(信託に関する権利)

69の4─1の2 措置法第69条の4第1項に規定する特例対象宅地等には、個人が相続又は遺贈(死因贈与を含む。以下同じ。)により取得した信託に関する権利(相続税法第9条の2第6項ただし書に規定する信託に関する権利及び同法第9条の4第1項又は第2項の信託の受託者が、これらの規定により遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利を除く。)で、当該信託の目的となっている信託財産に属する宅地等(土地又は土地の上に存する権利で、措置法規則第23条の2第1項((小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例))に規定する建物又は構築物(以下69の4─25までにおいて「建物等」という。)の敷地の用に供されているものに限る。以下69の4─26までにおいて同じ。)が、当該相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下69の4─26までにおいて「被相続人等」という。)の措置法第69条の4第1項に規定する事業の用若しくは居住の用に供されていた宅地等又は国の事業の用に供されている宅地等であるものが含まれることに留意する。

(新設)
(説明)
 平成19年度税制改正において、信託に関する権利を取得した者は、当該信託に係る信託財産に属する資産及び負債を取得し又は承継したものとみなされることとされ(相法9の26)、租税特別措置法(以下「措法」という。)第69条の4の規定の適用については、租税特別措置法施行令(以下「措令」という。)第40条の2第16項において相続税法第9条の2第6項の規定を準用することとされたことから、これにより、信託財産に宅地等が含まれる信託に関する権利についても、措法第69条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小規模宅地等の特例」という。)の適用対象となることが明らかにされた。
そこで、措通69の4─1の2では、小規模宅地等の特例の適用対象となる信託に関する権利を留意的に明らかにした。
(注)平成19年度税制改正前は、「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和61年7月9日付直審5―6ほか4課共同)において、信託財産に宅地等が含まれる信託に関する権利については、小規模宅地等の特例の適用対象となるものとして取り扱っていたことから、実質的には通達による取扱いの法制化であることに留意する。
(公共事業の施行により従前地及び仮換地について使用収益が禁止されている場合)

69の4─1の3 措置法第69条の4第1項に規定する特例対象宅地等には、個人が被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人等の居住用等に供されていた宅地等(以下69の4─1の3において「従前地」という。)で、公共事業の施行による土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第3章第3節((仮換地の指定))に規定する仮換地の指定に伴い、当該相続の開始の直前において従前地及び仮換地の使用収益が共に禁止されている場合で、当該相続の開始の時から相続税の申告書の提出期限(以下69の4─3までにおいて「申告期限」という。)までの間に当該被相続人等が仮換地を居住用等に供する予定がなかったと認めるに足りる特段の事情がなかったものが含まれることに留意する。

(注) 被相続人等が仮換地を居住用等に供する予定がなかったと認めるに足りる特段の事情とは、例えば、次に掲げる事情がある場合をいうことに留意する。

  1. (1) 従前地について売買契約を締結していた場合
  2. (2) 被相続人等の居住用等に供されていた宅地等に代わる宅地等を取得(売買契約中のものを含む。)していた場合
  3. (3) 従前地又は仮換地について相続税法第6章((延納又は物納))に規定する物納の申請をし又は物納の許可を受けていた場合
(新設)
(説明)
 小規模宅地等の特例の適用対象となる居住用宅地等とは、相続開始の直前において被相続人の有する宅地等の上に建物が存在し、被相続人又は被相続人の生計一親族(以下「被相続人等」という。)がこれを居住の用に現に使用しているものをいうのであるが、その直前において被相続人等の居住の用に供されていない宅地等であっても、その宅地等の上で既に居住用建物の建築が行われているなど、居住用建物の敷地として宅地等の使用が具体化ないし現実化していると見ることができる場合には、一定の条件の下で、当該宅地等を特例の適用対象となる居住用宅地等として扱っているが、従来、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(以下「居住用従前地」という。)が土地区画整理事業等の施行による仮換地指定に伴い、居住用従前地及び仮換地が相続開始の直前に更地である場合には、相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていたとはいえないことから、小規模宅地等の特例の適用を認めていなかった。
 しかしながら、平成19年1月23日付の最高裁判決において、居住用従前地及び仮換地について相続開始の直前に使用収益が共に禁止されている場合で、相続開始時から相続税の申告期限までの間に被相続人等が仮換地を居住の用に供する予定がなかったと認めるに足りる特段の事情がないときに限り、居住用従前地は特例の適用があるとの新たな解釈が示されたことから、国税庁では、本件判決と同様な事情のある宅地等については特例の適用があるとするよう、取扱いを変更(以下「変更後の取扱い」という。)し、平成19年2月23日付でその旨を公表した。
 そこで、措通69の4─1の3では、公表した変更後の取扱いを留意的に明らかにした。
(参考)
平成19年1月23日付の最高裁判決の内容(抜粋)
 相続開始の直前において本件土地(従前地)は更地となり、本件仮換地もいまだ居住の用に供されてはいなかったものであるが、それは公共事業である本件事業における仮換地指定により両土地の使用収益が共に禁止された結果、やむを得ずそのような状況に立たされたためであるから、相続開始ないし相続税申告の時点において、被相続人又は相続人が本件仮換地を居住の用に供する予定がなかったと認めるに足りる特段の事情のない限り、従前地は、措置法69条の3(現行:69条の4)にいう「相続の開始の直前において・・・居住の用に供されていた宅地」に当たると解するのが相当である。そして、本件においては、被相続人及び相続人は、仮換地指定通知に伴って仮設住宅に転居しており、また、相続人は、相続開始後とはいえ、本件仮換地の使用収益が可能となると、本件仮換地上に本件ビルを建築してこれに入居したものであって、上記の特段の事情は認めることができない。したがって、従前地について本件特例が適用されるものというべきである。
(特定同族株式等の贈与の特例の適用を受けている場合)

69の4─28 被相続人から相続若しくは遺贈又は贈与(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与に限る。以下69の5―32の2において同じ。)により財産を取得したいずれかの者が、当該被相続人である措置法第70条の3の3第6項に規定する特定贈与者(以下69の5─32の2において「特定贈与者」という。)からの贈与により取得した同条第3項第2号に規定する特定同族株式等(以下70の3の4―2までにおいて「特定同族株式等」という。)について同条第1項又は措置法第70条の3の4第1項の規定の適用を受け又は受けている場合には、措置法第69条の4第1項の規定の適用はないことに留意する。

(新設)
(説明)
 措法第70条の3の3第6項に規定する特定贈与者からの贈与により取得した措法第70条の3の3第3項第2号に規定する特定同族株式等(以下「特定同族株式等」という。)について措法第70条の3の3第1項((特定の贈与者から特定同族株式等の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例))又は第70条の3の4第1項((特定同族株式等の贈与を受けた場合の相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の特例))の規定の適用を受けている場合には、当該贈与に係る贈与者が死亡したときの相続税の申告において、当該死亡した贈与者から相続若しくは遺贈又は相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与により財産を取得したいずれかの者は、いずれの者も小規模宅地等の特例の適用を受けることはできないとされている(措法69の45)。
 そこで、措通69の4─28では、そのことを留意的に明らかにした。