(同族会社の募集株式引受権)

9−4 同族会社が新株の発行(当該同族会社の有する自己株式の処分を含む。以下9―7までにおいて同じ。)をする場合において、当該新株に係る引受権(以下9―5までにおいて「募集株式引受権」という。)の全部又は一部が会社法(平成17年法律第86号)第206条各号((募集株式の引受け))に掲げる者(当該同族会社の株主の親族等(親族その他法施行令第31条に定める特別の関係がある者をいう。以下同じ。)に限る。)に与えられ、当該募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、当該株主の親族等が、当該募集株式引受権を当該株主から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。ただし、当該募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となる場合を除くものとする。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)
  株式会社の新株の発行手続等については、会社法(平成17年法律第86号、平成18年5月1日施行)の創設により、概ね次のような改正が行われた。

(1) 新株の発行の手続と自己株式の処分手続の一本化
 改正前の商法では、自己株式の処分手続について新株の発行手続に関する規定を準用することとされていたが、会社法では、両者の規律を一本化し、両行為の手続を同じ手続と整理することとし、新株を発行する場合と自己株式を処分する場合の双方について、募集に応じて株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式を「募集株式」として区別せずに扱うこととされた。
 なお、募集には、改正前の新株の発行又は自己株式の処分の方式であった「株主割当」、「第三者割当」及び「公募」が含まれる。

(注) 

1 株主割当とは、株主の持株数に比例して新株を割当てる方法をいう(会社法202)。

2  第三者割当とは、会社の役員・従業員や取引先などに対して新株を割当てる方法をいい、株主中の特定の者に対して行う場合もこれに含まれる。

3  公募とは、株式を引受ける者を募集し、応募した者の中から株式を割当てる者を決定する方法をいう。

(2) 株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合の再募集の禁止等
 会社法では、株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合において、株主が申込期日までに申込みをしないときは、当該株主は募集株式の割当てを受ける権利を失うこととなる (会社法2044)。この点については改正前の商法と同じであるが、会社法では、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合の手続と、第三者に対して募集をする場合の手続とでは、別個の規律が設けられており、前者の手続における株式の割当てを受ける権利を第三者に引き受けさせるためには、別の募集手続である後者の手続を経なければならないことが明らかにされた。
 また、会社が保有する自己株式については、株式の割当てを受ける権利を与えることはできないこととされた(会社法2022)。

そこで、上記の改正を受け、自己株式の処分に係る引受権についても贈与により取得したものとして贈与税の課税対象となることなどを相基通9−4の改正により留意的に明らかにした。

(参考)
会社法(抜すい)

(募集事項の決定)

第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。

一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)

二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法

三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額

四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間

五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)

第二百二条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨

二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日

2 前項の場合には、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。

3 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。

一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定

二 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議

三 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議

四 前三号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議

4 株式会社は、第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第二号の期日の二週間前までに、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。

一 募集事項

二 当該株主が割当てを受ける募集株式の数

三 第一項第二号の期日

5 第百九十九条第二項から第四項まで及び前二条の規定は、第一項から第三項までの規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。

(出資の履行)

第二百八条 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

2 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。

3 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。

4 出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利の譲渡は、株式会社に対抗することができない。

5 募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。

(合同会社等の増資)

9―6 同族会社である合同会社及び合資会社の増資については、9―4及び9―5の取扱いに準ずるものとする。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)
  会社法制の整備等に伴い、有限会社法が廃止され、新たに合同会社が創設されたことから、合同会社についても相基通9−4及び9−5の取扱いが準用されることなどを相基通9−6の改正により留意的に明らかにした。
 なお、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成17年法律第87号、平成18年5月1日施行)の規定により、廃止前の旧有限会社法の規定による有限会社は、会社法の規定による株式会社として存続すること(整備法21)、当該有限会社の出資は、株式とみなすこと(整備法22)とされている。

(参考)
 ○ 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(抜すい)

第二条 前条第三号の規定による廃止前の有限会社法(以下「旧有限会社法」という。)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(以下「旧有限会社」という。)は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後は、この節の定めるところにより、会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による株式会社として存続するものとする。

2 前項の場合においては、旧有限会社の定款、社員、持分及び出資一口を、それぞれ同項の規定により存続する株式会社の定款、株主、株式及び一株とみなす。

3 第一項の規定により存続する株式会社の施行日における発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、同項の旧有限会社の資本の総額を当該旧有限会社の出資一口の金額で除して得た数とする。

