(公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業)

2 公益を目的とする事業のうち、事業の種類、規模及び運営がそれぞれ次の(1)から(3)までに該当すると認められる事業は、「公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業」に該当するものとして取り扱う。

  • (1) 事業の種類
    •  公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)第2条第4号((定義))に規定する公益目的事業
    •  社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第2項各号及び第3項各号((定義))に掲げる事業
    •  更生保護事業法(平成7年法律第86号)第2条第1項((定義))に掲げる更生保護事業
    •  学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条((学校の範囲))に規定する学校を設置運営する事業
    •  育英事業
    •  科学技術に関する知識の普及又は学術の研究に関する事業
    •  図書館若しくは博物館又はこれらに類する施設を設置運営する事業
    •  宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業
    •  保健衛生に関する知識の普及その他公衆衛生に寄与することとなる事業
    •  政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第3条((定義等))に規定する目的のために政党、政治団体の行う事業
    •  公園その他公衆の利用に供される施設を設置運営する事業
    •  イからまでに掲げる事業を直接助成する事業
  • (2) 事業の規模
    事業の内容に応じ、その事業を営む地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有しており、かつ、その事業を行うために必要な施設その他の財産を有していること。
  • (3) 事業の運営
    • イ 事業の遂行により与えられる公益が、それを必要とする者の現在又は将来における勤務先、職業等により制限されることなく、公益を必要とするすべての者(やむを得ない場合においてはこれらの者から公平に選出された者)に与えられるなど公益の分配が適正に行われること。
    • ロ 公益の対価は、原則として無料(事業の維持運営についてやむを得ない事情があって対価を徴収する場合においても、その対価は事業の与える公益に比し社会一般の通念に照らし著しく低廉)であること。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)

宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)を行う者で一定のものが贈与により取得した財産でその公益事業の用に供することが確実なものについては、その財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(相法21の31三)(以下「公益事業用財産に対する贈与税の非課税」という。)。したがって、この公益事業用財産に対する贈与税の非課税の規定が贈与により財産を取得した個人に適用されるためには、1当該個人が公益事業を行う一定の個人に該当すること、及び2その取得した財産がその個人の公益事業の用に供されることが確実であることの2つの要件を満たす必要がある。
 このうち、「公益事業を行う一定の個人」については、相続税法施行令(昭和25年政令第71号。以下「法施行令」という。)第4条の5において準用する法施行令第2条に規定されており、その概要は、公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行い、事業の運営等に関し財産を贈与した者やその親族等に特別の利益を与える事実がないものとされている。
 通達2は、「公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業」であるかは、事業の種類、規模及び運営の内容によって判定することを示したものであり、通達2(1)の「事業の種類」は法施行令第4条の5において準用する法施行令第2条に規定する事業及びその他社会一般において公益事業と評価されるものを例示的に掲げたものである。
 今般の通達改正においては、公益法人制度改革により「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)」が制定され、同法第2条第4号((定義))において「公益目的事業」として23の事業が掲げられたことを踏まえ、通達2(1)の「事業の種類」に、新たに同号に規定する公益目的事業を追加した。

〔関係法令〕
 ○ 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号) (抜すい)

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  • 一 〜 三  (省略)
  • 四 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。

別表(第2条関係)

  • 一 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
  • 二 文化及び芸術の振興を目的とする事業
  • 三 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  • 四 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
  • 五 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  • 六 公衆衛生の向上を目的とする事業
  • 七 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
  • 八 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  • 九 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
  • 十 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
  • 十一 事故又は災害の防止を目的とする事業
  • 十二 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
  • 十三 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
  • 十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  • 十五 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  • 十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
  • 十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
  • 十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  • 十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業
  • 二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  • 二十一 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  • 二十二 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
  • 二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの
    ※ 別表第23号に関する政令は未制定である。

(個人が特別の利益を与えること)

4 法施行令第4条の5において準用する法施行令第2条第1号に規定する「特別の利益を与えること」とは、高度の公益事業を行う者に対し財産を贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)した者当該事業を行う者又はこれらの者の親族その他これらの者と法施行令第2条に規定する特別関係がある者(以下7までにおいて、当該「親族その他これらの者と法施行令第2条に規定する特別関係がある者」を「特別関係がある者」という。)について、例えば、次に掲げる事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。

