(受贈者が旧法第70条の4第6項の規定の適用を受けている場合)

1 旧法第70条の4第1項本文の規定の適用を受ける受贈者(以下「受贈者」という。)が同条第6項に定めるところにより推定相続人のうちの1人に対し同条第1項の規定の適用を受ける農地等(以下「特例適用農地等」という。)につき使用貸借による権利の設定をし、同条第6項の規定の適用を受けているときは、当該受贈者が法附則第55条第3項の規定の適用を受ける余地はないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1 平成17年度税制改正により、平成17年3月31日までに農地等の贈与を受けた受贈者が、1所得税法等の一部を改正する法律(平成17年法律第21号)等の施行に伴う同法による改正前の租税特別措置法(以下「旧法」という。)第70条の4第1項の規定の適用を受けている場合において、当該受贈者(以下「受贈者」という。)が、平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間で、かつ、その農地等の贈与に係る贈与者の死亡の日前に、一定の要件を満たす農業生産法人(以下「特定農業生産法人」という。)に対し、同項の規定の適用を受ける農地等(以下「特例適用農地等」という。)のすべて(法附則第55条第5項の規定の適用を受ける同項の借受代替農地等(以下「借受代替農地等」という。)に係る同項の貸付特例適用農地等(以下「貸付特例適用農地等」という。)を除く。)について使用貸借による権利の設定を行い、当該設定をしたことについての届出書が当該設定をした日から2か月を経過する日までに受贈者の納税地の所轄税務署長に提出されたときは、その使用貸借による権利の設定はなかったものとみなし、また、2旧法第70条の4第8項の規定の適用を受けている受贈者が、平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間で、かつ、その農地等の贈与に係る贈与者の死亡の日前に、特定農業生産法人に対し、貸付特例適用農地等に係る借受代替農地等のすべてについて使用貸借による権利の設定を行い、当該設定をしたことについての届出書が当該設定をした日から2か月を経過する日までに受贈者の納税地の所轄税務署長に提出されたときは、当該借受代替農地等が当該特定農業生産法人の農業の用に供されているときに限り、当該借受代替農地等が受贈者の農業の用に供されているものとみなして、それぞれ贈与税の納税猶予の継続適用を認めることとされた(法附則5535、以下「附則による納税猶予の継続の特例」という。)。

2 ところで、贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている者には、1自ら所有する農地等の上で農業経営を行っている者と2農業者年金基金法の規定に基づく特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるため、推定相続人の1人に対して農業経営を移譲している者とが存することから、旧法第70条の4第6項の規定の適用者について、附則による納税猶予の継続の特例の適用があるのかどうかについて疑義が生ずるところである。

3 そこで、通達1は、旧法第70条の4第6項の規定の適用者に係る附則による納税猶予の継続の特例の適用関係を留意的に明らかにした。すなわち、附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けようとする受贈者が、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるために推定相続人の1人に対して特例適用農地等につき使用貸借による権利を設定し、既に旧法第70条の4第6項の規定の適用を受けていた場合には、その推定相続人の特定農業生産法人に対する使用貸借による権利の移転が納税猶予期限の全部確定事由に該当する(旧法70の417)ので、当該受贈者について附則による納税猶予の継続の特例の適用の余地はないこととなる。
 ただし、受贈者が既に旧法第70条の4第6項の規定の適用を受けていた場合であっても、当該受贈者が、その推定相続人の死亡に伴い租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第103号)の施行に伴なう同令による改正前の租税特別措置法施行令(以下「旧令」という。)第40条の6第15項第3号の規定の適用を受けているときには、受贈者自らが特例適用農地等において農業経営を再開しており、特定農業生産法人に対し新たに特例適用農地等につき使用貸借による権利の設定をすることができるので、法附則第55条第3項の要件を満たすものである限り、附則による納税猶予の継続の特例の適用があることとなる。

(「農業に必要な農作業に従事する」ことの意義)

2 令附則第33条第3項第3号イ及びロに規定する「農業に必要な農作業に従事する」とは、耕うん、整地、播種、施肥、病虫害防除、水の管理、給餌その他の耕作又は養畜に直接必要な作業に従事することをいい、耕作又は養畜の事業に必要な帳簿の記帳、集金等はこれに含まれないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1 使用貸借による権利の設定を受けた農地法(昭和27年法律第229号)第2条第7項に規定する農業生産法人が法附則第55条第3項に規定する「特定農業生産法人」に該当するためには、受贈者が当該農業生産法人の農地法第2条第7項第2号ニに規定する常時従事者である組合員、社員又は株主で、1年間のうち一定以上の日数について当該農業生産法人の農業(同項第1号に規定する農業をいう。)及び農業に必要な農作業に従事することが要件のひとつとされている。

