[ 連結納税関連 ]

第1 連結納税基本通達関係

(連結親法人及び連結子法人の意義)

1−3−1 法第2条第12号の7の2《連結親法人の意義》に規定する「連結親法人」及び同条第12号の7の3《連結子法人の意義》に規定する「連結子法人」とは、法第4条の3第3項、第4項、第8項、第10項及び第11項《連結納税の承認等》の規定により承認を受けるとともに、それぞれの規定の承認の効力が生じている法人をいうことに留意する。

【解説】

本通達は、連結法人とは、連結納税に係る承認を受けることのみならず、その承認の効力が生じている法人をいうことを明らかにしたものである。
 法人税法第4条の3第1項《連結納税の承認の申請》の申請を行った内国法人につき承認(みなし承認を含む。)があった場合には、その承認は、当該内国法人及び同項の他の内国法人のすべてにつき最初の連結事業年度としようとする期間の開始の日以後の期間について、その効力を生ずることとされている(法4の35)。
 また、同条第9項第1号《設立事業年度等の申請期限特例に係る承認の効力等》に規定する時価評価法人及び関連法人については、その承認が連結申請特例年度(法4の36)中にあった場合であっても、その承認の効力が生ずるのは当該連結申請特例年度終了の日の翌日以後の期間とされている。
 ところで、連結親法人(又は連結子法人)は「第4条の2の承認を受けた同条に規定する内国法人(又は他の内国法人)をいう。」(法2十二の七の二、十二の七の三)とされていることから、これらの法人はその承認を受けた事実をもって、その承認を受けた日から連結法人としての課税関係を律することとなるのではないかとの考えも生じ得る。
 しかしながら、連結納税の承認の効力が生じていない主体について、これを連結法人として課税関係を律するということは法人税法のみならず私法の一般原則に照らしても適当ではない。したがって、連結納税の承認を受けただけで、未だその承認の効力が生じていない法人は連結法人には該当せず単体法人として課税関係を考えることとなる。
 このことから、例えばある法人と完全支配関係のある法人との間で寄附金の授受があったとしても、その授受が連結納税の承認の効力が生じていない期間に行われたものである場合には、当該寄附金は全額損金不算入となる連結法人間の寄附金(法81の62)には該当しないこととなる。

(最初連結親法人事業年度開始の時までの間に完全支配関係を有することとなった法人のみなし承認)

1−3−2 法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人が、既に法第4条の3第1項《連結納税の承認申請》の規定により申請を行った内国法人との間に、当該申請の時から最初連結親法人事業年度開始の時までの間に、新たに当該内国法人による完全支配関係を有することとなった場合において、当該内国法人に対して承認の処分があったときは、当該他の内国法人についても同条第3項《連結納税の承認》の規定により承認があったものとみなすことに留意する。

【解説】

本通達は、連結納税の承認申請期間中に申請法人による完全支配関係を有することとなった法人についての連結納税の承認に係る取扱いを明らかにしたものである。
 連結納税の申請を行った法人税法第4条の2《連結納税義務者》に規定する内国法人(親会社)に対して承認があった場合には、最初の連結事業年度としようとする期間の開始の時に当該親会社による完全支配関係を有する法人税法第4条の3第1項《連結納税の承認の申請》に規定する他の内国法人のすべてにつきその承認があったものとみなすこととされている(法4の33)。この承認があったものとみなされる「他の内国法人」は、当該期間の開始の時のみならずその申請の時においても当該親会社との間に完全支配関係を有している必要があるかどうかが問題となる。
 この点、同条第1項に規定する「他の内国法人」とは、単に法人税法第4条の2に規定する他の内国法人をいうのであって、申請を行った法人かどうかは問わないのであるから、親会社に対して承認があった場合には、最初の連結事業年度としようとする期間の開始の時に当該親会社による完全支配関係を有する法人税法第4条の2に規定する他の内国法人のすべてにその承認があったものとみなされることになる。この結果、申請時から最初連結親法人事業年度開始の時までの間に、新たに当該親会社による完全支配関係を有することとなった法人もこの承認があったものとみなされる他の内国法人に該当することとなり、当該法人にも連結納税の承認の効力が及ぶこととなる。
 なお、本通達の「内国法人」及び「他の内国法人」は、完全支配関係を有することとなった日以後遅滞なく一定の書類(「完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類」)をそれぞれ納税地の所轄税務署長に提出することとされている(令14の44、規8の3の33)。

(最初連結事業年度開始の日の前日までの間に完全支配関係を有しなくなった法人の連結適用制限)

1−3−3 法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人が、既に法第4条の3第3項《連結納税の承認》の承認を受けた法第4条の2に規定する内国法人について当該承認の効力が生ずる前に当該内国法人との間に当該内国法人による完全支配関係を有しないこととなった場合には、法第4条の5第2項第5号《連結納税の承認のみなし取消し》に掲げる事実に該当しないのであるから、当該他の内国法人は令第14条の3第3項第4号《承認取消し等に係る連結適用制限》に掲げる法人に該当しないことに留意する。

(注) 法第4条の3第9項第2号又は第3号及び第11項第2号又は第3号《設立事業年度等の承認申請特例に係る承認の効力等》に規定する「他の内国法人」又は「前2号に掲げる法人以外の法人」が連結子法人となった場合には、たとえ同条第6項《設立事業年度等の申請期限特例》に規定する連結申請特例年度の終了の日までの間に当該内国法人との間に連結完全支配関係を有しないこととなったとき(株式等保有連結子法人が合併以外の事由による解散に基因して当該内国法人による連結完全支配関係を有しなくなった場合を除く。)であっても、令第14条の3第3項第4号に掲げる法人に該当することになるのであるから留意する。

