11 相続税の額に相当する担保(70の7の2−11)

70の7の2−11 措置法第70条の7の2第1項に規定する「当該相続税の額に相当する担保」とは、納税猶予に係る相続税の本税の額と当該本税に係る納税猶予期間中の利子税の額との合計額に相当する担保をいうことに留意する。
 なお、この場合の当該本税に係る猶予期間中の利子税の額は、当該相続に係る相続税の申告書の提出期限における経営承継相続人等の平均余命年数を納税猶予期間として計算した額によるものとして取り扱うことに留意する。

(新設)
(説明)
 70の7―8(贈与税の額に相当する担保)の説明を参照。

12 持分会社の持分が担保提供された場合(70の7の2−12)

70の7の2−12 措置法第70条の7の2第6項本文により認定承継会社(持分会社に限る。)の持分を担保として提供を受け質権を設定した場合には、納税猶予期間中においては、当該持分から生じる配当その他の利益処分については、税務署長はその支払い又は引渡し等を受けないことに留意する。

(新設)
(説明)
 70の7―9(持分会社の持分が担保提供された場合)の説明を参照。

13 常時使用従業員の意義(70の7の2−13)

70の7の2−13 措置法第70条の7の2第2項第1号イに規定する常時使用従業員の意義については、70の7−10((常時使用従業員の意義))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−10(常時使用従業員の意義)の説明を参照。

14 特例の対象とならない資産保有型会社又は資産運用型会社の意義(70の7の2−14)

70の7の2−14 措置法第70条の7の2第2項第1号ロの要件を判定する場合において、同項第8号に規定する資産保有型会社に該当するかの判定は、相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日から当該相続に係る相続税の申告期限までの間のいずれかの日において次の(1)に掲げる算式を満たすかどうかにより行い、同項第9号に規定する資産運用型会社に該当するかの判定は、相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日から当該相続に係る相続税の申告期限までの間に終了するいずれかの事業年度において次の(2)に掲げる算式を満たすかどうかにより行うのであるが、これらの会社のうち措置法令第40条の8の2第7項第1号及び第2号の要件のすべてに該当するものに係る非上場株式等が、措置法第70条の7の2第1項の適用対象とならないことに留意する。

(1) A+C分のB+Cは100分の70以上

 A=当該いずれかの日における当該会社の資産の帳簿価額の総額
 B=当該いずれかの日における当該会社の特定資産(現金、預貯金その他これらに類する資産として措置法規則第23条の10第13項((非上場株式等についての相続税の納税猶予))の規定により準用する措置法規則第23条の9第14項に規定するものをいう。以下同じ。)の帳簿価額の合計額
 C=当該いずれかの日以前5年以内において経営承継相続人等及び当該経営承継相続人等の同族関係者(措置法令第40条の8の2第11項に規定する者をいう。)がその会社から受けた次のa及びbに掲げる額の合計額

a 当該会社から受けた当該会社の株式等に係る剰余金の配当又は利益の配当(相続の開始の時前に受けたものを除く。)の額

b 当該会社から支給された給与(相続の開始の時前に支給されたものを除く。)の額のうち、法人税法第34条又は第36条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなる金額

(2) A分のBは100分の75以上

 A=当該いずれかの事業年度における総収入金額
 B=当該いずれかの事業年度における特定資産の運用収入の合計額

(新設)
(説明)
 70の7−11(特例の対象とならない資産保有型会社又は資産運用型会社の意義)の説明を参照。

15 経営承継相続人等を判定する場合等の議決権の数の意義(70の7の2−15)

70の7の2−15 措置法第70条の7の2第2項第3号ハ及びニの要件を判定する場合の同号ハの「議決権の数」及び「総株主等議決権数」並びに同号ニの「議決権の数」の意義については、70の7−12((経営承継受贈者を判定する場合等の議決権の数の意義))を準用する。
 この場合において、同条第2項第3号ハ及びニの要件の判定は、相続の開始直後の株主等の構成により行うことに留意する。

(新設)
(説明)
 70の7−12(経営承継受贈者を判定する場合等の議決権の数の意義)の説明を参照。

16 特例非上場株式等に係る認定承継会社が2以上ある場合の納税猶予分の相続税額の計算(70の7の2−16)

70の7の2−16 特例非上場株式等に係る認定承継会社が2以上ある場合における措置法第70条の7の2第2項第5号に規定する納税猶予分の相続税額の計算は、次の順により行うことに留意する。
 この場合において、経営承継相続人等が2以上あるときにおける当該計算は、それぞれの経営承継相続人等ごとに行うことに留意する。

