第1 法人税基本通達関係

3 受取配当等の金額

【新設】(自己株式等の取得が予定されている株式等)

3−1−8 法第23条第3項《自己株式の取得が予定された株式に係る受取配当等の益金不算入の不適用》に規定する「その配当等の額の生ずる基因となる同号に掲げる事由が生ずることが予定されているもの」とは、法人が取得する株式又は出資(以下3−1−8において「株式等」という。)について、その株式等の取得時において法第24条第1項第4号《自己株式等の取得》に掲げる事由が生ずることが予定されているものをいうことから、例えば、上場会社等が自己の株式の公開買付けを行う場合における公開買付期間(金融商品取引法第27条の5に規定する「公開買付期間」をいう。以下3−1−8において同じ。)中に、法人が当該株式を取得したときの当該株式がこれに該当する。

(注) 法人が、公開買付けを行っている会社の株式をその公開買付期間中に取得した場合において、当該株式についてその公開買付けによる買付けが行われなかったときには、その後当該株式に法第24条第1項第4号に掲げる事由が生じたことにより同項に規定する配当等の額を受けたとしても、当該配当等の額については法第23条第3項の規定の適用がないことに留意する。

【解説】

1  法人が、発行法人による自己株式等の取得が予定されている株式等を取得した場合において、その取得した株式等に係るみなし配当の額で、その予定されていた事由に基因して受けるものについては、受取配当等の益金不算入の規定を適用しないこととされている(法233)。この場合の「自己株式等の取得が予定されている株式等」とは、具体的にどのような株式等をいうのかという疑義が生ずる。

2  この点、法人が受けるみなし配当等の額について受取配当等の益金不算入の規定が適用されないこととなる「自己株式等の取得が予定されている株式等」とは、法人が取得する株式等のうち、その株式等の取得時において、発行法人が自己株式等として取得することが具体的に予定されているものをいう。したがって、例えば、上場会社等が自己の株式の公開買付けを行う場合における公開買付期間中に、法人が取得した当該上場会社等の株式がこれに該当することになる。本通達では、このことを明らかにしている。

3  上記例示のほか、上場会社等が他の会社と合併等の組織再編成を行う場合、その合併等に反対の株主には、その有する株式の買取請求権が認められているが(会社法7851、7971、8061等)、当該上場会社等が合併等を行う旨を公告した後、株式買取請求を行うことができる期間(例えば、吸収合併の場合には、吸収合併の効力発生日の前日までの期間)に法人が取得した買取請求の対象となる当該上場会社等の株式も、「自己株式等の取得が予定されている株式等」に該当することになる。
 ただし、例えば、取得請求権付株式(会社法2十八)や取得条項付株式(同法2十九)は、発行法人に自己株式として取得される可能性があるものの、単に取得請求権や取得条項が付されていることのみをもって自己株式の取得が具体的に予定されているとまではいえないことから、法人がこれを取得したとしても、「自己株式等の取得が予定されている株式等」に該当しないこととなる。

4  また、この受取配当等の益金不算入規定の不適用措置は、その予定されていた事由に基因する配当等の額に限って適用されることから(法233)、例えば、法人が、公開買付けを行っている会社の株式をその公開買付期間中に取得した場合において、当該公開買付けによる買付けが行われなかったときには、その後に当該株式を発行法人に譲渡したことによりみなし配当を受けたとしても、そのみなし配当の額については、受取配当等の益金不算入の規定の適用があることとなる。本通達の注書では、この点について留意的に明らかにしている。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−1−13)を定めている。

【新設】(完全子法人株式等に係る配当等の額)

3−1−9 法人が、株式又は出資の全部を直接又は間接に保有していない他の法人(内国法人に限る。)から配当等の額(法第23条第1項《受取配当等の益金不算入》に規定する配当等の額をいう。)を受けた場合において、当該法人が保有する当該他の法人の株式又は出資が令第22条の2《完全子法人株式等の範囲》に規定する要件を満たすときには、当該配当等の額は法第23条第5項に規定する完全子法人株式等に係る配当等の額に該当することに留意する。

【解説】

1  平成22年度の税制改正により、法人が保有する株式等のうち、配当等の額の計算期間中継続して当該法人との間に完全支配関係があった他の内国法人の株式等を完全子法人株式等と定義し(法235)、この完全子法人株式等に係る配当等の額については、負債の利子を控除することなく、その全額を益金不算入とすることとされた(法2314一)。
 この規定の適用上、法人が株式等の全部を直接又は間接に保有していないものの、一の者による100%の出資関係がある法人で構成されたグループ(以下「100%グループ」という。)に属する他の内国法人(いわゆる兄弟会社などがこれに該当する。)から配当等の額を受けた場合、その配当等の額の全額が益金不算入とされるのか否かという疑義が生じる。

2  この点について、法人が、株式等の全部を直接又は間接に保有していない他の内国法人から配当等の額を受けた場合において、その配当等の額の計算期間の開始の日からその計算期間の末日まで継続して、当該法人と当該他の内国法人とが同一の100%グループに属している法人であるときは、当該他の内国法人の株式等の保有割合にかかわらず、その配当等の額の全額が益金不算入とされることとなる。本通達では、このことを留意的に明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−1−14)を定めている。