【新設】(棚卸資産の評価方法の選定等に係る取扱いの準用)

2-3-62 短期売買商品(法第61条第1項《短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益の益金又は損金算入》に規定する短期売買商品をいう。以下2-3-65までにおいて同じ。)を保有する場合の当該短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法に係る次の規定の適用については、それぞれ次による。

  • (1) 令第118条の6第3項《短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続》の規定の適用に当たっては、5-2-12《評価方法の選定単位の細分》の取扱い(事業所別の評価方法の選定に係る取扱いに限る。)を準用する。
  • (2) 短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法について変更承認申請書の提出があった場合における同条第5項の規定の適用に当たっては、5-2-13《評価方法の変更申請があった場合の「相当期間」》の取扱いを準用する。

【解説】

1  短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出方法は、その法人全体を一つの単位として、その有する短期売買商品の種類及び銘柄ごとに選定することとされている(令118の63)。
 ところで、棚卸資産の評価方法については事業所別に選定することが認められているが(法基通5-2-12)、トレーディング業務を行う総合商社にとって、短期売買商品は一般の企業が有する商品と同様に棚卸資産に当たるものである。また、会計上、短期売買商品は売買目的有価証券に準じて取り扱うこととされているところ、売買目的有価証券については事業所別に一単位当たりの帳簿価額の計算方法の選定が認められていることからすれば(法基通2-3-21)、短期売買商品についても、事業所別に異なる計算方法の選定を認めることが各企業の事業活動や会計事務にも即したものと考えられる。
 そこで、本通達の(1)において、この旨を明らかにしている。

2  また、法人税基本通達5-2-13《評価方法の変更申請があった場合の「相当期間」》において、棚卸資産の評価方法の変更申請があった場合の「現によっている評価の方法を採用してから相当期間を経過しているかどうか」の判断について「3年」という基準が打ち出されているが、本通達の(2)においては、短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出方法について変更申請があった場合にも、同様に取り扱う旨を明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-3-58)を定めている。

【新設】(専担者売買商品の意義)

2-3-63 令第118条の4第1号《短期売買商品の範囲》に規定する専担者売買商品とは、いわゆるトレーディング目的で取得した商品をいうのであるから、法人がトレーディング業務を日常的に遂行し得る人材によって設置した独立の専門部署(関係会社を含む。)により当該商品の売買がされている場合の当該商品がこれに当たることに留意する。

【解説】

1  専担者売買商品とは、法人が取得した金、銀、白金その他の資産のうち、市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(以下「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行ったものをいう(令118の4一)。通常、短期売買目的で金銀等の売買を継続して行う法人は、これらの売買に精通した専門の担当者による専門部署により日常的にトレーディング業務が行われている。
 専担者売買商品が短期売買商品の範囲に含まれることとされているのは、基本的には、このように金銀等の短期売買目的のための専門部署を備えて、そこで運用が行われるという外形的な状況に着目して短期売買商品とそれ以外の棚卸資産とを区分しようという趣旨であると考えられる。つまり、税務上、専担者売買商品といい得るためには、トレーディング業務を日常的に遂行し得る人材で構成された独立の専門部署(関係会社のような外部的な部署も含まれる。)を設け、この専門部署により売買されたものであることが必要であり、単に、短期的な売買利益の稼得を目的とした取引を行っているということ、あるいは、このような取引を行うことを兼務する担当者が取引を行っているといったことのみをもって専担者売買商品に当たるとは言わないということである。
 本通達において、このことを留意的に明らかにしている。

2 連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-3-59)を定めている。

【新設】(短期売買目的で取得したものである旨を表示したものの意義)

2-3-64 令第118条の4第1号《短期売買商品の範囲》に規定する「短期売買目的で取得したものである旨を……帳簿書類に記載したもの(専担者売買商品を除く。)」(以下2-3-64において「帳簿記載短期売買商品」という。)とは、法人が、規則第26条の7《短期売買商品に該当する旨の記載の方法》の規定に基づき、その取得の日において、その商品につき短期売買目的で取得した旨を短期売買商品に係る勘定科目により区分している場合の当該商品をいうことに留意する。

(注) 短期的に売買し、又は大量に売買を行っていると認められる場合の商品であっても、同条の規定に基づき区分していないものは、帳簿記載短期売買商品に該当しない。

【解説】

1  金銀等のトレーディング業務を行う専門の部署がない法人であっても、短期売買目的でこれらの商品を取得することがあるため、このような場合において、法人自らが短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したものは短期売買商品に該当することとされている(令118の4一)。

2  帳簿書類への記載は、資産の取得に関する帳簿書類において、短期売買目的で取得した資産の勘定科目を短期売買目的以外の目的で取得した資産の勘定科目と区分することにより行うこととされている(規26の7)。
 この場合に留意すべき点は、短期売買商品の区分はあくまでその商品の取得の日に行う必要があり、取得時に短期売買目的以外の目的で取得した商品としていたものを、その後において短期売買目的で取得した商品に振り替えるといったことは認められないということである。
 本通達の本文において、このことを明らかにしている。

3  また、専担者売買商品以外の商品については、短期売買商品であるかどうかを法人が選択することになるので、仮に法人の保有する商品が短期的に、かつ、大量に売買されている状況にある場合であっても、その法人が短期売買目的で取得した商品である旨を帳簿書類に記載することにより明らかにしていない限り、当該商品は税務上、短期売買商品に該当しないこととなる。
 本通達の注書において、このことを念のため明らかにしている。

4 連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-3-60)を定めている。

【新設】(短期売買商品の気配相場)

2-3-65 短期売買商品に係る令第118条の7第1号《短期売買商品の時価評価金額》に規定する「最終の気配相場の価格」は、その日における最終の売り気配と買い気配の仲値とする。ただし、当該売り気配又は買い気配のいずれか一方のみが公表されている場合には、当該公表されている最終の売り気配又は買い気配とする。

【解説】

1  短期売買商品の時価評価金額は、原則として、価格公表者によって公表された当該事業年度終了の日における最終の売買の価格とされ、その最終の売買の価格がない場合には、公表されたその事業年度終了の日における最終の気配相場の価格によることとされている(令118の7一)。
 その場合の気配相場の価格は公正評価額(第三者間で恣意性のない取引を行うと想定した場合の取引価格)によらなければならないのであるから、公表されているその日における最終の売り気配と買い気配の仲値によることとするが、売り気配と買い気配のいずれか一方のみが公表されている場合には、その公表されているいずれかの価格によることが認められる。本通達ではこのことを明らかにしている。
 また、当該事業年度終了の日における最終の売買の価格と最終の気配相場の価格のいずれもない場合には、同日前の最終の売買の価格又は最終の気配相場の価格が公表された日で同日に最も近い日における最終の売買の価格又は最終の気配相場の価格とされているが(令118の7一)、この場合の最終の気配相場の価格についても、当然のことながら、上記と同様の取扱いとなる。

2  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-3-61)を定めている。