[ 連結納税関連 ]

第2 法人税基本通達関係

【新設】(連結納税の開始等に伴う時価評価資産に係る時価の意義)

12の3−2−1 法第61条の11第1項《連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益》又は第61条の12第1項《連結納税への加入に伴う資産の時価評価損益》の規定を適用する場合における「時価評価資産のその時の価額」は、当該時価評価資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡されるときに通常付される価額によるのであるが、次に掲げる時価評価資産について、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる方法その他合理的な方法により当該時価評価資産のその時の価額を算定しているときは、課税上弊害がない限り、これを認める。

(1) 減価償却資産

イ 令第13条第1号から第7号まで《有形減価償却資産》に掲げる減価償却資産9−1−19《減価償却資産の時価》に定める方法により計算される未償却残額に相当する金額をもって当該減価償却資産の価額とする方法

ロ 同条第8号《無形減価償却資産》及び第9号《生物》に掲げる減価償却資産当該減価償却資産の取得価額を基礎としてその取得の時から法第61条の11第1項に規定する連結開始直前事業年度(以下12の3−2−1において「連結開始直前事業年度」という。)又は法第61条の12第1項に規定する連結加入直前事業年度(以下12の3−2−1において「連結加入直前事業年度」という。)終了の時まで定額法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額をもって当該減価償却資産の価額とする方法

(2) 土地当該土地につきその近傍類地の売買実例を基礎として合理的に算定した価額又は当該土地につきその近傍類地の公示価格等(地価公示法第8条《不動産鑑定士等の土地についての鑑定評価の準則》に規定する公示価格又は国土利用計画法施行令第9条第1項《基準地の標準価格》に規定する標準価格をいう。)から合理的に算定した価額をもって当該土地の価額とする方法

(3) 有価証券9−1−8、9−1−13、9−1−14又は9−1−15《有価証券の価額》に定める方法に準じた方法によって算定した価額をもって当該有価証券の価額とする方法

(4) 金銭債権

イ その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権当該金銭債権の額から当該金銭債権につき法第52条第1項《貸倒引当金》の規定を適用した場合に同項の規定により計算される個別貸倒引当金繰入限度額に相当する金額を控除した金額をもって当該金銭債権の価額とする方法

ロ イ以外の金銭債権当該金銭債権の帳簿価額をもって当該金銭債権の価額とする方法

(5) 繰延資産

イ 令第14条第1項第1号から第7号まで《繰延資産の範囲》に掲げる繰延資産当該繰延資産の帳簿価額をもって当該繰延資産の価額とする方法

ロ 同項第8号及び第9号に掲げる繰延資産当該繰延資産の額を基礎としてその支出の時から連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度終了の時まで令第64条第1項第2号《繰延資産の償却限度額》の規定により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額をもって当該繰延資産の価額とする方法

(注) この場合における償却期間は、8−2−1から8−2−5まで《繰延資産の償却期間》に定める償却期間による。

【解説】

 本通達は、連結納税の適用開始時又は加入時において、「他の内国法人」の有する時価評価資産につき時価評価が必要となる場合のその評価方法として合理的な方法を例示したものである。
 連結納税の適用を受けることになる法人税法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人は、その開始又は加入の直前の事業年度終了の時に有する時価評価資産(時価評価を要する一定の資産)について時価評価損益(その時の帳簿価額とその時の価額との差額)の計上を行うこととされている(法61の111、61の121)。
 この場合の当該時価評価資産に係るその時の価額(以下「時価」という。)とは、当該時価評価資産がその状態で使用収益されるものと仮定した場合の通常付される譲渡価額によることをまず、本通達の本文で明らかしている。なお、この考え方は資産の評価損を計上する場合の取扱い(法基通9−1−3《時価》)と同様である。
 しかしながら、実務上、時価の算定を行うことは、必ずしも容易でない場合もあると考えられる。そこで、本通達では、それぞれの資産の種類に応じ、それぞれに掲げる方法で算定した金額については、課税上弊害がない限り、これを時価と認めることを明らかにしたものである。

(1) 減価償却資産
有形減価償却資産については、当該資産の再取得価額(新品としての取得価額)を基礎としてその取得の時から当該直前事業年度終了の時まで定率法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額を「時価」とする方法を掲げている。
 また、無形減価償却資産及び生物については、当該資産の取得価額を基礎としてその取得の時から当該直前事業年度終了の時まで定額法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額を「時価」とする方法を掲げている。

(2) 土地
土地については、1近傍類地の売買実例の価格、2近傍類地の地価公示法の公示価格又は3国土利用計画法の基準地の標準価格を基礎として合理的に算定した価額を「時価」とする方法を掲げている。
 なお、土地の時価の算定に当たり、相続税の財産評価の方法である路線価(財産評価基本通達)によることもできるのではないかと考える向きもあろう。
 しかしながら、相続税の財産評価における路線価とは、評価の安全性等を考慮して、一般に土地の時価に近接した公示価格の評価水準よりも低額に定められており、時価を示すものではないとされている。したがって、法人税法における時価の概念として、直接的に路線価を採用することは適当ではない。

