(特例対象株式等の意義)

69の5―1 措置法第69条の5第2項第7号イ及びロの要件を満たす特定株式又は特定出資(以下69の5―31までにおいて「特例対象株式等」という。)には、次に掲げる株式又は出資は含まれないのであるから留意する。

1. 法人の株主総会又は社員総会(以下69の5―4までにおいて「法人の株主総会等」という。)において議決権を行使できる事項の全部又は一部について制限された株式又は出資

2. 法人の株主総会等において議決権を行使できる事項の全部又は一部について制限がある株主又は社員の有する株式又は出資

(以下省略)

※下線部分が改正部分である。 

(改正)

(説明)

1. 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「特定事業用資産の特例」という。)の対象となる措置法第69条の5第2項第1号に規定する特定株式又は同項第2号に規定する特定出資(以下「特定株式等」という。)とは、議決権の制限がない株式又は出資(以下「議決権の制限がない株式等」という。)とされている。

2. ところで、平成18年5月1日に施行された会社法(平成17年法律第86号)では、公開会社でない株式会社(発行する株式の全部が譲渡制限株式である株式会社をいう。)においては、株式ではなく個々の株主に着目し、1剰余金の配当を受ける権利、2残余財産の分配を受ける権利、又は3株主総会における議決権について、株主ごとに異なる取扱いを行うことができることとされた(会社法1092)。

(注)会社法の施行に伴い廃止された有限会社法では、社員ごとに同様な点について異なる取扱いを行うことができた(旧有限会社法391、44、73)。

3. そこで、措置法69条の5第2項第1号又は第2号に規定する議決権の制限のない株式等には、文理上、法人の株主総会又は社員総会(以下「法人の株主総会等」という。)において議決権を行使できる事項の全部又は一部について制限された株式又は出資(以下「株式等という。」という。)のほか、法人の株主総会等において議決権を行使できる事項の全部又は一部について制限がある株主又は社員(以下「株主等」という。)の有する株式等も含まれると解されることから、会社法の施行を契機として、69の5−1の改正によりそのことを留意的に明らかにした。

(議決権の制限がある株式等がある場合の特定同族会社株式等の判定)

69の5―4 特定株式又は特定出資(以下69の5―6までにおいて「特定株式等」という。)が、特定同族会社株式等に該当するかどうかの判定をする場合において、措置法第69条の5第2項第7号イに規定する「株式の総数又は出資の総額」には、措置法規則第23条の2の2第4項に規定する株式又は第5項において第4項の規定が準用される出資(以下69の5−4において「議決権のすべてに制限がある株式等」という。)の株数等は含まれないのであるが、措置法第69条の5第2項第7号柱書に規定する「発行済株式の総数又は出資の総額」、同号ロ(1)に規定する「発行済株式の総数」及び同号ロ(2)に規定する「出資の総口数」には、議決権のすべてに制限がある株式等数等含まれるのであるから留意する。
(以下省略)

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)

 平成18年度税制改正により、措置法第69条の5第2項第7号イに掲げる要件の判定の基礎となる「株式の総数又は出資の総額」には、法人の株主総会等において議決権を行使できる事項の全部又は一部について制限がある株主等の有する株式等が含まれないこととされた(措規23の2の24 5 )ことから、69の5−4の改正により、そのことを留意的に明らかにした。

(注) 措置法規則第23条の2の2第4項に規定する株式とは、相続開始の直前及び当該相続開始の時において次のものをいう。

(1) 株主総会において議決権を行使できる事項(会社法1081三)の全部について制限がある株式

(2) 株主総会における議決権(会社法1051三)の全部について制限がある株主の有する株式

(3) 株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第67条((実質的に支配することが可能となる関係))で定める法人株主が有する株式(会社法3081

(4) 株式会社が有する自己株式(会社法3082

(会社分割等の意義)

69の5−9 措置法令第40条の2の2第10項に規定する会社分割、株式分割、株式無償割当て、株式交換、剰余金の配当その他の事由(以下69の5−15までにおいて「会社分割等」という。)には、次に掲げる事由は含まれないものとして取り扱うことに留意する。

