「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」の一部改正について

措置法第37条の10 《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》 関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

(譲渡所得等に係る収入金額とみなす金額等−法人の分割の場合)

37の10−25 措置法第37条の10第3項第2号の規定の適用に関しては、次の点に留意する。

(1) 法人の分割に当たり、措置法第37条の10第3項の規定により、分割法人の株式(以下この項において「旧株」という。)についての譲渡所得等に係る収入金額とみなされる同項第2号に掲げる金額(みなし配当額を除く。)及び当該収入金額から控除すべき取得価額は、次の算式によって計算した金額となる。
収入金額とみなされる金額=法人の分割により交付を受けた分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式
及びそれ以外の資産の価額の合計額−みなし配当金

(注) 「分割承継法人」とは、措置法第37条の10第3項第2号に規定する分割承継法人をいい、「分割承継親法人」とは、分割承継法人との間に措置法令第25条の8第5項に規定する関係がある法人をいう(以下同じ。)。
取得価額=旧受益権の従前の取得価額の合計額×分割移転割合

(注) 「純資産移転割合」は、所得税法令第61条第2項第2号《所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等》に規定する割合で、次により計算した割合(分割法人の同号に規定する分割前事業年度終了の時(以下この項において「分割前事業年度終了時」という。)の法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第16号《定義》に規定する資本金等の額(以下この項及び37の10−26において「資本金等の額」という。)又は同条第17号の2に規定する連結個別資本金等の額(以下この項及び37の10−26において「連結個別資本金等の額」という。)が零以下である場合には零と、当該分割前事業年度終了時の資本金等の額又は連結個別資本金等の額及び次に掲げる算式の分子の金額が零を超え、かつ、次に掲げる算式の分母の金額が零以下である場合には1とし、当該割合に小数点以下3位未満の端数があるときは切上げ)をいう(以下この項において同じ。)。
純資産移転割合=((分割法人から分割承継法人に移転した資産の帳簿価額−分割法人から分割承継法人に移転した負債の帳簿価額)÷(分割法人の資産の帳簿価額−分割法人の負債(新株予約権に係る義務を含む。)の帳簿価額))
 また、当該分割があった日以後における旧株1株当たりの取得価額は、所得税法令第113条第2項《分割型分割により取得した株式等の取得価額》の規定により、次の算式によって計算した金額となり、また、当該分割により取得した分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式の取得価額は、同令第109条第1項第5号の規定により、取得のために通常要する価額となる。
分割後の旧株1株当たりの取得価額=旧株1株の従前の取得価額−〔旧株1株の従前の取得価額×純資産移転割合〕

(2) 措置法第37条の10第3項の規定の適用がない場合における法人の分割があった日以後の旧株及び当該分割により取得した分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式に係る1株当たりの取得価額は、所得税法令第113条第1項又は第2項の規定により、それぞれ次の算式によって計算した金額となる。
分割後の旧株1株当たりの取得価額=旧株1株の従前の取得価額−〔旧株1株の従前の取得価額×純資産移転割合〕
取得した分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式1株当たりの取得金額=〔旧株1株の従前の取得価額×純資産移転割合÷旧株1株について取得した分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式の数〕+分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式1株当たりのみなし配当額+分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式1株当たりの分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式の取得費用

≪説明≫

1 平成17年7月に公布された会社法において、合併等の組織再編成の際に、その対価として合併法人等の株式以外の財産を交付することが可能となった(合併等対価の柔軟化)。
 組織再編税制における株主に対する課税関係は、合併等により合併法人等の株式のみが交付された場合には、株式の所有実態に変化はないものと考え、譲渡益課税は行わないこととされているが、平成19年度税制改正において、この会社法における合併等対価の柔軟化を踏まえた組織再編税制の整備の一環として、法人の分割により分割承継法人の100%親法人(分割承継親法人(注))の株式のみが交付された場合についても同様に譲渡益課税を行わず、その交付株式(分割承継親法人の株式)については分割の前から引き続き所有しているものとする措置が講じられた。

(注) 分割承継親法人とは、分割承継法人との間に措置法令第25条の8第5項に規定する関係がある法人をいう(以下同じ。)。

2 改正前の本項は、居住者等である法人の株主等が、その法人の分割(その法人の分割に際して分割承継法人の株式又は出資以外の資産(注)が交付されたものに限る。)により金銭又は金銭以外の資産の交付を受けた場合における株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる金額、また、当該収入金額から控除する取得価額等の計算式について留意的に明らかにしたものであるが、上記1に掲げる税制改正を踏まえ、所要の改正を行ったものである。

(注) 株主等に対する株式又は出資に係る剰余金の配当又は利益の配当として交付がされた分割対価資産以外の金銭その他の資産を除く。

3 また、平成19年度税制改正において、所得税法令第61条第2項第2号に規定する「純資産移転割合」の計算規定の整備が行われたことから、これに伴う所要の改正も併せて行ったものである。

(注1) 信託税制の改正により創設された法人課税信託の受益権(一定のものを除く。)は株式又は出資とみなされること、法人課税信託の受益者は株主等に含まれること(所法6の3四、措法2の22)、法人課税信託に関する措置法第37条の10 第3項の規定の適用については同項の分割には信託の分割が含まれることから、法人課税信託について信託の分割があった場合には、原則として、法人の分割があった場合と同様の取扱いとなることに留意する。

(注2) 株式の発行法人は、所得税法令第113条第2項に規定する分割型分割を行った場合には、当該株式を有していた個人に対し、当該分割型分割に係る「純資産移転割合」を通知しなければならないとされている(所令1134)。