[ その他 ]

第5 法人税基本通達関係

【改正】(外貨建ての転換社債型新株予約権付社債の権利行使があった場合の資本積立金額)

1−5−5 外貨建ての転換社債型新株予約権付社債に係る新株予約権の行使により株式を発行した場合において、これに伴いその資本積立金額とされる金額は、その行使の対象となった転換社債型新株予約権付社債の帳簿価額から当該株式の発行により資本に組み入れられた金額を控除した金額とする。

(注) 転換社債型新株予約権付社債とは、新株予約権の行使があったときに代用払込の請求があったものとみなす旨を決議をした新株予約権付社債のうち、次のいずれかの事項があらかじめ社債要項等において明らかにされているものをいう。

(1) 新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。

(2) 新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること。

【解説】

1  改正前の本通達は、外貨建ての転換社債の転換により株式を発行した場合における資本積立金額とされる金額は、その転換の対象となった転換社債の帳簿価額(一般には、その発行時に受け入れた本邦通貨の額)から当該株式の発行により資本に組み入れられた金額を控除した金額として取り扱う旨が明らかにされていた。
 今回の改正では、商法改正により従来の転換社債が新株予約権付社債に包含されたことを踏まえ、新株予約権付社債のうち従来の転換社債と経済的実質が同一となるものを定義し、これに該当する新株予約権付社債については、従来の転換社債と同様に取り扱う旨を明らかにした。

2  平成13年11月28日に公布された商法等の一部を改正する法律(平成13年法律第128号)により、新株予約権及び新株予約権付社債の概念が導入された。新株予約権とは、会社に対して一定期間、あらかじめ定めた一定の価格で新株の発行(又は自己株式の移転)を請求することができる権利をいい、当該新株予約権を付した社債を新株予約権付社債という。
 改正後の商法では、転換社債の発行に関する規定が廃止されたが、新株予約権付社債に従来の転換社債と同様の機能を付与するために、

1 新株予約権付社債の社債部分と新株予約権部分を分離して譲渡することを禁止し(商法341の24)、

2 新株予約権の権利行使があったときに、その新株予約権の付せられた社債の全額の償還に代えて、新株予約権行使の際の払込みがあり、社債権者からの請求があったとみなす(代用払込)旨を、発行時に取締役会又は株主総会で決議することができるとし(商法341の31八)、

3 2の決議をするには、社債の発行価額と新株予約権行使に際して払い込むべき金額が同額でなければならないとしている。

 これらの規定に従った新株予約権付社債は、新株予約権の分離譲渡ができず、社債の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額とを同額とした上で、新株予約権を行使するときは必ず社債が償還されて、社債の償還額が株式転換権の行使に際して払い込むべき金額に充てられることとなる。このような新株予約権付社債は、従来の転換社債とその経済的実質は同一となる。

3  そこで、本通達において、税務上、新株予約権の行使があったときに代用払込の請求があったものとみなす旨を決議した新株予約権付社債を「転換社債型新株予約権付社債」と定義した上で、当該転換社債型新株予約権付社債については従来の転換社債と同様に取り扱う旨を明らかにしている。
 この点、会計上も、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債については、従来の社債に準じて会計処理することとされている(平成14年3月29日付「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」実務対応報告第1号)。
 なお、改正前の商法においては、転換社債の転換権が行使されずに社債が消滅した場合には、その転換権も効力を失うと解されていたが、改正商法においては、新株予約権が行使されずに社債が消滅した場合であっても、新株予約権はそのまま存続するとされているため(商法341の14)、転換社債型新株予約権付社債は、新株予約権と社債とがそれぞれ単独で存在し得ないよう、あらかじめ社債要項等において次のいずれかの内容が記載されていることを要件に加えている。

(1) 新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。

(2) 新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること。

【新設】(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)

2−3-14 子会社等に対して債権を有する法人が、合理的な再建計画等の定めるところにより、当該債権を現物出資(法第2条第12号の14《適格現物出資》に規定する適格現物出資を除く。)することにより株式を取得した場合には、その取得した株式の取得価額は、令第119条第1項第8号《有価証券の取得価額》の規定に基づき、当該取得の時における価額となることに留意する。

(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる。

【解説】

1  本通達は、債権者がその有する債権を債務者に対して現物出資する、いわゆるデット・エクイティー・スワップ(Debt Equity Swap)が合理的な再建計画等に基づき行われた場合には、その現物出資により取得した株式の取得価額は、適格現物出資となる場合を除き、その取得時の時価となることを明らかにしたものである。

2  デット・エクイティー・スワップとは、債務(デット)を株式(エクイティ)と交換(スワップ)する取引をいう。このため一般には「債務の株式化」ともいわれており、わが国では、債権者が債務者の財務内容が悪化したときに企業再建の一手法として用いられている。例えば、銀行等の債権者が貸付金と引換えに株式を取得し、企業再建が実現した場合にその株式を譲渡し、資金の回収を図るといったスキームに利用されている。
 デット・エクイティー・スワップの現行法の下での法的構成としては、債権者が債権を債務者である法人に現物出資する方法が最もシンプルな方法である。

3  ところで、デット・エクイティー・スワップが行われるケースでは、債務者の財務状況が悪化していることが通例であり、債権の評価額は通常債権の券面額を下回ることになる。
 このために、平成12年頃には、デット・エクイティー・スワップの場合の新株発行価額は、商法上、会社の財務内容を反映した債権の評価額を基準とすべきか(評価額説)、債権の券面額を基準とすべきか(券面額説)という点について議論があったが、この点については、東京地方裁判所商事部が券面額説を採用することを明らかにしたことから、現在は検査役の調査実務は券面額説に基づき行われているようである。