(1)法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第12号の10((定義))に規定する分社型分割

(2)資本金の額若しくは資本剰余金の額の減少を伴わない剰余金の配当(同法第2条第12号の9に規定する分割型分割を除く。)又は利益の配当

(3)自己株式の取得

(4)措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる法人の合併、第5号に掲げる株式交換及び第6号に掲げる株式移転に当たらない法人の合併、株式交換及び株式移転

(5)組織変更

(注) (3)から(5)に掲げる事由により特定事業用資産相続人等が交付を受けた株式又は出資については、措置法第69条の5第1項の規定の適用はないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1. 平成18年度税制改正により、特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等について、当該特定受贈同族会社株式等の贈与者である被相続人に係る相続税の申告期限(措置法第69条の5第1項に規定する申告期限をいう。以下同じ。)までの間に、会社分割、株式分割、株式無償割当て、株式交換、剰余金の配当その他の事由(以下「会社分割等」という。)があり、かつ、当該特定事業用資産相続人等が措置法令第40条の2の2第10項第2号に規定する対応株式(以下「対応株式」という。)又は第3号に規定する剰余金の配当として金銭その他の資産(以下「非対応株式等」という。)の交付を受けた場合における措置法第69条の5第1項に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の基礎となる次に掲げるものの計算規定(措令40の2の210111213)が整備された。

(1) 特定受贈同族会社株式等の価額

(2) 対応株式の価額

(3) 非対応株式等が交付された場合における相続税の課税価格

2. ところで、上記1の計算規定は、特定事業用資産相続人等が有する特定受贈同族会社株式等について会社分割等があったことにより、当該特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る対応株式又は非対応株式等を取得した場合において、当該特定受贈同族会社株式等に係る法人又は対応株式に係る法人若しくは非対応株式等に係る法人の資本金等の額(法人税法第2条第16号に規定するものをいう。以下同じ。)を基礎として、措置法令第40条の2の2第10項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を当該会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している当該分割等対象株式等の数又は口数で除して得た価額」、第11項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している対応株式の数又は口数で除して得た価額」又は第12項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た金額」を算出するものである。したがって、会社分割等には、分社型分割(法人税法第2条第12号の10に規定するものをいう。)のように、分割による対価として分割承継法人(同条第12号の2に規定するものをいう。以下同じ。)が発行する株式その他の資産が、分割法人(同条第12号の3に規定するものをいう。以下同じ。)だけに交付されるもの及び資本金等の額(同条第16号に規定するものをいう。以下同じ。)の変動を伴わない利益剰余金を原資とする配当は含まれないこととなる。

3. また、特定事業用資産相続人等が特定受贈同族会社株式等について特定事業用資産の特例の適用を受けるためには、当該特定受贈同族会社株式等の贈与者である被相続人の相続税の申告期限まで当該特定受贈同族会社株式等を有していることが要件(以下「保有要件」という。)の一つとされている(措法69の52十二)。したがって、保有要件を満たさないこととなる自己株式の取得(特定事業用資産相続人等からみれば特定受贈同族会社株式等の譲渡)や措置法令第40条の2の2第11項第3号、第5号及び第6号に掲げる事由に該当しない法人の合併、株式交換、株式移転及び組織変更があった場合には、特定受贈同族会社株式等について特定事業用資産の特例の適用がないことから、上記1の計算規定を適用する必要性がないこととなる。

4. そこで、69の5−9では、会社分割等には次に掲げる事由は含まれないことを留意的に明らかにした。

(1) 法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第12号の10((定義))に規定する分社型分割

(2) 資本金の額若しくは資本剰余金の額の減少を伴わない剰余金の配当(同法第2条第12号の9に規定する分割型分割を除く。)又は利益の配当

(3) 自己株式の取得

(4) 措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる法人の合併、第5号に掲げる株式交換及び第6号に掲げる株式移転に当たらない法人の合併、株式交換及び株式移転

(5) 組織変更

5. なお、69の5−9の注書では、特定受贈同族会社株式等とみなされる対応株式とは、措置令第40条の2の2第11項各号に掲げる事由により交付されたものに限られることから、上記(3)から(5)に掲げる事由により交付された株式又は出資は、特定事業用資産の特例の対象とならないことを留意的に明らかにした。

