○ 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」の一部改正について

措置法第36条の2《特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

【新設】
(「譲渡資産と一体として居住の用に供されていた家屋又は土地等」の判定)

36の2−6の3 その譲渡をした資産が措置法第36条の2第3項及び第4項に規定する「当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利」に該当するかどうかは、社会通念に従い、当該譲渡資産と一体として利用されているものであったかどうかを、それぞれ次に掲げる時の利用状況により判定するものとする。

(1) 当該譲渡資産の譲渡をする以前に譲渡をしている資産((3)に掲げる資産を除く。) 当該資産の譲渡をした時

(2) 当該譲渡資産の譲渡をした後に譲渡をしている資産((3)に掲げる資産を除く。) 当該譲渡資産の譲渡をした時

(3) 当該譲渡資産がその譲渡の時においてその者の居住の用に供されていないため、その居住の用に供されなくなった時の直前における利用状況により措置法第36条の2第1項の適用を受ける場合において、その居住の用に供されなくなった後に譲渡をしている資産 その者の居住の用に供されなくなった時の直前

(注)

1 上記の場合において、措置法第36条の2第1項の規定の適用を受けるためのみの目的で(1)、(2)及び(3)に掲げる時の前に一時的に居住の用以外の用に供したと認められる部分については、「当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利」に該当する。

2 当該譲渡資産の譲渡の年の1月1日において所有期間が10年以下である底地や買増しした庭の一部のように、措置法第36条の2第1項の規定の適用対象とならないものも、「当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利」に該当することに留意する。

≪説明≫

 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」について、措置法第36条の2第1項は「譲渡資産の譲渡に係る対価の額が2億円を超えるものを除く。」と規定している。この譲渡価額要件については、さらに具体的な規定が置かれ、第3項は「第1項(前項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定は、譲渡資産の譲渡をした個人が、当該譲渡をした日の属する年又はその年の前年若しくは前々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利の譲渡(第33条の4第1項に規定する収用交換等による譲渡その他の政令で定める譲渡(次項において「収用交換等による譲渡」という。)を除く。以下この項及び次項において「前3年以内の譲渡」という。)をしている場合において、当該前3年以内の譲渡に係る対価の額と当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額との合計額が2億円を超えることとなるときは、適用しない。」と規定し、第4項は「第1項の規定は、譲渡資産の譲渡をした個人が、当該譲渡をした日の属する年の翌年又は翌々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利の譲渡(収用交換等による譲渡を除く。)をした場合において、当該家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利の譲渡に係る対価の額と当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額(前3年以内の譲渡がある場合には、前項の合計額)との合計額が2億円を超えることとなつたときは、適用しない。」と規定している。つまり、2億円の譲渡価額要件は、譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の一部の譲渡が、譲渡資産を譲渡した年及びその年の前後2年内にある場合には、これらの譲渡対価の額との合計額により判定することとされている。
 また、これらの譲渡が贈与又は著しく低い価額の対価(譲渡時の時価の2分の1に相当する金額に満たない金額)による譲渡(以下この項において「贈与等」という。)によるものである場合については、同条第8項及び措置法令第24条の2第9項により贈与等の時における価額に相当する金額を譲渡対価の額として判定することとされている。
 この趣旨は、譲渡価額要件である2億円を超える高額な居住用財産の所有者が年を異にしてこれを分割譲渡等することにより、2億円の譲渡価額要件をクリアすることを防止するためのものと説明されている。
 ところで、譲渡価額要件の2億円の判定に当たっては、措置法第36条の2第3項及び第4項に規定されている「譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡」に該当するか否かをどの時点で行うかにより譲渡対価の額の合計額が異なるという問題が生ずる。
 本通達は、譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡(以下「一体資産の譲渡」という。)に該当するか否かの判定は、譲渡資産の利用の態様が千差万別であることから社会通念に従って行うことを明らかにするとともに、1譲渡資産の譲渡以前(譲渡資産を譲渡した年、前年又は前々年)に当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の一部(例えば、離れ屋又は庭先の一部)の譲渡がされている場合は、当該家屋又は土地等の一部の譲渡の時、2譲渡資産の譲渡以後(譲渡資産を譲渡した年、翌年又は翌々年)に当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の残り部分の譲渡がされている場合は、当該譲渡資産の譲渡の時、3譲渡資産が当該個人の居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡がされている場合は、当該個人の居住の用に供されなくなった時の直前により行うことを併せて明らかにしている。
 なお、注書では、1「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受ける(2億円の譲渡価額要件をクリアする)ためのみの目的で、一時的に当該個人の居住の用以外の用に供したと認められる部分(例えば、庭先の一部を隣人に駐車場として賃貸した場合など)については、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等に該当すること並びに2当該譲渡資産の譲渡の年の1月1日において所有期間が10年以下である底地等のように、この特例の適用対象外である家屋又は土地等も当該一体資産の譲渡に該当することを留意的に明らかにしている。本通達をケース別に図示すると次のようになる。

<ケース1>

1 平成21年に敷地(庭)の一部Bを30,000千円で譲渡 → 2 平成22年に居住用財産Aを120,000千円で譲渡

○ 特例の対象となる居住用財産Aの譲渡以前に庭の一部Bを譲渡していることから、Aと一体として居住の用に供されていたかどうかは、Bの譲渡の時で判定する(36の2−6の3(1))。

<ケース2>

1 平成22年に居住用財産Aを90,000千円で譲渡 → 2 Aの譲渡後駐車場として他人に貸し付けていた残地Bを、平成23年に20,000千円で譲渡

○ 特例の対象となる居住用財産Aの譲渡後に残地Bを譲渡していることから、Aと一体として居住の用に供されていたかどうかは、Aの譲渡の時で判定する(36の2−6の3(2))。

<ケース3>

1 平成21年に転勤のため居住用家屋を空家とし、B部分については、駐車場として隣人に貸付け → 2 平成22年に空家とその敷地Aを90,000千円で譲渡、居住用財産の譲渡として特例適用→ 3 平成23年に駐車場としていたBを20,000千円で譲渡

○ 空家とその敷地Aについて、居住の用に供されなくなった時の直前の利用状況により特例の適用を受けることから、BがAと一体として居住の用に供されていたかどうかは、その者の居住の用に供されなくなった時の直前(平成21年)で判定する(36の2−6の3(3))。

※ ケース1〜3のいずれの場合も、譲渡価額要件の2億円の判定に当たっては、B部分の譲渡価額を居住用財産Aの譲渡価額に加算することになる。