4  券面額説による場合には、そのデット・エクイティー・スワップにより取得した株式の取得価額が問題となる。
 すなわち、債権者が債権を債務者に現物出資した場合、債権と債務が同一の債務者に帰属し、その債権は混同により消滅し、債務者は債権の券面額に見合う金額だけの資本の増加があったものとして取り扱うこととなる。このため、債権者においても、債権の券面額を取得した株式の取得価額とすべきではないか、といった疑義が生じる。
 この点について、会計上は、債権者が取得する株式は「新たな資産」であると考えて、債権者の取得する株式の取得時の時価が対価としての受取額となり、消滅した債権の帳簿価額と取得した株式の時価との差額を当期の損益として処理し、当該株式は時価で計上することとされている(平成14年10月9日付実務対応報告第6号「デット・エクイティー・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」)。

5  税務上、有価証券の取得価額については、法人税法施行令第119条第1項において、その取得形態に応じて定められている。
 法人が金銭以外の資産を現物出資した場合には、その現物出資が同項第7号に該当する適格現物出資に該当する場合を除き、同項第1号から第7号までに掲げるいずれの方法にも該当しないことから、法令上同項第8号の「前各号に規定する方法以外の方法により取得した有価証券」に該当することとなる。この場合の有価証券の取得価額は、「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」、いわゆる時価によることとされている。
 したがって、債権を現物出資した場合でも、その取得した株式の取得価額は、会計上の処理と同様に、その取得の時の時価となり、その取得した株式の取得時の時価と消滅した債権の帳簿価額との差額は、その現物出資のあった事業年度の損金の額又は益金の額として処理することとなる。
 なお、デット・エクイティー・スワップは前述したように再建支援の一形態として行われるものであり、これにより生じた損失は、一般的には債権の譲渡損であるが、実質的には債務者に対する債権放棄により生ずる損失と同じく支援としての性格を有するものであることから、デット・エクイティー・スワップを含む再建計画が経済合理性のない過剰支援と認められるような場合には、債権者から債務者に対する寄附金と認定される可能性があるので、留意する必要がある。

【新設】(経過的取扱い(2)……退職給与引当金の取崩し)

 法人が平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)開始の時において有する旧法人税法第54条第6項《退職給与引当金勘定の取崩し》に規定する退職給与引当金勘定の金額につき、平成14年改正法(法人税法等の一部を改正する法律(平成14年7月法律第79号)をいう。以下同じ。)附則第8条第2項又は第3項《退職給与引当金に関する経過措置》の規定により取り崩すべき金額を超えて取り崩した場合には、その超える部分の金額は、その取崩しを行った日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

【解説】

1  本通達は、法人が、退職給与引当金制度の廃止前の退職給与引当金勘定について、経過措置に基づき取り崩すべき金額を超えて取り崩して収益に計上した場合には、その超える部分の金額は、その取崩しを行った日を含む事業年度では益金の額に算入しない旨を明らかにしたものである。

2  平成14年7月の税制改正により、この退職給与引当金制度は、原則として、平成15年3月31日以後に終了する事業年度から廃止された。ただし、法人の平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度(以下「改正事業年度」という。)開始の時において退職給与引当金勘定の金額を有する場合には、その退職給与引当金勘定の金額は、原則として、法人の資本の金額等に応じて4年又は10年で段階的に取り崩され、その取り崩した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入するといった経過措置が講じられている(改正法附則824、改正法令附則52)。
  また、この取崩しを行った後の退職給与引当金勘定の金額が、期末退職給与の要支給額の合計額を超えるときは、その超える部分の金額の取崩しを行うこととされている(改正法附則83)。ただし、この取扱いは、退職年金制度を採用している法人又は採用する法人がその退職金制度からの移行に伴って、その退職給与引当金勘定の金額の残高が期末退職給与の要支給額の合計額を超えることとなった場合については、適用がないこととされている(改正法令附則510)。

3  ところで、法人税法では退職給与引当金制度が廃止されたものの、会計上は使用人の退職給付に伴う債務を退職給付引当金として費用に計上することもあるし、使用人の退職に伴いその退職給付引当金を取り崩して収益に計上することもある。このような処理が行われた場合には、法人が取り崩した退職給与引当金勘定の金額が経過措置により取り崩すべき金額とは異なる場合も生じ得る。
 この場合において、取崩不足額が生じたときは、当然申告調整により益金の額に算入することとなるのであるが、取り崩すべき金額を超えて取り崩したときには、当該超える部分の金額をどのように処理すべきか問題となる。
 この点については、税制上は経過措置に基づき淡々と取り崩すべき金額を強制的に取り崩すこととされていることから、その金額を超える部分の金額は本来翌期以降に取り崩すべき金額ということになる。したがって、その取り崩すべき金額を超える部分の金額は、申告調整により減算(益金不算入)する必要がある。

4  なお、経過措置の規定はあくまで無税分の退職給与引当金の取崩しに関する規定であり、法人が有税分の退職給与引当金勘定の金額を取り崩した場合には、当該取崩額は、もともとその繰入れにつき損金算入が認められていない金額に係るものであることから、無税分の退職給与引当金の取崩額の申告調整とは別に、申告調整により減算することとなる。

戻る