問12 贈与税の納税猶予の特例の適用要件:役員である期間の意義

(問) 子Aは、父から甲株式会社の株式の贈与を受けた。
 子Aは、贈与を受けた日の7年前に甲株式会社の役員に就任した以後、次のとおり、合計4年間以上、同社の役員に就いている。この場合に、子Aは贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができるか。

(子Aが役員であった期間等の状況)

  • 平成14年7月 甲株式会社の取締役に就任
  • 平成18年7月 甲株式会社の子会社である(乙社)の代表取締役社長に就任
  • 平成18年7月 甲株式会社の取締役を退任
  • 平成20年7月 再び、甲株式会社の取締役に就任
  • 平成21年8月 父から甲株式会社の株式の贈与を受ける。
    なお、贈与の日現在、甲株式会社の代表取締役社長である。

(答)

 子Aについては、贈与の日からさかのぼって3年目の応当日から当該贈与の日までの間(以下「直近3年間」という。)において認定贈与承継会社の役員でない期間があるため、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。

(解説)

  • 1 措置法第70条の7第2項第3号ヘにおいては、経営承継受贈者の要件として「当該個人が、当該贈与の日まで引き続き3年以上にわたり当該認定贈与承継会社の役員その他の地位として財務省令で定めるものを有していること。」と規定されている。
  • 2 したがって、当該個人が経営承継受贈者に該当するためには、贈与の日の直近3年間、継続して、当該地位を有しなければならないこととなる。
  • 3 問について、子Aは、過去に通算して4年間以上、甲株式会社の役員に就いているが、贈与の日の直近3年間継続して甲株式会社の役員に就いていないことから、措置法第70条の7第2項第3号ヘの要件を満たしておらず、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。
  • 4 なお、「役員その他の地位として財務省令で定めるもの」とは、認定贈与承継会社が株式会社である場合には取締役、会計参与又は監査役をいい、持分会社である場合には業務を執行する社員をいう(措規23の9丸10)ことから、例えば、直近3年間のうち1年は監査役、残りの2年は取締役であっても当該要件を充足する。

(参考) 措置通70の7−13《役員である期間の意義》

問13 贈与税の納税猶予の特例の適用要件等の判定対象に含まれる株式等の種類

(問) 甲株式会社は、完全議決権株式等(議決権に制限のない株式等をいう。以下同じ。)、一部制限株式等(議決権を行使できる事項の一部について制限がある株式等及び議決権を行使できる事項の一部について制限がある株主等が保有する株式等をいう。以下同じ。)、完全無議決権株式等(議決権を行使できる事項の全部について制限がある株式等及び議決権を行使できる事項の全部について制限がある株主等が保有する株式等をいう。以下同じ。)の3種類の株式等を発行している。この場合、次に掲げる贈与税の納税猶予の特例の適用要件等を判定するに当たり、その対象に含まれる株式等はそれぞれどの種類の株式等か。

  • (1) 贈与税の納税猶予の特例の対象となる株式等の範囲
  • (2) 贈与税の納税猶予の特例の対象となる株式等の限度数又は限度金額
  • (3) 措置法第70条の7第2項第3号ハ、措置法施行令第40条の8第1項第1号、同条第6項及び同条第9項、租税特別措置法施行規則(以下「措置法規則」という。)第23条の9第32項第1号に規定する「総株主等議決権数の100分の50を超える数」の判定に含まれる株式等
  • (4) 措置法第70条の7第2項第3号ニ、措置法施行令第40条の8第1項第2号、措置法規則第23条の9第32項第2号における「議決権の数」の判定に含まれる株式等

(答)

 次の表のとおりとなる。

  完全議決権株式等 一部制限株式等 完全無議決権株式等
(1)の対象 × ×
(2)の対象 × ×
(3)の対象 ×
(4)の対象 ×

(注) 上記表は、(1)から(4)までの要件等の判定に当たり、判定の対象となり得る株式の種類を示したものである。したがって、贈与税の納税猶予の特例の適用に当たっては、他の要件の検討も必要であることに留意する。

