のいずれの対象になるかどうかの区分は、次のとおりとなる。
    • 現金及び上場会社の株式 ・・・・・・・・・・・・・ 相続時精算課税の対象
    • 非上場会社の株式(特例受贈非上場株式等) ・・・・ 暦年課税の対象

    (理由)

     措置法第70条の7第3項では、「次に掲げる者が、その者に係る相続税法第21条の9第5項に規定する特定贈与者からの贈与により取得をした非上場株式等について第1項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等については、同法第2章第3節の規定は、適用しない。

    • 一 相続税法第21条の9第5項(第70条の3第1項において準用する場合を含む。)に規定する相続時精算課税適用者
    • 二 第1項の規定の適用を受ける特例受贈非上場株式等を贈与により取得をした日の属する年中において、当該特例受贈非上場株式等の贈与者から贈与を受けた当該特例受贈非上場株式等以外の財産について相続税法第21条の9第2項(第70条の3第1項において準用する場合を含む。)の届出書を提出する者」

    と規定し、特定贈与者からの贈与について既に相続時精算課税の適用を受けている者又は特例受贈非上場株式等の贈与者から贈与を受けた当該特例受贈非上場株式等以外の財産について相続時精算課税の適用を受ける旨の届出書を提出する者が、当該特定贈与者から贈与により取得をした非上場株式等について贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける場合には、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとして選択した株式等、すなわち特例受贈非上場株式等については相続税法第2章第3節《相続時精算課税》の規定は適用しない(暦年課税が適用される)こととされている。

  • 2  したがって、問については、
    • 丸1 相続時精算課税の対象となる現金及び上場会社の株式に対する贈与税額
       現金(10,000千円)+上場会社の株式(5,000千円)=15,000千円
      過去の年分の申告において控除した相続時精算課税特別控除額の合計額 15,000千円
      ⇒ 控除可能な特別控除の額 25,000千円-15,000千円=10,000千円
      したがって、相続時精算課税に係る贈与税額は、
       (15,000千円−10,000千円)×20%=1,000千円となる。
    • 丸2 暦年課税の対象となる非上場会社の株式に係る贈与税の納税猶予税額
       非上場株式(10,000千円)−1,100千円=8,900千円
      したがって、贈与税の納税猶予税額は、
       8,900千円×40%−1,250千円=2,310千円となる。
  • 3  なお、問は、非上場株式等のすべてについて贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとして選択しているが、仮に、非上場株式等の一部について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるものとして選択した場合には、特例の適用を受けないこととした非上場株式等は「特例受贈非上場株式等」に該当しないことから、相続時精算課税の対象になることに留意する。

(参考) 措置通70の7−15《相続時精算課税適用者等に係る贈与税の納税猶予》

問24 贈与税の納税猶予税額の計算:(2)特例受贈非上場株式等に係る会社が複数ある場合

(問) 同一年中に、次に掲げる2以上の会社の株式を贈与により取得をした場合の贈与税の納税猶予税額はどのように計算するのか。なお、受贈者は相続時精算課税適用者ではない。

【取得をした資産の内訳等】

・A株式会社の株式(贈与税の納税猶予の特例を適用) 10,305,000円
・B株式会社の株式(同上) 15,006,000円
・C株式会社の株式(上場会社の株式) 3,000,000円

(注) 上記資産の価額は財産評価基本通達により算定。

(答)

 措置法施行令第40条の8第11項及び第12項の規定に基づき、贈与税の納税猶予税額の計算を行う。
 問については、

  • A社株式に係る納税猶予税額は、4,012,500円
  • B社株式に係る納税猶予税額は、5,842,900円

となり、同一年中にA社及びB社の会社の株式を取得をしたことによる贈与税の納税猶予税額の総額は、4,012,500円+5,842,900円=9,855,400円となる。

(解説)

