1 改正の概要

  平成16年1月1日以後に行う土地建物等の譲渡について、分離課税の土地建物等の譲渡所得に係る損益通算等の適用に関しては、次のとおりとされた。

(1) 分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額の計算上生じた赤字については、他の分離課税の土地建物等の譲渡所得の黒字から控除し、控除してもなお控除しきれない金額はないものとみなされ、分離課税の土地建物等の譲渡所得以外の他の所得から控除(損益通算)することはできないこととされた(措法311、同法3214)。
  なお、分離課税の土地建物等の譲渡所得以外の他の所得の金額の計算上生じた赤字についても、分離課税の土地建物等の譲渡所得の黒字から控除(損益通算)することはできないこととされた(措法3113二、同法3214)。

(注) ただし、「居住用財産の譲渡損失の金額」(新措法41の5)及び「特定居住用財産の譲渡損失の金額」(措法41の5の2)(以下これらを「特定損失額」という。)については、上記の規定の対象外とされ、一定の要件の下、損益通算の対象とする特例が設けられている(新措法41の51、同法41の5の21)。
  また、その年において生じた純損失の金額のうち、居住用財産の譲渡損失の金額又は特定居住用財産の譲渡損失の金額に係るものとして計算した金額(以下これらを「通算後譲渡損失の金額」という。)については、一定の要件の下、翌年以後3年間繰り越すことにより、各年分の所得から控除することができることとされた(新措法41の54、同法41の5の24)。

(2) 分離課税の土地建物等の譲渡所得の黒字がある場合において、前年から繰り越された純損失の金額は、分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額の計算上控除することはできないこととされた(措法313三)。ただし、前年から繰り越された通算後譲渡損失の金額(新措法41の54又は措法41の5の24の規定の適用を受けて前年以前の年において控除されたものを除く。)については、分離課税の土地建物等の譲渡所得の黒字から控除することができる。

(注) 旧措法41の5による繰越損失額については、従来どおり、各所得の黒字から控除することができる。

(3) その年に純損失の金額が生じた場合で、当該純損失の金額を前年分の所得税に繰戻し還付請求をする場合において、前年分へ繰り戻すべき所得金額の範囲から、分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額を除外することとされた。

(注) 平成16年分の所得税において生じた純損失の金額についても、平成15年分の土地建物等の譲渡所得の金額に係る所得税に対して繰戻し還付請求を行うことはできないことに留意する。

2 申告書等の使用区分

(1) 新措法41の5又は措法41の5の2の適用を受ける場合

 
区分
使用する申告書等
1  給与所得のみの者が、その年に生じた通算後譲渡損失の金額を翌年以後に繰り越す場合
申告書B
申告書第三表(分離課税用)
 左の様式の他、次の場合に応じ、それぞれ次の様式を使用する。

 新措法41の5を適用する場合

  1及び2
   
 措法41の5の2を適用する場合

  3及び4
2  上記1以外の者が、その年に生じた通算後譲渡損失の金額を翌年以後に繰り越す場合
申告書B
申告書第四表(損失申告用)
3  特定損失額について、損益通算の特例の適用を受ける場合(翌年以後に繰り越される譲渡損失がない場合)
申告書B
申告書第三表(分離課税用)
(損益の通算の計算書)

1 「居住用財産の譲渡損失の金額の明細書【租税特別措置法第41条の5用】」

2 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5用】」

3 「特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書【租税特別措置法第41条の5の2用】」

4 「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5の2用】」

(2) 旧措法41の5の適用を受ける場合

 
区分
使用する申告書等
1  給与所得のみの者が、前年から繰り越された特定居住用財産の譲渡損失の金額(以下「旧措法41の5による繰越損失額」という。)を控除する場合 本年分の黒字から、旧措法41の5による繰越損失額が引き切れる場合
申告書B
本年分の黒字から、旧措法41の5による繰越損失額が引き切れない場合
申告書B・申告書第四表(損失申告用)
2  上記1以外の者が、前年から繰り越された特定居住用財産の譲渡損失の金額(以下「旧措法41の5による繰越損失額」という。)を控除する場合 本年分の黒字から、旧措法41の5による繰越損失額が引き切れる場合
申告書B
ただし、分離課税の所得があるときは申告書第三表(分離課税用)、純損失の繰越控除又は雑損失の繰越控除の適用を受けるときは申告書第四表(損失申告用)も使用する。
本年分の黒字から、旧措法41の5による繰越損失額が引き切れない場合
申告書B
申告書第四表(損失申告用)

3 申告書第三表(分離課税用)の記載要領

(1) 「○ 分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」の「差引金額」欄
  この欄は、収入金額から必要経費を差し引いた残額を譲渡所得の区分ごとに記載する。譲渡所得の区分ごとの計算上、引き切れない金額がある場合は、所得内通算をする前の金額を下段にかっこ書きし、上段に一定の順序(4(1)イ及びロを参照のこと。)により所得内通算を行った後の金額を記載する。
  なお、旧措法41の5による繰越損失額を本年分の黒字から差し引く場合は、まず上記のとおりに記載し、次に旧措法41の5による繰越損失額を差し引く前の金額を下段にかっこ書きし(所得内通算を行っている場合は、所得内通算後の金額を更にかっこ書きする。)、上段にその差し引いた残額(所得内通算を行っている場合には、所得内通算後の金額から旧措法41の5による繰越損失額を控除した残額)を記載する。また、旧措法41の5による繰越損失額が、分離課税の短期・長期譲渡所得から引き切れない場合には、申告書第一表「所得金額・合計」9欄は、同「所得金額」18欄の合計金額から、その引き切れない金額を差し引き、その残額を記載する。この場合、旧措法41の5による繰越損失額のうち、本年分で差し引いた繰越損失額を、申告書第一表「その他・本年分で差し引く繰越損失額」47欄に記載する。