2 通達2は、農地法上、農作業とは、耕うん、整地、播種、施肥、病虫害防除、水の管理、給餌その他の耕作又は養畜に直接必要な作業をいい、耕作又は養畜の事業に必要な帳簿の記帳、集金等はこれに含まれないこととされており、令附則第33条第3項第3号イ及びロにおける「農作業」の意義についてもこれと異なるものではないことを留意的に明らかにしたものである。

(参考)
○ 農地法(抄)

(定義)

第二条

7 この法律で「農業生産法人」とは、農事組合法人、合名会社、合資会社、株式会社(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるものに限る。以下同じ。)又は有限会社で、次に掲げる要件のすべてを満たしているものをいう。

一 その法人の主たる事業が農業(その行う農業に関連する事業であつて農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるもの、農業と併せ行う林業及び農事組合法人にあつては農業と併せ行う農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第七十二条の八第一項第一号の事業を含む。以下この項において同じ。)であること。

ニ(省略)

三 その法人の常時従事者たる構成員が理事等(農事組合法人にあつては理事、合名会社又は合資会社にあつては業務執行権を有する社員、株式会社又は有限会社にあつては取締役をいう。以下この号において同じ。)の数の過半を占め、かつ、その過半を占める理事等の過半数の者が、その法人の行う農業に必要な農作業に農林水産省令で定める日数以上従事すると認められるものであること。

○ 農地法施行規則(抄)
(法人がその行う農業に関連する事業として行うことができる事業)

第一条の二 法第二条第七項第一号の農林水産省令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 農畜産物の貯蔵、運搬又は販売

ニ 農業生産に必要な資材の製造

三 農作業の受託

○ 「農地法の一部を改正する法律の施行について」(昭和45年9月30日付45農地B2802号)

第2条関係

1 第7項第3号の「農作業」とは、耕うん、整地、播種、施肥、病虫害防除、刈取り、水の管理、給餌、敷わらの取りかえ等耕作又は養畜に直接必要な作業をいう。したがって、耕作または養畜の事業に必要な帳簿の記帳事務、集金等は農作業に含まれない。

(使用貸借による権利の設定の日)

3 法附則第55条第3項に規定する「当該設定をした日」又は同条第5項に規定する「当該借受代替農地等に係る設定をした日」とは、同条第3項又は第5項に規定する特定農業生産法人(令附則第33条第3項に規定する要件を満たす特定農業生産法人をいう。以下「特定農業生産法人」という。)に対する特例適用農地等(法附則第55条第5項の規定の適用を受ける同項の借受代替農地等(以下「借受代替農地等」という。)に係る同項の貸付特例適用農地等(以下「貸付特例適用農地等」という。)を除く。)又は貸付特例適用農地等に係る借受代替農地等に係る使用貸借による権利の設定につき農地法(昭和27年法律第229号)第3条第1項((農地又は採草放牧地の権利移動の制限))の規定による許可があった日(当該許可があった日後に当該権利の設定の効力が生じる場合には当該効力が生じた日をいう。)又は農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第20条に規定する農用地利用集積計画(以下「農用地利用集積計画」という。)に定める日をいうのであるから留意する。
 ただし、この場合において、農地又は採草放牧地が特定農業生産法人の所在地のある市町村の区域内にあるものとその他の区域内にあるものとに分かれていること等により、当該使用貸借による権利の設定の日が異なることとなるときは、これらの日のうち最も遅い日をもって当該設定の日として取り扱うものとする。

(新設)

(説明)

1 受贈者が附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けるためには、特定農業生産法人に対し受贈者が有する特例適用農地等(貸付特例適用農地等を除く。)のすべて又は借受代替農地等のすべてについて使用貸借による権利の設定を行い、かつ、その設定の日から2か月を経過する日までに所轄税務署長に一定の届出書を提出しなければならないこととされている(法附則5535)。

2 この要件については、制度上、宥恕規定は設けられていないので、その権利の設定日が異なる場合又は当該届出書を当該期限内に提出しなかった場合には、附則による納税猶予の継続の特例は受けられず、旧法第70条の4第1項ただし書又は第4項の規定により納税猶予税額の全部又は一部について納税猶予期限が確定することとなる。したがって、使用貸借による権利の設定の日がいつになるかは、この要件を判定する上で極めて重要なこととなる。