  • 1  同一年中に、複数の認定贈与承継会社の非上場株式等の贈与を受けた場合の贈与税の納税猶予税額の計算については、措置法施行令第40条の8第11項において「法第70条の7第1項に規定する特例受贈非上場株式等の同項に規定する贈与者(以下この条において「贈与者」という。)又は当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が2以上ある場合における納税猶予分の贈与税額の計算においては、当該特例受贈非上場株式等に係る経営承継受贈者がその年中において同項の規定の適用に係る贈与により取得をしたすべての認定贈与承継会社の当該特例受贈非上場株式等の価額の合計額を当該経営承継受贈者に係るその年分の贈与税の課税価格とみなす。」と規定し、更に、同条第12項の規定により「前項の場合において、法第70条の7第1項に規定する特例受贈非上場株式等に係る贈与者及び認定贈与承継会社の異なるものごとの納税猶予分の贈与税額は、第1号に掲げる金額に第2号に掲げる割合を乗じて計算した金額とする。この場合において、当該計算した金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が百円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
    • 一 前項の規定を適用して計算した納税猶予分の贈与税額
    • 二 法第七十条の七第一項に規定する特例受贈非上場株式等に係る贈与者及び認定贈与承継会社の異なるものごとの当該特例受贈非上場株式等の価額が前項のその年分の贈与税の課税価格に占める割合」
    と規定されている。
  • 2  問については、
    • 丸1 すべての財産を基に贈与税額を計算
      10,305千円(A社株式)+15,006千円(B社株式)+3,000千円(C社株式)
      =28,311千円
      (28,311千円−1,100千円)×50%−2,250千円=11,355,500円
    • 丸2 C社株式(贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける株式等以外の財産)の贈与がなかったものとして贈与税額を計算(措令40の8丸11)
      10,305千円(A社株式)+15,006千円(B社株式)=25,311千円
      (25,311千円−1,100千円)×50%−2,250千円=9,855,500円
    • 丸3 それぞれの会社ごとの贈与税の納税猶予税額の計算(措令40の8丸12)
      • イ 9,855,500円×10,305千円(A社株式)/(10,305千円(A社株式)+15,006千円(B社株式))=4,012,521円
      • ロ 9,855,500円×15,006千円(B社株式)/(10,305千円(A社株式)+15,006千円(B社株式))=5,842,978円
      • ハ 措置法施行令第40条の8第12項の規定に基づき、上記イ及びロにより算出された税額については、それぞれ100円未満を切り捨てる。
    • 丸4 したがって、
      • A社株式に係る納税猶予税額は、4,012,500円
      • B社株式に係る納税猶予税額は、5,842,900円
      となり、同一年中にA社及びB社の会社の株式を贈与により取得をしたことによる贈与税の納税猶予税額の総額は、4,012,500円+5,842,900円=9,855,400円となる。
    • 丸5 丸1の贈与税額から贈与税の納税猶予税額を控除した額が、申告期限までに納付すべき税額
      11,355,500円−9,855,400円=1,500,100円

(参考) 措置通70の7−14《特例受贈非上場株式等に係る贈与者又は認定贈与承継会社が2以上ある場合の納税猶予分の贈与税額の計算》

問25 受贈者が代表権を有しないこととなった場合(1)

(問) 経営贈与承継期間内に、贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける経営承継受贈者が有している特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の代表権に制限が加えられた。この場合、納税猶予の特例の適用関係はどうなるのか。

(答)

 経営贈与承継期間内に会社の代表権に制限が加えられた場合には、措置法第70条の7第4項第1号に規定する「経営承継受贈者がその有する当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の代表権を有しないこととなった場合」に該当するため、代表権に制限が加えられた日から2月を経過する日をもって猶予中贈与税額の全部について納税の猶予に係る期限が到来する。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第4項第1号においては、同条第2項第6号に規定する経営贈与承継期間内に経営承継受贈者がその有する当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の「代表権を有しないこととなった場合」には、その有しないこととなった日から2月を経過する日(その有しないこととなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日をいう。)に納税の猶予に係る期限が到来することとされている。
  • 2  ところで、ここにいう「代表権」とは、同条第1項において「制限が加えられた代表権を除く」と定義されていることから、「代表権を有しないこととなった場合」とは、丸1経営承継受贈者が有していた制限のない代表権を有しないこととなった場合及び丸2経営承継受贈者が有していた制限のない代表権に制限が加えられた場合を指す。

(参考) 措置通70の7−16《代表権を有しないこととなった場合の意義》

問26 受贈者が代表権を有しないこととなった場合(2)

