【新設】(時価)

5-2-11 棚卸資産について低価法を適用する場合における令第28条第1項第2号《低価法》に規定する「当該事業年度終了の時における価額」は、当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額(以下5-2-11において「棚卸資産の期末時価」という。)による。

(注) 棚卸資産の期末時価の算定に当たっては、通常、商品又は製品として売却するものとした場合の売却可能価額から見積追加製造原価(未完成品に限る。)及び見積販売直接経費を控除した正味売却価額によることに留意する。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、棚卸資産の期末評価について低価法を適用する場合における棚卸資産の評価額が「当該事業年度終了の時におけるその取得のために通常要する価額」(いわゆる再調達原価)から「当該事業年度終了の時における価額」に改められた(令281二)。
 「当該事業年度終了の時における価額」とは、いわゆる時価のことであり、一般的には正常な条件により第三者間で取引されたとした場合における価額と解されている。
 そこで、本通達において、棚卸資産について低価法を適用する場合における「当該事業年度終了の時における価額」は、当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額であることを明らかにしている。

2  企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(平成18年7月5日企業会計基準委員会)(以下「棚卸資産会計基準」という。)においては、通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産の期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることとされている。この「正味売却価額」とは、売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう(棚卸資産会計基準5)。
 本通達の「棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」は、棚卸資産を商品又は製品等として売却するものとした場合において見込まれる売却価額であるから、通常は、この「正味売却価額」によることとなる。本通達の注書においてこのことを明らかにしている。

3  ところで、棚卸資産会計基準では、正味売却価額の算定に当たり、売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とし、これには期末前後での販売実績に基づく価額や契約により定められた一定の売価を用いる場合を含むこととされている(棚卸資産会計基準8)。法人がこのような方法により合理的に算定された金額を棚卸資産の期末評価額として低価法を適用している場合には、税務上も、当該期末評価額は法人税法施行令第28条第1項第2号の「当該事業年度終了の時における価額」として取り扱われよう。

4  さらに、棚卸資産会計基準においては、企業の会計実務を考慮して、製造業における原材料等のように再調達原価(購買市場の時価に、購入に付随する費用を加算したものをいう。)の方が把握しやすく、正味売却価額がその再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(最終仕入原価を含む。)によることができることとされている(棚卸資産会計基準10)。
 製造業における原材料等のように製造工程に投下されていない棚卸資産については、未だ新たな付加価値が付与されていないことから、当該原材料等の棚卸資産の正味売却価額はその最終仕入価額や再調達原価とおおむね一致するものと考えられる。したがって、税務上も、法人がこのような棚卸資産に限り、いわゆる再調達原価により算出した金額を当該棚卸資産の期末評価額として低価法を適用している場合であっても、これを法人税法施行令第28条第1項第2号の「当該事業年度終了の時における価額」として取り扱って差し支えないものと考えられる。

5  なお、「棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」は、棚卸資産を商品又は製品等として売却するものとした場合において見込まれる売却価額であるから、資産の評価損益の計上を行う場合における時価である「当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額」(法人税基本通達4-1-3、9-1-3)や、スクラップ等としての処分価額とは異なることとなる。

6  連結納税制度においても、同様の通達(連基通5-2-13)を定めている。