第1 法人税基本通達関係

6 寄附金

【新設】(完全支配関係がある他の内国法人に対する寄附金)

9−4−2の5 内国法人が他の内国法人に対して寄附金を支出した場合において、当該内国法人と当該他の内国法人との間に一の者(法人に限る。)による完全支配関係がある場合には、当該内国法人及び当該他の内国法人の発行済株式等の全部を当該一の者を通じて個人が間接に保有することによる完全支配関係があるときであっても、当該寄附金の額には法第37条第2項《完全支配関係がある法人間の寄附金の損金不算入》の規定の適用があることに留意する。

【解説】

1  内国法人が、その内国法人との間に完全支配関係のある他の内国法人に対して寄附金を支出した場合において、その寄附金の額の全額が損金不算入とされる場合の当該内国法人と当該他の内国法人との間の完全支配関係は、法人による完全支配関係に限られ、個人による完全支配関係は除かれている(法372)。

2  ところで、内国法人が寄附金を支出した他の内国法人との間に法人による完全支配関係があるだけでなく、更に個人による完全支配関係もある場合があり得る。すなわち、内国法人及び他の内国法人の発行済株式等の全部を法人である一の者が保有し、当該法人である一の者の発行済株式等の全部を個人が保有することにより、当該個人が当該内国法人及び当該他の内国法人の発行済株式等の全部を間接に保有している場合には、当該内国法人及び当該他の内国法人との間には、法人による完全支配関係だけでなく、更に個人による完全支配関係もあることになる。この場合に、当該内国法人が当該他の内国法人に対して支出した寄附金の額の全額が損金不算入とされるのかという疑義が生じる。

3  この点、個人による完全支配関係が除かれているのは、例えば、個人Xが発行済株式の100%を保有する法人AからXの子であるYが発行済株式の100%を保有する法人Bへの寄附について、Aにおいて損金不算入かつBにおいて益金不算入とすると、実質的には親(X)から子(Y)への経済的価値の移転が無税で行われることになり、相続税・贈与税の回避に利用されるおそれが強いことによるものである(参考図1参照)。しかしながら、寄附金を支出した内国法人Dと寄附金を受けた他の内国法人Eとの間に法人Cによる完全支配関係がある場合には、更に法人Cを通じて個人(親であるXとその子Y)による完全支配関係があったとしても、個人が株式を保有する法人Cにおいて資産の変動がなく、親Xと子Yの間でも経済的価値の移転もないので、相続税・贈与税の回避に利用されるおそれはないことから(参考図2参照)、当該寄附金の額はその全額が損金不算入とされるよう制度設計されているのである。本通達では、このことを留意的に明らかにしている。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−4−6)を定めている。
参考

【新設】(受贈益の額に対応する寄附金)

9−4−2の6 内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額が、当該他の内国法人において法第25条の2第2項《受贈益の益金不算入》に規定する受贈益の額に該当する場合であっても、例えば、当該他の内国法人が公益法人等であり、その受贈益の額が当該他の内国法人において法人税が課されない収益事業以外の事業に属するものとして区分経理されているときには、当該受贈益の額を当該他の内国法人において益金の額に算入することができないのであるから、当該寄附金の額は法第37条第2項《完全支配関係のある法人間の寄附金の損金不算入》に規定する「受贈益の額に対応するもの」に該当しないことに留意する。

【解説】

1  平成22年度税制改正において、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額がある場合には、その全額を損金不算入とするとともに(法372)、当該他の内国法人が受けた受贈益の額についてその全額を益金不算入とする制度が設けられた(法25の21)。そして、寄附金を支出した法人において全額損金不算入とされる寄附金の額は、法人税法第25条の2《受贈益の益金不算入》の規定を適用しないとした場合に寄附を受けた内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第2項に規定する受贈益の額に対応するものに限ることとされている(法372かっこ書)。

2  この制度の適用に当たり、例えば、公益法人等(親法人)が、完全支配関係のある普通法人(子法人)から親法人の非収益事業に係る寄附を受けた場合、子法人側では寄附金の額を認識することとなるが、この寄附金の額が全額損金不算入とされるのかどうかという疑義が生ずる。
 この点、寄附金・受贈益の損金不算入・益金不算入制度は、グループ内部の寄附・受贈について課税関係を生じさせないという観点から設けられたものであることから、公益法人等が受けた法人税の課税対象でない非収益事業に対する寄附のように、公益法人等の課税対象となる所得金額の計算上益金の額に算入することができない受贈益の額に対応する寄附金の額については、その全額を損金不算入とする本制度の適用はないのである。本通達では、このことを明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−4−6の2)を定めている。