(問) 経営贈与承継期間内に経営承継受贈者の身体に障害が生じ、贈与税の納税猶予の特例の適用を受ける経営承継受贈者が有している特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の代表権に制限が加えられた。
 現在、身体障害者福祉法第15条第1項の規定による都道府県知事の定める医師の診断書を添えて同法第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付申請を行っているところであるが、この場合に、納税猶予の特例の適用関係はどうなるのか。

(答)

 身体障害者福祉法第15条第1項の規定による都道府県知事の定める医師の診断書により、身体上の障害の程度が1級又は2級に該当すると認められる場合には、同条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けていなくても、措置法規則第23条の9第15項第4号に規定する「前3号に掲げる事由に類すると認められること。」に該当すると考えられる。
 したがって、問については、措置法第70条の7第4項第1号のかっこ書に定める「当該代表権を有しないこととなった場合について財務省令で定めるやむを得ない理由がある場合を除く。」に該当すると認められることから、引き続き、納税猶予の特例の適用を受けることができる。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第4項第1号においては、同条第2項第6号に規定する経営贈与承継期間内に経営承継受贈者がその有する当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の「代表権を有しないこととなった場合」には、その有しないこととなった日から2月を経過する日(その有しないこととなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日をいう。)に納税の猶予に係る期限が到来することとされている。
  • 2  ただし、措置法規則第23条の9第15項に掲げるいずれかの事由に該当するときは、措置法第70条の7第4項第1号の「代表権を有しないこととなった場合」には該当しないことに留意する必要がある。
  • 3  問については、身体障害者手帳の交付を受けていないことから措置法規則第23条の9第15項第2号に掲げる事由には該当しないが、現在、同手帳の交付申請を行っているところであり、同号に掲げる事由に類すると認められることから、同項第4号に規定する「前3号に掲げる事由に類すると認められること。」に該当すると考えられる。

(措置法規則第23条の9第15項に掲げる事由)

  • 一  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号)第6条第3項に規定する障害等級が1級である者として記載されているものに限る。)の交付を受けたこと。
  • 二  身体障害者福祉法第15条第4項の規定により身体障害者手帳(身体上の障害の程度が1級又は2級である者として記載されているものに限る。)の交付を受けたこと。
  • 三  介護保険法第19条第1項の規定による同項に規定する要介護認定(同項の要介護状態区分が要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令第1条第1項第5号に掲げる区分に該当するものに限る。)を受けたこと。
  • 四  前三号に掲げる事由に類すると認められること。

(参考) 措置通70の7−16《代表権を有しないこととなった場合の意義》

問27 贈与者の名誉職への就任

(問) 贈与者Aは、認定贈与承継会社に係る非上場株式等の贈与前に当該会社の役員を退任したが、贈与後において当該会社の会長へ就任した。当該役職は役員としての地位は有しておらず、いわゆる「名誉職」に過ぎない。
 この場合、措置法施行令第40条の8第23項第5号に規定する納税の猶予に係る期限の確定事由に該当することになるのか。

(答)

 名誉職として「会長」や「相談役」に就任し、役員としての地位を有していない場合は、措置法施行令第40条の8第23項第5号には該当しない。

(解説)

  • 1  措置法施行令第40条の8第23項第5号に規定する「役員」とは、同条第1項第3号に規定する「役員」をいい、認定贈与承継会社が株式会社の場合には会社法第329条第1項に規定する取締役、会計参与又は監査役をいい、持分会社である場合には業務を執行する社員をいう。
  • 2  問については、名誉職としての「会長」や「相談役」が、措置法施行令第40条の8第1項第3号に規定する「役員」としての地位を有していない場合には、同条第23項第5号には該当せず、引き続き納税猶予の特例の適用を受けることができる。

問28 納税猶予に係る期限が確定する資産保有型会社又は資産運用型会社

(問) 認定贈与承継会社が資産保有型会社又は資産運用型会社に該当した場合には、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当することになるのか。

(答)

 認定贈与承継会社が措置法第70条の7第2項第8号に規定する資産保有型会社又は同項第9号に規定する資産運用型会社(以下「資産保有型会社等」という。)に該当する場合であっても、資産保有型会社等に該当することとなった日において、措置法施行令第40条の8第21項に規定する要件のすべてに該当しなければ納税の猶予に係る期限の確定事由には該当しない。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第4項第9号の規定により、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が資産保有型会社等のうち政令で定めるものに該当することとなった場合には、その該当することとなった日から2月を経過する日(当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日)をもって納税の猶予に係る期限とされている。
  • 2  したがって、認定贈与承継会社が資産保有型会社等に該当する場合であっても、措置法施行令第40条の8第21項に規定する要件のすべてに該当しなければ、納税の猶予に係る期限の確定事由には該当しない。すなわち、引き続き、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。

