7 外国税額の控除

【改正】(販売費、一般管理費等の配賦)

16−3−12 当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(法に規定する引当金勘定への繰入額及び措置法に規定する準備金の積立額を除く。以下16−3−12において同じ。)のうち令第142条第6項《共通費用の配賦》に規定する共通費用(負債の利子を除く。以下16−3−14までにおいて「共通費用」という。)の額を同項の規定により国内源泉所得に係る所得を生ずべき業務(以下この節において「国内業務」という。)と国外源泉所得に係る所得を生ずべき業務(以下この節において「国外業務」という。)とに配分する場合において、個々の費目ごとにその計算をすることが困難であると認められるときは、原則として、すべての共通費用を一括して、当該事業年度の売上総利益の額(利子、配当等及び使用料については、その収入金額とする。以下16−3−12において同じ。)のうちに国外業務に係る売上総利益の額の占める割合を用いて国外業務に係る損金の額として配分すべき金額を計算するものとする。

(注)

1  内国法人(金融及び保険業を主として営む法人を除く。)の国外業務に係る収入金額の全部又は大部分が利子、配当等又は使用料であり、かつ、当該事業年度の所得の金額のうちに国外所得金額の占める割合が低いなどのため課税上弊害がないと認められる場合には、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用のうち国外業務に関連することが明らかな費用(例えば国外の関連会社を管理する部門の人件費、国外の子会社への出向者に係る給与の較差補てん金等)のみが共通費用であるものとして国外業務に係る損金の額として配分すべき金額を計算することができる。

2  当該事業年度に受けた配当等の収入金額のうちに法第23条の2第1項《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》の規定の適用を受ける配当等(以下16−3−13までにおいて「外国子会社配当等」という。)の収入金額がある場合における外国子会社配当等に係る「国外業務に係る売上総利益の額」は、外国子会社配当等の収入金額から当該事業年度において同項の規定により益金の額に算入されない金額を控除した金額によることに留意する。

【解説】

1  外国税額の控除限度額を計算する場合の「国外所得金額」とは、当該事業年度において生じた法人税法第138条《国内源泉所得》に規定する国内源泉所得(以下「国内源泉所得」という。)以外の所得(以下「国外源泉所得」という。)に係る所得のみについて各事業年度の所得に対する法人税を課するものとした場合に課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額に相当する金額をいうものとされている(法令1423)。
 すなわち、国外所得金額は、国外にその源泉がある所得に係る益金の額からこれに対応する損金の額を控除することにより算出されることになる。具体的には、国外源泉所得に係る収入金額からこれを稼得するために要した原価、販売費及び一般管理費その他の費用を控除し、これに我が国の税法に照らした申告調整を行って算出することとなる。
 この場合において、販売費、一般管理費その他の費用で国内源泉所得に係る所得を生ずべき業務(以下「国内業務」という。)と国外源泉所得に係る所得を生ずべき業務(以下「国外業務」という。)との双方に関連して生じたもの(以下「共通費用」という。)があるときには、この共通費用の額については、収入金額、資産の価額、使用人の数その他の基準のうち当該内国法人の行う業務の内容及び費用の性質に照らして合理的と認められる基準により国内源泉所得に係る所得及び国外源泉所得に係る所得の金額の計算上の損金の額として配分するものとされている(法令1426)。

2  本通達においては、当該事業年度の共通費用(負債利子、引当金及び準備金の繰入額等を除く。)につき、個々の費目ごとに、収入金額その他の合理的な基準を用いて国内業務と国外業務に配分することが困難な場合の一種の簡便方法として合理的と認められる方法を示している。具体的には、次の算式により国外業務に係る損金として配分すべき金額を計算する方法を示しており、原則としてこれにより取り扱うこととしている。

(算式)
共通費用の総額×分母の金額のうち国外業務に係る売上総利益(利子、配当等及び使用料については、その収入金額)/当該事業年度の売上総利益の額(利子、配当等及び使用料については、その収入金額)=国外業務に係る損金として配分すべき金額

3  ところで、平成21年度の税制改正により、いわゆる外国子会社配当益金不算入制度が創設され、内国法人が外国子会社(法人税法第23条の2第1項に規定する外国子会社をいう。以下同じ。)から受ける剰余金の配当等(以下「配当等」という。)の額について、その内国法人の所得金額の計算上、その配当等の額の95%相当額は益金の額に算入しない(残りの5%相当額を益金の額に算入する)こととされた(法23の2、法令22の32)。

