「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」の一部改正について

措置法第39条 《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》 関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

【新設】
(延滞税の計算の基礎となる期間に算入しないこととされる所得税の額)

39−22 措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額(相続税法第32条《更正の請求の特則》の規定による更正の請求を行ったことにより措置法第39条第1項の相続税額が減少した場合において、当該相続税額が減少したことに伴い修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額をいう。以下この項において同じ。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに掲げる金額が限度となることに留意する。

(1) 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による措置法第39条第1項の相続税額の異動に伴う所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのうちいずれか低い金額

 所得税の修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額(以下この項において「所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額」という。)

 当該他の相続税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第4項に規定する 納付すべき所得税の額」

(2) 「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのいずれか低い金額

 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額

 当該他の所得税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」

(3) 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による措置法第39条第1項の相続税額の異動に伴う所得税の額の異動があり、かつ、「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのいずれか低い金額

  所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額

 当該他の相続税に係る事由及び当該他の所得税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」

≪説明≫

1 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を受けた者について、後発事由によりこの特例に係る取得費の計算の基礎となる相続税額が減少した場合には、その取得費に加算すべき金額の再計算により所得税の額は増加することになるため、所得税の修正申告を行うこととなる(修正申告がない場合には、税務署長による更正が行われることとなる。)。
 この修正申告による増加税額に対し、原則として所得税の法定納期限の翌日からその増加税額を完納する日までの期間の日数に応じ延滞税が課されることとされ、従前は、相続税額の減少事由が遺産分割の確定等(相法32一〜六)である場合であっても、延滞税が課されることとされていた。

(注) 相続税法においては、遺産分割の確定等は納税者の責めに帰すものではないことから、相続税の修正申告及び更正又は決定があった場合の増加税額に対しては、一定の期間につき延滞税の計算の基礎となる期間に算入しない旨の特則(相法512 )が設けられている。

 しかし、このような遺産分割の確定等による所得税額の増加は納税者の責めに帰すものではないことから、平成19年度税制改正において、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を受けた者が相続税法第32条の規定による更正の請求を行ったことによりこの特例の基礎となる相続税額が減少した場合において、その減少したことに伴い修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額(以下この項の説明において「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」という。)については、所得税に係る法定納期限の翌日からその修正申告書の提出があった日又はその更正に係る更正通知書を発した日までの期間は、延滞税の計算の基礎となる期間に算入しないこととする規定の整備が行われた(措法394)。

2 相続税法第32条による更正の請求による相続税額の減少があった場合における措置法第39条の取得費加算の金額の減少に伴う修正申告等に当たっては、

  •  相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由(相続財産の申告漏れ、評価誤り等)による相続税額の異動に伴う所得税額の異動、
  •  「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由(譲渡費用の計上誤り、譲渡所得以外の所得の所得金額の異動等)による所得税額の異動、を併せて行う場合もあることから、本項は、このような場合における措置法第39条第4項の対象となる金額(延滞税の計算の基礎となる期間に算入しないこととされる所得税の額)の限度額について、以下の3つの場合に区分して、それぞれの場合における限度額を留意的に明らかにしたものである。

(1) 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由(相続財産の申告漏れ、評価誤り等)による相続税額の異動に伴う所得税額の異動がある場合

(2) 「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由(譲渡費用の計上誤り、譲渡所得以外の所得の所得金額の異動等)による所得税額の異動がある場合

(3) (1)かつ(2)の場合

【設例】

1 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による相続税額の異動に伴う所得税の額の異動がある場合(本項の(1)の場合)

1 遺産分割の確定による相続税額の異動に伴って納付すべき所得税の額(措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額)…50万円

2 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由(相続財産の評価誤り)による相続税額の異動に伴って納付すべき所得税の額…30万円

3 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額(12 )…80万円

⇒ この場合における措置法第39条第4項の対象となる金額の限度額は、50万円(1の金額)となる。

2 「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動がある場合(本項の(2)の場合)

1 遺産分割の確定による相続税額の異動に伴って納付すべき所得税の額(措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額)…50万円

2 他の所得税に係る事由(譲渡費用の過大計上)により納付すべき所得税の額…20万円

3 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額(12 )…70万円

⇒ この場合における措置法第39条第4項の対象となる金額の限度額は、50万円(1の金額)となる。

3 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による相続税額の異動に伴う所得税の額の異動があり、かつ、「措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動もある場合(本項の(3)の場合)

1 遺産分割の確定による相続税額の異動に伴って納付すべき所得税の額(措置法第39条第4項に規定する納付すべき所得税の額)…50万円

2 相続税法第32条に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由(相続財産の評価誤り)による相続税額の異動に伴って納付すべき所得税の額…20万円

3 他の所得税に係る事由(譲渡費用の計上もれ)により減少する所得税の額…30万円

4 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額(123 )…40万円

⇒ この場合における措置法第39条第4項の対象となる金額の限度額は、40万円(4の金額)となる。

(参考)相続税法(抜粋)

(更正の請求の特則)

第32条 省略

一 第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。

二 民法第787条(認知の訴え)又は第892条から第894条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第884条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第919条第2項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。

三 遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。

四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。

五 第42条第27項(第45条第2項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第48条第2項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。

六 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。

七〜九 省略