(参考) 措置通70の7−1《贈与税の納税猶予の対象となる非上場株式等の意義》、70の7−12《経営承継受贈者を判定する場合等の議決権の数の意義》

問14 贈与者の同族内筆頭株主等要件

(問) 株式の贈与直前における会社の株主構成が次に掲げる場合において、贈与者である父は、それぞれ「同族内筆頭株主等要件」(措令40の8丸1二)を満たしているか。

  • (1) 甲株式会社の株主構成
    株主 保有株数(順位)
    父(贈与者) 400株(1位)
    子(受贈者) 150株(3位)
    父の弟 300株(2位)
    父の知人 50株(4位)
    合計 900株
  • (2) 乙株式会社の株主構成
    株主 保有株数(順位)
    父(贈与者) 300株(2位)
    子(受贈者) 400株(1位)
    父の弟 150株(3位)
    父の知人 50株(4位)
    合計 900株
  • (3) 丙株式会社の株主構成
    株主 保有株数(順位)
    父(贈与者) 150株(3位)
    子(受贈者) 250株(2位)
    父の弟 100株(4位)
    父の知人 400株(1位)
    合計 900株
  • (注1) いずれの会社においても「父の知人」は、父又は子と特別の関係がある者(措令40の8丸9)に該当しない。また、上記の株式はすべて完全議決権株式等とする。
  • (注2) 贈与者である父は、いずれの会社についても贈与の直前において会社の代表権を有していたものとする。

(答)

 (1)から(3)のいずれについても、「同族内筆頭株主等要件」を満たしている。

(解説)

  • 1  贈与税の納税猶予の特例に係る贈与者の要件の一つに、措置法施行令第40条の8第1項第2号において「当該贈与の直前(当該個人が当該贈与の直前において当該認定贈与承継会社の代表権を有しない場合には、当該個人が当該代表権を有していた期間内のいずれかの時及び当該贈与の直前)において、当該個人が有する当該認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、当該個人と法第70条の7第2項第3号ハに規定する特別の関係がある者(当該認定贈与承継会社の同号に規定する経営承継受贈者(以下この条において「経営承継受贈者」という。)となる者を除く。)のうちいずれの者が有する当該非上場株式等に係る議決権の数をも下回らないこと。」がある(以下この要件を「同族内筆頭株主等要件」という。)。
  • 2  問の(1)については、父(贈与者)は、父(贈与者)と当該父(贈与者)と措置法施行令第40条の8第9項に規定する特別の関係がある者(以下「特別の関係がある者」という。)の中で筆頭株主であることから同族内筆頭株主等要件を満たしている。
  • 3  問の(2)については、父(贈与者)は、父(贈与者)と当該父(贈与者)と特別の関係がある者の中で受贈者である子に次ぐ株主であるが、措置法施行令第40条の8第1項第2号のかっこ書において「当該認定贈与承継会社の同号に規定する経営承継受贈者となる者を除く。」としていることから、同族内筆頭株主等要件を満たしている。
  • 4  問の(3)については、丙社内全体の中での筆頭株主は父の知人であるが、父(贈与者)と当該父(贈与者)と特別の関係がある者の中で、父は経営承継受贈者となる子に次ぐ株主であることから、同族内筆頭株主等要件を満たしている。

(参考) 措置通70の7−12《経営承継受贈者を判定する場合等の議決権の数の意義》

問15 同族過半要件及び同族内筆頭株主等要件:会社が組織変更している場合

(問) 子Aは、父から甲株式会社の株式を贈与により取得をした。
 ところで、甲株式会社は、2年前に組織変更により、持分会社から株式会社に組織変更したところであり、贈与者である父が会社の代表権を有していた時期は、組織変更前の会社の時だけであり、株式会社になってからは代表権を有したことがない。
 この場合、措置法施行令第40条の8第1項第1号に規定する同族過半要件及び同項第2号に規定する同族内筆頭株主等要件を満たさないことになるのか。

(答)

