(信託の受益者等が存するに至った場合)
9の2─3 法第9条の2第2項に規定する「信託の受益者等が存するに至った場合」とは、例えば、次に掲げる場合をいうことに留意する。
(1) 信託の受益者等(法第9条の2第1項に規定する受益者等をいう。以下同じ。)として受益者Aのみが存するものについて受益者Bが存することとなった場合(受益者Aが並存する場合を含む。)
(2) 信託の受益者等として特定委託者Cのみが存するものについて受益者Aが存することとなった場合(特定委託者Cが並存する場合を含む。)
(3) 信託の受益者等として信託に関する権利を各々半分ずつ有する受益者A及びBが存する信託についてその有する権利の割合が変更された場合
(新設)
(説明)
 法第9条の2第2項では、受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至った場合(法第9条の4第4項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至った時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であった者(以下「前受益者等」という。)から贈与(当該前受益者等の死亡に基因して受益者等が存することとなった場合には遺贈)により取得したものとみなされ、贈与税(遺贈の場合は相続税)が課税されることとされた。
 そこで、相基通9の2─3では、法第9条の2第2項に規定する「信託の受益者等が存するに至った場合」とはどのような場合をいうかを留意的に明らかにした。
(信託に関する権利の一部について放棄又は消滅があった場合)
9の2─4 受益者等の存する信託に関する権利の一部について放棄又は消滅があった場合には、原則として、当該放棄又は消滅後の当該信託の受益者等が、その有する信託に関する権利の割合に応じて、当該放棄又は消滅した信託に関する権利を取得したものとみなされることに留意する。
(新設)
(説明)
 法第9条の2第3項では、受益者等の存する信託について、当該信託の一部の受益者等が存しなくなった場合において、適正な対価を負担せずに既に当該信託の受益者等である者が当該信託に関する権利について新たに利益を受けることとなるときは、当該信託の一部の受益者等が存しなくなった時において、当該利益を受ける者は、当該利益を当該信託の一部の受益者等であった者から贈与(当該受益者等であった者の死亡に基因して当該利益を受けた場合には遺贈)により取得したものとみなされ、贈与税(遺贈の場合は相続税)が課税されることとされた。
 ところで、受益者は、信託行為の当事者(委託者が受益者である場合のいわゆる自益信託)である場合を除き、受託者に対し受益権を放棄する旨の意思表示をすることにより、受益権を放棄することができる(新信託法991)。また、信託行為で受益者指定権等を自己(委託者)又は第三者に与えたときは、当該受益者指定権等の行使により、受益者を指定し、変更することができることとされており、当該受益者指定権等が行使された場合には、旧受益者は受益権を失うこととなる(新信託法891)。
 したがって、その結果、受益者等の存する信託に関する権利の一部について受益者等が存しない場合が生じることとなるが、このような場合には、令第1条の12第3項の規定により、1当該信託についての受益者等(当該放棄又は受益者指定権等行使後の受益者等に限る。以下2において同じ。)が一であるときには、当該受益者等が当該信託に関する権利を全部を有するものと、また、2当該信託についての受益者等が二以上存するときには、当該信託に関する権利の全部をそれぞれの受益者等がその有する権利の内容に応じて有するものとされている。
 そこで、相基通9の2―4では、信託に関する権利について放棄又は消滅があった場合に利益を受けたものとみなされる受益者等及び受けた利益の算定方法について留意的に明らかにした。
 なお、受益者等の存する信託に関する権利の全部について放棄があった場合にも、上記と同様な課税関係が生ずることとなるが、信託に関する権利のすべてが放棄されたときは、信託の終了事由に該当することもあることなどから、相基通9の2―4では、当該権利の一部の放棄又は消滅の場合について課税関係を示したものである。
(参考)
参考図