1 相続税の納税猶予の対象となる非上場株式等の意義(70の7の2−1)

70の7の2−1 措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等の意義については、70の7−1((贈与税の納税猶予の対象となる非上場株式等の意義))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−1(贈与税の納税猶予の対象となる非上場株式等の意義)の説明を参照。

2 特例非上場株式等の意義(70の7の2−2)

70の7の2−2 措置法第70条の7の2第1項に規定する特例非上場株式等(以下70の7の2−48までにおいて「特例非上場株式等」という。)とは、次に掲げる場合の区分に応じ次に掲げる株式の数又は出資の金額に達するまでの部分をいうことに留意する。

(1) A+B≧C×3分の2の場合
 C×3分の2−B

(2) A+B<C×3分の2の場合
 A

(注)

1 上記算式中の符号は次のとおり。
 Aは、措置法第70条の7の2第2項第3号に規定する経営承継相続人等(以下70の7の2−43までにおいて「経営承継相続人等」という。)が当該相続又は遺贈により取得した同項第1号に規定する認定承継会社(以下70の7の2−48までにおいて「認定承継会社」という。)の非上場株式等(議決権に制限のない株式等に限る。以下70の7の2−2において同じ。)の数又は金額
 Bは、経営承継相続人等が当該相続の開始の直前において有していた認定承継会社の非上場株式等の数又は金額
 Cは、当該相続の開始の時における認定承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の総数又は総額

2 複数の認定承継会社に係る非上場株式等を相続又は遺贈により取得した 場合の特例非上場株式等に該当するかの判定は、それぞれの認定承継会社ごとに行うことに留意する。

3 上記(1)又は(2)により計算された株式の数又は出資の金額のうち、措置法 第70条の7の2第1項に規定する相続税の申告書に同項の規定の適用を受ける旨の記載がある部分が特例非上場株式等に該当することに留意する。

4 上記の(1)により計算されたC×3分の2の数又は金額に1株又は1円未満の端数がある場合には、措置法令第40条の8の2第4項の規定により、その端数は切り上げることに留意する。

(新設)
(説明)
1 措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けるためには、相続又は遺贈により取得をした非上場株式等のうち特例の適用を受けるもの(一定の部分に限る。)として措置法第70条の7の2第1項に規定する相続税の申告書に同項の規定の適用を受ける旨の記載(この特例の適用を受けるものとして記載された非上場株式等を「特例非上場株式等」という。以下同じ。)をし、相続税の申告期限までに当該申告書を提出する必要がある。
2 通達では、当該「特例非上場株式等」の意義について計算式により次のとおり明らかにした。

(1) A+B≧C×3分の2の場合
 C×3分の2−B

(2) A+B<C×3分の2の場合
 A

(注) Aは、措置法第70条の7の2第2項第3号に規定する経営承継相続人等(以下「経営承継相続人等」という。)が当該相続又は遺贈により取得した同項第1号に規定する認定承継会社(以下「認定承継会社」という。)の非上場株式等(議決権に制限のない株式等に限る。)の数又は金額
 Bは、経営承継相続人等が当該相続の開始の直前において有していた認定承継会社の非上場株式等(議決権に制限のない株式等に限る。)の数又は金額
 Cは、当該相続の開始の時における認定承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のない株式等に限る。)の総数又は総額

3 通達の(注)2においては、認定承継会社が2以上ある場合の当該「特例非上場株式等」の判定は、それぞれの認定承継会社ごとに行うことを留意的に明らかにした。
4 通達の(注)3においては、上記2の(1)又は(2)により計算された株式の数又は出資の金額のうち、措置法第70条の7の2第1項に規定する相続税の申告書に同項の規定の適用がある旨の記載のある部分が特例非上場株式等に該当することを留意的に明らかにした。
5 通達の(注)4においては、上記2の(1)により計算されたC×3分の2の数又は金額に1株又は1円未満の端数がある場合には、その端数は切り上げることを留意的に明らかにした。

