第2 連結納税基本通達関係

1 支配関係及び完全支配関係

【改正】(支配関係及び完全支配関係を有することとなった日の意義)

1−2−2 支配関係又は完全支配関係があるかどうかの判定における当該支配関係又は当該完全支配関係を有することとなった日とは、例えば、その有することとなった原因が次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げる日となることに留意する。

(1) 株式の購入 当該株式の引渡しのあった日

(2) 新たな法人の設立 当該法人の設立後最初の事業年度開始の日

(3) 合併(新設合併を除く。) 合併の効力を生ずる日

(4) 分割(新設分割を除く。) 分割の効力を生ずる日

(5) 株式交換 株式交換の効力を生ずる日

(注) 上記(1)の株式を譲渡した法人における法第61条の2第1項《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡利益額又は譲渡損失額の計上は、原則として、当該株式の譲渡に係る契約の成立した日に行うことに留意する。

【解説】

1  「支配関係又は完全支配関係を有することとなった日」とは、一般的には、一方の法人が他方の法人の発行済株式等の過半数又は全部を直接・間接に保有するに至った日をいう。株式を保有するに至る原因は様々であることから、本通達では、代表的な原因を掲げ、その原因ごとに、その日がいつであるかを明らかにしている。以下では、「完全支配関係を有することとなった日」について、本通達で掲げている代表的な原因ごとに解説していくが、この解説は「支配関係を有することとなった日」についても通ずるものである。

(1) 株式を保有するに至る原因が株式の購入である場合の「完全支配関係を有することとなった日」について、従前は「株式の購入に係る契約の成立した日」としていたところ、今般の改正により「株式の引渡しのあった日」として取り扱うこととしている。
 従前は、有価証券の譲渡損益を計上すべき日が原則として「契約の成立した日」とされており、有価証券の取得についても同様と考えてこのように取り扱ってきたところである。今般、平成22年度税制改正によりいわゆるグループ法人税制が導入されたことに伴い、「完全支配関係を有することとなった日」とは、一方の法人が他方の法人を支配することができる関係が生じた日をいい、株式の購入により完全支配関係を有することとなる場合には、株式の購入に係る契約が成立した日ではなく、当該株式の株主権が行使できる状態になる株式の引渡しが行われた日と整理したことを踏まえて、連結納税制度に関する本通達についても同様の取扱いとしたものである。
 なお、この改正は、平成22年10月1日前に締結された株式の購入に係る契約についてはなお従来どおり取り扱うこととしている(経過的取扱い…改正通達の適用時期(1))。
 また、株式を譲渡した法人における当該株式の譲渡損益の計上時期は、従来どおり、原則として、当該株式の譲渡に係る契約の成立した日となる。本通達の注書では、このことを留意的に明らかにしている。

(2) 法人が、金銭出資、現物出資等により他の法人を新設したことにより、当該他の法人との間に完全支配関係を有することとなった場合の「完全支配関係を有することとなった日」は、新設された法人の設立後最初の事業年度開始の日(設立の日)となる。

(3) 法人が合併法人となる吸収合併が行われた場合、被合併法人である他の法人に当該他の法人による完全支配関係がある子法人が存するときには、当該合併法人は、その吸収合併により当該子法人との間に完全支配関係を有することとなる。会社法上、吸収合併を行う場合には、吸収合併契約に効力発生日を定めることとされ(会社法7491六、7511七)、吸収合併存続会社(合併法人)はその効力発生日に吸収合併消滅会社(被合併法人)の権利義務を承継することとされていることから(同法7501、7521)、吸収合併における「完全支配関係を有することとなった日」は、合併の効力を生ずる日となる。

(4) 法人が分割承継法人となる吸収分割が行われた場合、その吸収分割に係る分割法人から当該分割法人による完全支配関係がある子法人の株式のすべてを承継したときには、当該分割承継法人は、その吸収分割により当該子法人との間に完全支配関係を有することとなる。会社法上、吸収分割を行う場合には、吸収分割契約に効力発生日を定めることとされ(会社法758七、760六)、吸収分割承継会社(分割承継法人)はその効力発生日に吸収分割会社(分割法人)の権利義務を承継することとされていることから(同法7591、7611)、吸収分割における「完全支配関係を有することとなった日」は、分割の効力を生ずる日となる。

(5) 法人が株式交換完全親法人となる株式交換が行われた場合、当該株式交換完全親法人は、その株式交換により株式交換完全子法人との間に完全支配関係を有することとなる。会社法上、株式交換を行う場合には、株式交換契約に効力発生日を定めることとされ(会社法7681六、7701五)、株式交換完全親会社(株式交換完全親法人)はその効力発生日に株式交換完全子会社(株式交換完全子法人)の発行済株式の全部を取得することとされていることから(同法7691、7711)、株式交換における「完全支配関係を有することとなった日」は、株式交換の効力を生ずる日となる。

2  単体納税制度においても、同様の通達(基通1−3の2−2)を定めている。