(会社分割等により特定事業用資産相続人等が対応株式等を取得していない場合)

69の5−10 特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等(以下69の5−12までにおいて「分割等対象株式等」という。)について会社分割等があったことにより、当該特定事業用資産相続人等が措置法令第40条の2の2第10項第2号に規定する対応株式(以下69の5−16までにおいて「対応株式」という。)及び第3号に規定する剰余金の配当として金銭その他の資産の交付を受けていない場合には、当該分割等対象株式等について同条第10項から第12項に規定する計算は要しないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1. 平成18年度税制改正により、特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等について、当該特定受贈同族会社株式等の贈与者である被相続人に係る相続税の申告期限までの間に、会社分割等があり、かつ、当該特定事業用資産相続人等が対応株式又は非対応株式等の交付を受けた場合における措置法第69条の5第1項に規定する相続税の課税価格に参入すべき価額の基礎となる次に掲げるものの計算規定(措令40の2の210111213)が整備された。

(1) 特定受贈同族会社株式等の価額

(2) 対応株式の価額

(3) 非対応株式等が交付された場合における相続税の課税価格

2. ところで、会社法は、異なる種類の株式(種類株式)や剰余金の配当を受ける権利等について株主ごとに異なる取扱いを行うことができる(会社法108、109)とされ、例えば、種類株式発行会社にあっては、ある種の種類株主に対してのみ株式無償割当てができることとなった(会社法185)。したがって、会社分割等に際してある種類株主には株式無償割当てが行われ、別の種類株主には株式無償割当てが行われないといったケースも生じることになり、この場合において、当該株式無償割当てを受けなかった特定事業用資産相続人等について上記1の計算規定が適用されるのか否か疑義が生じるところである。

3. しかしながら、上記1の計算規定は、特定事業用資産相続人等が対応株式又は非対応株式等の交付を受けた場合に適用されることは文理上明らかであることから、69の5−10では、そのことを留意的に明らかにした。

(法人の分割があった場合の措置法令第40条の2の2第10項第3号イの金額)

69の5−11 法人の分割(措置法令第40条の2の2第11項第4号に掲げる法人の分割に当たらない法人の分割をいう。)があった場合の同条第10項第3号イに掲げる金額とは、分割によって分割法人(法人税法第2条第12号の2に規定する「分割法人」をいう。)の株主又は出資者である特定事業用資産相続人等が交付を受けた分割承継法人(同条第12号の3に規定する「分割承継法人」をいう。)の株式又は出資以外の金銭その他の資産の金額(当該金額のうち所得税法(昭和40年法律第33号)第24条第1項((配当所得))又は第25条第1項((配当等とみなす金額))の規定により配当所得の対象とされるものを除く。)をいうのであるから留意する。
(注) 69の5−14(注)2参照

(新設)

(説明)

1. 平成18年度税制改正により、特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等について会社分割等があったことにより、当該特定事業用資産相続人等が非対応株式等の交付を受けた場合には、措置法令40条の2の2第12項の規定により計算した金額(以下「第12項の金額」という。)を、相続税の課税価格に算入することとされた。

2. ところで、第12項の金額の計算は、同条第10項第3号イに掲げる金額及びロに掲げる金額の合計額を基として行うのであるが、同号イに掲げる金額に含まれないとされる「『株式及び出資に係る価額』並びに所得税法第25条の規定により配当とみなされる金額『(当該株式及び出資に係るものを除く。)』」とは、具体的に何を指すのか疑義が生じるところである。

3. しかしながら、措置法令40条の2の2第10項第3号ロでは、特定受贈同族会社株式等に対応する株式又は出資(対応株式を除く。以下「非対応株式」という。)に係る法人の資本等の金額を基として、当該特定受贈同族会社株式等に係る特定事業用資産相続人等に交付された金額を計算することとされていることから、同号イに掲げる金額に当該非対応株式の価額が含まれると重複することとなる。したがって、同号イのかっこ書の前段に規定する「株式及び出資に係る価額」とは、非対応株式の価額を指し、また、後段に規定する「所得税法第25条の規定により配当とみなされる金額」(以下「みなし配当の金額」という。)から除かれる「当該株式及び出資に係るもの」とは、前段で非対応株式の価額を除外していることから、当該非対応株式に係るみなし配当の金額を指すものと解される(後段に規定する「所得税法第25条の規定により配当とみなされる金額」から「当該株式及び出資に係るもの」を除いているのは、前段で非対応株式の価額を除いていることから、当該非対応株式の価額のうちにみなし配当の金額とされるものが含まれていると、みなし配当の金額を重複して除くことになるからである。)。

