「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について

所得税法第38条 《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》 関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

【新設】
(非事業用資産の取得費の計算上控除する減価償却費相当額)

38−9の2 譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合における当該資産の取得費は、法第38条第2項の規定により計算するのであるが、当該資産が各種所得(同項第1号に掲げる不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得をいう。以下この項において同じ。)を生ずべき業務の用に供されていない資産(以下この項において「非事業用資産」という。)であり、かつ、当該非事業用資産と同種の減価償資産が令第6条第1号から第7号までに掲げる減価償却資産に該当する場合には、当該非事業用資産の取得費の計算上控除する減価償却費相当額については、当該非事業用資産の法第38条第1項に規定する合計額に相当する金額の100分の95 に相当する金額が限度となることに留意する。
 なお、譲渡した資産に係る各種所得を生ずべき業務の用に供されていた期間については、当該資産の法第38条第1項に規定する合計額に相当する金額から当該期間内の日の属する各年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額を控除して当該資産の取得費を計算するのであるが、当該資産を各種所得を生ずべき業務の用に供されなくなった後に譲渡した場合において、当該資産の償却費の額の累積額が当該資産の同項に規定する合計額に相当する金額の100分の95 に相当する金額を超えているときは、当該資産の当該合計額に相当する金額から控除する減価償却費相当額は、当該償却費の額の累積額となることに留意する。

≪説明≫

1 非事業用資産の減価の額の計算(従来の計算)
 譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合において、当該資産の譲渡所得の金額の計算上控除する取得費の計算については、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額(以下この項の説明において「取得価額の合計額」という。)から、次に掲げる期間に応じ次に掲げる金額の合計額を控除した金額とされていた(所法38、旧所令85)。

(1) 譲渡した資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間
 所得税法第49条第1項の規定により不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されたその資産の償却費の額の累積額

(2) (1)以外の期間
 譲渡した資産と同種の減価償却資産に係る耐用年数に1.5を乗じて計算した年数により定額法(注1)に準じて計算した金額に、譲渡した資産の(1)以外の期間に係る年数を乗じて計算した金額
 また、所得税法令第6条第1号から第7号までに掲げる減価償却資産(注2)の償却可能限度額は、その減価償却資産の取得価額の100分の95に相当する金額とされていた(旧所令1341一)。

(注1) 定額法とは、減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除した金額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各年分の償却費として償却する方法をいう(旧所令1201一イ(1))。

(注2) 所得税法令第6条第1号から第7号までに掲げる減価償却資産は、1建物及びその附属設備、2構築物、3機械及び装置、4船舶、5航空機、6車両及び運搬具並びに7工具、器具及び備品である。

2 平成19年度税制改正における減価償却資産の償却費に係る計算方法の改正(所令120の2ほか)

(1) 平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の100分の95相当額)及び残存価額を廃止し、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとされた。

(2) 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、償却可能限度額まで償却した年分の翌年分以後5年間で1円まで均等償却ができることとされた。

3 平成19年度税制改正後の非事業用資産の減価の額の計算

(1) 上記2のとおり、平成19年度税制改正において、業務の用に供されていた減価償却資産に係る償却可能限度額及び残存価額が廃止されたが、本項は、譲渡所得の基因となる資産と同種の減価償却資産(非事業用資産(注)に限る。)が所得税法令第6条第1号から第7号までに掲げる減価償却資産である場合において、その取得価額の合計額から控除する減価償却費相当額については、以下のとおり(従前のとおり)とされている(所令851)ことを留意的に示しているものである。

1 業務の用に供されていた期間以外の期間に係る減価の額は、当該非事業用資産と同種の減価償却資産に係る耐用年数に1.5を乗じて計算した年数により旧定額法に準じて計算した金額に、譲渡した資産の業務の用に供されていた期間以外の期間に係る年数を乗じて計算した金額とする。

2 上記1により計算した金額(非事業用資産に係る減価償却費相当額)は、所得税法令第134条第1項第1号イに定める金額(その取得価額の100分の95に相当する金額)を限度とする。

(注) 非事業用資産とは、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていない資産をいう(本項の説明において同じ。)。

(2) なお、業務の用に供されていた資産を業務の用に供さなくなった後に譲渡した場合において、譲渡資産の償却費の額の累積額が当該譲渡資産の取得価額の合計額(所得税法第38条第1項に規定する資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額)に相当する金額の100分の95に相当する金額を超えているときには、当該資産の当該合計額に相当する金額から控除する減価償却費相当額は、当該償却費の額の累積額となること、例えば、譲渡した資産の業務の用に供されていた期間に係る償却費の額の累積額が当該譲渡資産の取得価額の合計額に相当する金額の100分の97に相当する金額であった場合における当該資産の取得費の計算上控除する減価償却費相当額は、当該合計額に相当する金額の100分の95 に相当する金額ではなく、当該償却費の額の累積額(当該合計額の100分の97に相当する金額)となることについても留意的に示しているものである。