3 相続税の納税猶予の対象とならない非上場株式等(70の7の2−3)

70の7の2−3 措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等には、次に掲げる株式等は含まれないことに留意する。

(1) 相続税法第19条の規定の適用を受ける株式等(措置法令第40条の8の2第 2項の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされるものを除く。)

(2) 相続時精算課税の適用を受ける株式等(所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)附則第64条第2項又は第7項の規定の適用を受けるもの及び措置法令第40条の8の2第2項の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされるものを除く。)

(3) 措置法第70条の7の3第1項((非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例))の規定により措置法第70条の7の2第1項の被相続人から相続又は遺贈により取得したものとみなされる特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社と同一の会社の株式等

(注) 上記(3)のうち措置法第70条の7の3第1項の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされる特例受贈非上場株式等については、措置法第70条の7の4第1項((非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予))の適用に係る要件を満たせば、同項の規定の適用の対象となることに留意する。

(新設)
(説明)
1 措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等は、被相続人から相続又は遺贈により取得した認定承継会社の非上場株式等に限られているため、1被相続人から贈与により取得した相続税法第19条の規定の適用を受ける株式等及び2被相続人から相続時精算課税に係る贈与により取得した株式等は、当該適用対象にはならないことを通達の(1)及び(2)において留意的に明らかにした。
 ただし、上記12のうち措置法令第40条の8の2第2項の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされる株式等(当該相続の開始と同年中の贈与で、相続税の課税価格に算入されるもの)については、措置法第70条の7の2第1項の適用対象となること、また、上記1のうち平成21年改正法附則第64条第2項又は第7項の規定の適用を受ける株式等については、措置法第70条の7の2第1項の適用対象となることに留意する必要がある。
2 また、措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等からは、同項のカッコ書により「次条第1項の規定により当該被相続人から相続又は遺贈により取得したものとみなされる同項の特例受贈非上場株式等に係る認定承継会社の株式等を除く。」と規定されていることから、その旨を通達の(3)において留意的に明らかにした。具体的には、例えば、父から特例対象贈与により取得した非上場株式等について措置法第70条の7第1項の規定の適用を受けていた場合において、父が死亡したことにより当該非上場株式等に係る会社の株式等を相続によっても取得したときには、当該相続によって取得した株式等は、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用対象となる非上場株式等には該当しない。ただし、例えば、父から特例対象贈与により取得した非上場株式等について措置法第70条の7第1項の規定の適用を受けていた場合において、母が死亡したことにより当該非上場株式等に係る会社の株式等を相続によっても取得したときには、当該相続によって取得した株式等は、通達の(3)の株式等に該当せず措置法第70条の7の2第1項の適用対象となることに留意する必要がある。
3 さらに、通達の(注)においては、通達の(3)に該当する株式等であっても、当該株式等が、措置法第70条の7の4第1項の適用に係る要件を満たせば、同項の規定の適用がある旨を留意的に明らかにした。

4 代償分割により取得した非上場株式等についての相続税の納税猶予の不適用(70の7の2−4)

70の7の2−4 遺産の分割に当たり、遺産の代償として取得した他の共同相続人の所有に属する非上場株式等は、被相続人が相続の開始の直前に有していたものではないので、措置法第70条の7の2第1項の規定による納税猶予の対象となる非上場株式等に該当しないことに留意する。

(新設)
(説明)
 措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けることができる非上場株式等は、被相続人から原則として相続又は遺贈により取得したものに限られている(70の7の2−3参照。)。ところで、遺産の分割には、遺産は特定の相続人が取得し、他の相続人にはその代償としてその遺産を取得した特定の相続人が以前から有する固有財産を与える方法によるものがある。これは一般に遺産の代償分割といわれているものである。この遺産の代償分割により他の共同相続人の固有財産である非上場株式等を取得した場合に、当該非上場株式等について措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けることができるかどうかが問題となるが、当該代償財産として取得した非上場株式等は、被相続人から直接相続又は遺贈によって取得したものでないことから当該非上場株式等は同項の適用対象とはならない。通達はそのことを留意的に明らかにした。