1 当該特例非上場株式等に係る経営承継相続人等が被相続人から同条第1項の規定の適用に係る相続又は遺贈により取得したすべての認定承継会社の当該特例非上場株式等の価額の合計額(債務控除後の金額)を当該経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなして、同条第2項第5号の規定により計算する(措置法令第40条の8の2第14項の規定による100円未満の端数処理は行わない。)。

2 措置法令第40条の8の2第16項の規定により、当該特例非上場株式等に係る認定承継会社の異なるものごとの納税猶予分の相続税額を計算する(同項の規定による100円未満の端数処理を行う。)。

3 上記2により算出されたそれぞれの納税猶予分の相続税額の合計が、当該経営承継相続人等に係る納税猶予分の相続税額となる。

(新設)
(説明)
1 特例非上場株式等に係る認定承継会社が2以上ある場合における措置法第70条の7の2第2項第5号に規定する納税猶予分の相続税額の計算に関する規定には、措置法令第40条の8の2第15項及び第16項の2つの規定があるが、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける者に係る納税猶予分の相続税額の総額を計算するに当たっては、同条第15項の規定のみにより計算することも可能であることから、同項と同条第16項との関係については疑義が生ずるところである。
2 仮に、同条第16項の規定が、納税猶予分の相続税額を計算する場合には適用がなく納税猶予適用後の確定税額を計算する場合にのみ適用されると解した場合には、同項の端数処理により切り捨てられた金額は(特例非上場株式等の全部を譲渡したときでも)相続人等の死亡時まで猶予税額として残ることとなり不合理な状態になる。また、同項においては「前項の場合において」と規定されていることから、同項の規定は、納税猶予分の相続税額の総額を計算する場合にも適用があると解することが相当である。
3 また、同条第16項第1号の金額を算定する場合には、同号においては「前項の規定を適用して計算した納税猶予分の相続税額」と規定されていることから、100円未満の端数処理は行わない金額となる。
4 通達においては、上記2及び3の内容を納税猶予分の相続税額の計算の順序として示すことにより留意的に明らかにするとともに、認定承継会社が2以上ある場合において経営相続承継相続人等が2人以上いるときには、各人の納税猶予税額の計算は、それぞれの経営承継相続人等ごとに上記2及び3の計算を行うこととなる。通達の後段ではそのことを留意的に明らかにした。具体的な計算例を示すと次のとおりとなる。
【計算例】
 相続人は子A及び子Bの2人であり、それぞれの取得財産は次のとおりである。
相続人の氏名 (合計) 子A 子B
取得財産の価額 1,400,000,000 800,000,000 600,000,000
(内訳) 甲社株式 100,000,000 100,000,000  
乙社株式 200,000,000 200,000,000  
丙社株式 400,000,000   400,000,000

(注) 債務及び葬式費用、各種税額控除はないものと仮定。

1 甲社の発行済株式総数等の状況

1 甲社の発行済株式総数
2 子Aが相続により取得した甲社の株式数
3 子Aが相続の開始前より保有する甲社の株式数
4 相続の開始の時における甲社の株式の価額

40,000株
20,000株
0株
5,000円/株

2 乙社の発行済株式総数等の状況

1 乙社の発行済株式総数
2 子Aが相続により取得した乙社の株式数
3 子Aが相続の開始前より保有する乙社の株式数
4 相続の開始の時における乙社の株式の価額

40,000株
20,000株
10,000株
10,000円/株

3 丙社の発行済株式総数等の状況

1 丙社の発行済株式総数
2 子Bが相続により取得した丙社の株式数
3 子Bが相続の開始前より保有する丙社の株式数
4 相続の開始の時における丙社の株式の価額

60,000株
40,000株
10,000株
10,000円/株

ケース1 子Aが甲社及び乙社の株式について納税猶予の適用を受ける場合(特例非上場株式等に係る会社が2社以上ある場合)
【子Aに係る納税猶予分の相続税額の計算】
T 甲社の株式のうち特例非上場株式等に該当する株式数(70の7の2−2(2)参照)
 20,000株(12)+0株(13)<40,000株(11)×2/3
 ∴ 特例非上場株式等の株式数 20,000株(a)
U 乙社の株式のうち特例非上場株式等に該当する株式数(70の7の2−2(1)参照)
 20,000株(22)+10,000株(23)≧40,000株(21)×2/3  40,000株(21)×2/3−10,000株=16,666.666…株
 ∴ 特例非上場株式等の株式数 16,667株(1株未満切上げ)(b)
V 通達の1の計算