  • (1) これらの者が役務を提供し、又はこれらの者の財産を利用に供している等の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭その他の財産の支給を受けていること。
  • (2) これらの者が高度の公益事業に係る余裕金を生活資金に利用し、又はその施設を居住の用に供している等これらの財産を無償又は有償で利用していること。
  • (3) これらの者が利息の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭の貸付けを受けていること。
  • (4) これらの者が対価の有無に関係なく、高度の公益事業に係る資産を譲り受けていること。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)

通達4は、法施行令第4条の5において準用する法施行令第2条第1号に規定する「事業の運営等に関し財産の贈与をした者や事業を行う者又はこれらの親族等に特別の利益を与えるという事実がないこと」について、特別の利益を享受する場合の特別の利益を受ける者の範囲及びその特別の利益に該当する事実について、その取扱いを明らかにしたものである。
 平成20年度税制改正においては、相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第65条第1項に規定する「法人から受ける特別の利益」の範囲が明確化されたことに併せて、法施行令第2条第1号及び第4条の5の規定も同様の改正が行われた。具体的には、特別の利益を受ける者の規定の整備が行われるとともに、改正前の法施行令第2条第1号の「事業に係る施設の利用、余裕金の運用その他その事業に関し特別の利益」が「事業に係る施設の利用、余裕金の運用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益」に改められ、「特別の利益」の内容についてより明確化が図られた。今般の通達改正においては、明確化された法施行令第2条第1号の規定に基づき、通達4の(3)及び(4)を追加した。
 なお、この通達4の改正により追加した(3)及び(4)の項目については、改正前の法施行令第2条第1号に規定する「その他その事業に関し特別の利益を与えること」の「特別の利益」に該当するものであったが、法施行令の改正に併せて明確化を図ったものである。


(社団等が特別の利益を与えること)

7 法施行令第4条の5において準用する法施行令第2条第3号に規定する「特別の利益を与える」とは、社団等の機関の地位にある者、贈与をした者又はこれらの者と特別関係がある者について、例えば、次に掲げる事実がある場合又はその事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。

  • (1) 当該社団等の施設その他の財産を居住、担保、生活資金その他私的の用に利用していること。
  • (2) 当該社団等の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
  • (3) 当該社団等が解散した場合に残余財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
  • (4) 当該社団等の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付けをしていること。
  • (5) 当該社団等の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い対価で譲渡していること。
  • (6) これらの者が過大給与の支給を受け、又は当該社団等の機関の地位にあることのみに基づき報酬を受けていること。
  • (7) これらの者の債務が社団等によって保証、弁済、免除又は引受けされていること。
  • (8) 当該社団等の事業の廃止等により、不用に帰する財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
  • (9) 当該社団等がこれらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けていること。
  • (10) 当該社団等がこれらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けていること、又はこれらの者から公益を目的とする事業の用に供するとは認められない財産を取得していること。
  • (11) 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他事業に係る契約の相手方となっていること。
  • (12) 事業の遂行により供与する公益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えていること。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)

法施行令第2条に規定する人格のない社団又は財団(以下「社団等」という。)の行う公益事業の運営に関し、当該社団等の機関の地位にある者、贈与をした者又はこれらの者と特別関係がある者に対し特別の利益を与えることとなる場合には、当該社団等が贈与により取得した財産については、公益事業用財産に対する贈与税の非課税の規定の適用はない。通達7は、この場合の社団等が「特別の利益を与えること」となる事実についてその取扱いを明らかにしたものである。
 平成20年度税制改正においては、法第65条第1項に規定する「法人から受ける特別の利益」の範囲が明確化されたことに併せて、法施行令第2条第3号及び第4条の5の規定も同様の改正が行われた。具体的には、特別の利益を受ける者の規定の整備が行われるとともに、改正前の法施行令第2条第3号の「事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属その他その事業に関し特別の利益」が「事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、当該社団等の機関の地位にある者への選任その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益」に改められ、「特別の利益」の内容についてより明確化が図られた。今般の通達改正においては、明確化された法施行令第2条第3号の規定に基づき、通達7の改正を行った。
 なお、この通達7の改正により追加した項目については、改正前の法施行令第2条第3号に規定する「その他その事業に関し特別の利益を与えること」の「特別の利益」に該当するものであったが、法施行令の改正に併せて明確化を図ったものである。