4. そこで、69の5−11では、同号イ及びロに掲げる金額が生ずる場合は、通常、法人の分割(措置令第40条の2の2第11項第4号に掲げる法人の分割に当たらない法人の分割をいう。以下この項において同じ。)であることから、当該事由を例として、同条第10項第3号イに掲げる金額には次に掲げる金額が含まれないことを留意的に明らかにした。

(1) 非対応株式の価額

(2) 所得税法第24条第1項(配当所得)の規定により配当所得の対象とされた金額(69の5−9の説明参照)

(3) みなし配当の金額

5. なお、69の5−11の注書は、法人の分割により分割法人(法人税法第2条第12号の2に規定する分割法人をいう。)から非対応株式に代わるものとして交付を受けた分割承継法人(同条第12号の3に規定する分割承継法人をいう。)の1株未満の端数株式の譲渡代金については、69の5−14の注2により非対応株式として取り扱うこととしていることから、当該1株未満の端数株式の数は措置法令第40条の2の2第10項第3号ロに規定する特定事業用資産相続人等が交付を受けた非対応株式の数に加算したところで同号ロに掲げる金額の計算を行うことを留意的に明らかにした。

(会社分割等があった場合の相続税の課税価格に加算する特定受贈同族会社株式等の価額の計算)

69の5−12 措置法令第40条の2の2第10項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を当該会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している当該分割等対象株式等の数又は口数で除して得た価額」、第11項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している対応株式の数又は口数で除して得た価額」又は第12項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た金額」の計算方法を算式で示すと、次に掲げるとおりである。

(1)同条第10項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を当該会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している当該分割等対象株式等の数又は口数で除して得た価額」

AxB/(B+C+D)/e

(2)同条第11項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している対応株式の数又は口数で除して得た価額」

AxC/(B+C+D)/h

(3)同条第12項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た金額」

AxD/(B+C+D)

(注)算式中の符号及び計算上生じた一円未満の端数の処理については、次のとおりである。

1. 算式中の符号

Aは、次の算式により計算した措置法令第40条の2の2第10項の会社分割等前株式等総額

a x b

 aは、分割等対象株式等に係る贈与の時における一株又は一口当たりの価額(既に同条第10項又は第11項の規定の適用を受けた場合には当該規定の適用後の価額)
 bは、会社分割等があった時(以下69の5−12において「会社分割等時」という。)前に特定事業用資産相続人等が有していた分割等対象株式等の数又は口数 

Bは、次の算式により計算した措置法令第40条の2の2第10項第1号に掲げる金額(当該金額に小数点第三位未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てて差し支えないものとする。以下C及びDの金額について同じ。)

cxe/d

 cは、会社分割等時後における分割等対象株式等に係る法人の法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額(以下f及びjにおいて「資本金等の額」という。)
 dは、cの法人の発行済株式の総数(当該法人が有する自己株式の数を除く。以下g及びkにおいて同じ。)又は出資の総口数
 eは、会社分割等時後に特定事業用資産相続人等が有するcの法人に係る分割等対象株式等の数又は口数

Cは、次の算式により計算した措置法令第40条の2の2第10項第2号に掲げる金額

fxh/g

fは、会社分割等(同条第11項各号に掲げる事由に該当するものに限る。)により特定事業用資産相続人等が取得した対応株式に係る法人の資本金等の額
 gは、fの法人の発行済株式の総数又は出資の総口数
 hは、会社分割等時後に特定事業用資産相続人等が有するfの法人に係る対応株式の数又は口数

