【新設】(売買があったものとされたリース取引)

2-4-2の2 賃貸人が受取リース料を賃貸料として収益の額に計上している場合において、法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》の規定の適用によりリース資産(同項に規定するリース資産をいう。以下2-4-2の2において同じ。)の売買があったものとされたときは、賃貸人はそのリース取引(同項に規定するリース取引をいう。以下2-4-8までにおいて同じ。)に係る収益の額及び費用の額の計算につき、法第63条第1項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定を適用することができる。この場合には、そのリース期間(リース取引に係る契約において定められたリース資産の賃貸借期間をいう。以下2-4-8までにおいて同じ。)中に収受すべきリース料の額の合計額を令第124条《延払基準の方法》に規定する「長期割賦販売等の対価の額」として取り扱う。

(注)
1  そのリース取引が行われた日の属する事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)後の事業年度において、当該リース取引について売買があったものとして処理すべきことが明らかになった場合には、当該明らかになった日の属する事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)についての当該リース取引に係る収益の額及び費用の額は、原則として令第124条に規定する延払基準の方法により計算した収益の額及び費用の額とする。
2  再リース料の額は、再リースをすることが明らかな場合を除き、長期割賦販売等の対価の額に含めないで、その収受すべき日の属する事業年度の益金の額に算入する。
3  本文及び(注)1の取扱いは、法第63条第5項に規定する譲渡損益調整資産の販売又は譲渡には適用がないことに留意する。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、平成20年4月1日以後に締結される契約に係るリース取引(法人税法第64条の2第3項に規定するリース取引をいう。以下同じ。)については、そのリース取引の目的となる資産(以下「リース資産」という。)の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、賃貸人又は賃借人の所得金額の計算を行うこととされている(法64の21)。この改正により、従来、賃貸借取引とされていた所有権移転外リース取引についても、税務上、売買取引として取り扱われることとされた。
 なお、このリース取引によるリース資産の引渡し(リース譲渡)は法人税法第63条第6項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》に規定する長期割賦販売等に該当することとされ、賃貸人は、延払基準の方法による経理を条件に収益の額及び費用の額を分割計上することが認められている(法6316)。

2  企業会計においては、平成19年3月に企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(平成19年3月30日企業会計基準委員会)(以下「リース会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(平成19年3月30日企業会計基準委員会)(以下「リース会計適用指針」という。)が公表され、賃貸人及び賃借人におけるリース取引に関する会計処理の基準及びリース会計基準を実務に適用する際の指針が明らかにされている。この新たなリース会計基準によれば、ファイナンス・リース取引について、賃貸人においては、すべて売買処理をすることとされており、従来、賃貸借処理が認められていた所有権移転外ファイナンス・リース取引についても売買処理に変更することとされている。

3  ところで、所有権移転外ファイナンス・リース取引の売買処理の適用時期に関し、新たなリース会計基準は平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用することとされている一方、税務上のリース取引は平成20年4月1日以後に締結される契約に係るものとされている。このため、例えば、9月決算法人については、平成20年9月期(平19.10.1〜平20.9.30)の所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る会計処理は引き続き賃貸借処理によることとなる一方で、税務上は、平成20年4月1日以後の契約に係るリース取引は売買取引とされることとなる。このように会計上は賃貸借処理を行っているリース取引について、税務上は売買取引とされる場合には、延払基準の方法による経理という条件が満たされないため、長期割賦販売等として収益の額及び費用の額の分割計上が認められないのではないかという疑問が生じる。
 また、同様の問題として、賃貸人においてオペレーティング・リース取引に該当する取引と判断して賃貸借処理を行っていた場合において、後日、税務上は売買取引とされるリース取引に該当することが明らかになったときには、賃貸人において延払基準の方法による経理を行っていないことから法人税法第63条第1項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の適用を受けることができず、リース取引開始時にさかのぼって売買があったものとして修正しなければならないのかという疑問が生じる。
 この点、リース取引は法形式上は資産の賃貸借であり、契約に基づきその賃貸料を分割して収受するものであるという一面を有することからすれば、会計上、賃貸借処理を行ったものについて、延払基準の方法による経理がされていないとしてすべからく所得計算における収益の額及び費用の額の分割計上を認めないこととすれば、リース取引の実態に即さない場面も生じ得る。そこで、本通達において、賃貸人が受取リース料を賃貸料として収益に計上している場合において、そのリース取引が売買取引とされるものについては、法人税法第63条第1項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定を適用できることを明らかにし、その適用に当たっては、基本リース期間中に収受すべきリース料の合計額を長期割賦販売等の対価の額として取り扱うこととしている。
 なお、この取扱いはあくまでも賃貸人が会計上賃貸借処理を行っていることが前提であるから、リース取引開始時において賃貸人が一時の売買として会計処理をしていたものについてまで、その後において長期割賦販売等に該当するものとして収益の額及び費用の額の分割計上を認めるという趣旨ではない。

4  会計上は賃貸借処理をしていたリース取引について、そのリース取引が行われた日の属する事業年度後の事業年度において、税務上売買取引とされるリース取引に該当することが明らかになった場合には、その明らかになった日の属する事業年度前の各事業年度において賃貸借処理をしている場合の収益の額(賃貸料収入)及び費用の額(減価償却費等)は、原則として、延払基準の方法により計算した収益の額及び費用の額とすることとしている。ただし、賃貸人が償却費として損金算入していた金額と延払基準の方法により計算された費用の額との差額については、各事業年度に遡及して修正を行うこととなる。
 本通達の注書の1において、このことを明らかにしている。

5  再リース料の額については、再リースをすることが明らかなものを除き、賃借人においてはリース資産の取得価額に算入せず支出時の損金としていることから、賃貸人においてはこれに対応して、長期割賦販売等の対価の額に含めず、その収受すべき日の属する事業年度の益金の額に算入することとなる。
 本通達の注書の2において、このことを明らかにしている。

6  また、法人がその法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対して行った譲渡損益調整資産の販売又は譲渡については、法人税法第63条第1項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用はないこととされていることから(法635)、この場合には、当然のことながら、本通達の本文及び注書の1についても適用がない。
 本通達の注書の3において、このことを明らかにしている。

7  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-4-2の2)を定めている。