(注) 例えば、当該土地につきその近傍類地に売買実例がなく、また公示価格や標準価格も存しないような場合に、当該土地の1m2当たりの相続税評価額に、当該土地が所在する地域内若しくは隣接地域内における公示価格比準倍率(その地域内のすべての標準地の公示価格を同地に隣接する街路の路線価で除した割合)の平均値を乗じて計算した価格に時点修正などをすることにより、当該土地の価額を算出した場合には、当該算出した価額をもって当該土地の時価の算定要素の一つとして取り扱って差し支えないものと考える。

(3) 有価証券
有価証券については、法人税法第33条第2項《資産の評価損の損金算入》の規定を適用する場合の法人税基本通達に定める方法に準じた方法によって算定した価額をもって「時価」とする方法を掲げている。

(4) 金銭債権
イの損失が見込まれる金銭債権(個別評価金銭債権)については、金銭債権の額から法人税法第52条第1項《貸倒引当金》に規定する個別貸倒引当金繰入限度額相当額を控除した残額をもって「時価」とする方法を掲げている。
 ロのイ以外の金銭債権(健全債権)については、その帳簿価額を「時価」とする方法を掲げている。

(5) 繰延資産
イの商法上の繰延資産のうち、その償却が任意とされるもの(創業費、建設利息、開業費、試験研究費、開発費、新株発行費、社債発行費)については、その繰延資産の帳簿価額を「時価」とする方法を掲げている。
ロの社債発行差金及び税法上の繰延資産については、その取得価額を基礎としてその取得の時から当該事業年度終了の時までその繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間に応じて償却を行ったものとした場合の未償却残額を「時価」とする方法を掲げている。

【新設】(連結納税への再加入時の時価評価の要否)

12の3−2−4 法人が、法第4条の5第1項又は第2項《連結納税の承認の取消し》の規定によりその承認の取消しを受けた後に、再度、当該承認に係る連結親法人との間に連結完全支配関係を有することとなった場合には、当該法人が当該取消し前の法第61条の11第1項《連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益》に規定する連結開始直前事業年度又は法第61条の12第1項《連結納税への加入に伴う資産の時価評価損益》に規定する連結加入直前事業年度においてこれらの規定の適用を受けたかどうかにかかわらず、同項の規定の適用があることに留意する。
 ただし、当該法人が同項第5号に掲げる法人に該当する場合には、この限りでない。

【解説】

本通達は、連結納税の開始又は加入に際して時価評価損益の計上を行った法人が、いったん承認の取消しを受けた後に同一のグループへ再加入する場合であっても、既に評価損益の計上を行ったことのみをもって、その有する時価評価資産について時価評価損益の計上が不要とはならないことを明らかにしたものである。
 連結納税の承認が取り消されたことにより連結グループから離脱した法人が、一定期間を経過した後、再度、法人税法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人としてその取消し等の直前に属していた連結グループの連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった場合には、当該連結グループに必然的に再加入することとなる(法4の310)。
 ところで、連結納税の適用を受ける法人のうち時価評価資産(時価評価を要する一定の資産)を有するものは、一定の法人を除き、連結納税の開始又は加入直前の事業年度終了の時に有する当該時価評価資産の時価評価損益(その時の帳簿価額とその時の価額との差額)の計上を行うこととされている(法61の11、61の12)が、連結納税の適用に際して時価評価損益の計上を行った法人がその連結納税の承認を取り消された後、再び連結法人となる場合において、当該法人の時価評価資産に係る時価評価損益の計上を不要とするような定めはない。このことは同一の連結グループへの再加入の場合であっても同様である。
 したがって、連結納税の開始又は加入に際して時価評価損益の計上を行った法人が同一のグループへ再加入する場合であっても、既に評価損益の計上を行ったことのみをもって、その有する時価評価資産について時価評価損益の計上を行う必要がなくなることにはならない。
 ただし、平成15年度の税制改正により、その発行済株式を直接又は間接に保有していた連結子法人の解散に基因して連結納税の承認が取り消された法人(法4の52五)が、その解散した連結子法人の残余財産が分配されたことに伴って再び自己の連結親法人との間に連結完全支配関係を有することとなった場合(その承認が取り消された日からその残余財産が分配された日まで一定の関係が継続していた場合に限る。)の当該法人について時価評価が不要とされた(法61の121五、令122の133)。本通達のただし書きは、この改正を受けて法人税法第61条の12第1項第5号《連結納税への加入に伴う資産の時価評価を要しない法人》に掲げる法人が同一の連結グループに再加入することとなった場合には通達本文の取扱いの適用がない旨を明らかにしたものである。

【新設】(時価評価法人の時価評価すべき資産−連結納税の開始)

12の3−2−5 法人が法第4条の3第9項《時価評価法人等に対する承認の効力》に規定する連結申請特例年度開始の日の前日の属する事業年度終了の時において、令第14条の5第1号《時価評価資産》に規定する時価評価資産を有しないが同条第2号又は第3号《繰延長期割賦損益額等》に掲げるものを有する場合には、当該連結申請特例年度終了の時において当該法人の有する法第61条の11第1項《連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益》に規定する時価評価資産につき同項の規定の適用があることに留意する。