Dは、次の算式により計算した措置法令第40条の2の2第10項第3号に掲げる金額の合計額

i+jxl/k

 iは、会社分割等(同条第11項各号に掲げる事由に該当するものを除く。以下、j において同じ。)により特定事業用資産相続人等が特定受贈同族会社株式等に係る剰余金の配当として交付を受けた金銭その他の資産の金額(69の5−11参照)
 jは、会社分割等により特定事業用資産相続人等が取得した特定受贈同族会社株式等に対応する株式又は出資(以下 lにおいて「非対応株式」という。)に係る法人の資本金等の額
 kは、jの法人の発行済株式の総数又は出資の総口数
 lは、会社分割等時後に特定事業用資産相続人等が有するjの法人に係る非対応株式の数又は口数

2. 計算上生じた一円未満の端数の処理
 上記(1)から(3)の算式により計算された価額又は金額に一円未満の端数がある場合には、課税上弊害がない限り、その端数金額を切り捨てて差し支えないものとする。

(新設)

(説明)

1. 平成18年度税制改正により、特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等について、特定受贈同族会社株式等の贈与者である被相続人に係る相続税の申告期限までの間に、会社分割等があり、かつ、当該特定事業用資産相続人等が対応株式又は非対応株式等の交付を受けた場合における措置法第69条の5第1項に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の基礎となる次に掲げるものの計算規定(措令40の2の210111213)が整備された。

(1)特定受贈同族会社株式等の価額

(2)対応株式の価額

(3)非対応株式等が交付された場合における相続税の課税価格

69の5−12は、これらの計算規定を算式で示したものである。

2. なお、69の5−12の注書では、第一に、措置法令40条の2の2第10項第1号に掲げる金額、第2号に掲げる金額及び第3号に掲げる金額の合計額に小数点以下第三位未満の端数が生じた場合には、その端数を切り捨てても差し支えないこと、第二に、同項各号に規定する「法人の発行済株式の総数」には、当該法人が有する自己株式の数を除くこと、第三に、同条第10項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を当該会社分割等後に当該特定事業用資産相続人等が有している当該分割等対象株式等の数又は口数で除して得た価額」、第11項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た価額を会社分割等時後に当該特定事業用資産相続人等が有している対応株式の数又は口数で除して得た価額」及び第12項に規定する「会社分割等前株式等総額に特定割合を乗じて得た金額」 に1円未満の端数がある場合には、課税上弊害がない限り、その端数金額を切り捨てて差し支えないことを留意的に明らかにした。

(参考)

 69の5−12の計算の具体例を示すと次のとおりである。

【例1】 会社分割に伴い、特定受贈同族会社株式等の株式の発行法人である甲社(分割法人)より、乙社(分割承継法人)の株式の交付を受けた場合における「甲社の1株当たりの価額(本通達(1)の価額)」及び「乙社の1株当たりの価額(本通達(2)の価額)」の計算

1 甲社に係る贈与の時における1株当たりの価額 7,500円

2 分割前に特定事業用資産相続人等が有する甲社に係る特定受贈同族会社株式等の株数 5,000株

3 分割後における甲社(分割法人)の資本金等の額 80,000,000円

4 分割後における甲社の発行済株式の総数(自己株式の数を除く) 10,000株

5 分割後に特定事業用資産相続人等が有する甲社に係る特定受贈同族会社株式等の株数 5,000株

6 分割後における乙社(分割承継法人)の資本金等の額 20,000,000円

7 分割後における乙社の発行済株式の総数(自己株式の数を除く) 2,000株

8 分割後に特定事業用資産相続人等が有する2の株数に対応する乙社の株数 1,000株

(計算)

イ 「A」の数値の計算 37,500,000円

(1x2)         

ロ 「B」の数値の計算 40,000,000円

3x5/4 

ハ 「C」の数値の計算 10,000,000円

6x8/7   

二 「e」の数値 5,000株

(5)  

ホ 「h」の数値1,000株

(8)  

ヘ 甲社(特定受贈同族会社株式等)の一株当たりの価額の計算6,000円

A×B/B+C÷e   

ト 乙社(対応株式)の一株当たりの価額の計算7,500円

A×C/B+C÷h   

【例2】 例1の会社分割後、甲社が資本剰余金を原資とする配当を行った場合における「甲社の1株当たりの価額(本通達(1)の価額)」及び「特定事業資産の特例の対象とならない金額(本通達(3)の金額)」の計算