 贈与者である父が代表権を有していた時が、組織変更前の会社の時であったとしても、会社は組織変更の前後を通じて同一人格を有するものと解されている(最判昭46.6.29)ことから、贈与の直前及び組織変更前の会社の代表権を有していた時において、措置法施行令第40条の8第1項第1号に規定する要件(以下「同族過半要件」という。)及び同項第2号に規定する同族内筆頭株主等要件を満たす場合には、同項各号の要件を満たすこととなる。

(解説)

  • 1  会社が組織を変更するに当たっては、登記の技術上の問題から、登記簿上、旧会社の解散及び新会社の設立の各登記を経ることとなるが、会社自身は、組織変更の前後を通じて同一人格を有するものと解されている(最判昭46.6.29)。
  • 2  会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の商法の下では、組織変更は、株式会社と有限会社間、又は合名会社と合資会社間でのみ認められていたが、会社法の制定により、株式会社と持分会社(合名会社、合資会社、合同会社をいう。以下同じ。)間の組織変更が可能になった。また、従来は組織変更とされていた持分会社間の組織の変更については、会社法の制定により、「組織変更」ではなく、定款の変更による持分会社の「種類の変更」と位置づけられることとなった。
  • 3  組織変更があった場合、会社法第920条の規定により、会社は、組織変更前の会社について解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならないとされているが、その組織変更により会社の人格が変わるものではない。
  • 4  また、持分会社が他の種類の持分会社となったときは、会社法第919条の規定により、会社は、種類の変更前の持分会社について解散の登記をし、種類の変更後の持分会社については設立の登記をしなければならないとされているが、会社の種類の変更は定款の変更に過ぎず、会社の同一性は継続する。

問16 資産保有型会社の判定:一棟の建物

(問) 会社が所有する建物で、自己使用の部分とそれ以外の部分がある場合に、資産保有型会社に該当するか否かの判定において、それぞれの部分の建物の価額はどのように計算すればよいのか。

(答)

 一棟の建物の価額を床面積割合その他合理的と認められる割合により按分した価額により、それぞれの部分の価額を計算する。

(解説)

  • 1  措置法第70条の7第2項第8号に規定する「資産保有型会社」の判定において、同号のロに規定する「特定資産」には、円滑化法規則第1条第12項ロに規定する「当該会社が現に自ら使用していない不動産」が含まれることとされている。
  • 2  ここにいう「現に自ら使用していない不動産」とは、遊休地が典型例であるが、例えば、第三者に賃貸しているものもこれに該当する。したがって、会社が自らの事務所、工場などに使用している不動産以外のものはすべて「自ら使用していない不動産」に該当することとなる。
  • 3  なお、不動産賃貸業を主たる事業とする会社の場合、形式的には資産保有型会社に該当する場合があったとしても、措置法施行令第40条の8第5項の要件に該当しない場合は、事業実態がある会社として納税猶予の特例の適用を受けることができる。
  • 4  問について、資産保有型会社であるかどうかを判定する上で、一棟の建物について自ら使用している部分とそれ以外の部分がある場合に、それぞれの部分の建物の価額をどのように算出するのかということが問題となるが、円滑化法規則の中で、特にその按分方法等は定められていないことから、その価額の算出方法については、床面積の割合その他合理的と認められる方法により按分することが適当であると考えられる。
  • 5  なお、上記については、会社が資産保有型会社のうち一定の会社に該当したことによる納税の猶予に係る期限の確定事由に該当するか否かを判定する場合も同様である。また、その場合に、形式的に資産保有型会社に該当したとしても、措置法施行令第40条の8第21項の要件に該当しない場合は、事業実態がある会社として、引き続き納税猶予の特例の適用を受けることができる(納税の猶予に係る期限は確定しない)ことに留意する。

問17 資産保有型会社の判定:帳簿価額

(問) 資産保有型会社に該当するか否かを判定する場合の会社の資産の帳簿価額とは、会社の貸借対照表上に計上されている資産の価額でよいのか。

(答)

 資産保有型会社に該当するか否かを判定する場合の会社の資産の帳簿価額とは、会社の貸借対照表上に計上されている資産の価額による。

(解説)

