[ 連結納税関連 ]

第1 連結納税基本通達関係

(譲渡損益調整額の計算における「対価の額」の意義)

14−1−1 連結法人が譲渡損益調整額を計算する場合における法第81条の10第1項《連結法人間取引の損益の調整》に規定する「譲渡に係る対価の額」とは、同項に規定する譲渡損益調整資産の譲渡の時の価額をいうことに留意する。

(注) 譲渡損益調整額とは、同項又は法第61条の13第1項《分割等前事業年度等における連結法人間取引の損益の調整》の規定により譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額が損金の額又は益金の額に算入される場合のその算入される金額をいう。以下この章において同じ。

【解説】

本通達は、連結法人間取引における譲渡損益調整額の計算上の「対価の額」とは何かについて明らかにしたものである。
 連結法人が他の連結法人に譲渡損益調整資産を譲渡した場合において、その譲渡に係る対価の額が原価の額を超える場合のその超える部分の金額は譲渡利益額とされ、これとは逆にその譲渡に係る原価の額が対価の額を超える場合のその超える部分の金額は譲渡損失額とされている(法81の101)。
 この場合の「譲渡に係る対価の額」とは、取引当事者である連結法人が現実に収受した金銭等の額をいうのではないかとの疑問も生じ得るが、譲渡損益調整資産の譲渡時の価額(時価)となる。
 このことは、法人税法第81条の10第1項《連結法人間取引の損益の調整》の規定が連結法人間での譲渡損益調整資産の譲渡が時価による取引を前提にその譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額を調整する制度としていることからすればいわば当然のことであるが、本通達はこのことを念のため明らかにしている。
 なお、連結法人が無償で資産を贈与した場合のその贈与時の当該資産の価額あるいは資産を低廉譲渡した場合の譲渡対価の額とその譲渡時の当該資産の価額との差額のうち実質的に相手方に贈与したと認められる部分の金額は、寄附金に該当することとされている(法378、81の66)。したがって、例えば連結グループ法人間で時価と異なる価額により譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、その譲渡法人及び譲受法人のそれぞれにおいて、次の処理を行うこととなる。

《設例》

[前提条件]譲渡損益調整資産の簿価2000、時価5000

1 譲渡価格3000での低廉譲渡の場合

譲渡価格3000での低廉譲渡の場合の図

※ 譲渡法人は譲渡利益相当額3000につき譲渡損益の調整(損金算入)を行い、寄附金2000については、連結法人間の寄附金に該当することになるためその全額が損金不算入となる。

2 譲渡価格9000での高額譲渡の場合

譲渡価格9000での高額譲渡の場合の図

※ 譲渡法人は譲渡利益相当額3000につき譲渡損益の調整(損金算入)を行う。また、譲受法人の寄附金は1の場合と同様に全額が損金不算入となる。
 なお、受贈益相当額については、連結法人間取引の損益の調整の対象とはされない。

(譲渡損益調整額の計算における「原価の額」の意義)

14−1−2 法第81条の10第1項《連結法人間取引の損益の調整》に規定する「原価の額」とは、同項に規定する譲渡損益調整資産の譲渡直前の帳簿価額をいうのであるから、例えば、不動産売買又は有価証券の譲渡に係る手数料など譲渡に付随して発生する費用は、これに含まれないことに留意する。

【解説】

 本通達は、連結法人間取引における譲渡損益調整額の計算上の「原価の額」とは何かについて明らかにしたものである。
 連結法人が他の連結法人に譲渡損益調整資産を譲渡した場合は、譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、各連結法人の各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入することとされている。そして、当該「譲渡利益額」とは、その譲渡に係る対価の額が原価の額を超える場合のその超える部分の金額とされ、当該「譲渡損失額」とは、その譲渡に係る原価の額が対価の額を超える場合のその超える部分の金額とされている(法81の101)。
 この場合の「譲渡に係る原価の額」には、例えば、譲渡損益調整資産たる土地や有価証券等を譲渡したことに伴って譲渡法人(連結法人)が負担することとなる当該土地の売買手数料や当該有価証券の譲渡に係る手数料等、その譲渡に係る付随費用が含まれるかどうか疑問が生じ得る。
 この点について、連結法人間取引の損益調整の規定(法81の101)があくまでも譲渡損益調整資産そのものから生ずる譲渡損益を調整するものであると考えられるところ、当該付随費用は当該「譲渡に係る原価の額」には含まれず、その「原価の額」はその譲渡直前の帳簿価額となる。本通達はこのことを明らかにしている。
 なお、譲渡法人が負担する譲渡に係る手数料等の額については、原則として譲渡損益調整資産を譲渡した日の属する連結事業年度の損金の額に算入されることとなる。

(譲渡した連結法人の株式等が譲渡損益調整資産に該当するかどうかの判定)

14-1-3 連結法人が、当該連結法人以外の連結法人に対し、当該連結法人との間に連結完全支配関係を有する他の連結法人の株式(出資を含む。以下14−1−3において同じ。)を譲渡した場合において、当該譲渡した株式の令第122条の14第1項第3号《譲渡損益調整資産から除かれる資産の範囲》に規定する「その譲渡の直前の帳簿価額」は、令第119条の3第3項《移動平均法を適用する有価証券について評価換え等があった場合の一単位当たりの帳簿価額の算出の特例》又は第119条の4第1項《評価換え等があった場合の総平均法の適用の特例》の規定により算出される金額にその譲渡をした株式の数を乗じた金額となることに留意する。

【解説】

 本通達は、一の連結グループの連結法人間で他の連結法人(子法人)の株式が譲渡された場合において、その株式が譲渡損益調整資産に該当するかどうかの判定をするときの「その譲渡の直前の帳簿価額」の意義について明らかにしたものである。
 連結法人間で連結子法人の株式が譲渡された場合で、当該株式の譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上であること等一定の場合には、当該株式は譲渡損益調整資産に該当することとなる(令122の141三)。
 ところで、いわゆる投資価額修正を行う事由の1つとして他の連結法人の株式の「譲渡」があるが(令9の21一)、規定上、その譲渡の相手方を限定していないことから、仮にその譲渡の相手方が同一連結グループ内の法人であったとしても、帳簿価額の修正を行うこととなる(連基通1−8−3)。そのため、上記1,000万円以上であるかどうかの判定は、投資価額修正後の価額により行うのか、それとも投資価額修正前の価額により行うのかという疑問が生じ得る。
 この点については、投資価額修正は他の連結法人(子法人)株式の譲渡直前の帳簿価額、すなわち譲渡原価を修正するものであることから、投資価額修正後の帳簿価額によりその判定を行うことになる。

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