「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について

所得税法第33条 《譲渡所得》 関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

【新設】
(受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡等)

33−1の7 受益者等課税信託(法第13条第1項に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。以下この項において「受益者等」という。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。以下この項において同じ。)の信託財産に属する資産が譲渡所得の基因となる資産である場合における当該資産の譲渡又は受益者等課税信託の受益者等としての権利の目的となっている信託財産に属する資産が譲渡所得の基因となる資産である場合における当該権利の譲渡による所得は、原則として譲渡所得となり、法第33条の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用することとなる。なお、この場合においては次の点に留意する。

(1) 受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡があった場合において、当該資産の譲渡に係る信託報酬として当該受益者等課税信託の受益者等が当該受益者等課税信託の受託者に支払った金額については、法第33条第3項に規定する「資産の譲渡に要した費用」に含まれる。

(2) 委託者と受益者等がそれぞれ一であり、かつ、同一の者である場合の受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡があった場合又は当該受益者等課税信託の受益者等としての権利の譲渡があった場合における当該資産又は当該権利に係る資産の法第33条第3項第1号に規定する「取得の日」は、当該委託者が当該資産の取得をした日となる。

(注) 当該受益者等課税信託の信託財産に属する資産が信託期間中に信託財産に属することとなったものである場合には、当該資産が信託財産に属することとなった日となる。

(3) 受益者等課税信託の受益者等としての権利の譲渡があった場合において、当該受益者等としての権利の目的となっている信託財産に属する債務があるため、当該譲渡の対価の額が当該債務の額を控除した残額をもって支払われているときは、当該譲渡による収入すべき金額は、法第36条第1項の規定により、その支払を受けた対価の額に当該控除された債務の額に相当する金額を加算した金額となる。

(注) 譲渡された受益者等としての権利の目的となっている資産(金銭及び金銭債権を除く。)の譲渡収入金額は、当該受益者等としての権利の譲渡により収入すべき金額からその信託財産に属する金銭及び金銭債権の額を控除した残額を基礎として、当該受益者等としての権利の譲渡の時における当該受益者等としての権利の目的となっている各資産(金銭及び金銭債権を除く。)の価額の比によりあん分して算定するものとする。

(4) 委託者が受益者等課税信託の受益者等となる信託の設定により信託財産に属することとなった資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、当該委託者が当該資産を引き続き有しているものとして、法第38条の規定を適用して計算した金額となる。

(注) 当該受益者等課税信託の信託期間中に、当該受益者等課税信託に係る信託財産に属することとなった資産の取得費は、受益者等が、当該資産を当該受益者等課税信託の受託者がその取得のために要した金額をもって取得し、引き続き有しているものとして、法第38条の規定を適用して計算する。この場合において、当該資産の取得に係る信託報酬として当該受益者等課税信託の受益者等が当該受益者等課税信託の受託者に支払った金額については、同条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に含まれる。

(5) 譲渡所得に関する課税の特例等の規定の適用を受けようとする受益者等が確定申告書に添付すべき書類については、昭和55年12月26日付直所3−20ほか1課共同「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)の28の4−53《信託の受益者における書類の添付》に準ずる。

≪説明≫

1 受益者等課税信託とは、集団投資信託(注1)、退職年金等信託(注2)及び法人課税信託(注3)以外の信託をいい(所法131ただし書)、受益者等は、当該受益者等課税信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、その信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者等の収益及び費用とみなして、所得税法の規定を適用することとされている(所法13)。

(注1) 集団投資信託とは、合同運用信託、投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第3項に規定する投資信託(同条第4項に規定する証券投資信託等一定の投資信託に限る。))、外国投資信託、国内公募等投資信託及び特定受益証券発行信託をいう(所法133 一、法法2二十九ロ)。

(注2) 退職年金等信託とは、厚生年金基金契約、確定給付年金資産管理運用契約、確定給付年金基金資産運用契約、確定拠出年金資産管理契約、勤労者財産形成給付契約若しくは勤労者財産形成基金給付契約、国民年金基金若しくは国民年金基金連合会の締結した国民年金法に規定する契約又は適格退職年金契約に係る信託をいう(所法133 二)。

(注3) 法人課税信託とは、法人税法第2条第29号の2に規定する法人課税信託をいい(所法21八の三)、次に掲げる信託(集団投資信託並びに退職年金等信託及び特定公益信託等を除く。)とされている(法法2二十九の二)。

1 受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託(受益証券発行信託)

2 受益者等が存しない信託

3 法人(公共法人及び公益法人等を除く。)が委託者となる信託(信託財産に属する資産のみを信託するものを除く。)で、次に掲げるもの

イ 法人の事業の重要部分の信託で委託者の株主等をその受益者とするもの

ロ その法人の自己信託等で信託の存続期間が20年を超えるもの

ハ その法人の自己信託等で信託の損益分配割合が変更可能であるもの

4 投資信託

5 特定目的信託

2 本項は、受益者等課税信託の信託財産に属する資産が譲渡所得の基因となる資産である場合における当該資産の譲渡又は受益者等課税信託の受益者等としての権利(いわゆる信託受益権)の目的となっている信託財産に属する資産が譲渡所得の基因となる資産である場合における当該権利の譲渡による所得は、原則として当該受益者等課税信託の受益者等の譲渡所得となること、並びに譲渡所得の金額の計算に当たって留意すべき事項(当該資産又は当該権利の譲渡があった場合の譲渡費用、取得の日、収入すべき金額、取得費及び譲渡所得の課税の特例等を適用する際に確定申告書に添付することとされている書類についての留意事項)を示したものである。