(注) また、外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、内国法人が特定外国子会社等から受ける配当等がある場合には、その配当等の額のうち当該特定外国子会社等に係る特定課税対象留保金額に達するまでの金額は、その内国法人の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされた(措法66の812)。

4  ここで、外国税額控除の控除限度額の計算に当たり、内国法人が外国法人から受ける配当等が国外所得金額に含まれるか否か、すなわち、当該配当等が国外源泉所得に該当するか否か、該当するとした場合にその金額が問題となるが、法令上、内国法人から受ける配当等が国内源泉所得とされている(法138五イ)ことから、外国法人から受ける配当等については、国内源泉所得以外の所得(国外源泉所得)に該当すると解されること、また、国外にある者に対する投資行為により生ずる所得は国外源泉所得に係る所得に該当するとされている(法令1424二、1765)ことからすれば、当該配当等は国外源泉所得に該当することになると解される。
 したがって、内国法人が外国子会社から受ける配当等は国外源泉所得に該当し、平成21年度の税制改正後は、一義的には、当該配当等の額の5%相当額が益金の額になり、これに対応する損金の額を控除することにより、当該配当等の額に係る国外所得金額が算出されることになる。
 しかしながら、外国子会社配当益金不算入制度が導入されたものの、外国税額の控除限度額を計算する場合の国外所得金額の規定(法令1423)は特段改正されていないことなどから、上記2の共通費用の配分における簡便方法の計算について、従来どおり分子の「国外業務に係る売上総利益(利子、配当等及び使用料については、その収入金額)」は外国子会社から受ける配当等の額の全額によることとなるのか、あるいは外国子会社配当益金不算入制度の導入がこの計算にも影響を及ぼし、外国子会社から受ける配当等の額の5%相当額となるのか、さらにこの場合の国外業務に係る損金の額として配分すべき金額の計算は具体的にどのように行うこととなるのかといった疑問が生ずる。

5  この点について、益金の額に算入されない配当等の額(95%相当額)にも共通費用を配分することにより、結果的に当該配当等に係る国外所得金額を圧縮することは相当でなく、また、法令上も国外所得金額は「課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額に相当する金額」とされ、共通費用の額は合理的と認められる基準により配分するものとされていることからすれば、共通費用の配分においても、益金の額に算入されない配当等(95%相当額)に係る分を控除し、すなわち、益金の額に算入される配当等(5%相当額)に係る分の共通費用の金額を計算し、その計算した金額を当該配当等に係る共通費用の国外業務に係る損金の額として配分すべき金額とした上で、国外所得金額を算出することが相当である。
 具体的には、当該事業年度に受けた配当等の収入金額のうちに外国子会社からの配当等の収入金額がある場合において、上記2の共通費用の配分計算における当該配当等に係る「国外業務に係る売上総利益の額(配当等の収入金額)」(分子の額)は、当該配当等の収入金額から課税標準に含まれないこととなる金額(当該事業年度において益金の額に算入されない金額)を控除した残額(すなわち、課税標準となる当該配当等の収入金額の5%相当額)によることが相当であり、そのことを本通達の注書の2において留意的に明らかにしている。

(注) 内国法人が特定外国子会社等から配当等を受ける場合でその配当等の全額(100%)が益金の額に算入されないときには、この分の配当等に係る「国外業務に係る売上総利益の額(配当等の収入金額」(分子の額)はないもの(零)として計算することになる。

6  なお、本通達の注書の2の取扱いは販売費、一般管理費その他の費用のうち国内業務と国外業務との双方に関連して生じた共通費用に係る取扱いであるが、国外業務に直接関連して生じた費用(直接費用)についても、国外業務に係る損金の額とするのはその直接費用の全額ではなく5%相当額として取り扱い、配当等に係る国外所得金額を算出することに留意する必要がある。

7  連結納税制度においても、同様の通達(連基通19−3−12)を定めている。

【改正】(負債利子の配賦)

16−3−13 当該事業年度において生じた負債の利子(令第136条の2第1項《金銭債務に係る債務者の償還差益又は償還差損の益金又は損金算入》に規定する満たない部分の金額のうち同項の規定により当該事業年度の損金の額に算入すべき償還差損の額、手形の割引料、貿易商社における輸入決済手形借入金の利息等を含む。以下16−3−13において同じ。)のうち国外事業所等における国外業務のために直接関連して生じた負債の利子(以下16−3−13において「直接利子」という。)に該当するもの以外のもの(以下16−3−14までにおいて「共通利子」という。)の額については、原則として、その内国法人の営む主たる事業が次のいずれに該当するかに応じ、それぞれ次により国内業務と国外業務に適正に配分するものとする。