(注) 法第4条の3第9項第1号に規定する関連法人(同号に規定する時価評価法人に該当する法人を除く。) が同項に規定する連結申請特例年度終了の時において時価評価資産を有するときであっても、当該時価評価資産については法第61条の11第1項の規定の適用はない。

【解説】

 本通達の本文は、時価評価法人(法4の39一)に該当するかどうかを判定する時に時価評価資産を有していないものの、長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る契約のうち一定のもの(以下「長期割賦販売契約」という。)又は租税特別措置法に規定する特別勘定の金額のうち一定のものを有するため時価評価法人と判定された場合に、その法人が連結申請特例年度終了の時までに資産を取得し、これが時価評価資産に該当するときにはその時価評価損益の計上を行う必要があることを明らかにしたものである。
 また、本通達の(注)は、関連法人(法4の39一)(時価評価法人に該当するものを除く。)が連結申請特例年度終了の時に時価評価資産を有していても時価評価損益の計上を行う必要がないことを明らかにしたものである。
 設立事業年度等の申請期限特例(法4の36)の適用により連結納税の承認を受けた他の内国法人のうち、連結申請特例年度の直前の事業年度終了の時において時価評価資産等を有するものは、時価評価法人とされ、当該時価評価法人は、最初連結親法人事業年度(連結申請特例年度)終了の時に有する時価評価資産につき評価損益の計上を行い、翌事業年度から連結納税を行うこととされている(法61の111)。
 ところで、当該他の内国法人が、時価評価法人に該当するかどうかを判定する場合の「時価評価資産等」とは、1時価評価資産のほか、2長期割賦販売契約及び3租税特別措置法に規定する特別勘定の金額のうち一定のものをいうこととされている(法4の39一、令14の5)。
 例えば、時価評価法人であるかどうかの判定時において時価評価資産を有していないものの、長期割賦販売契約を有していたため時価評価法人と判定された法人が最初連結親法人事業年度の終了の時、すなわち、実際に時価評価損益の計上を行うべき時において、判定時と同様に時価評価資産を有していない場合には時価評価を行うことはない。しかしながら、例えば、その時価評価法人が、連結申請特例年度中に新たに取得した資産が、当該終了の時に時価評価資産に該当する場合には、当該時価評価資産について時価評価損益の計上を行う必要が生じることとなる(法61の111)。
 これに対して、当該他の内国法人が関連法人(時価評価法人に該当するものを除く。)と判定された場合には、法人税法第61条の11第1項《連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益》の規定の適用上、当該関連法人は連結開始直前事業年度(最初連結親法人事業年度開始の日の前日の属する事業年度をいう。)終了の時において時価評価資産等を有していないのであるから連結申請特例年度中に新たに取得した資産が、その連結グループにおいて連結納税の適用がある最初の事業年度(連結申請特例年度)終了の時において、時価評価資産に該当することとなっても、その時価評価資産について時価評価損益の計上を行う必要はないこととなる。

【新設】(時価評価時に時価評価資産から除かれる資産を判定する場合の資本等の金額)

12の3−2−8 法人が法第61条の11第1項《連結納税の開始に伴う資産の時価評価損益》に規定する時価評価資産を有するかどうかを判定する場合における令第122条の12第1項第4号《時価評価資産から除かれる資産の範囲》に規定する「資本等の金額」は、法第61条の11第1項に規定する連結開始直前事業年度終了の時の資本等の金額となることに留意する。
 法第61条の12第1項《連結納税への加入に伴う資産の時価評価損益》の規定の適用における法人の「資本等の金額」については、同項に規定する連結加入直前事業年度終了の時の資本等の金額となる。

【解説】

 本通達は、連結納税の開始又は加入に伴う資産の時価評価損益を計上する場合において、時価評価資産に該当するかどうかの判定における資本等の金額がいつの時点の金額をいうのかを明らかにしたものである。
 連結納税の適用を受ける法人税法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人は、その連結開始直前事業年度(最初の連結事業年度の直前の事業年度)終了の時に有する時価評価資産について時価評価損益(その時の帳簿価額とその時の価額との差額)の計上を行うこととされている(法61の111)。
 しかし、当該他の内国法人が有する資産のうち、その資産の価額と帳簿価額との差額が資本等の金額の2分の1又は1,000万円のいずれか少ない金額に満たないものについては、時価評価資産に該当しないこととされている(令122の121四)。
 この場合の「資本等の金額」は、法人のいつの時点の資本等の金額をいうのかについては特に明文上の規定はないが、時価評価損益の計上の対象となる資産かどうかを判定するのであるから、その判定時、すなわち、連結開始直前事業年度終了の時における資本等の金額と解するのが適当である。本通達の前段はこのことを明らかにしている。
 また、本通達の後段では連結親法人との間に当該連結親法人による完全支配関係を有することとなった場合の他の内国法人について、時価評価損益の計上の対象となる資産かどうかを判定するときの資本等の金額についても、上記と同様に、その判定時である連結加入直前事業年度終了の時の資本等の金額によることを明らかにしている。

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