(1) 子Aの相続税の課税価格とみなされる金額の計算
甲社に係る特例非上場株式等の価額
 20,000株(a)×5,000円(14)=100,000,000円
乙社に係る特例非上場株式等の価額
 16,667株(b)×10,000円(24)=166,670,000円
特例非上場株式等の価額の合計額(課税価格とみなされる金額)
 100,000,000円+166,670,000円=266,670,000円(c)

(2) 266,670,000円(c)の金額に基づく子Aの算出税額の計算
266,670,000円(c)+600,000,000円(子Bの取得財産の価額)−70,000,000円(基礎控除額)=796,670,000円
∴ 266,670,000円(c)の金額に基づく子Aの算出税額 93,642,348円(d)

(3) 266,670,000円(c)×20%の金額に基づく子Aの算出税額の計算
266,670,000円(c)×20%+600,000,000円(子Bの取得財産の価額)−70,000,000円(基礎控除額)=583,334,000円
∴ 266,670,000円(c)×20%の金額に基づく子Aの算出税額 16,272,317円(e)

(4) d−eの計算
93,642,348円−16,272,317円=77,370,031円(f)(端数処理は行わない)

W 通達の2の計算

(1) 甲社に係る納税猶予税額の計算
77,370,031円(f)×100,000,000円(甲社に係る特例非上場株式等の価額)/266,670,000円(特例非上場株式等の価額の合計額)=29,013,398円
∴ 甲社に係る納税猶予税額 29,013,300円(100円未満切捨て)(g)

(2) 乙社に係る納税猶予税額の計算
77,370,031円(f)×166,670,000円(乙社に係る特例非上場株式等の価額)/266,670,000円(特例非上場株式等の価額の合計額)=48,356,632円
∴ 乙社に係る納税猶予税額 48,356,600円(100円未満切捨て)(h)

X 通達の3の計算(子Aに係る納税猶予分の相続税額の計算)
 29,013,300円(g)+48,356,600円(h)=77,369,900円
ケース2 子Aが甲社及び乙社の株式を子Bが丙社の株式について納税猶予の適用を受ける場合(経営承継相続人等が2人以上いる場合)
【子Aに係る納税猶予分の相続税額の計算】
 ケース1に同じ。
【子Bに係る納税猶予分の相続税額の計算】
T 丙社の株式のうち特例非上場株式等に該当する株式数(70の7の2−2(1)参照)
40,000株(32)+10,000株(33)≧60,000株(31)×2/3
60,000株(31)×2/3−10,000株=30,000株
∴ 特例非上場株式等の株式数 30,000株(i)
U 通達の1の計算

(1) 子Bの相続税の課税価格とみなされる金額
丙社に係る特例非上場株式等の価額(課税価格とみなされる金額)
 30,000株(i)×10,000円(34)=300,000,000円

(2) 300,000,000円(j)の金額に基づく子Bの算出税額の計算
300,000,000円(j)+800,000,000円(子Aの取得財産の価額)−70,000,000円(基礎控除額)=1,030,000,000円
∴ 300,000,000円(j)の金額に基づく子Bの算出税額 114,818,181円(k)

(3) 300,000,000円(j)×20%の金額に基づく子Bの算出税額の計算
300,000,000円(j)×20%+800,000,000円(子Aの取得財産の価額)−70,000,000円(基礎控除額)=790,000,000円
∴ 300,000,000円(j)×20%の金額に基づく子Bの算出税額 21,000,000円(l)

(4) k−lの計算(=子Bに係る納税猶予分の相続税額の計算)
114,818,181円−21,000,000円=93,818,181円
∴ 子Bに係る納税猶予分の相続税額 93,818,100円(100円未満切捨て)

(注) 納税猶予の適用を受ける会社が子Bについては、丙社1社のみのため通達の2及び3の計算はなく、「k−l」によって計算した金額(100円未満切捨て)が子Bの納税猶予分の相続税額となる。

17 代表権を有しないこととなった場合の意義(70の7の2−17)

70の7の2−17 措置法第70条の7の2第3項第1号に掲げる「代表権を有しないこととなった場合」の意義については、70の7−16((代表権を有しないこととなった場合の意義))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−16(代表権を有しないこととなった場合の意義)の説明を参照。