  • 1  贈与税の納税猶予の特例、相続税の納税猶予の特例又は贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(以下「非上場株式等についての納税猶予の特例」という。)の適用に当たっては、この特例の適用に係る会社が、円滑化法規則第6条第1項第7号、同項第8号又は同規則第13条に規定する要件を満たしていることについて経済産業大臣の認定又は確認を受けることが前提とされている。
  • 2  経済産業大臣の認定又は確認において、会社が円滑化法規則第1条第12項に定められた資産保有型会社に該当するか否かを判定する場合の会社の資産の帳簿価額は、会社の貸借対照表上に計上されている価額により判定することとされている(中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル)。
  • 3  非上場株式等についての納税猶予の特例の適用に当たり、会社が、措置法第70条の7第2項第1号に規定する認定贈与承継会社、同法第70条の7の2第2項第1号に規定する認定承継会社及び同法第70条の7の4第2項第1号に規定する認定相続承継会社に該当するか否かを判定する場合の要件の一つに、贈与の時又は相続開始の時において、会社が資産保有型会社のうち一定の会社に該当しないことという要件があるが、ここにいう資産保有型会社の要件と円滑化法規則第1条第12項に定められた資産保有型会社の要件とは同じである。
  • 4  したがって、非上場株式等についての納税猶予の特例の適用に当たり、会社が資産保有型会社に該当するかどうかを判定する場合の会社の資産の帳簿価額は、会社の貸借対照表上に計上されている価額(減価償却資産については減価償却後の価額)によることとなる。
  • 5  なお、上記については、会社が資産保有型会社のうち一定の会社に該当したことによる納税の猶予に係る期限の確定事由に該当するか否かを判定する場合も同様である。

問18 医療法人の出資

(問) 医療法人の出資について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることはできるのか。

(答)

 医療法人の出資について、贈与税の納税猶予の特例(措法70の7丸1)の適用を受けることはできない。
 なお、このことは、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)及び贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4丸1)の適用関係においても同様である。

(解説)

  • 1  医療法人は、医療法により認可、設立された法人であり、「会社」ではない。
  • 2  また、医療法人は、贈与税の納税猶予の特例(措法70の7丸1)、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)及び贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4丸1)の対象とされる中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第1条第2項に規定する「中小企業者」にも該当しないことから、これら特例の適用の前提となる円滑化法規則第7条第2項又は第3項の規定に基づく経済産業大臣の認定又は同規則第13条第1項の規定に基づく経済産業大臣の確認を受けることはできない。
  • 3  したがって、医療法人の出資について、贈与税の納税猶予の特例(措法70の7丸1)、相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2丸1)及び贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の特例(措法70の7の4丸1)の適用を受けることはできない。

問19 限度数要件:(1)発行済株式の総数の3分の2に端数が生じる場合

(問) 株式の贈与の直前における会社の株主構成が次に掲げる場合において、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるためには、父から子へ何株贈与しなければならないのか。

株主 保有株数
父(贈与者) 500株
子(受贈者) 200株
父の弟 300株
発行済株式の総数 1000株

(注) 上記の株式はすべて完全議決権株式等とする。

(答)

 父(贈与者)は、子(受贈者)に対し467株以上の贈与をしなければならない。

<計算根拠>
  • 丸1 会社の発行済株式総数の3分の2の計算
     1,000株×2/3=666.6666・・・株
  • 丸2 贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるために必要な贈与株式数の算定
     父(贈与者)500株+子(受贈者)200株≧666.6666・・・
     666.6666株−子(受贈者)200株=466.6666・・・ (注) 発行済株式の総数の3分の2(受贈者が既にこの会社の株式を有している場合には、当該有している株式の数を控除した残数)に1株未満の端数があるときは、その端数を切り上げる(措令40の8丸2)。
  • 丸3 したがって、父(贈与者)は、子(受贈者)に対し467株以上の贈与をしなければならない。

(解説)

