第1 法人税基本通達関係

2 利益積立金額

【改正】(連結子法人株式の帳簿価額の譲渡等修正事由に係る譲渡)

1−6−3 法第61条の13第1項《完全支配関係がある法人の間の取引の損益》の規定の適用がある株式の譲渡であっても、当該譲渡が令第9条第2項第1号《連結子法人株式に係る譲渡等修正事由》に掲げる事由に該当するときには、当該株式について同条第1項第6号に規定する譲渡等修正事由が生ずることに留意する。

【解説】

1  内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額を損金の額又は益金の額に算入することとされている(法61の131)。譲渡損益調整資産には、売買目的有価証券以外の一定の有価証券が含まれるから、例えば、連結法人が有する他の連結法人の株式を完全支配関係のある別の内国法人に譲渡した場合には、当該連結法人において、当該他の連結法人の株式に係る譲渡損益を繰り延べることとなる。

(注) 他の連結法人の株式の譲渡先である「完全支配関係のある別の内国法人」は、同一連結グループ内の別の連結法人のほか、例えば、連結親法人の発行済株式の全部を外国法人が保有している場合には、当該外国法人によってその発行済株式の全部を保有されている連結グループ外の別の内国法人ということもある。

 他方、連結法人が有する他の連結法人(当該連結法人との間に連結完全支配関係がある法人に限り、連結親法人を除く。)の株式を譲渡した場合には、当該連結法人において、当該他の連結法人の株式の譲渡直前の帳簿価額に帳簿価額修正額(法人税法施行令第9条第3項に規定する帳簿価額修正額をいう。)を加算した金額を基礎として計算した一株当たりの帳簿価額に修正し(この修正に合わせて帳簿価額修正額に相当する金額を利益積立金額に加算する。)、この修正後の帳簿価額により上記の繰り延べることとなる譲渡損益を計算することとなる(法令91六、2一、119の35、119の41)。
 この株式の帳簿価額の修正を行う趣旨は、当該他の連結法人の個別の所得金額(又は欠損金額)と当該連結法人の株式譲渡益(又は譲渡損)とに対する二重課税(又は欠損金の二重控除)の排除にあるが、連結法人が有する他の連結法人の株式を完全支配関係のある別の内国法人に譲渡した場合において、それが譲渡損益調整資産の譲渡に該当し、当該連結法人においてその譲渡損益が繰り延べられるときには、その繰り延べられている期間においては二重課税(又は欠損金の二重控除)の問題が生じないことからすれば、当該連結法人において株式の帳簿価額の修正を行う必要がないのではないかとの疑義が生じる。

2  この点、法人税法施行令第9条第2項第1号《連結子法人株式に係る譲渡等修正事由》に規定する「譲渡」は、その譲渡先を特に限定していないことから、完全支配関係のある別の内国法人に対して譲渡損益調整資産に該当する株式を譲渡した場合であっても、同号の「譲渡」に該当することとなる。
 また、譲渡損益調整資産に係る繰延額を戻し入れる時まで株式の帳簿価額の修正を見合わせる旨の規定もない。
 したがって、連結法人が行った他の連結法人の株式の譲渡について、法人税法第61条の13第1項《完全支配関係がある法人の間の取引の損益》の規定の適用がある場合であっても、当該譲渡が法人税法施行令第9条第2項第1号《連結子法人株式に係る譲渡等修正事由》に掲げる事由に該当するときには、当該連結法人において、当該他の連結法人の株式の帳簿価額を修正する必要があるのである。本通達では、このことを明らかにしている。