5 特例対象贈与に係る贈与者が贈与税の申告期限前に死亡した場合(70の7の2−5)

70の7の2−5 特例対象贈与により取得した認定承継会社の非上場株式等の受贈者が、70の7−3((特例対象贈与に係る贈与者が贈与税の申告期限前に死亡した場合))の(1)イ又はロのなお書に該当し措置法第70条の7第1項の規定の適用を受けることができない場合であっても、当該特例対象贈与により取得した認定承継会社の非上場株式等は措置法令第40条の8の2第2項の規定により当該受贈者が当該贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされることから、同項の規定により読み替えられた措置法第70条の7の2第1項の規定の適用に係る要件を満たすときには、当該受贈者は当該贈与者の死亡に係る相続税について同項の規定の適用を受けることができることに留意する。

(新設)
(説明)
1 贈与税の納税猶予の適用を受けることを前提とした非上場株式等の贈与があった場合において、贈与者がその贈与があった日の属する年中に死亡すること、あるいは、その翌年の贈与税の申告書の提出期限前に、かつ、受贈者による贈与税の申告書の提出前に死亡することがある。
2 非上場株式等の特例対象贈与があった日と贈与者の死亡の日とが同一年中であり、かつ、相続税法第21条の2第4項の規定に該当する場合(70の7−3(1)イ又はロのなお書に該当する場合)には、当該相続の開始の年の被相続人からの当該特例対象贈与により取得した非上場株式等は、贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されず、相続税の課税対象とされるので、措置法第70条の7第1項の規定の適用はない。この場合、当該非上場株式等は、措置法令第40条の8の2第2項の規定により受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされることから、同項の規定により読み替えられた措置法第70条の7の2第1項の規定の適用に係る要件を満たしている場合には、同項の規定の適用を受けることができることとなる。通達においてはその旨を明らかにした(70の7−3参照)。

6 第2次経営承継相続人がある場合の第1次経営承継相続人に係る相続税の納税猶予の適用要件(70の7の2−6)

70の7の2−6 措置法令第40条の8の2第3項に規定する第2次経営承継相続人等(以下70の7の2−6において「第2次経営承継相続人等」という。)がある場合の同項に規定する第1次経営承継相続人等(以下70の7の2−6において「第1次経営承継相続人等」という。)に係る措置法第70条の7の2第1項の規定の適用については、次に掲げることに留意する。

(1) 当該第1次経営承継相続人等が被相続人の相続の開始の日から5月を経過する日前に死亡した場合には、当該第1次経営承継相続人等は、措置法第70条の7の2第2項第3号ロの要件を満たしているものとみなされること。

(2) 措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等は、第2次経営承継相続人等が第1次経営承継相続人等からの相続又は遺贈に係る相続税の期限内申告書に同項の規定の適用を受ける旨の記載をしたものに限られること。

(3) 担保は、第2次経営承継相続人等が第1次経営承継相続人等からの相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限までに、第2次経営承継相続人等に係る納税猶予分の相続税の額に相当するものの提供をすればよいこと。

(新設)
(説明)
1 経営承継相続人等が、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けるためには、同条第2項第3号ロに規定する要件等を満たし、かつ、相続税の期限内申告書及び担保の提供に関する書類を当該申告書の提出期限までに提出する必要があるが、認定承継会社に係る非上場株式等を相続又は遺贈により取得した相続人等が、相続税の申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その者(以下「第1次経営承継相続人等」という。)においてこれらの要件を満たすことは困難である。
2 そのため、第2次経営承継相続人等が一定の要件を満たす場合には、第1次経営承継相続人等についても措置法第70条の7の2第1項の規定の適用があるものとし、このことに関する読替規定が、措置法令第40条の8の2第3項に規定されている。
3 通達は、第1次経営承継相続人等が、措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けるための留意事項を次のとおり明らかにした。