  • 1  贈与税の納税猶予の特例とは、経営承継受贈者が、贈与により、認定贈与承継会社の非上場株式等を当該認定贈与承継会社の代表権(制限が加えられた代表権を除く。)を有していた者(贈与者)から全部又は一定数等以上取得し、その会社を経営していく場合には、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その会社の発行済株式等の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分として一定の数等までを限度として、この特例の適用を受ける株式等に対応する贈与税の全額の納税が猶予されるものである。
  • 2  この特例の適用を受けるためには、贈与の直前に贈与者及び経営承継受贈者が有していた当該認定贈与承継会社の株式等(議決権に制限のないものに限る。)の数等の態様により、経営承継受贈者は、次に掲げる数等の贈与を受けなければならないこととされている。
    • (1) A+B≧C×2/3の場合は、C×2/3−B以上の贈与
    • (2) A+B<C×2/3の場合は、Aの全部の贈与
    (注)上記算式中の符号は次のとおり。
    • Aは、贈与者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Bは、経営承継受贈者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Cは、認定贈与承継会社の発行済株式等の総数又は総額
  • 3  問について、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるためには、上記2の(1)に係る贈与をしなければならないが、計算の結果、1株未満の端数が生じることとなる場合には、措置法施行令第40条の8第2項の規定により、その端数を切り上げることとされている。
     したがって、問について、父(贈与者)は、子(受贈者)に対し467株以上の贈与をしなければならない。
  • 4  なお、この場合において、子が贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式の数は、467株である(措令40の8丸2)。

(参考) 措置通70の7−2《特例受贈非上場株式等の意義等》

問20 限度数要件:(2)一部制限株式等の保有がある場合

(問) 株式の贈与の直前における会社の株主構成が次に掲げる場合において、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるためには、父から子へ何株贈与しなければならないのか。

株主 保有株数等
完全議決権株式等 一部制限株式等
父(贈与者) 450株 50株
子(受贈者) 100株 0株
父の弟 350株 0株
発行済株式の総数 900株 50株

(答)

 450株(父が保有する完全議決権株式等のすべて)を子へ贈与しなければならない。

<計算根拠>
  • 丸1 会社の発行済株式総数の3分の2の計算
     900株(議決権に制限のないものに限られる。)×2/3=600株
  • 丸2 贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるために必要な贈与株式等の数の算定
     父(贈与者)450株+子(受贈者)100株<600株となるため、子が贈与税の納税猶予の特例の適用を受けるためには、父(贈与者)は、自身が保有する完全議決権株式等のすべて(450株)を子(受贈者)へ贈与しなければならない。

(解説)

  • 1  贈与税の納税猶予の特例とは、経営承継受贈者が、贈与により、認定贈与承継会社の非上場株式等を当該認定贈与承継会社の代表権(制限が加えられた代表権を除く。)を有していた者(贈与者)から全部又は一定数等以上取得し、その会社を経営していく場合には、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その会社の発行済株式等の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分として一定の数等までを限度として、この特例の適用を受ける株式等に対応する贈与税の全額の納税が猶予されるものである。
  • 2  この特例の適用を受けるためには、贈与の直前に贈与者及び経営承継受贈者が有していた当該認定贈与承継会社の株式等(議決権に制限のないものに限る。)の数等の態様により、経営承継受贈者は、次に掲げる数等の贈与を受けなければならないこととされている。
    • (1) A+B≧C×2/3の場合は、C×2/3−B以上の贈与
    • (2) A+B<C×2/3の場合は、Aの全部の贈与
    (注)上記算式中の符号は次のとおり。
    • Aは、贈与者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Bは、経営承継受贈者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Cは、認定贈与承継会社の発行済株式等の総数又は総額
  • 3  この場合に、上記2のA、B、Cの株式等は、措置法施行令第40条の8第2項の規定により、議決権に制限のない株式等に限られることから、株主が保有する一部制限株式等については考慮する必要はなく、完全議決権株式等の数のみにより計算を行うこととなる。
     したがって、問については、父(贈与者)自身が保有する完全議決権株式等のすべて(450株)を子(受贈者)へ贈与しなければならない。

