【新設】(特別の事情があると認められる場合)

9-2-12の2 令第69条第1項第1号イ《定期同額給与の範囲等》に規定する「3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合」とは、例えば、次のような事情により定期給与(法第34条第1項第1号《定期同額給与》に規定する定期給与をいう。)の額の改定が3月経過日等(令第69条第1項第1号イに規定する3月経過日等をいう。以下9-2-12の2において同じ。)後にされる場合をいう。

  • (1) 全国組織の協同組合連合会等でその役員が下部組織である協同組合等の役員から構成されるものであるため、当該協同組合等の定時総会の終了後でなければ当該協同組合連合会等の定時総会が開催できないこと
  • (2) 監督官庁の決算承認を要すること等のため、3月経過日等後でなければ定時総会が開催できないこと
  • (3) 法人の役員給与の額がその親会社の役員給与の額を参酌して決定されるなどの常況にあるため、当該親会社の定時株主総会の終了後でなければ当該法人の役員の定期給与の額の改定に係る決議ができないこと

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、定期同額給与とされる定期給与(その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与をいう。以下同じ。)の額の改定の範囲に、次に掲げる改定が追加された(令691一イ・ロ)。

  • (1) 継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定で、その改定が3月経過日等(当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日等をいう。以下同じ。)後にされることについて特別の事情があると認められるもの
  • (2) 役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(臨時改定事由)によりされた定期給与の額の改定

このうち、(1)の特別の事情があると認められる場合とは、役員給与の額の改定につき組織面、予算面又は人事面等において何らかの制約を受けざるを得ない内外事情がある場合が該当するものと解される。本通達においては、その具体的例示を掲げている。
 なお、「特別の事情」による改定がされた定期給与であっても、継続して毎年所定の時期に改定されるものでない場合は、その改定が臨時改定事由又は業績悪化改定事由(令691一ハ)による改定に該当しない限りは、定期同額給与に該当しないこととなるので留意する必要がある。

2  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8-2-11の2)を定めている。

【新設】(職制上の地位の変更等)

9-2-12の3 令第69条第1項第1号ロ《定期同額給与の範囲等》に規定する「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは、例えば、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や、合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。

(注) 役員の職制上の地位とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいう。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、定期同額給与とされる定期給与の額の改定の範囲に、「役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」(以下「臨時改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定が追加された(令691一ロ)。この改正は、3月経過日等までには予測しがたい偶発的な事情等によるもので、利益調整等の恣意性がないものについても定期同額給与とされる定期給与の額の改定として取り扱うことを法令上明らかにしたものであるが、どのような事情が生じたときがこれに該当するかについては、個々の実態に即し、事前に定められていた役員給与の額を改定せざるを得ないやむを得ない事情が存するかどうかにより判定することとなると解される。本通達においては、その具体的例示を掲げている。

2  例示の一つは、役員の分掌変更の場合であり、例えば、社長が任期途中で退任したことに伴い副社長が社長に就任する場合は、一般的には、その地位及び職務内容ともに重大な変更があると認められることから、臨時改定事由に該当するといえよう。
 もう一つの例示は、組織再編成の場合であり、例えば、合併法人の取締役が合併後も引き続き同じ地位に留まるものの、その職務内容に大幅な変更がある場合等が該当する。
 そのほか、会社やその役員が不祥事等を起こした場合に役員給与の額を一定期間減額するということが見受けられるが、このような役員給与の一定期間の減額が社会通念上相当と認められる範囲のものであるときは、その減額改定及び増額改定についても臨時改定事由によるものに該当しよう。

3  なお、ここでいう「役員の職制上の地位」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいい、いわゆる自称専務等はこれに該当しない。本通達の注書においてこのことを明らかにしている。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8-2-11の3)を定めている。