3 ところで、法附則第55条第3項又は第5項の規定により使用貸借による権利の設定をしなければならない農地等については、その権利の設定について所轄庁の許可又は農業経営基盤強化促進法第20条に規定する農用地利用集積計画(以下「農用地利用集積計画」という。)の公告が必要とされている農地又は採草放牧地のほか、その権利の設定につき所轄庁の農地法第3条第1項の許可(以下「許可」という。)又は農用地利用集積計画の公告が必要とされていない準農地がある。また、その権利の設定につき所轄庁の許可又は農用地利用集積計画の公告が必要とされている農地又は採草放牧地については、その所在地が2以上の市町村の区域内に分かれているときには、複数の所轄庁の許可又は農用地利用集積計画の公告が必要となるケースがある。

4 通達3は、この使用貸借による権利の設定をした日について、当該権利の存続期間は受贈者と特定農業生産法人との間(以下「当事者」という。)の契約又は農用地利用集積計画において定められることから、その契約により定められた日(当該契約の効力は所轄庁の許可があってはじめて生ずることから、当該契約に定められた日が当該許可のあった日の前日以前に設定されている場合には、当該許可があった日をいう。)又は農用地利用集積計画において定める日をいうことを明らかにした。
 また、通達3のただし書は、例えば、A市とB町の区域内に所在する農地又は採草放牧地について、当事者の契約により使用貸借による権利の設定日を定めた場合において、その契約に定められた日がその設定に係るA市又はB町のいずれか一方の所轄庁の許可があった日より前になっているときには、その設定の日が農地又は採草放牧地の所在により異なることとなる場合が生ずることから、このような場合には、使用貸借による権利の設定をした日のうち最も遅い日をもってその設定の日として取り扱うことを明らかにしたものである。

(使用貸借による権利の設定に関する届出書)

4 法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用を受けようとする受贈者が同項に規定する届出書(以下「使用貸借による権利の設定に関する届出書」という。)を使用貸借による権利の設定の日から2か月を経過する日(以下この4において「期限内」という。)までに提出した場合には、当該使用貸借による権利の設定に関する届出書に係る記載又は添付すべき書類に不備があるときであっても、当該不備が軽微なもので速やかに補完されると認められるときには、同項の規定の適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(注) 当該受贈者が使用貸借による権利の設定に関する届出書を期限内に提出しなかった場合には、法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用は受けられず、旧法第70条の4第1項ただし書又は第10項の規定によりその贈与税の納税猶予税額の全部について納税猶予の期限が確定するのであるから留意する。

(新設)

(説明)    

 受贈者が附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けようとする場合には、使用貸借による権利の設定の日から2か月を経過する日までに所轄税務署長に一定の届出書に一定の書類を添付して提出しなければならないこととされている(法附則5535、規附則1434)。
 したがって、使用貸借による権利の設定の日から2か月を経過する日までに必要な事項が記載され、添付書類が添付された適法な届出書が提出されなければ、附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けることができないこととなるが、その記載又は添付すべき書類に不備があるときであっても、当該不備が軽微なもので速やかに補完されると認められるときには、附則による納税猶予の継続の特例の適用を認めて差し支えないと考える。
 通達4は、このことを明らかにしたものである。


(使用貸借による権利の設定をしなければならないこととされている特例適用農地等の範囲)

5 法附則第55条第3項の規定の適用を受けようとする受贈者は、次の(1)に掲げるものについて、また、同条第5項の規定の適用を受けようとする受贈者は、次の(1)及び(2)に掲げるものについて、一の特定農業生産法人に対し使用貸借による権利の設定をしなければならないのであるから留意する。
 ただし、次の(1)に掲げるもののうち旧令第40条の6第45項各号に掲げる農地等又は敷地若しくは用地については、当該設定を行わなくても差し支えないものとして取り扱う。

(1) 当該設定の時の直前において受贈者が有する農地等のうち旧法第70条の4第1項本文の規定の適用を受けているすべてのもの(同条第15項第3号又は第20項第3号の規定に該当する農地又は採草放牧地(以下「代替取得農地等」という。)を含み、貸付特例適用農地等を除く。)