18 特例非上場株式等の譲渡等の判定(70の7の2−18)

70の7の2−18 措置法第70条の7の2第3項第5号若しくは第6号又は同条第5項の表の第1号若しくは第2号の特例非上場株式等の全部又は一部の同条第3項第5号に規定する譲渡等(以下70の7の2−43までにおいて「譲渡等」という。)があったかどうかの判定は、措置法令第40条の8の2第49項及び第50項の規定により行うことに留意する。

(注) なお、特例非上場株式等を措置法第70条の7の2第16項第2号の規定による贈与をしたかどうかの判定についても上記により行うことに留意する。

(新設)
(説明)
1 措置法第70条の7の2第3項第5号若しくは第6号又は同条第5項の表の第1号若しくは第2号においては、経営承継相続人等が措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けている特例非上場株式等の全部又は一部の譲渡等をした場合には、当該譲渡等をした部分に対応する納税猶予税額の全部又は一部について、その有しないこととなった日から2月を経過する日(その有しないこととなった日から当該2月を経過する日までの間に当該経営承継相続人等が死亡した場合には、当該経営承継相続人等の相続人(包括受遺者を含む。)が当該経営承継相続人等の死亡による相続の開始があったことを知った日の翌日から6月を経過する日をいう。)に納税の猶予に係る期限が到来することとされている。
2 ところで、当該経営承継相続人等が当該譲渡等をした時において当該特例非上場株式等に係る認定承継会社と同一の会社の非上場株式等を有している場合等には、特例非上場株式等の譲渡等をしたのか又は特例非上場株式等ではない当該同一の会社の非上場株式等の譲渡等をしたのか不明であることから、措置法令第40条の8の2第49項では当該認定承継会社の非上場株式等の譲渡等をした場合には、当該特例非上場株式等以外の非上場株式等から先に譲渡等をしたものとみなすこととされている。
3 また、同一の認定承継会社の非上場株式等を異なる被相続人から相続又は遺贈により取得した特例非上場株式等についてそれぞれ措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けている場合の同条第3項及び第5項の規定の適用は、当該被相続人ごとに適用することとなるが、その場合にも上記2と同様の問題があることから、措置法令第40条の8の2第50項では当該特例非上場株式等の譲渡等をした場合には、当該特例非上場株式等のうち先に取得をしたものから順次譲渡等をしたものとみなすこととされている。
4 したがって、通達では、措置法第70条の7の2第3項第5号若しくは第6号又は同条第5項の表の第1号若しくは第2号の特例非上場株式等の全部又は一部の譲渡等があったかどうかの判定は、措置法令第40条の8の2第49項及び第50項の規定により行うことを留意的に明らかにした。
5 また、措置法令第40条の8の2第49項及び第50項においては「第3項及び第5項の規定の適用については」と規定されているため、特例非上場株式等を措置法第70条の7の2第16項第2号の規定による贈与をしたかどうかを判定する場合において、措置法令第40条の8の2第49項及び第50項の規定の適用があるか疑義が生ずるところであるが、当該贈与も措置法第70条の7の2第5項の表の第1号若しくは第2号の特例非上場株式等の全部又は一部の譲渡等に該当することから、当然に措置法令第40条の8の2第49項及び第50項の規定の適用があることとなる(確定の場面では、措置法令第40条の8の2第49項及び第50項の規定の適用があり、免除の場面では当該規定の適用がないと解することは、同一の事象が発生したにもかかわらず、確定の場面及び免除の場面でそれぞれ異なる事象(譲渡等)が発生したととらえることとなり、相互に関連する納税猶予の特例の中で不合理な事態を生じさせる結果となる。)。通達の(注)においてはそのことを留意的に明らかにした。

19 譲渡等をした日の意義(70の7の2−19)

70の7の2−19 措置法第70条の7の2第3項第5号、同項第6号及び同条第5項の表の第2号下欄の「当該譲渡等をした日」の意義については、70の7−18((譲渡等をした日の意義))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−18(譲渡等をした日の意義)の説明を参照。

20 解散等をした場合等の意義(70の7の2−20)

70の7の2−20 措置法第70条の7の2第3項第8号の「解散をした場合」、「解散をした日」、「会社法の規定により解散をしたものとみなされた場合」及び「そのみなされた日」の意義については、70の7−19((解散等をした場合等の意義))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−19(解散等をした場合等の意義)の説明を参照。