13 法第66条第4項に規定する「持分の定めのない法人」とは、例えば、次に掲げる法人をいうことに留意する。
(注) 持分の定めがある法人(持分を有する者がないものを除く。)に対する財産の贈与等があったときは、当該法人の出資者等について法第9条の規定を適用すべき場合があることに留意する。
(新設)
(説明)
相続税及び贈与税の納税義務者は、相続、遺贈又は贈与により財産を取得した個人を原則とするが(相法1の3、1の4)、形式的には個人が法人に対して贈与又はその法人を設立するための財産の提供(以下「贈与等」という。)を行った場合でも、その贈与等をした個人又はこれらの者の親族等が贈与等を受けた法人から特別の利益を受けているようなときには、実質的には、贈与等をした個人が贈与等に係る財産を有し、又は特別の利益を受ける者に特別の利益を贈与したのと同じこととなる。当該贈与等をした者について相続が開始した場合には、当該財産は遺産となって相続税が課され、又は特別の利益を受ける者に対し贈与税が課されるのにかかわらず、法人に対し財産の贈与等をすることによりこれらの課税を免れることとなるとすると、課税の公平を損なうおそれがある。法第65条及び第66条第4項の規定は、このような贈与等を通じた租税回避を防止する措置として規定されたものである。
今般の公益法人制度改革において、その設立に当たり公益目的を問わない一般社団法人や一般財団法人の設立が可能となり、これらの法人を利用した相続税等の租税回避に利用されるおそれがあることを受け、平成20年度税制改正では、公益法人制度改革に対応する税制上の措置の一つとして、公益法人等に対する遺贈又は贈与を通じた租税回避措置である改正前の法第65条及び第66条第4項の対象となる法人の範囲が、「法人税法第2条第6号(定義)に規定する公益法人等その他公益を目的とする事業を行う法人」から「持分の定めのない法人(持分の定めのある法人で持分を有する者がいないものを含む。)」に改められるとともに所要の改正が行われた。
そこで、通達13では、「持分の定めのない法人」について、例示としてどのような法人がこれに当たるのかを留意的に明らかにした。
なお、持分の定めのある法人(持分を有する者がないものを除く。)に対する財産の贈与等があったときは、当該財産の贈与等を受けた法人の出資者等について法第9条の規定を適用すべき場合があることから、通達(注)では、そのことを留意的に明らかにした。
14 法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」かどうかの判定は、原則として、贈与等を受けた法人が法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たしているかどうかにより行うものとする。
ただし、当該法人の社員、役員等(法施行令第32条に規定する役員等をいう。以下同じ。)及び当該法人の職員のうちに、その財産を贈与した者若しくは当該法人の設立に当たり財産を提供した者又はこれらの者と親族その他法施行令第33条第3項第1号に規定する特殊の関係がある者が含まれていない事実があり、かつ、これらの者が、当該法人の財産の運用及び事業の運営に関して私的に支配している事実がなく、将来も私的に支配する可能性がないと認められる場合には、同号の要件を満たさないときであっても、同項第2号から第4号までの要件を満たしているときは、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」に該当しないものとして取り扱う。
(新設)
(説明)
平成20年度税制改正後の法第66条第4項の規定では、持分の定めのない法人(持分の定めのある法人で持分を有する者がいないものを含む。以下同じ。)に対して財産の贈与又は遺贈があった場合(当該法人を設立するために財産の提供があった場合を含む。以下同じ。)において、その贈与又は遺贈によりその贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と法第64条第1項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときには、その法人を個人とみなして、相続税又は贈与税を課することとされている。
この場合における「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」の判定については、従来、本通達の改正前の通達14で、その具体的な判定基準を定めていたが、今般の公益法人制度改革に伴う税制改正の所要の措置により、法施行令第33条第3項において、その判定基準が明記された。
そこで、通達14では、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」かどうかの判定について、原則的な取扱いを定めるとともに、相続税又は贈与税の負担の減少がおよそ考えられない善意の第三者からの贈与等(寄附)について例外的な取扱いを定めた。
まず、通達14では、「相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとき」かどうかの判定は、原則として贈与等を受けた法人が法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たしているかどうかにより行うこととした。
他方、財産の贈与等(寄附)の中には、財産の贈与等を受ける法人の運営と全く関係のない者、いわゆる善意の第三者からなされるものもあり、このような場合には、その法人からその贈与等をした者等に特別の利益を与えることはおよそ考えられない。そこで、例外的な取扱いとして、通達14のただし書において、贈与等を受けた法人の社員、役員等(法施行令第32条に規定する役員等をいう。以下同じ。)及びその法人の職員のうちに、その財産を贈与した者若しくはその法人の設立に当たり財産を提供した者又はこれらの者と親族その他法施行令第33条第3項第1号に規定する特殊の関係がある者が含まれていない事実があり、かつ、これらの者が、その法人の財産の運用及び事業の運営に関して私的に支配している事実がなく、将来も私的に支配する可能性がないと認められる場合には、同号の要件を満たさないときであっても、同項第2号から第4号までの要件を満たしているときは、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」に該当しないものとして取り扱うこととした。