(2) 当該設定の時の直前において受贈者が有する貸付特例適用農地等に係る借受代替農地等のすべて

(新設)

(説明)

1 受贈者が附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けようとする場合における使用貸借による権利の設定をしなければならない特例適用農地等又は借受代替農地等の範囲については、「使用貸借による権利の設定の時の直前において当該受贈者が有する農地等で旧法第70条の4第1項の規定の適用を受けているもののすべて(当該直前において改正法附則第55条第5項に規定する貸付特例適用農地等に該当するものを除く。)」(令附則334)又は「借受代替農地等のすべて」(令附則337)と規定されている。

2 通達5は、受贈者が法附則第55条第3項の規定の適用を受けようとする場合には、使用貸借による権利の設定の時の直前において受贈者が有する農地等のうち旧法第70条の4第1項本文の規定の適用を受けているすべてのもの(代替取得農地等を含み、貸付特例適用農地等を除く。以下この項において「法附則第55条第3項に規定する農地等」という。)について、また、受贈者が法附則第55条第5項の規定の適用を受けようとする場合には、使用貸借による権利の設定の時の直前において受贈者が有する貸付特例適用農地等に係る借受代替農地等のすべてのもの及び法附則第55条第3項に規定する農地等について、一の特定農業生産法人に対し使用貸借による権利を設定しなければならないことを留意的に明らかにした。

3 なお、旧令第40条の6第45項各号に掲げる農地等又は敷地若しくは用地のように、現に農地等でないものについても、法文理上は、「当該受贈者が有する農地等で旧法第70条の4第1項の規定の適用を受けているもののすべて」に含まれることとなるが、旧令第40条の6第45項第1号に規定する一時的道路用地等の用に供されている農地等については、当該一時的道路用地等に係る事業の施行者に対し地上権、賃借権又は使用貸借権(以下「地上権等」という。)の設定に基づき貸し付けられていることから、物理的に使用貸借による権利の設定が困難であること、また、同項第2号及び第3号に規定する事務所、作業場、倉庫その他の施設又は使用人の宿舎並びに農地又は採草放牧地の保全又は利用上必要な道路、用水路、かんがい用施設その他これらに類する施設の用地については、附則による納税猶予の継続の特例の目的が、優良農地を特定農業生産法人に集積し、かつ、有効利用の促進を図ることからすれば、このような土地についてあえて特定農業生産法人の農業の用に供することを求めることは相当でないと考えられる。
 通達5のただし書は、旧令第40条の6第45項各号に掲げる農地等又は敷地若しくは用地のように、旧法第70条の4第1項の規定の適用を受ける農地等に該当するものであっても現に農地等でないものについては、あえて使用貸借による権利の設定を行わなくても差し支えないものとして取り扱うことを明らかにした。

(法附則第55条第3項の使用貸借による権利の設定があった場合の旧法第70条の4第1項の担保)

6 特例適用農地等が旧法第70条の4第1項に規定する担保に供されている場合には、その特例適用農地等(貸付特例適用農地等を除く。)につき法附則第55条第3項に規定する使用貸借による権利の設定があったときにおいても、その担保を提供した受贈者に対して国税通則法第51条第1項に規定する増担保の提供等を命ずる必要はないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1 法附則第55条第3項に規定する「使用貸借」とは、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる契約をいう(民法593)。この場合、その農地等についての通常の必要経費は借主の負担とされている(民法5951)ので、例えば、農地等の借主である特定農業生産法人と所有者である受贈者との間にその借受けに係る農地等の公租公課に相当する金額以下の授受があるにすぎないものは使用貸借に該当するが、その農地等の借受けについて地代の授受がないものであっても、権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受があるものは、無償で使用させたことにはならないから使用貸借には該当しないこととなる。

2 ところで、旧法第70条の4第1項に規定する担保に供されている特例適用農地等(貸付特例適用農地等を除く。以下この項において同じ。)につき上記の使用貸借による権利が設定された場合に、その特例適用農地等の担保価値が減少するものであるときには、受贈者に対して国税通則法第51条第1項に規定する増担保の提供等を命じなければならない場合が生ずるが、この使用貸借による権利は、返還期間を定めなければ、貸主はいつでも貸地の返還を請求できる等、賃貸借の場合に比して極めて弱いものであること、農地法上も農地の耕作者保護の規定である農地法第18条((農地又は採草放牧地の賃貸借の対抗力))、第19条((農地又は採草放牧地の賃貸借の更新))、第20条((農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限))等の規定の適用がないこと及び受贈者が農地等の所有権を他に移転した場合に耕作する権利を主張することができないこと等からすれば、その特例適用農地等の担保価値は減少しないものと考えるのが相当である。

