(信託が合意等により終了した場合)
9─13 法第9条の3第1項に規定する受益者連続型信託(以下「受益者連続型信託」という。)以外の信託(令第1条の6に規定する信託を除く。以下同じ。)で、当該信託に関する収益受益権(信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「収益受益者」という。)と当該信託に関する元本受益権(信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「元本受益者」という。)とが異なるもの(以下9の3─1において「受益権が複層化された信託」という。)が、信託法(平成18年法律第108号。以下「信託法」という。)第164条((委託者及び受益者の合意等による信託の終了))の規定により終了した場合には、原則として、当該元本受益者が、当該終了直前に当該収益受益者が有していた当該収益受益権の価額に相当する利益を当該収益受益者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。
(新設)
(説明)
 旧信託法(大正11年法律第62号、以下「旧信託法」という。)の下においては、委託者が信託に関する利益の全部を享受する場合、すなわち委託者と受益者が一致するとき(以下「自益信託」という。)には、信託を解除することとされていた(旧信託法57)が、新信託法第164条((委託者及び受益者の合意等による終了))では、自益信託に限らず、委託者と信託に関する利益を享受する受益者全員が共同して信託終了の意思表示をすれば、信託を終了することができることとされた。
 ところで、受益者連続型信託(法第9条の3第1項に規定する受益者連続型信託をいう。以下同じ。)以外の信託で、当該信託に関する収益受益権(信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「収益受益者」という。)と当該信託に関する元本受益権(信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「元本受益者」という。)とが異なるもの(以下「受益権が複層化された信託」という。)が、新信託法第164条の規定により終了(以下この項において「合意終了」という。)した場合には、元本受益者は当初予定された信託期間の終了を待たずに信託財産の給付を受けることになり、その反面、収益受益者は当初予定された信託期間における収益受益権を失うこととなる。したがって、当該元本受益者は、何らの対価も支払うことなく合意終了直前において当該収益受益者が有していた収益受益権の価額に相当する利益を受けることとなるから、法第9条の規定により、当該利益を贈与又は遺贈により取得したものとみなされることとなる。
 そこで、相基通9―13では、そのことを留意的に明らかにした。
(参考)
新信託法(抜すい)
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第百六十四条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。
〔説例〕
貸地を30年間信託し、収益受益権は父、元本受益権は子が取得した場合の説明図