第1 法人税基本通達関係

8 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金

【新設】(残余財産がないと見込まれるかどうかの判定の時期)

12−3−7 法第59条第3項《解散した場合の期限切れ欠損金額の損金算入》に規定する「残余財産がないと見込まれる」かどうかの判定は、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況による。

【解説】

1  平成22年度の税制改正により、清算所得課税制度が廃止され、平成22年10月1日以後に解散する法人の清算中に終了する事業年度についても、各事業年度の所得に対する法人税が課されることとされた(通常所得課税)。また、これに併せて、法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときには、清算中に終了する事業年度(法人税法第59条第1項又は第2項の規定の適用を受ける事業年度を除く。以下「適用年度」という。)前の各事業年度において生じた欠損金額(以下「期限切れ欠損金額」という。)に相当する金額は、青色欠損金額等の控除後の所得の金額を限度として、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされた(法593)。
 この期限切れ欠損金額とは、次の1に掲げる金額から2に掲げる金額を控除した金額をいう(法令118)。

1 適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額

2 法人税法第57条第1項又は第58条第1項の規定により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される欠損金額(いわゆる青色欠損金額又は災害損失欠損金額)

2  ところで、期限切れ欠損金額の損金算入制度を適用する場合において、解散した法人が「残余財産がないと見込まれる」かどうかの判定は、当該法人が解散した時点で行うのか、あるいは清算中に終了する各事業年度の終了の時において行うのかといった疑義が生ずる。
 この点について、期限切れ欠損金額は、法人の清算中に終了する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなるため、期限切れ欠損金額を損金の額に算入できるかどうかは、当該事業年度末において判定することとなるのである。
 そこで、法人が解散した場合の期限切れ欠損金額の損金算入の規定の適用上、法人に「残余財産がないと見込まれる」かどうかの判定は、その法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況によることを本通達で明らかにしている。

3  なお、法人に「残余財産がないと見込まれる」かどうかの判定は、上記のとおり、その法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況によることから、「残余財産がないと見込まれる」と判断して期限切れ欠損金額を損金算入した後に、状況が変わって当初の見込みと異なることになっても、過去において行った期限切れ欠損金額の損金算入をさかのぼって修正する必要はないことに留意する必要がある。

【新設】(残余財産がないと見込まれることの意義)

12−3−8 解散した法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、法第59条第3項《解散した場合の期限切れ欠損金額の損金算入》に規定する「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するのであるから留意する。

【解説】

1  平成22年度の税制改正により、清算所得課税制度が廃止され、これに併せて、解散した法人に「残余財産がないと見込まれるとき」には、清算中に終了する事業年度において期限切れ欠損金額を損金の額に算入することができることとされた。

2  ところで、解散した法人は一般的に債務の弁済等を行って残余財産を確定させ、これを株主に分配することになるが、解散した法人に「残余財産がないと見込まれるとき」とは具体的にどのような状態にあることをいうのかという疑義が生ずる。
 この点について、解散した法人が「残余財産がないと見込まれる」かどうかは一様ではないと考えられるが、一般的には、その法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当することとなる。本通達で、このことを留意的に明らかにしている。

3  なお、例えば、裁判所若しくは公的機関が関与する手続、又は、一定の準則に基づき独立した第三者が関与する手続において、法人が債務超過の状態にあることなどをこれらの機関が確認している次のような場合には、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するものと考えられる。

1 清算型の法的整理手続である破産又は特別清算の手続開始の決定又は開始の命令がなされた場合(特別清算の開始の命令が「清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情があること」のみを原因としてなされた場合を除く。)

2 再生型の法的整理手続である民事再生又は会社更生の手続開始の決定後、清算手続が行われる場合

3 公的機関の関与又は一定の準則に基づき独立した第三者が関与して策定された事業再生計画に基づいて清算手続が行われる場合

(参考) 平成22年10月6日付法人課税課情報第5号ほか2課共同「平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等に係る税制関係)(情報)」問10

【新設】(残余財産がないと見込まれることを説明する書類)

12−3−9 規則第26条の6第3号《会社更生等により債務の免除を受けた金額等の明細等に関する書類》に定める「残余財産がないと見込まれることを説明する書類」には、例えば、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の実態貸借対照表(当該法人の有する資産及び負債の価額により作成される貸借対照表をいう。以下12−3−9において同じ。)が該当する。

(注) 法人が実態貸借対照表を作成する場合における資産の価額は、当該事業年度終了の時における処分価格によるのであるが、当該法人の解散が事業譲渡等を前提としたもので当該法人の資産が継続して他の法人の事業の用に供される見込みであるときには、当該資産が使用収益されるものとして当該事業年度終了の時において譲渡される場合に通常付される価額による。

【解説】

1  平成22年度の税制改正により、清算所得課税制度が廃止され、これに併せて、解散した法人に「残余財産がないと見込まれるとき」には、清算中に終了する事業年度において期限切れ欠損金額を損金の額に算入することができることとされた。

2  ところで、解散した法人が、清算中に終了する各事業年度において期限切れ欠損金額を損金の額に算入する場合には、当該事業年度の確定申告書に残余財産がないと見込まれることを説明する書類を添付することとされているが(法規26の6三)、具体的にどのような書類を添付すればよいのかという疑義が生ずる。
 この点について、解散した法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するとしているところ(基通12−3−8)、例えば、法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の実態貸借対照表(その法人の有する資産及び負債の価額により作成される貸借対照表をいう。)によって、当該法人が債務超過の状態にあることが説明できると考えられるため、この実態貸借対照表は「残余財産がないと見込まれることを説明する書類」に該当することになる。本通達では、このことを明らかにしている。

3  法人が実態貸借対照表を作成する場合のその資産の価額は、清算を前提にすれば資産は処分されることが一般的であると考えられることから、当該事業年度終了の時における処分価格によることになるが、法人の解散が事業譲渡等を前提としたもので、その法人の資産が継続して他の法人の事業の用に供される見込みであるときには、処分価格によることは適当ではなく、当該資産が使用収益されるものとして当該事業年度終了の時において譲渡される場合に通常付される価額によることになる。本通達の注書では、このことを併せて明らかにしている。

4  なお、例えば、裁判所若しくは公的機関が関与する手続、又は、一定の準則に基づき独立した第三者が関与する手続において、法人が債務超過の状態にあることなどをこれらの機関が確認している場合には、「残余財産がないと見込まれるとき」に該当するものと考えられるが(法人税基本通達12−3−8の解説「3」参照)、この場合の「残余財産がないと見込まれることを説明する書類」は、必ずしも実態貸借対照表による必要はなく、例えば、破産手続開始決定書の写しなど、これらの手続の中で作成された書類によることができよう。