【新設】(短期売買商品の譲渡による損益の計上時期の特例)

2-1-21の2 短期売買商品(法第61条第1項《短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益の益金又は損金算入》に規定する短期売買商品をいう。以下2-1-21の3までにおいて同じ。)の譲渡損益の額(同項に規定する譲渡利益額又は譲渡損失額をいう。以下2-1-21の2において同じ。)は、原則として譲渡に係る契約の成立した日に計上しなければならないのであるが、法人が当該譲渡損益の額(事業年度終了の日において未引渡しとなっている短期売買商品に係る譲渡損益の額を除く。)をその短期売買商品の引渡しのあった日に計上している場合には、これを認める。

(注)
1  短期売買商品の取得についても、原則として取得に係る契約の成立した日に取得したものとしなければならないのであるが、その引渡しのあった日に取得したものとして経理処理をしている場合には、事業年度終了の日において未引渡しとなっている短期売買商品を除き、本文の譲渡の場合と同様に取り扱う。この場合、令第118条の6第1項《短期売買商品の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続》の規定の適用についても同様とする。
2  本文及び(注)1の取扱いは、譲渡及び取得のいずれについてもこれらの取扱いを適用している場合に限り、継続適用を条件として認めるものとする。

【解説】

1  平成19年度の税制改正により、法人が短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券以外の一定の資産(以下「短期売買商品」という。)の譲渡をした場合には、その譲渡利益額又は譲渡損失額は、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法611)。

2  企業会計上、トレーディング目的で保有する棚卸資産については、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(平成11年1月22日企業会計基準委員会)(以下「金融商品会計基準」という。)における売買目的有価証券に関する会計処理に準じた取扱いとされることから(企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(平成18年7月5日企業会計基準委員会)16)、その譲渡損益の額は、原則として約定日基準により計上することとされている(金融商品会計基準7・55)。
 また、有価証券の譲渡損益に係る実務的な会計処理の方法として、修正受渡日基準(期中は受渡日基準により処理し、決算日において約定済みで未引渡しとなっている有価証券のみについて、その売却損益又は時価変動差額を処理する方法)も認められており(「金融商品会計に関する実務指針」(平成12年1月31日日本公認会計士協会)22ただし書・235)、トレーディング目的で保有する棚卸資産についても修正受渡日基準が認められることとなる。

3  短期売買商品は企業会計上、トレーディング目的で保有する棚卸資産に当たるが、この短期売買商品の譲渡損益の計上において、税務上も修正受渡日基準による会計処理が認められるかどうかが問題となる。
 この点について、現状において短期売買商品となり得る金、銀、白金等の現物市場では、譲渡の契約日と引渡日(実際には、現物の引渡しを伴わない倉荷証券などの有価証券による引渡しが多い。)が極めて近接しており、譲渡損益の計上時期に多少のずれが生じても一単位当たりの短期売買商品の帳簿価額は変動しない場合が多いものと考えられること、また、事業年度末に有する短期売買商品は時価法による評価が行われてその評価益又は評価損はその事業年度における益金の額又は損金の額に算入されることから(法6123)、期末において約定済で未引渡しとなっている取引を除き、受渡日基準による処理であっても、継続的に行われている限りにおいては、課税上の弊害は極めて少ないと考えられる。
 そこで、短期売買商品の譲渡損益の計上に当たっては、厳格な約定日基準だけではなく、期中においては引渡日に譲渡損益を計算するとともに、事業年度末に約定済で未引渡しとなっている短期売買商品についてはその譲渡損益を約定日基準で計上する方法も認めることを、本通達において明らかにしている。
 なお、短期売買商品の取得についても、譲渡の場合に使用する経理処理と同様の処理基準を採用しなければならない旨を注書の1及び2において併せて明らかにしている。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-1-21の2)を定めている。

【新設】(短期売買業務の廃止に伴う短期売買商品から短期売買商品以外の資産への変更)

2-1-21の3 法第61条第4項《短期売買商品のみなし譲渡》の「短期売買商品の売買を行う業務の全部を廃止したとき」とは、反復継続して行う短期売買商品の売買を主たる業務として又は従たる業務として営んでいる法人が、その業務を行っている事業所、部署等の撤収、廃止等をし、当該法人が当該業務そのものを行わないこととした場合をいうのであるから、単に、保有する短期売買商品の売却を行わないこととした場合は、これに該当しないことに留意する。

【解説】

1  短期売買商品とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産で次に掲げるものをいうこととされている(法611、令118の4)。

  • イ 法人が取得した金、銀、白金その他の資産(有価証券を除く。以下同じ。)のうち、市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(以下「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行ったもの(以下「専担者売買商品」という。)
  • ロ 法人が取得した金、銀、白金その他の資産のうち、その取得日において、短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したもので専担者売買商品に該当しないもの
  • ハ 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は事後設立法人から移転を受けた資産のうち、その移転の直前にこれらの法人においてイ又はロに掲げる資産とされていたもの

 法人が短期売買商品を有する場合において、短期売買目的で短期売買商品の売買を行う業務の全部を廃止したときは、その廃止した時において、その短期売買商品をその時における価額により譲渡し、かつ、短期売買商品以外の資産をその価額により取得したものとする、みなし譲渡の規定が置かれている(法614)。

2  そこで、「短期売買商品の売買を行う業務の全部を廃止したとき」とは、どのような場合をいうのかが問題となるが、これについては、その法人が行っている短期売買商品の売買業務そのものを行わないこととした場合、例えば、短期売買商品のトレーディング業務を行う総合商社において短期売買商品を専担に扱う事業所や部署を撤収、廃止等した場合をいうのであるから、単にその保有する短期売買商品の売却を行わないこととした場合などは、これに当たらないということになる。
 本通達において、このことを念のため明らかにしている。

3 連結納税制度においても、同様の通達(連基通2-1-21の3)を定めている。