(商号に関する特則)

第三条 前条第一項の規定により存続する株式会社は、会社法第六条第二項の規定にかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない。

2 前項の規定によりその商号中に有限会社という文字を用いる前条第一項の規定により存続する株式会社(以下「特例有限会社」という。)は、その商号中に特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

3 特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社は、その商号中に、特例有限会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

○ 合同会社について
合同会社(いわゆる日本版LLC)は、有限責任社員だけからなる持分会社であり(会社法5764)、合同会社特有の規律として、全額出資規制(会社法578)、会社債権者による計算書類の閲覧権(会社法625)、分配規制(会社法626〜636)、任意清算手続の不許(会社法6681)の規定が設けられている。

(同族会社の新株の発行に伴う失権株に係る新株の発行が行われなかった場合)

9―7 同族会社の新株の発行に際し、会社法第202条第1項((株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合))の規定により株式の割当てを受ける権利(以下9―7において「株式割当権」という。)を与えられた者が株式割当権の全部若しくは一部について同法第204条第4項((募集株式の割当て))に規定する申込みをしなかった場合又は当該申込みにより同法第206条第1号に規定する募集株式の引受人となった者が同法第208条第3項((出資の履行))に規定する出資の履行をしなかった場合において、当該申込み又は出資の履行をしなかった新株(以下「失権株」という。)に係る新株の発行が行われなかったことにより結果的に新株発行割合新株の発行前の当該同族会社の発行済株式の総数(当該同族会社の有する自己株式の数を除く。以下9―7において同じ。)に対する新株の発行により出資の履行があった新株の総数の割合をいう。以下9―7において同じ。)を超えた割合で新株を取得した者があるときは、その者のうち失権株主(新株の全部の取得をしなかった者及び結果的に新株発行割合に満たない割合で新株を取得した者をいう。以下9―7において同じ。)の親族等については、当該失権株の発行が行われなかったことにより受けた利益の総額のうち、次の算式により計算した金額に相当する利益をその者の親族等である失権株主のそれぞれから贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。

(1) その者が受けた利益の総額
(1)その者が受けた利益の総額の算式

(2) 親族等である失権株主のそれぞれから贈与により取得したものとする利益の金額
(2)親族等である失権株主のそれぞれから贈与により取得したものとする利益の金額の算式

(注) 

1 (1)の算式中の「A」は次により計算した価額による。
(注)1(1)「A」の算出のための算式

2 (2)の算式中の「F」は失権株主のそれぞれについて次により計算した金額の合計額による。
(D×B+E×C)−A×(B+C)

3 (2)の算式中の「G」は、失権株主のうち親族等である失権株主のそれぞれについて2の算式により計算した金額による。

※下線部分が改正部分である。

(改正)

(説明)
  改正前の相基通9−7では、増資割合(増資前のその同族会社の発行済株式の総数に対する増資により引受けがあった新株の総数の割合をいう。)を基準とし、その割合を超えた割合で新株を引き受けることとなった者を当該増資に係る贈与税の課税対象としてきたが、会社法では、株式会社が保有する自己株式については、株式の割当てを受ける権利を与えることはできないこととされた(会社法2022)ことから、当該増資割合(新株発行割合)の算出の基となる「同族会社の発行済株式の総数」には、当該同族会社の保有する自己株式の数は含まれないことなどを相基通9−7の改正により留意的に明らかにした。

(参考)
会社法(抜すい)

(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)

第二百二条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨

二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日

2 前項の場合には、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。

3〜4 (省略)

5 第百九十九条第二項から第四項まで及び前二条の規定は、第一項から第三項までの規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。

(募集株式の割当て)

第二百四条 株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第二項第二号の数よりも減少することができる。

2 募集株式が譲渡制限株式である場合には、前項の規定による決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

3 株式会社は、第百九十九条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。

4 第二百二条の規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合において、株主が同条第一項第二号の期日までに前条第二項の申込みをしないときは、当該株主は、募集株式の割当てを受ける権利を失う。

(募集株式の引受け)

第二百六条 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。

一 申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数

二 前条の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数

(出資の履行) 

第二百八条 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

2 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。

3 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。

4 出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利の譲渡は、株式会社に対抗することができない。

5 募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。