(参考)

○ 措置法施行令第40条の8第21項(抜粋)

 法第70条の7第4項第9号に規定する資産保有型会社又は資産運用型会社のうち政令で定めるものは、資産保有型会社等のうち、資産保有型会社等に該当することとなつた日(以下この項において「該当日」という。)において、次に掲げる要件のすべてに該当するものとする。

  • 一 当該資産保有型会社等の特定資産から当該資産保有型会社等が有する当該資産保有型会社等と法第70条の7第2項第1号ハに規定する特別の関係がある会社(次に掲げる要件のすべてを満たすものに限る。)の株式等を除いた場合であつても、当該資産保有型会社等が同項第8号に規定する資産保有型会社又は同項第九号に規定する資産運用型会社に該当すること。
    • イ 該当日において、当該特別の関係がある会社が、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
    • ロ 該当日において、当該特別の関係がある会社の常時使用従業員の数が5人以上であること。
    • ハ 該当日において、当該特別の関係がある会社が、ロの常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。
  • 二 当該資産保有型会社等が次に掲げる要件のすべてを満たす法第70条の7第2項第8号に規定する資産保有型会社又は同項第9号に規定する資産運用型会社でないこと。
    • イ 該当日において、当該資産保有型会社等が、商品の販売その他の業務で財務省令で定めるものを行つていること。
    • ロ 該当日において、当該資産保有型会社等の常時使用従業員の数が5人以上であること。
    • ハ 該当日において、当該資産保有型会社等が、ロの常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場その他これらに類するものを所有し、又は賃借していること。

(参考) 措置通70の7−11《特例の対象とならない資産保有型会社又は資産運用型会社の意義》、措置通70の7−20《確定事由となる資産保有型会社又は資産運用型会社の意義》

問29 特例受贈非上場株式等の譲渡等の判定

(問) 子Aは、次のとおり甲株式会社の株式を贈与等により取得をしている。この場合、子Aが保有する甲株式会社の株式を3,000株譲渡したとき、特例受贈非上場株式等を何株譲渡したことになるのか。また、その場合に、父母いずれの者から贈与を受けた特例受贈非上場株式等を譲渡したことになるのか。

【取得等の状況】
昭和×1年4月 1,000株 自己資金により購入
平成×2年5月 1,300株 父から贈与により取得(贈与税の納税猶予の特例適用)
平成×3年6月 500株 自己資金により購入
平成×3年7月 600株 母から贈与により取得(贈与税の納税猶予の特例適用)
平成×5年8月 1,000株 自己資金により購入
平成×9年12月 3,000株 売却

(答)

 措置法施行令第40条の8第41項及び第42項の規定により、父から贈与により取得をした特例受贈非上場株式等について500株を譲渡したとみなされる。
 3,000株−(1,000株【昭×1年取得分】+500株【平×3年取得分】+1,000株【平×5年取得分】)=500株

(解説)

  • 1  経営承継受贈者が措置法第70条の7第1項の規定の適用を受けている特例受贈非上場株式等の全部又は一部の譲渡等(譲渡又は贈与をいう。以下同じ。)をした時において当該特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社と同一の会社の非上場株式等を有している場合には、特例受贈非上場株式等の譲渡等をしたのか又は特例受贈非上場株式等以外の当該同一の会社の非上場株式等の譲渡等をしたのか不明であることから、措置法施行令第40条の8第41項において、認定贈与承継会社の非上場株式等の譲渡等をした場合には、特例受贈非上場株式等以外の非上場株式等から先に譲渡等をしたものとみなすこととされている。
  • 2  また、同一の認定贈与承継会社の非上場株式等を異なる贈与者から特例対象贈与により取得をした場合、特例受贈非上場株式等についてそれぞれ措置法第70条の7第1項の規定の適用を受けているときの同条第4項及び第6項の規定は、当該贈与者ごとに適用することとなるが、この場合は、措置法施行令第40条の8第42項において、特例受贈非上場株式等の譲渡等をした場合には、特例受贈非上場株式等のうち先に取得をしたものから順次譲渡等をしたものとみなすこととされている。