(1) 措置法第70条の7の2第2項第3号ロの要件は、当該第1次経営承継相続人等が被相続人の相続の開始の日から5月を経過する日前に死亡した場合には、当該要件を満たしているものとみなされること。

(2) 措置法第70条の7の2第1項の適用対象となる非上場株式等は、第2次経営承継相続人等が第1次経営承継相続人等からの相続又は遺贈に係る相続税の期限内申告書に同項の規定の適用を受ける旨の記載をしたものに限られること。すなわち、第2次経営承継相続人等が特例の適用を受けた株式等の数(又は金額)が限度になること。

(3) 担保は、第2次経営承継相続人等が第1次経営承継相続人等からの相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限までに、第2次経営承継相続人等に係る納税猶予分の相続税の額に相当するものの提供をすればよいこと。

4 なお、特例対象贈与に係る贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の受贈者が、当該死亡に係る相続税の申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合の措置法第70条の7の4第1項の適用に係る要件については、上記のような読替規定がないため、通常どおり当該要件を判定することになる。

7 申告期限前に全部確定事由が生じた場合(70の7の2−7)

70の7の2−7 相続の開始の日の翌日から相続税の申告書の提出期限までの間に、措置法第70条の7の2第3項各号のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、当該相続に係る認定承継会社の非上場株式等について同条第1項の規定の適用を受けることができないことに留意する。

(新設)
(説明)
 70の7−5(申告期限前に全部確定事由が生じた場合)の説明を参照。

8 相次相続控除の算式(70の7の2−8)

70の7の2−8 第2次相続に係る被相続人が措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けていた場合又は第2次相続により財産を取得した者のうちに同項の規定の適用を受ける者がある場合における相次相続控除額は、相続税法基本通達20−3((相次相続控除の算式))に準じて算出することに留意する。
 この場合において、相続税法基本通達20−3中のAは、当該被相続人が当該納税猶予の適用を受けていた場合には、同条第16項又は第17項の規定により免除された相続税額以外の税額に限ることに留意する。

(新設)
(説明)
 相続税法においては、10年以内に2回以上相次いで相続が発生した場合には、相続税負担が過重となることからその調整を図るため、相次相続控除の制度を設けている(相法20)。
 この控除は、相続税の納税猶予を受けたものについても適用されるのであるが、一般の場合とは、控除する相続税額に免除を受けた税額を含まれない点が異なっている。通達ではその旨を留意的に明らかにした。
 なお、相続人又は受遺者のうちに措置法第70条の7の2の適用を受けた者がいたとしても、同条には農地の納税猶予における措置法令第40条の7第12項に相当する読み替え規定(同項においては、相続税法第20条第1項第2号中「相続税の課税価格」とあるのは、「租税特別措置法第70条の6第2項第1号の規定により計算される相続税の課税価格」と読み替えている。)はないため、相続税法第20条第1項第2号の割合を算定する際の財産の価額は、相続の開始の時の時価を基に算定することとなる。農地の納税猶予の場合は、当該財産の価額は、農業投資価格を基に算定することとしている(70の6−38)ことから、この点は農地の納税猶予における取り扱いと異なっている。

9 修正申告等に係る相続税額の納税猶予(70の7の2−9)

70の7の2−9 措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受ける旨の相続税の申告について特例非上場株式等の評価又は税額計算の誤りがあり、その誤りのみに基づいて修正申告又は更正があった場合における当該修正申告又は更正により納付すべき相続税額(附帯税を除く。)については、70の7―6((修正申告等に係る贈与税額の納税猶予))を準用する。

(新設)
(説明)
 70の7−6(修正申告等に係る贈与税額の納税猶予)の説明を参照。

10 担保の提供等(70の7の2−10)

70の7の2−10 措置法第70条の7の2第1項の規定による担保の提供については、国税通則法第50条から第54条までの規定の適用があることに留意する。

(新設)
(説明)
 70の7―7(担保の提供等)の説明を参照。