1 甲社に係る例1の会社分割後(配当前)における1株当たりの価額   6,000円

2 配当前に特定事業用資産相続人等が有する甲社に係る特定受贈同族会社株式等の株数   5,000株

3 配当後における甲社の資本金等の額 70,000,000円

4 配当後における甲社の発行済株式の総数(自己株式の数を除く。)   10,000株

5 配当後に特定事業用資産相続人等が有する甲社に係る特定受贈同族会社株式等の株数   5,000株

6 2の株数に対応する資本剰余金を原資とする配当の金額  5,000,000円

(計算)

イ 「A」の数値の計算 30,000,000円

(1x2)  

ロ 「B」の数値の計算 35,000,000円

3x5/4    

ハ 「D」の数値5,000,000円

(6)   

(注)「D」の数値の計算に当たっては、本通達によればi+jxl/kとなるのであるが、例2においては、当該算式中のj、k及びlに相当する株式又は出資がないため、「D」の数値はiに相当する金額(6の配当の金額)のみとなる。

二 「e」の数値 5,000株

(5)   

ホ 甲社(特定受贈同族会社株式等)の一株当たりの価額の計算 5,250円

A×B/B+D/÷e   

ト 特定事業用資産の特例の対象とならない金額 3,750,000円

AxB/B+D   

(対応株式として合同会社の出資を取得した場合)

69の5−13 措置法令第40条の2の2第11項第3号から第5号に掲げる事由により特定受贈同族会社株式等に対応する株式(出資を含む。以下69の5−14において同じ。)として、合同会社の出資を取得した場合には、当該出資は対応株式に該当し、当該出資は措置法第69条の5第1項の規定の適用があるのであるから留意する。

(新設)

(説明)

 特定事業用資産の特例の対象となる特定受贈出資には、合同会社の出資は含まれないのであるが、措置法令第40条の2の2第11項第3号から第5号に掲げる事由(特定受贈同族会社株式等に係る法人の合併、分割、株式交換)により、特定事業用資産相続人等が有する特定受贈同族会社株式等に対応する株式等として合同会社の出資を取得した場合の当該出資は、同項の規定により特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から引き続き有する当該特定受贈同族会社株式等とみなされることから、当該出資は措置法第69条の5第1項の規定の適用があることになる。
 69の5−13では、そのことを留意的に明らかにした。

(合併に際し合併法人から端数株式の譲渡代金を取得した場合)

69の5−14 分割等対象株式等の発行法人が行った合併が措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる合併に該当するかどうかの判定をする場合において、合併法人(法人税法第2条第12号に規定する「合併法人」をいう。)が合併に際し、被合併法人(同条第11号に規定する「被合併法人」をいう。)の株主に交付する株式に一株未満(一口未満を含む。以下69の5−14において同じ。)の端数が生じたためその端数の合計数に相当する株式を他に譲渡し、その譲渡代金を当該株主に交付したときは、当該株主に対してその一株未満の端数に相当する株式(以下69の5−14において「端数株式」という。)を交付したものとして取り扱うことに留意する。
 なお、上記の取扱いにより当該合併が措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる合併に該当することとなった場合の同項に規定する対応株式の一株又は一口当たりの価額(以下69の5−14において「対応株式の価額」という。)の計算に際しては、当該端数株式の数又は口数を同条第10項第2号及び第11項に規定する「対応株式の数又は口数」に加算して計算することになるのであるが、当該端数株式については、措置法第69条の5第1項の規定の適用がないのであるから留意する。

(注)

1 上記の取扱いは、措置法令第40条の2の2第11項第4号から6号に掲げる事由に該当するかどうかの判定をする場合について準用する。

2 上記なお書の対応株式の価額の計算方法は次に掲げる計算について準用する。

(1)措置法令第40条の2の2第11項第1号、第2号、第4号、第5号又は第6号に掲げる事由により取得した対応株式の価額の計算

(2)同条第11項第2号に掲げる株式無償割当て又は第4号に掲げる法人の分割に当たらない株式無償割当て又は法人の分割(以下69の5−14において「株式無償割当て等」という。)があった場合の同条第10項第3号ロに掲げる金額の計算