(注) 旧措法41の5による繰越損失額は、分離長期譲渡所得金額、分離短期譲渡所得金額、総所得金額、土地等に係る事業所得等の金額、山林所得金額又は退職所得金額から順次控除する。

(2) 「所得金額・分離課税・短期(長期)譲渡」5458
  この欄は、申告書第三表「○ 分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」の「差引金額」欄の金額(所得内通算又は繰越控除を行っている場合には、上段に記載したその所得内通算後の金額又は繰越控除後の金額)を、該当する譲渡所得の区分の欄(5458欄)に転記する。

(3) 「税金の計算・総合課税の合計額」9
  この欄は、申告書第一表「所得金額・合計」9欄の金額(損益通算前の金額)を下段にかっこ書きし、上段に次の場合に応じ、それぞれ次の金額を記載する。

イ 新措法41の5を適用する場合
  「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5用】」4欄の金額

ロ 措法41の5の2を適用する場合
  「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5の2用】」5欄の金額

4 申告書第四表(損失申告用)の記載要領

(1) 「1 損失額又は所得金額」の「B 譲渡・一時」の「C差引金額(AマイナスB)」欄
  「C差引金額(AマイナスB)」欄の各欄は、所得内通算又は損益通算を次により行い、通算前の金額を下段にかっこ書きし、上段に通算後の金額を記載する。

イ 「短期・分離譲渡」の赤字は他の「短期・分離譲渡」の黒字から差し引き、引き切れない赤字は、「長期・分離譲渡」の黒字から、「一般分」、「特定分」、「軽課分」の順に差し引く。
  ただし、「長期・分離譲渡」の黒字の区分内について、納税者がこれと異なる順序による差引計算を行った場合には、これを認めて差し支えない。

(注) それでもなお引き切れない「短期・分離譲渡」の赤字はないものとみなされ、損益通算をすることができないことに留意する。

ロ 「長期・分離譲渡」の赤字は他の「長期・分離譲渡」の黒字から上記4(1)イの順に差し引き、引き切れない赤字は、「短期・分離譲渡」の黒字から、「一般分」、「軽減分」の順に差し引く。

(注) それでもなお引き切れない「長期・分離譲渡」の赤字はないものとみなされ、損益通算をすることができないことに留意する。
  ただし、「長期・分離譲渡」の赤字のうち特定損失額については、損益通算の対象とされる。

ハ 「総合譲渡」の赤字は他の「総合譲渡」の黒字から差し引く。
  なお、引き切れない赤字が生じた場合であっても、「分離譲渡」の黒字からは差し引くことができないことに留意する。
  また、「長期・分離譲渡」の赤字のうち損益通算の対象となる特定損失額がある場合には、「総合譲渡」、「長期・分離譲渡」(特定損失額に限る。)の赤字の順に「総合譲渡」の黒字から差し引く。ただし、納税者がこれと異なる順序による差引計算を行った場合には、これを認めて差し支えない。

(2) 「1 損失額又は所得金額」の「B 譲渡・一時」の「E損失額又は所得金額」欄
  「E損失額又は所得金額」欄の各欄は、「D特別控除額」を差し引いた金額を次により記載する。

イ 「C差引金額(AマイナスB)」がすべて赤字の場合には、「総合譲渡」欄は「C差引金額(AマイナスB)」の赤字を転記し、「分離譲渡」欄には「0」と記載する。
  ただし、「長期・分離譲渡」の「C差引金額(AマイナスB)」欄の赤字のうちに、特定損失額がある場合には、その赤字の金額を記載する。

ロ 「C差引金額(AマイナスB)」がすべて黒字の場合には、その黒字の金額を記載する。

ハ 「C差引金額(AマイナスB)」の「譲渡」が赤字で「一時」が黒字の場合には、「譲渡」の赤字のうち、損益通算の対象となる「総合譲渡」、「長期・分離譲渡」(特定損失額に限る。)の赤字を、特別控除後の「一時」の黒字から差し引き、差し引き前の金額を下段にかっこ書きし、上段に差し引き後の金額を記載する。この場合、「一時」の黒字から差し引く順序は、納税者の選択によって差し支えない。
  なお、損益通算の対象とならない「分離課税」の赤字がある場合には、「0」を記載する。

(3) 「2 損益の通算」欄
  「A通算前」の各欄は、「1 損失額又は所得金額」の54から59の金額を転記する。二段書きされている場合には、上段の金額を記載する。
  なお、「2 損益の通算」の57欄は、損益通算の対象となる特定損失額のみを記載することとなるから、「1 損失額又は所得金額」の57欄が黒字又は0の場合には、記載しない。

(注) 「1 損失額又は所得金額」の「E損失額又は所得金額」の「分離譲渡」欄には、「分離譲渡」が赤字の場合には、「特定損失額」又は「0」が記載されることとなる。