第1 法人税基本通達関係

5 受贈益

【新設】(寄附金の額に対応する受贈益)

4−2−4 内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。以下4−2−6までにおいて同じ。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額が、当該他の内国法人において法第37条第7項《寄附金の損金不算入》に規定する寄附金の額に該当する場合であっても、例えば、当該他の内国法人が公益法人等であり、その寄附金の額が当該他の内国法人において法人税が課されない収益事業以外の事業に属する資産のうちから支出されたものであるときには、当該寄附金の額を当該他の内国法人において損金の額に算入することができないのであるから、当該受贈益の額は法第25条の2第1項《完全支配関係のある法人間の受贈益の益金不算入》に規定する「寄附金の額に対応するもの」に該当しないことに留意する。

【解説】

1  平成22年度税制改正において、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額がある場合には、その全額を損金不算入とするとともに(法372)、当該他の内国法人が受けた受贈益の額についてその全額を益金不算入とする制度が設けられた(法25の21)。そして、寄附を受けた法人において益金不算入とされる受贈益の額は、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》の規定を適用しないとした場合に寄附した内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される同条第7項に規定する寄附金の額に対応するものに限ることとされている(法25の21かっこ書)。

2  この制度の適用に当たり、例えば、公益法人等(親法人)による完全支配関係のある普通法人(子法人)に対して、親法人から非収益事業に係る寄附が行われた場合、子法人側では受贈益の額を認識することとなるが、この受贈益の額が全額益金不算入とされるのかどうかという疑義が生ずる。
 この点、寄附金・受贈益の損金不算入・益金不算入制度は、グループ内部の寄附・受贈について課税関係を生じさせないという観点から設けられたものであることから、公益法人等が支出した法人税の課税対象でない非収益事業における寄附のように、公益法人等の課税対象となる所得金額の計算上損金の額に算入することができない寄附金の額に対応する受贈益の額については、その全額を益金不算入とする本制度の適用はないのである。本通達では、このことを明らかにしている。

3  このほかにも、完全支配関係のある内国法人間において、例えば、一方の法人が増資を行うに当たり、他方の法人に特に有利な払込金額で募集株式の発行を行う場合(いわゆる有利発行を行う場合)、有利発行を受けた法人側ではその募集株式の時価とその払込金額との差額について受贈益の額を認識することとなるが、有利発行を行った法人側では資本等取引として払込金額による資本金の増加の処理を行うことになり、その募集株式の時価とその払込金額の差額については何らの処理も行わない(寄附金の額に該当しない)ことから、このような受贈益の額も上記例と同様に、全額益金不算入の対象とはならない。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通4−2−4)を定めている。

【新設】(益金不算入とされない受贈益の額)

4−2−5 内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額が、当該他の内国法人が当該内国法人に対して行った損失負担又は債権放棄等により供与する経済的利益の額に相当するものである場合において、その経済的利益の額が9−4−1又は9−4−2により当該他の内国法人において法第37条第7項《寄附金の損金不算入》に規定する寄附金の額に該当しないときには、当該受贈益の額は当該内国法人において法第25条の2第1項《完全支配関係のある法人間の受贈益の益金不算入》の規定の適用がないことに留意する。

【解説】

1  内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額を益金不算入とする措置(法25の21)において、その益金不算入とされる受贈益の額は、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》の規定を適用しないとした場合に寄附をした他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される同条第7項に規定する寄附金の額に対応するものに限ることとされている(法25の21かっこ書)。

2  ところで、法人が経営危機に瀕した子会社等を整理するに当たって損失負担等をした場合であっても、その損失負担等をしたことについて相当の理由があると認められるときには、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとして取り扱っている(基通9−4−1)。
 また法人が業績不振の子会社等を再建するに当たって行った無利息貸付け等に相当の理由があると認められる場合には、それにより供与する経済的利益の額は、同様に寄附金の額に該当しないものとして取り扱っている(同9−4−2)。
 これらの場合の子会社等においては、その受けた経済的利益の額を受贈益として認識することになるが、この受贈益の額が益金不算入とされるのかどうかという疑義が生じる。

3  この点、内国法人(子会社等)が当該内国法人との間に法人による完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額が法人税基本通達9−4−1又は9−4−2により当該他の内国法人において寄附金の額に該当しない場合には、当該受贈益の額は「寄附金の額に対応するもの」に該当しないのであるから、受贈益の額を益金不算入とする措置の適用はない。本通達では、このことを留意的に明らかにしている。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通4−2−5)を定めている。

【新設】(受贈益の額に該当する経済的利益の供与)

4−2−6 内国法人が、当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から、例えば、金銭の無利息貸付け又は役務の無償提供などの経済的利益の供与を受けた場合には、支払利息又は役務提供の対価の額を損金の額に算入するとともに同額を受贈益の額として益金の額に算入することとなるのであるが、当該経済的利益の額が当該他の内国法人において法第37条第7項《寄附金の損金不算入》に規定する寄附金の額に該当するときには、当該受贈益の額は当該内国法人において法第25条の2第1項《完全支配関係のある法人間の受贈益の益金不算入》の規定の適用があることに留意する。

【解説】

1  従来、子会社が負担すべき費用に相当する金額を親会社が負担したことにより、その負担した金額が親会社において寄附金の額に該当する場合であっても、子会社においては当該費用の額と受贈益の額が相殺され、所得金額に影響がないことから、あえて両建て処理を行わないこととしても法人税の課税所得の計算上特段問題は生じなかった。
 しかし、平成22年度の税制改正において、法人による完全支配関係がある内国法人から受けた受贈益の額については益金不算入とされたことから(法25の21)、上記のような子会社にあっては、当該費用の額を損金算入するとともに、当該受贈益の額を益金算入する両建て処理を行い、併せて、当該受贈益の額を益金不算入とすることが必要となり、その所得金額に影響が生じることになった。

2  そこで、本通達においては、このことを明らかにするため、内国法人がその内国法人との間に法人による完全支配関係がある他の内国法人から、例えば、金銭の無利息貸付け又は役務の無償提供など金銭の授受を伴わない経済的利益の供与を受けた場合において、この経済的利益の額が当該他の内国法人において法人税法上の寄附金の額に該当するときには、当該内国法人においては、その受けた経済的利益の額が受贈益の額となり、その全額が益金不算入とされることを留意的に明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通4−2−6)を定めている。