3 通達6は、上記の点を踏まえて、特例適用農地等が旧法第70条の4第1項に規定する担保に供されている場合には、その特例適用農地等につき法附則第55条第3項に規定する使用貸借による権利の設定があったときにおいても、その担保を提供した受贈者に対して国税通則法第51条第1項に規定する増担保の提供等を命ずる必要はないことを留意的に明らかにしたものである。

(特定農業生産法人の合併又は分割の日)

7 法附則第55条第9項に規定する「当該合併又は当該分割の日」とは、同項に規定する合併法人又は分割承継法人の本店所在地において合併の登記又は設立の登記若しくは変更の登記を完了した日をいうものとする。

(新設)

(説明)

1 特定農業生産法人が合併により消滅した場合又は分割をした場合には、その消滅又は分割した特定農業生産法人の農地等に係る農業経営の廃止又は特定農業生産法人による使用貸借による権利の譲渡等に該当することとなるので、納税猶予税額の全部について納税猶予期限が確定することとなる(法附則554、旧法70の41)のであるが、その合併に係る合併法人又は分割に係る新設会社若しくは分割会社(以下「分割承継法人」という。)がその使用貸借による権利の全部を引き継ぎ、かつ、当該法人が特定農業生産法人に該当することについての届出書を受贈者がその合併又は分割の日から2か月を経過する日までに所轄税務署長に提出した場合には、その合併法人又は分割承継法人を附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けたときにおける特定農業生産法人とみなして納税猶予を継続する措置が設けられている(法附則559)。
 したがって、受贈者がこの合併又は分割に係る一定の届出書を提出して納税猶予の適用を継続して受けようとする場合において、合併又は分割の日がいつになるかは、その届出書の提出期限を決定する上で極めて重要なことになる。

2 ところで、農事組合法人、合名会社、合資会社、株式会社(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるものに限る。)又は有限会社であって、一定の要件を満たすものが農地法において農業生産法人となる(農地法27)のであるが、これらの法人が合併又は分割した場合のその効力は、合併の登記又は設立の登記若しくは変更の登記をもって生ずることとされ(農業協同組合法734、商法102・374の9・374の25、有限会社法63・63の7・63の9)、その効果として1合併法人は被合併法人の権利義務を2分割承継法人は被分割法人の権利義務をそれぞれ承継することとなるものであるから、法附則第55条第9項に規定する合併又は分割の日も、合併の登記又は設立の登記若しくは変更の登記を完了した日をいうものと考えられる。

3 通達7は、上記の点を踏まえて、合併の日については、合併による特定農業生産法人の消滅に伴い合併後存続する特定農業生産法人又は設立された特定農業生産法人の本店所在地において合併による登記を完了した日を、また、分割の日については、分割承継法人が本店所在地において設立の登記又は変更の登記を完了した日をいうものとすることを明らかにしたものである。

(合併又は分割の場合の届出書)

8 法附則第55条第9項の規定の適用を受けようとする受贈者が同項に規定する届出書を合併又は分割の日から2か月を経過する日まで(以下この8において「期限内」という。)に提出した場合には、その届出書に係る記載又は添付すべき書類に不備があるときであっても、当該不備が軽微なもので速やかに補完されると認められるときには、同項の規定の適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(注) 当該受贈者が届出書を期限内に提出しなかった場合には、法附則第55条第9項の規定の適用は受けられず、同条第4項又は第6項の規定に基づく旧法第70条の4第1項の規定によりその贈与税の納税猶予税額の全部について納税猶予の期限が確定するのであるから留意する。

(新設)

(説明)

 特定農業生産法人が合併により消滅した場合又は分割した場合において、その合併又は分割に係る合併法人又は分割承継法人が使用貸借による権利の全部を引き継ぎ、かつ、特定農業生産法人に該当するときには、受贈者が、合併又は分割の日から2か月を経過する日までに所轄税務署長に合併又は分割の場合における一定の届出書に一定の書類を添付して提出することにより、納税猶予が継続される(令附則559、規附則142021)。
 したがって、合併又は分割の日から2か月を経過する日までという期限内に、必要な事項が記載され、添付書類が添付された適法な届出書が提出されなければ、法附則第55条第9項の規定による納税猶予の継続適用は受けることができないこととなるが、その記載又は添付すべき書類に不備があるときであっても、当該不備が軽微なもので速やかに補完されると認められるときには、法附則第55条第9項の規定による納税猶予の継続適用を認めて差し支えないと考える。
 通達8は、このことを明らかにしたものである。