(参考) 措置通70の7−17《特例受贈非上場株式等の譲渡等の判定》

問30 認定贈与承継会社等について上場の申請がなされた場合

(問) 贈与税の納税猶予の特例の適用に係る認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社(措置法施行令第40条の8第22項に規定する会社をいう。)について上場の申請がなされた場合、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当するのか。

(答)

 認定贈与承継会社について経営贈与承継期間内に上場の申請がなされた場合には、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当する。なお、当該認定贈与承継会社の特別子会社(措置法施行令第40条の8第22項に規定する会社をいう。以下同じ。)については、経営贈与承継期間及び経営贈与承継期間経過後のいずれの期間において上場の申請がなされたとしても納税の猶予に係る期限の確定事由には該当せず、引き続き納税猶予の特例の適用を受けることができる。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第4項第15号においては、経営贈与承継期間内に、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社の株式等が非上場株式等に該当しないこととなった場合には、その該当しないこととなった日から2月を経過する日(その該当しないこととなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日をいう。)に納税の猶予に係る期限が到来することとされている。
  • 2  ところで、ここでいう非上場株式等とは、措置法第70条の7第2項第2号及び措置法規則第23条の9第6項並びに同条第7項において、会社の株式等のすべてが、次に掲げる要件を満たすものをいうこととされている。
     すなわち、株式会社の株式については、
    • (1) 会社の株式のすべてが金融商品取引所に上場されていないこと。
    • (2) 会社の株式のすべてが金融商品取引所への上場の申請がされていないこと。
    • (3) 会社の株式のすべてが金融商品取引所に類するものであって外国に所在するものに上場がされていないこと又は当該上場の申請がされていないこと。
    • (4) 会社の株式のすべてが店頭売買有価証券登録原簿に登録がされていないこと又は当該登録の申請がされていないこと。
    • (5) 会社の株式のすべてが店頭売買有価証券登録原簿に類するものであって外国に備えられるものに登録がされていないこと又は登録の申請がされていないこと。
     とされている(措規23の9丸6)。また、合名会社、合資会社又は合同会社の出資については、上記(3)及び(5)を準用することとされている(措規23の9丸7)。
  • 3  問について、経営贈与承継期間内に認定贈与承継会社について上場の申請がなされた場合には、上記2にいう非上場株式等に該当しないこととなるため、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当する。なお、経営贈与承継期間経過後は、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当しない。
     他方、当該認定贈与承継会社の特別子会社については、経営贈与承継期間及び経営贈与承継期間経過後のいずれの期間において上場の申請がなされたとしても納税の猶予に係る期限の確定事由には該当しない。

(参考) 措置通70の7−25《非上場株式等に該当しないこととなった場合等の意義》

問31 認定贈与承継会社等が風俗営業会社となった場合

(問) 贈与税の納税猶予の特例の適用に係る認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社が風俗営業会社となった場合、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当するのか。

(答)

 認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社が経営贈与承継期間内に風俗営業会社となった場合には、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当する。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第4項第16号においては、特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社が風俗営業会社(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律122号)(以下「風営法」という。)第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社をいう。以下同じ。)に該当することとなった場合には、その該当することとなった日から2月を経過する日(その該当することとなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継受贈者が死亡した場合には、当該経営承継受贈者の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継受贈者の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日をいう。)に納税の猶予に係る期限が到来することとされている。
  • 2  ところで、風営法上、「性風俗関連特殊営業」とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業をいうこととされており(風営法2丸5)、これらの営業を営もうとする者は、公安委員会に一定の届出をしなければならないこととされている(風営法27、31の2、31の7、31の12、31の17)。
  • 3  問について、認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社が経営贈与承継期間内に風俗営業会社となった場合には、納税の猶予に係る期限の確定事由に該当する。
     なお、経営贈与承継期間経過後において当該認定贈与承継会社又は当該認定贈与承継会社の特別子会社が風俗営業会社になったとしても、納税の猶予に係る期限の確定事由には該当せず、引き続き納税猶予の特例の適用を受けることができる。

(参考) 措置通70の7−26《風俗営業会社に該当することとなった日の意義等》