○ 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」の一部改正について

措置法第37条の9の5 《平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の課税の特例》 関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

【新設】
(借地権等の返還により支払を受けた借地権等の対価に対する特例の適用)

37の9の5−18 個人事業者が他人の土地を使用して事業を行っている場合において、当該土地に係る借地権等をその土地の所有者に返還し、その土地の所有者から立退料の支払を受けた場合には、当該支払を受けた金額のうち借地権等の価額に相当する金額は、借地権等の譲渡による対価として、措置法第37条の9の5第1項の規定を適用することができるものとする。

≪説明≫

 個人事業者による土地の上に存する権利の「譲渡」に係る譲渡所得は、他の要件を満たす限り、「平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の課税の特例」の適用対象となるが、個人事業者が他人の土地を使用して事業を行っている場合において、当該個人事業者がその土地をその所有者に返還することによって取得するいわゆる立退料については、次のような問題がある。

(1) 土地の上に存する権利の土地所有者への返還が「譲渡」といえるかどうか。

(2) 立退料は土地の上に存する権利の価額のみから構成されているかどうか。

 他人の土地を使用している者が有する借地権等の土地所有者への返還については、借地権等の譲渡があった後、混同により消滅したとする考え方、借地権等の譲渡ではなく単なる消滅にすぎないとする考え方の対立がある。
 しかし、その借地権等が譲渡所得の基因となる資産である限り、前者の考え方をとる場合はもちろんのこと、後者の考え方をとる場合であっても、その消滅した借地権等の対価は譲渡所得の収入金額となるから、所得分類の上においては、両者の間に差異は生じない(所令95)。
 このように、その資産が譲渡所得の基因となる資産である限り、その資産の対価が「譲渡の対価」であると「消滅の対価」であるとを問わず、その対価は譲渡所得の収入金額とされるという所得税法の考え方からすれば、「平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の課税の特例」の適用上、上述した後者の考え方にたって、「譲渡」の意味を厳格に解釈することには問題があるといえる。
 次に、その借地権等の返還に伴って取得する立退料について譲渡所得とされるのは、立退料という名目で取得したものであっても、借地権等の対価と認められる部分に相当する金額に限られることは当然のことである。
 このようなことから、本通達は、個人事業者が他人の土地を使用して事業を行っている場合において、借地権者等が借地権等を土地所有者に返還することにより立退料の支払を受けた場合には、その立退料のうち借地権等の価額に相当する金額は、土地の上に存する権利の譲渡による対価として、この特例を適用することができることを明らかにしている。