(法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用を受けた受贈者の継続届出書の提出期限及び提出期間)

9 特例適用農地等の全部を租税特別措置法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号)による改正前の租税特別措置法(以下この9において「平成3年改正前法」という。)第70条の4第1項に規定する担保に供していた受贈者又は租税特別措置法の一部を改正する法律(平成7年法律第55号)による改正前の租税特別措置法(以下この9において「平成7年改正前法」という。)第70条の4第1項に規定する担保に供していた受贈者(当該特例適用農地等のうちに同条第2項第4号に規定する都市営農農地等を有する者を除く。)は、平成3年改正前法第70条の4第10項の規定により同条第7項に規定する届出書又は平成7年改正前法第70条の4第13項の規定により同条第10項に規定する届出書(以下この9において「継続届出書」という。)の提出義務が免除されるのであるが、当該受贈者が法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用を受けたときには、令附則第33条第33項第1号及び第2号又は第34項第1号及び第2号の規定により、使用貸借による権利の設定に関する届出書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日までに当該継続届出書を提出しなければならないこととなるのであるから留意する。この場合において、当該継続届出書の提出期間は、当該使用貸借による権利の設定に関する届出書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日の属する月の前々月の初日から当該3年を経過するごとの日までの期間として取り扱う。

(注) 特例適用農地等の一部を旧法第70条の4第1項に規定する担保に供していた受贈者又は当該特例適用農地等のうちに同条第2項第4号に規定する都市営農農地等を有する受贈者については、法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用を受けた場合であっても、贈与税の申告書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日までに旧法第70条の4第22項の規定による継続届出書を提出しなければならないのであるから留意する。

(新設)

(説明)

1 附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けた受贈者は、法附則第55条第14項の規定により、贈与税の申告書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日までに、引き続いて贈与税の納税猶予の特例の適用を受けたい旨並びに特例適用農地等又は借受代替農地等に係る特定農業生産法人の農業経営に関する事項及び特定農業生産法人に該当する事実の明細を所轄税務署長に届け出ることが義務付けられている(法附則5514、旧法70の422)。

2 ところで、特例適用農地等の全部を租税特別措置法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号)による改正前の租税特別措置法(以下「平成3年改正前法」という。)第70条の4第1項に規定する担保に供していた受贈者又は租税特別措置法の一部を改正する法律(平成7年法律第55号)による改正前の租税特別措置法(以下「平成7年改正前法」という。)第70条の4第1項に規定する担保に供していた受贈者(当該特例適用農地等のうちに同条第2項第4号に規定する都市営農農地等を有する者を除く。)は、平成3年改正前法第70条の4第10項の規定により同条第7項に規定する届出書又は平成7年改正前法第70条の4第13項の規定により同条第10項に規定する届出書(以下「継続届出書」という。)の提出義務が免除されているが、受贈者が附則による納税猶予の継続の特例の適用を受けた場合には、令附則第33条第33項第2号又は第34項第2号の規定により継続届出書の提出義務の免除に係る規定は適用しないこととされているので、令附則第33条第33項第1号又は第34項第1号の規定により、法附則第55条第3項又は第5項の規定に基づき使用貸借による権利の設定に関する届出書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日までに、引き続いて贈与税の納税猶予の特例の適用を受けたい旨並びに特例適用農地等又は借受代替農地等に係る特定農業生産法人の農業経営に関する事項及び特定農業生産法人に該当する事実の明細を所轄税務署長に届け出なければならないこととなる。

3 なお、この場合において、当該継続届出書の提出期間については、昭和50年11月4日付直資2−224ほか2課共同「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」(法令解釈通達)の70の4−72((継続届出書の提出期間))により、旧法第70条の4第22項に規定する一般の場合の継続届出書の提出期間と同様に扱うことが相当と考えられる。

4 通達9は、上記の点を踏まえて、法附則第55条第3項又は第5項の規定の適用を受けた受贈者の継続届出書の提出期間を留意的に明らかにし、併せてその提出期間についての取扱いを明らかにしたものである。

(参考)
(継続届出書の提出期間)