(3)同条第11項第1号、第2号、第4号に掲げる事由又は株式無償割当て等があった場合の同条第10項に規定する分割等対象株式等の一株又は一口当たりの価額の計算

(新設)

(説明)

1. 特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等に係る法人の合併に際し、当該法人の株主又は出資者に対して、合併法人(法人税法第2条第12号に規定する「合併法人」をいう。以下同じ。)から次に掲げる資産以外の資産の交付がなされた場合には、当該合併は、措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる合併に該当しないこととなる。

(1) 当該合併により資産及び負債を承継した法人の株式

(2) 株式に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配として交付される金銭その他の資産(資本剰余金の額の減少に伴うものを除く。)

(3) 当該合併に反対する当該法人の株主又は出資者に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産

2. ところで、会社法第234条第1項((一に満たない端数の処理))の規定により、合併に際し、被合併法人(法人税法第2条第11号に規定する「被合併法人」をいう。)の株主(出資者を含む。以下同じ。)に合併法人の株式(出資を含む。以下同じ。)を交付する場合において、当該株主に交付しなければならない当該合併法人の株式の数に1株未満(1口未満を含む。以下同じ。)の端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に1に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てる。)に相当する数の株式を譲渡し、かつ、その端数に応じてその譲渡により得られた代金(以下「1株未満の端数の譲渡代金」という。)を当該株主に対して交付しなければならないこととされている。

3. したがって、合併に際し、合併法人から被合併法人の株主である特定事業用資産相続人等が合併法人の株式以外に1株未満の端数の譲渡代金の交付を受けた場合には、当該合併法人の株式については、特定事業用資産の特例の適用が受けられないのではないかとの疑義が生ずるところである。

4. しかしながら、会社法第234条第1項においては、「その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式に1株に満たない端数があるときは、・・・」と規定されていることからも明らかであるように本来ならば当該端数は株主に交付されるべきものであること、また、法人税法上、合併法人側は、このような場合の1株未満の株式の処理に伴い株主に交付すべきものとして収入する金額又は株主に交付した金額は、合併法人の益金又は損金の額に算入しないこととされている(法令139の3)ことを踏まえれば、会社法第234条第1項の規定等に基づき譲渡代金が株主に交付された場合には、当該株主に対して1株未満の端数に相当する株式(以下「端数株式」という。)が交付されたものとして取り扱うことが相当である。

5. そこで、69の5−14では、被合併法人が特定受贈同族会社株式等に交付する株式に1株未満の株式が生じたため、その1株未満の株式の合計数に相当する株式を他に譲渡し、その譲渡代金を当該株主に交付したときは、当該株主に対してその端数株式を交付したものとして取扱うこととし、当該取扱いにより当該合併が同号に規定する合併に該当することとなった場合の同項に規定する対応株式の1株又は1口当たりの価額(以下「対応株式の価額」という。)の計算に際しては、当該端数株式の数又は口数を措置法令第40条の2の2第10項第2号及び第11項に規定する「対応株式の数又は口数」に加算して計算することになるのであるが、当該端数株式については、措置法第69条の5第1項の規定の適用がないことを留意的に明らかにした。

6. なお、69の5−14の注書では、69の5−14の取扱いは、措置法令第40条の2の2第11項第4号から第6号に掲げる事由に該当するかどうかの判定をする場合について準用すること及び69の5−14のなお書の対応株式の価額の計算方法は、次に掲げる計算について準用することを留意的に明らかにした。

(1)措置法令第40条の2の2第11項第1号、第2号、第4号、第5号又は第6号に掲げる事由により取得した対応株式の価額の計算

(2)同条第11項第2号に掲げる株式無償割当て又は第4号に掲げる法人の分割に当たらない株式無償割当て又は法人の分割(以下「株式無償割当て等」という。)があった場合の同条第10項第3号ロの金額の計算

(3)同条第11項第1号、第2号、第4号に掲げる事由又は株式無償割当て等があった場合の同条第10項に規定する分割等対象株式等の一株又は一口当たりの価額の計算

(会社分割等があった場合の相続税の課税価格に加算する特定同族会社株式等の価額の計算)