(参考) 措置通70の7−2《特例受贈非上場株式等の意義等》

問21 限度数要件:(3)同一年中に異なる贈与者から同一の認定贈与承継会社に係る株式の取得をした場合

(問) 子Aは、同一年中に認定贈与承継会社である甲株式会社の株式を父から300株、母から200株それぞれ贈与により取得をした。次に掲げるそれぞれのケースにおいて、子Aが贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式の数は何株か。
 なお、この会社の株式はすべて完全議決権株式等である。

【発行済株式の総数等の状況】

・甲株式会社の発行済株式の総数 900株
・贈与前の父・母・子それぞれの保有株式数
 イ 父 300株
 ロ 母 200株
 ハ 子A 200株

【贈与等の状況】

ケース1 【贈与後の子Aの保有株式数】
 イ.平成×1年2月 父から300株贈与により取得 (500株)
 ロ.平成×1年3月 母から200株贈与により取得 (700株)
ケース2
 イ.平成×3年5月 母から200株贈与により取得 (400株)
 ロ.平成×3年6月 自己資金により200株購入 (600株)
 ハ.平成×3年7月 父から300株贈与により取得 (900株)

(答)

  • (ケース1のイ)
    • 丸1 300株(父)+200株(子A)<900株×2/3
       したがって、父は子Aに対し、父が保有する株式300株のすべてを贈与しなければならない。
    • 丸2 ケース1のイについて、子Aは、この300株を限度として贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。
  • (ケース1のロ)
    • 丸1 200株(母)+500株(子A)≧900株×2/3
       したがって、母は子Aに対し、母が保有する株式200株のうち、100株(900株×2/3−500株=100株)以上の贈与をしなければならない。
    • 丸2 ケース1のロについて、子Aは、この100株を限度として贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる。
  • (ケース2のイ)
     ケース2のイについては、母について措置法施行令第40条の8第1項第2号に規定する「同族内筆頭株主等要件」を満たしていないことから、子Aは、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。
  • (ケース2のハ)
     300株(父)+600株(子A)≧900株×2/3
     この場合、子Aは、既に600株を有していることから、900株×2/3−600株=0株となり、父から贈与により取得をした株式について贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることはできない。

(解説)

  • 1  贈与税の納税猶予の特例とは、経営承継受贈者が、贈与により、認定贈与承継会社の非上場株式等を当該認定贈与承継会社の代表権(制限が加えられた代表権を除く。)を有していた者(贈与者)から全部又は一定数等以上取得し、その会社を経営していく場合には、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その会社の発行済株式等の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分として一定の数等までを限度として、この特例の適用を受ける株式等に対応する贈与税の全額の納税が猶予されるものである。
  • 2  この特例の適用を受けるためには、贈与の直前に贈与者及び経営承継受贈者が有していた当該認定贈与承継会社の株式等(議決権に制限のないものに限る。)の数等の態様により、経営承継受贈者は、次に掲げる数等の贈与を受けなければならないこととされている。
    • (1) A+B≧C×2/3の場合は、C×2/3−B以上の贈与
    • (2) A+B<C×2/3の場合は、Aの全部の贈与
    (注)上記算式中の符号は次のとおり。
    • Aは、贈与者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Bは、経営承継受贈者が贈与の直前に有していた認定贈与承継会社の株式等の数等
    • Cは、認定贈与承継会社の発行済株式等の総数又は総額
  • 3  この場合に、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けることができる株式等の数又は金額は、上記2の(1)の場合には(C×2/3−B)まで、上記2の(2)の場合にはAの数又は金額までとされている。
  • 4  また、この判定において、同一年中に、異なる贈与者から同一の認定贈与承継会社に係る非上場株式等を贈与により取得をした場合、異なる贈与者から複数の認定贈与承継会社に係る非上場株式等を贈与により取得をした場合及び同一の贈与者から複数の認定贈与承継会社に係る非上場株式等を贈与により取得をした場合には、それぞれの認定贈与承継会社及び贈与ごとに特例対象贈与及び特例受贈非上場株式等に該当するかどうかの判定を行うこととなる。

(参考) 措置通70の7−2《特例受贈非上場株式等の意義等》