第1 法人税基本通達関係

10 譲渡損益調整額の戻入れ

【改正】(譲渡損益調整資産の耐用年数を短縮した場合の簡便法による戻入れ計算)

12の4−3−10 法人が令第122条の14第6項《譲渡損益調整額の戻入れ計算の簡便法》の規定を適用するに当たり、同項に規定する譲渡損益調整資産を譲り受けた完全支配関係法人が当該譲渡損益調整資産についてその譲受日の属する事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下12の4−3−10において「事業年度等」という。)後の事業年度等において、令第57条《耐用年数の短縮》の規定により当該減価償却資産の耐用年数を短縮することの承認を受けたときには、当該承認を受けた日の属する当該法人の事業年度及びその後の事業年度等における令第122条の14第6項第1号ロの耐用年数は、当該承認に基づく耐用年数として差し支えない

【解説】

1  内国法人(譲渡法人)が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(譲受法人)に対して譲渡損益調整資産である減価償却資産を譲渡した場合において、譲渡法人がその譲渡損益調整額につき戻入れ計算を行う場合の計算方法として、譲受法人がその減価償却資産について適用する耐用年数を基礎として計算する方法(いわゆる簡便法)がある。そして、この簡便法は、譲渡した譲渡損益調整資産ごとに適用できることを法人税基本通達12の4−3−8(譲渡損益調整額の戻入れ計算における簡便法の選択適用)において明らかにしている。

2  ところで、譲受法人の譲り受けた譲渡損益調整資産である減価償却資産が陳腐化等によりその使用可能期間が法定耐用年数に比して著しく短くなった場合には、所轄国税局長の承認を受けることを要件として、その承認に係る使用可能期間をもって法定耐用年数とみなすこととされている(法令57)。
 このように、譲受法人が耐用年数の短縮の承認を受けた場合に、譲渡法人の簡便法による戻入れ計算については、引き続き、短縮の承認前に適用していた耐用年数を基礎として行うのか、それとも承認後の短縮された耐用年数を基礎として行うのかという疑義が生じる。

3  この点、譲渡損益調整額の戻入れ計算につき簡便法を選択しようとする場合には、譲渡法人は譲受法人に対して、1その譲渡した資産が譲渡損益調整資産に該当する資産であること、2その資産について簡便法の適用を受ける旨を通知することとされている(法令122の1416)。
 これに対して、その通知を受けた譲受法人は、簡便法の適用を受けようとする資産に適用される耐用年数を譲渡法人に対して通知することとされている(法令122の1417二)。
 そして、簡便法の適用を受ける譲渡法人にあっては、通知を受けた耐用年数に基づいて譲渡損益調整額の戻入れ計算を行うこととなり、譲受法人から譲渡法人に対して損金の額に算入した償却費の額を通知する必要はないこととされている(法令122の1418)。
 このように、譲渡損益調整額の戻入れ計算における簡便法は、簡素化の観点から設けられた制度であることから、その適用を受ける場合、譲渡損益調整資産(減価償却資産)について、譲渡法人と譲受法人との間で簡便法の適用を受ける旨の通知及び当該資産に適用される耐用年数の通知が行われた後は、制度上、譲受法人が耐用年数の短縮の承認を受けたとしても、何らの通知のやり取りも行われないことを踏まえると、譲受法人において耐用年数の短縮の承認を受けた場合であっても、譲渡法人における譲渡損益調整額の戻入れ計算は、一般的には、引き続き短縮の承認前に適用していた耐用年数を基礎として行うこととなる。

4  ただし、簡便法による計算は、譲受法人の適用する耐用年数に基づいて行うというのが元々の考え方であることからすれば、耐用年数が所轄国税局長の承認によって短縮された場合、そのことについて譲渡法人が譲受法人から連絡を受けるなどにより確認したときには、譲渡法人の選択により、短縮後の耐用年数を基礎として簡便法による計算を行うこととしても差し支えない。本通達では、このことを明らかにしている。