(1) 卸売業及び製造業 次の算式により計算した金額を国外業務に係る損金の額とする。

(算式)
当該事業年度において生じた共通利子の額の合計額×分母の各事業年度終了の時における国外業務に係る資産(国外事業所等を有しない法人にあっては、国外源泉所得の発生の源泉となる貸付金、有価証券等とする。)の帳簿価額(直接利子の元本たる負債の額に相当する金額を除く。)の合計額/当該事業年度終了の時及び当該事業年度の直前事業年度終了の時における総資産の帳簿価額(直接利子の元本たる負債の額に相当する金額を除く。)の合計額

(2) 銀行業 次の算式により計算した金額を国外業務に係る損金の額とする。

(算式)
国外源泉所得の発生の源泉となる貸付金、有価証券等(国外事務所等に属するものを除く。)の当該事業年度中の平均残高×当該事業年度において生じた共通利子の額の合計額/預金、借入金等(直接利子の元本たる負債を除く。)の当該事業年度中の平均残高+(当該事業年度終了の時及び当該事業年度の直前事業年度終了の時における自己資本の額の合計額−左の各事業年度の終了の時における固定資産の帳簿価額の合計額)×1/2

(3) その他の事業 その事業の性質に応じ、(1)又は(2)に掲げる方法に準ずる方法により計算した金額を国外業務に係る損金の額とする。

(注)

1  算式の「国外業務に係る資産」及び「国外源泉所得の発生の源泉となる貸付金、有価証券等」には、当該事業年度において収益に計上すべき利子、配当等の額がなかった貸付金、有価証券等を含めないことができる。

2  算式の「国外業務に係る資産」及び「国外源泉所得の発生の源泉となる貸付金、有価証券等」に、外国子会社配当等に係る株式又は出資がある場合には、当該算式における当該株式又は出資に係る「国外業務に係る資産(……)の帳簿価額」及び「有価証券等(……)の当該事業年度中の平均残高」の計算は、当該株式又は出資の帳簿価額から当該帳簿価額に当該事業年度における外国子会社配当等の収入金額のうちに法第23条の2第1項《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》の規定により益金の額に算入されない金額の占める割合を乗じて計算した金額を控除した金額による。

3  算式の「当該事業年度の直前事業年度」が、連結事業年度に該当する場合には「当該事業年度の直前連結事業年度」と読み替えて計算を行う。

4  算式の「総資産の帳簿価額」は、令第22条第1項第1号《株式等に係る負債の利子の計算》の規定の例により計算した金額に同号ホに規定する連結法人に支払う負債の利子の元本である負債の額に相当する金額を加算した金額による。

5  算式の「自己資本の額」は、確定した決算に基づく貸借対照表の純資産の部に計上されている金額によるものとし、また、「固定資産の帳簿価額」は、当該貸借対照表に計上されている法第2条第22号《固定資産の定義》に規定する固定資産の帳簿価額による。

【解説】

1  本通達は国外所得金額の計算上控除すべき負債利子の計算方法を定めており、販売費、一般管理費その他の費用の中の負債利子について、その性質に着目して、他の費用とは別の配分のルールを明らかにしている。
 負債利子の配分については、負債利子を国外支店等における国外業務のために直接関連して生じたもの(直接利子)とその他のもの(共通利子)とに区分し、直接利子はその全額を国外業務に係る損金として配分するとともに、共通利子については、業種に応じて一定の適正な基準により国内業務と国外業務とに配分することとしている。
 なお、共通利子の具体的な配分の方法については、主要業種(卸売業、製造業及び銀行業)について算式を示し、その他の業種については、その事業の性質に応じてこれらに準ずる合理的な方法によることとしている。具体的には、卸売業及び製造業については総資産あん分の方法により、銀行業の場合は、運用資産の平均調達コスト率を基礎とする方法によることとしている。また、他の業種についてはこれらに準ずる方法によることとしており、一般的には、卸売業及び製造業の場合の配分方法である総資産あん分の方法に準ずることになると考えられる。

2  ところで、平成21年度の税制改正により、いわゆる外国子会社配当益金不算入制度が創設され、内国法人が外国子会社(法人税法第23条の2第1項に規定する外国子会社をいう。以下同じ。)から受ける剰余金の配当等(以下「配当等」という。)の額について、その内国法人の所得金額の計算上、その配当等の額の95%相当額は益金の額に算入しない(残りの5%相当額を益金の額に算入する)こととされた(法23の2、法令22の32)。