15 法施行令第33条第3項第1号に規定する「その運営組織が適正である」かどうかの判定は、財産の贈与等を受けた法人について、次に掲げる事実が認められるかどうかにより行うものとして取り扱う。
(注) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第15条第2項第2号((設立時役員等の選任))に規定する会計監査人設置一般社団法人で、同法第127条((会計監査人設置一般社団法人の特則))の規定により同法第126条第2項((計算書類等の定時社員総会への提出等))の規定の適用がない場合にあっては、上記Bの決算について、社員総会の決議を要しないことに留意する。
(注)
(注) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条第1項第7号((定款の記載又は記録事項))に規定する会計監査人設置一般財団法人で、同法第199条の規定において読み替えて準用する同法第127条の規定により同法第126条第2項の規定の適用がない場合にあっては、上記ロ(ヘ)のBの決算について、評議員会の決議を要しないことに留意する。
(注)
(注)
(注)
(注) 他の一の法人(当該他の一の法人と法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第4条第2号((同族関係者の範囲))に定める特殊の関係がある法人を含む。)又は団体の役員及び職員の数が当該法人のそれぞれの役員等のうちに占める割合が3分の1を超えている場合には、当該法人の役員等の選任は、適正に行われていないものとして取り扱う。
(注) 上記の博物館は、博物館法第10条((登録))の規定による博物館としての登録を受けたものに限られているのであるから留意する。
(新設)
(説明)
平成20年度税制改正後の法第66条第4項の規定では、持分の定めのない法人に対して財産の贈与又は遺贈があった場合において、その贈与又は遺贈によりその贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と法第64条第1項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、その法人を個人とみなして、相続税又は贈与税を課することとされている。
この場合における「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」の判定については、今般の税制改正において、法施行令第33条第3項において、その判定基準が明記された。具体的には、贈与等により財産を取得した持分の定めのない法人が法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たすときは、相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないものとされた。
法第66条第4項の規定に基づく持分の定めのない法人に対する課税は、「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められること」を要件としていることから、その要件の判定に当たっては、その贈与等があった時点の事実関係に基づき行うのはもちろんのこと、将来における可能性をも考慮して行う必要がある。そのため、法施行令第33条第3項第1号に掲げる「その運営組織が適正である」ことの判定に当たっても、持分の定めのない法人の事業の運営が将来にわたり適正に行われることが担保されているか否かにより判定することが必要となる。
そこで、通達15では、「運営組織が適正である」ことについて、一定の事項が定款等に定められていること、
事業運営及び役員等の選任等が定款等に基づき適正に行われていること、及び
事業が社会的存在として認識される程度の規模を有していることをその判定の柱として掲げ、具体的な取扱いを定めた。
法人の運営組織が適正であるかどうかの第1の要件として、法人の事業運営の憲法というべき定款等に定めるべき事項として、役員その他の機関の構成、その選任の方法その他事業の運営の基礎となる重要な事項について、その取扱いを明らかにした。
なお、通達15(1)の(注)2において、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)(以下「公益認定法等」という。)に基づき公益認定を受けた公益社団法人及び公益財団法人については、公益認定法等に基づき行政庁の公益認定を受け、その監督の下に置かれることなどを考慮し、公益認定法等に基づき行政庁の公益認定を受けた公益社団法人及び公益財団法人については、原則として、通達15の(1)に該当するものとして取り扱うことを明らかにした。
第2の要件として事業運営及び役員等の選任等が定款等に基づき適正に行われていることを示した。これは、法人の運営組織が適正であるためには、定款等に定めるべき事項が定められていたとしても、その事業運営及び役員等の選任等が現実に法令及び定款等に基づき適正に行われていることが必要であることから、判定要件の一つとした。
第3の要件として事業が社会的存在として認識される程度の規模を有していることを示した。これは、法人の事業が社会的存在として認識される程度の規模を有している場合には、広く地域社会に認識されており、その事業運営についても事業実態が伴うとともに、地域社会住民の関心が及ぶものであり、このような法人については、将来にわたってその運営が適正に行われるであろうということが担保できるとの見地から、判定要件の一つとしたものである。
16 法施行令第33条第3項第2号の規定による特別の利益を与えることとは、具体的には、例えば、次の(1)又は(2)に該当すると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。
(新設)
(説明)
平成20年度税制改正において、法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」の判定基準が法施行令第33条第3項において明記された。
通達16においては、法施行令第33条第3項第2号に規定する特別の利益を与えられる者の範囲を留意的に示すとともに、どのような場合が特別の利益を与えることとなるかについて例示的に明らかにした。