70の4−72 措置法第70条の4第22項に規定する届出書は、特例適用農地等の贈与に係る贈与税の申告書の提出期限の翌日から起算して3年を経過するごとの日までに提出しなければならないのであるが、その提出期間は、当該3年を経過するごとの日の属する月の前々月の初日から当該3年を経過するごとの日までの期間として取り扱う。

(法附則第55条第3項の規定の適用を受けた特例適用農地等の買換えがあった場合)

10 法附則第55条第3項の規定の適用を受けている受贈者及び同条第4項第1号及び第6項第1号に規定する被設定者である特定農業生産法人が、特例適用農地等及び当該特例適用農地等に設定されている使用貸借による権利につき、旧法第70条の4第1項第1号に規定する譲渡等(以下「譲渡等」という。)をした場合において、当該特定農業生産法人に帰属すべき使用貸借による権利の譲渡等の対価の額がないときには、当該受贈者が、同条第15項の規定に基づく旧令第40条の6第25項に規定する申請書に、その譲渡等の対価の全部又は一部をもって代替取得農地等に該当する農地又は採草放牧地を取得する見込みであり、かつ、当該代替取得農地等のすべてについて、当該特定農業生産法人に対して当該取得の日から2か月以内に再び使用貸借による権利を設定する旨並びに当該特定農業生産法人の名称及び所在地を付記して税務署長の承認を受けたときに限り、当該代替取得農地等に相当する当該譲渡等をした特例適用農地等に設定されている使用貸借による権利の譲渡等はなかったものとして取り扱う。

(新設)

(説明)

1 法附則第55条第3項の規定の適用を受けた受贈者が特例適用農地等の譲渡等をしたことに伴い、その特例適用農地等に設定されている被設定者である特定農業生産法人の使用貸借による権利が消滅するときには、旧法第70条の4第1項第1号の納税猶予期限の全部確定の場合の20%超の計算において、同一の特例適用農地等について受贈者の底地の譲渡等に係る面積と被設定者による使用貸借による権利の譲渡等に係る面積が二重に計算されることを排除するため、令附則第33条第39項第1号により旧法第70条の4第1項第1号の譲渡等に関して読替規定が設けられている。

2 ところで、受贈者が特例適用農地等の譲渡等をしたことに伴い、その特例適用農地等に設定されている被設定者である特定農業生産法人の使用貸借による権利が消滅する場合には、通常、当該権利の消滅に係る対価がないことから、旧法第70条の4第15項に規定する譲渡等からは、当該権利の消滅が除かれており、同項の規定は、受贈者の有する底地部分についてのみ適用され、当該特定農業生産法人の有する使用貸借による権利の部分については適用の余地がない。
 したがって、受贈者が特例適用農地等の譲渡等をしたことに伴い、その特例適用農地等に設定されている当該特定農業生産法人の使用貸借による権利が消滅する場合において、受贈者がその底地部分の譲渡等につき、同項の買換えの承認を受け、当該底地の譲渡等がなかったものとみなされたとしても、令附則第33条第39項第1号による読替後の旧法第70条の4第1項第1号の適用上は、法附則第55条第4項の規定により受贈者がしたものとみなされる特定農業生産法人の使用貸借による権利の消滅(譲渡等)に該当することとなる。このままでは、特定農業生産法人について使用貸借による権利が設定されている特例適用農地等については、旧法第70条の4第15項の買換え規定の意味がなくなるが、これは必ずしも、法の趣旨に沿うものではない。

3 そこで、通達10では、法附則第55条第3項の規定の適用を受けている受贈者及び被設定者である特定農業生産法人が、特例適用農地等及び当該特例適用農地等に設定されている使用貸借による権利の譲渡等をした場合において、当該特定農業生産法人に帰属すべき使用貸借による権利の譲渡等の対価の額がないときには、当該受贈者が、その譲渡等の対価の全部又は一部をもって農地又は採草放牧地を取得する見込みであり、かつ、当該取得に係る農地又は採草放牧地のすべてについて、当該特定農業生産法人に対して当該取得の日から2か月以内に再び使用貸借による権利を設定する旨並びに当該特定農業生産法人の名称及び所在地を付記した旧令第40条の6第25項に規定する申請書を提出し承認を受けたときに限り、当該取得に係る農地又は採草放牧地に相当する当該譲渡等をした特例適用農地等に設定されている使用貸借による権利の譲渡等はなかったものとして取り扱うことを明らかにしたものである。