(1) 譲渡費用
 受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡があった場合において、当該資産の譲渡に係る信託報酬として当該受益者等課税信託の受益者等が当該受益者等課税信託の受託者に支払った金額は、所得税法第33条第3項に規定する「資産の譲渡に要した費用」として、当該受益者等の譲渡所得の金額の計算上控除する。

(2) 取得の日
 委託者と受益者等がそれぞれ一であり、かつ、同一の者である場合における受益者等課税信託の信託財産に属する資産を譲渡した場合の当該資産又は受益者等課税信託の受益者等としての権利を譲渡した場合の当該権利の目的となっている資産については、当該受益者等課税信託の受益者等(この場合においては委託者)が有していたものとみなされることから、これらの資産の取得の日は、当該受益者等課税信託の受益者等(=委託者)がこれらの資産を取得した日となる。
 なお、受益者等課税信託の信託期間中に新たに信託財産に属することとなった資産の取得の日については、当該資産が当該受益者等課税信託の信託財産に属することとなった日となる。

(3) 受益者等課税信託の受益者等としての権利の目的となっている信託財産に債務がある場合の収入すべき金額
 受益者等課税信託の受益者等としての権利の目的となっている信託財産に債務が帰属しているケースがある。このような権利を譲渡した時の当該譲渡の対価の額が当該債務の額を控除した金額で支払われている場合における当該権利の譲渡による収入すべき金額は、その支払を受けた対価の額に当該債務の額を加えた金額となる。
 なお、受益者等としての権利の目的となっている信託財産に属する資産(金銭及び金銭債権を除く。)が複数ある場合には、当該権利の目的となっている信託財産に属する資産の価額の比によりあん分して、個々の資産の譲渡収入金額を算定する。

(4) 受益者等課税信託の信託財産に属する資産の取得費
 受益者等課税信託の委託者が当該受益者等課税信託の受益者等となる信託の設定により信託財産に属することとなった資産については、当該資産は受益者等課税信託の受益者等(この場合においては委託者)が有するものとみなされることから、当該受益者等(=委託者)がその資産を引き続き有しているものとして、所得税法第38条の規定を適用し、譲渡所得の金額の計算を行うこととなる。
 なお、受益者等課税信託の信託期間中に、当該受益者等課税信託の信託財産に属することとなった資産の取得費については、当該受益者等課税信託の受託者が当該資産の取得のために要した金額をもって当該受益者等課税信託の受益者等が当該資産を取得し、引き続き所有しているものとして、所得税法第38条の規定を適用し、譲渡所得の金額の計算を行うこととなる。

(5) 譲渡所得に関する課税の特例等の適用を受けようとする際に確定申告書に添付することとされている書類
 一般に、譲渡所得に関する課税の特例等の規定の適用を受けようとする場合には、確定申告書に一定の書類を添付して提出することがその要件とされているが、この場合において、受益者等が確定申告書に添付すべき書類については、昭和55年12月26日付直所3−20ほか1課共同「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)の28の4−53《信託の受益者における書類の添付》に準ずるとしている。
 信託財産に属する資産は、私法上は受託者に所有権が帰属していることから、例えば、当該資産の譲渡が収用交換等による譲渡である場合には、公共事業施行者から当該受益者等課税信託の受託者に収用証明書等が交付されることとなる。このため、当該資産の譲渡について譲渡所得に関する課税の特例等の適用を受けようとする者(当該受益者等課税信託の受益者等)とその確定申告書に添付される証明書上の譲渡者(当該受益者等課税信託の受託者)が一致しないこととなり、その結果、譲渡所得に関する課税の特例等を受けることができないのではないかとも考えられる。
 そこで、このような場合において譲渡所得に関する課税の特例等の適用を受けるためには、当該添付をすることとされている書類に、当該資産の譲渡が当該受益者等課税信託の受益者等が有する当該受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡である旨の受託者の証明を受ける必要があることを示しているものである。

(参考) 昭和55年12月26日付直所3−20ほか1課共同「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)(抜粋)

 (信託の受益者における書類の添付)

28の4−53 受益者等課税信託(法第13条第1項((信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属))に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。)の受益者(同条第2項の規定により、同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。)が、当該信託の信託財産に属する土地等の譲渡又は賃借権の設定等に係る雑所得について措置法第28条の4第3項の規定の適用を受けようとする場合には、同項の規定により、措置法規則第11条第1項各号に掲げる書類をその確定申告書に添付する必要があるのであるが、その添付に当たっては、これらの書類が受益者の有する信託財産に属する土地等の譲渡等に係るものである旨の受託者の証明を受けたものであることに留意する。