[ 連結納税関連 ]

第1 連結納税基本通達関係

(連結子法人株式の帳簿価額の修正額)

1−8−2 令第9条の2第4項《連結利益積立金額の計算》の規定の適用上、同条第2項《連結法人株式の帳簿価額修正》に規定する「連結法人株式の帳簿価額修正額」がマイナスとなる場合には、当該マイナスの金額が法第2条第18号の2チ《連結利益積立金額の加算額》の金額となるのであるから、この場合の令第119条の3第3項又は第119条の4第1項《連結個別利益積立金額の増加・減少があった場合の移動平均法又は総平均法による帳簿価額の算出》の規定により計算した有価証券の一単位当たりの帳簿価額は、マイナスの金額となる場合があることに留意する。

【解説】

 本通達では、連結法人が、いわゆる投資価額修正を行った場合には、当該連結子法人の株式の一単位当たりの帳簿価額がマイナスの金額となる場合があることを明らかにしている。
 連結法人が連結子法人の株式の譲渡等をした場合には、当該連結子法人の株式の一株当たりの帳簿価額は、譲渡等の直前の帳簿価額に法人税法施行令第9条の2第2項《連結法人株式の帳簿価額修正》に規定する連結法人株式の帳簿価額修正額(以下「帳簿価額修正額」という。) を加算した金額を基礎として計算した金額に修正することとされており(令119の33、119の41)、当該連結法人はその帳簿価額修正額を連結利益積立金額に加算することとされている(法2十八の二チ、令9の224)。
 ところで、帳簿価額修正額は、原則として、当該株式を発行した連結子法人が当該連結法人との間に連結完全支配関係を有することとなった時以降に増減した連結個別利益積立金額又は利益積立金額の合計額を基礎として計算することとなる(令9の224)。このため、株式を発行した連結法人のこの合計額がプラスであれば帳簿価額修正額はプラスの金額となるが、例えば、過去に多額の連結欠損金個別帰属額を有する場合などこの合計額がマイナスとなるときには、帳簿価額修正額がマイナスの金額となることがある。
 このマイナスの金額が連結子法人の株式の譲渡等の直前の帳簿価額を上回る場合の当該株式の修正後の一株当たりの帳簿価額は、当該直前の帳簿価額にそのマイナスの金額を加算した金額をその株式の数で除して算出することとなり、その算出した金額もまた、マイナスの金額となる。このことは、法令上明らかではあるが、有価証券の帳簿価額がマイナスの金額となることはないのではないかとの疑問も生じ得るので、本通達はこのことを留意的に明らかにしたものである。
 なお、当然のことながら、このマイナスの帳簿価額が有価証券の譲渡原価の額となるので、例えば、連結子法人の株式を50で譲渡した場合において、投資価額修正後の帳簿価額がマイナス100となったときの当該有価証券の譲渡利益額は、「50−(−100)=150」と計算されることとなる。

連結子法人株式の帳簿価額の修正額の算式

(連結子法人株式の帳簿価額の修正事由に係る譲渡)

1−8−3 令第9条の2第3項《連結利益積立金額の増加・減少が生ずる事由》において読み替えて適用する同条第1項第1号《利益積立金額の増加・減少が生ずる事由》の規定上、連結法人の有する他の連結法人の株式の譲渡は、連結法人以外の者に対する譲渡に限られないのであるから、例えば、その譲渡が他の連結法人に対するもので、法第81条の10第1項《連結法人間取引の損益の調整》の規定の適用があるものであっても、これに含まれることに留意する。

【解説】

 本通達は、連結法人が連結子法人の株式の譲渡を行った場合において、その株式が譲渡損益調整資産に該当し、その譲渡に係る損益の計上が調整される(繰り延べられる)場合であっても、帳簿価額の修正を要する旨を明らかにしたものである。
 連結子法人の株式の帳簿価額について修正を行う趣旨は、連結法人の個別の所得金額(又は欠損金額)とその連結法人の株式が譲渡された場合の譲渡益(又は譲渡損)とに対する二重課税(又は二重控除)の排除にある。
 この点、連結法人間での連結子法人の株式の譲渡が譲渡損益調整資産の譲渡に該当し、譲渡損益の調整によりその株式に係る譲渡損益が実質的に繰り延べられるときには、その繰り延べられている期間は二重課税(又は二重控除)の問題は生じないことにかんがみると、当該譲渡は連結子法人の株式の帳簿価額の修正を行うべき事由である「譲渡」(令9の21一、3)に含まれないとの考えも生じ得る。
 しかしながら、法人税法施行令第9条の2第1項第1号《利益積立金額の増加・減少が生ずる事由》に規定する「譲渡」は、その譲渡先を特に限定していないことから、同一連結グループ内の他の連結法人に対する譲渡であって、当該株式が譲渡損益調整資産に該当する場合でも同号の「譲渡」に該当することとなり、また、譲渡損益調整額を戻し入れる時まで連結子法人の株式の帳簿価額の修正を見合わせる旨の規定もないことから、譲渡損益が実質的に繰り延べられたかどうかにかかわらず、その連結子法人の株式の帳簿価額の修正を要することとなる。
 法令上、連結子法人の株式の帳簿価額の修正は、その連結子法人の連結納税の適用開始以後又は連結グループへの加入以後に生じた連結個別利益積立金額又は利益積立金額の増減額を基礎として計算を行うこととされ、その後再度帳簿価額の修正を行う事由が生じ、これを行う場合には、既に修正された金額は含めないで計算することとされている(令9の22一)。いい換えれば、連結子法人の株式を保有する他の連結法人が行うその株式の帳簿価額の修正は、その保有期間に応じて、計算することとなる。 したがって、連結グループ間における譲渡であっても、その保有する法人が異なることとなる場合には、その譲渡の直前においてその連結個別利益積立金額又は利益積立金額の増減額をその保有期間に応じて、各連結法人に適正に配分するとともに、その連結子法人の株式の譲渡に係る一単位当たりの帳簿価額(譲渡原価の計算の基礎となる金額)を修正しておく必要がある。
 仮に、連結グループ間における譲渡の都度その帳簿価額の修正を行わないこととした場合には、その帳簿価額の修正の対象となる連結子法人の株式を保有していた法人を事後的に(過去に遡って)把握することが必要となるが、それぞれの保有期間に応じた配分を適正に行うことは極めて困難なものとなろう。

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