69の5−15 会社分割等があった場合の特定同族会社株式等及び措置法令第40条の2の2第11項に掲げる事由により取得した特定同族会社株式等に対応する株式の価額の計算並びに第12項の規定による相続税の課税価格の計算に当たっては、69の5−9((会社分割等の意義))から69の5−14((合併に際し合併法人から端数株式の譲渡代金を取得した場合))を準用する。

(新設)

(説明)

 措置令第40条の2の2第13項の規定により特定事業用資産相続人等の有する特定同族会社株式等について会社分割等があった場合(当該特定同族会社株式等に係る被相続人の死亡の日から当該被相続人に係る相続税の申告期限までの間に限る。)には、同条第10項から第12項の規定を準用することとされていることから、69の5−15では、当該特定同族会社株式等について会社分割等があった場合には69の5−9から69の5−14までの取扱いを準用することを留意的に明らかにした。

(役員である期間の意義)

69の5―16 措置法第69条の5第2項第11号ロ(2)に規定する政令で定める期間において、選択特定事業用資産である特定受贈同族会社株式等に係る法人の措置法規則第23条の2の2第13項に規定する役員(以下69の5―16において「役員」という。)としての地位を有しているかどうかは、役員であった期間(当該特定受贈同族会社株式等の贈与の時以後の期間に限る。)を合計した期間が当該政令で定める期間以上の期間であるかどうかで判定するのであるから留意する。

(注)

1 当該法人に係る特定受贈同族会社株式等の贈与が複数回あるため上記の政令で定める期間が異なることとなる場合には、各贈与に係る当該政令で定める期間ごとに上記の判定を行うのであるから留意する。

2 特定事業用資産相続人等が有する対応株式に係る法人の役員である期間の判定を行う上での措置法令第40条の2の2第9項に規定する贈与の日は、当該対応株式に係る特定受贈同族会社株式等を贈与により取得した日であるが、当該贈与の日から当該対応株式を取得することとなった同条第11項各号に掲げる事由が生じた時までの間において、当該特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る法人の役員であった場合には、当該期間において当該役員であった期間は、当該対応株式に係る法人の役員であった期間とみなして、上記の判定を行うものとして取り扱うことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)

1. 措置法令第40条の2の2第11項各号に掲げる事由により、特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等に係る対応株式の交付を受けた場合には、当該対応株式は、特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から引き続き有する当該特定受贈同族会社株式等とみなされ、当該対応株式については保有要件その他一定の要件を満たす限り特定事業用資産の特例の適用を受けることができる。

2. ところで、特定事業用資産相続人等が有する特定受贈同族会社株式等について特定事業用資産の特例を受けるためには、当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から当該贈与に係る贈与者である被相続人の相続税の申告期限を経過する時までの間のうち、当該特定事業用資産相続人等は、同条第9項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める期間において当該特定受贈同族会社株式等に係る法人の役員となっていなければならない(以下「役員要件」という。)とされている。

3. したがって、例えば、同条第11項第3号に掲げる合併により、特定事業用資産相続人等が対応株式の交付を受け、当該特定事業用資産相続人等が当該対応株式に係る法人の役員要件を満たしているか否かの判定を行う場合において、当該対応株式の贈与の日は何時なのか、また、当該特定事業用資産相続人等は当該合併前において当該対応株式に係る法人の役員であったとみることができるのか、疑義の生ずるところである。

4. しかしながら、当該対応株式については、当該特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から引き続き有する当該特定受贈同族会社株式等とみなされていることから、前者は当該特定受贈同族会社株式等の贈与を受けた日であり、また、後者は当該合併前において当該特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る法人の役員であった期間(当該贈与の時から当該合併の時までの期間に限る。)は、当該対応株式に係る法人の役員であったとみることが相当である。
 69の5−16では、そのことを注書で留意的に明らかにした。

(参考)

○ 特定受贈同族会社株式等に係る法人の合併(措置法令第40条の2の2第11項第3号に掲げる合併をいう。)があった場合の役員期間 判定の基となる期間の図