【解説】

 本通達の本文は、最初の連結事業年度(連結申請特例年度に該当するものを除く。)が開始するまでに、連結親法人となる法人との間に完全支配関係を有しないこととなった子会社については、連結納税の再加入に係る適用制限はない旨を明らかにしたものである。
 内国法人(親会社)と他の内国法人(子会社)が連結納税の申請を連名で行った場合において、親会社に承認があったときには、その子会社にも承認があったものとみなされることとされている(法4の33)。
 このみなし承認を受けた子会社が、その承認のあった日から最初連結親法人事業年度開始の日の前日までの間に親会社との間に完全支配関係を有しなくなった場合には、この子会社につき、いわゆる離脱法人等の連結納税の再加入に係る「適用制限」(令14の33四)があるのかという問題が生じ得る。
 この点、当該「適用制限」を受けるのは、法人税法第4条の5第2項第5号《連結納税の承認のみなし取消し》の規定により承認を取り消された法人とされるところ、当該子会社は、連結納税の承認を受けてはいるものの、その承認の効力の発生は最初の連結事業年度開始の日以後の期間であるから、未だその承認の効力は生じておらず、当該「取り消された法人」には該当しないため、この「適用制限」を受けることはないと解される。
 一方、設立事業年度等の申請期限特例の適用を受けて申請を行った子会社又は設立事業年度等の申請期限特例により連結納税の承認を受けた親会社との間にその申請後に完全支配関係を有することとなった子会社のうち、その承認の効力が生じたものについては、株式等保有連結子法人の合併以外の事由による解散に基因して連結完全支配関係を有しなくなった場合を除き、連結納税の承認のみなし取消しの規定(法4の52五)によりその承認を取り消された法人に該当することとなることから、この「適用制限」を受けることとなる。本通達の(注)ではこのことを明らかにしている。

(承認取消後5年経過前に連結子法人となる法人)

1−3−5 法第4条の5第2項第5号《連結納税の承認のみなし取消し》の規定により連結納税の承認を取り消された法人(1−2−8の(2)ロの事実に基因して承認を取り消された法人を除く。)は、その取消しの日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間(以下1−3−5において「適用制限期間」という。)を経過していない場合には当該取消しの直前におけるその連結親法人の連結子法人となることができないのであるが、当該適用制限期間中に当該連結親法人以外の連結親法人(以下1−3−5において「他の連結親法人」という。) との間に完全支配関係を有することとなった場合には、当該他の連結親法人の連結子法人となるのであるから留意する。

【解説】

 本通達では、連結納税のみなし取消しを受けた法人について、連結納税の再加入に係る適用制限期間中に他の連結グループの連結親法人による完全支配関係が生じた場合の取扱いを明らかにしている。
 連結法人が有する他の連結法人の株式を売却したこと等により、当該他の連結法人(以下「離脱法人」という。)が連結グループから離脱した場合(当該離脱法人の発行済株式を保有する連結子法人の合併以外の解散に基因して離脱する場合を除く。)において、その取消しの日から5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間(適用制限期間)を経過していない当該離脱法人は、その取消し直前の連結親法人との関係において法人税法第4条の2《連結納税義務者》に規定する他の内国法人には該当しないこととされている(令14の33四)。
 したがって、その離脱法人が適用制限期間を経過するまでに、再度、当該連結親法人との間に完全支配関係を有することとなったとしても、その離脱法人は当該連結親法人の連結子法人には該当しないこととなり、連結納税の適用はないこととなる。
 ただし、その取消しの直前まで自己の連結親法人であった法人以外の連結親法人、換言すれば他の連結グループの連結親法人との関係においては、その離脱法人は法人税法第4条の2に規定する他の内国法人に該当することから、当該他の連結グループの連結子法人として連結納税を適用することとなる。

(連結納税の取りやめの承認事由)

1−3−6 法第4条の5第3項《連結納税の取りやめの承認》に規定する「やむを得ない事情があるとき」とは、例えば、連結納税の適用を継続することにより事務負担が著しく過重になると認められる場合をいうのであるから、単に税負担が軽減されることのみを理由として連結納税を適用しないこととする場合は、これに該当しないことに留意する。

【解説】

 本通達は、連結納税の適用の取りやめの承認が認められる「やむを得ない事情」について、例示したものである。
 企業グループがいったん選択した連結納税の適用は、原則として、継続的に適用されるべきものである。
 一方、連結法人は「やむを得ない事情」があるときは、国税庁長官の承認を受けて連結納税の適用の取りやめができることとされているが(法4の53)、この規定の適用は、上記趣旨を踏まえれば、限定的に解するのが適当である。
 そこで、本通達では、例えば、連結納税と単体納税とを比較して単に単体納税の方が税負担の軽減が見込まれることのみを理由として連結納税の適用を取りやめることは認められないとする一方で、適用開始時には予見し得ない後発的な事情(例えば、連結法人数の急増等)により、著しく事務負担が過重となるに至った結果、連結納税を適用していくことが困難と認められる場合などがこの「やむを得ない事情があるとき」に該当することを明らかにしている。

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