(注) また、外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、内国法人が特定外国子会社等から受ける配当等がある場合には、その配当等の額のうち当該特定外国子会社等に係る特定課税対象留保金額に達するまでの金額は、その内国法人の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされた(措法66の812)。

 この場合、外国子会社からの配当等の額の5%相当額が益金の額となり、これに対応する損金の額を控除することにより、当該配当等の額に係る国外所得金額が算出されるのであるが、共通利子がある場合に、この共通利子の額のうち国外業務に係る損金の額をどのように計算するのかという疑問が生ずる。

3  この点について、外国子会社からの配当等の額の5%相当額が益金の額となるのであるから、これに対応する損金の額についても、法人税基本通達16−3−12における共通費用の配分と同様の考え方により、1内国法人が卸売業又は製造業を営む法人である場合には、本通達(1)の算式の「国外業務に係る資産(……)の帳簿価額」のうち、当該配当等の額に係る株式等の帳簿価額については、これを5%相当額として計算する、2内国法人が銀行業を営む法人である場合には、本通達(2)の算式の「有価証券等(……)の当該事業年度中の平均残高」の計算における「国外源泉所得の発生の源泉となる貸付金、有価証券等」のうち、当該配当等の額に係る株式等の帳簿価額については、これを5%相当額として計算することとしている。
 本通達の注書の2ではこれらのことを明らかにしている。

(注) 内国法人が特定外国子会社等から配当等を受ける場合でその配当等の全額(100%)が益金の額に算入されないときには、この分の株式又は出資に係る「国外業務に係る資産(・・・)の帳簿価額」及び「有価証券等(・・・)の当該事業年度中の平均残高」はないもの(零)として計算することになる。

4  なお、本通達の注書の2の取扱いは共通利子に係るものであるが、国外業務のために直接関連して生じた利子(直接利子)についても、国外業務に係る損金の額とするのはその直接利子の全額ではなく5%相当額として取り扱い、配当等に係る国外所得金額を算出することに留意する必要がある。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通19−3−13)を定めている。

【新設】(内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課せられる外国法人税の額)

16−3−36 令第142条の3第7項第3号並びに第8項第1号及び第2号《外国税額控除の対象とならない外国法人税の額》に規定する外国法人税の額には、その所在地国でいわゆるパス・スルー課税が適用される事業体で、我が国においては外国法人に該当するものの所得のうち、その所在地国において構成員である内国法人に帰せられるものとして計算される金額に対して課される外国法人税の額が含まれる。

【解説】

1  平成21年度の税制改正において、次の1から3の外国法人税の額については、外国税額控除の対象とならない外国法人税の額として新たに追加された(法691、法令142の37三、8)。

  • 1 外国子会社配当益金不算入制度における外国子会社から受ける剰余金の配当等の額を課税標準として課される外国法人税の額(その剰余金の配当等の額の計算の基礎となった外国子会社の所得のうち内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額を含む。)
  • 2 外国子会社合算税制における特定外国子会社等(外国子会社配当益金不算入制度における外国子会社に該当するものを除く。)から受ける剰余金の配当等の額(特定外国子会社等に係る特定課税対象金額に達するまでの金額に限る。)で措置法第66条の8第1項の規定により益金不算入とされたものを課税標準として課される外国法人税の額(その剰余金の配当等の額の計算の基礎となった特定外国子会社等の所得のうち内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額を含む。)
  • 3 コーポレート・インバージョン対策合算税制における特殊関係株主等である内国法人が特定外国法人(外国子会社配当益金不算入制度における外国子会社に該当するものを除く。)から受ける剰余金の配当等の額(特定外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額に限る。)で措置法第66条の9の4第1項の規定により益金不算入とされたものを課税標準として課される外国法人税の額(その剰余金の配当等の額の計算の基礎となった特定外国法人の所得のうち内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額を含む。)

 これらの外国法人税の額は、いずれもその剰余金の配当等の額が益金不算入とされており、それに対して課される外国法人税の額について、二重課税調整をする必要がないことから、外国税額控除の対象から除外されたものである。
 ここで注意が必要なのは、上記1の外国法人税の額については、法文上「法第23条の2第1項に規定する外国子会社から受ける同項に規定する剰余金の配当等の額を課税標準として課される外国法人税の額(…内国法人に対して課される外国法人税の額を含む。)」(法令142の37三)と規定され、「法第23条の2第1項(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)の規定の適用を受けた剰余金の配当等の額を課税標準として課された…」と規定されていない点である。したがって、仮に外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けない剰余金の配当等の額について課された外国法人税であっても、それが当該制度の適用対象となる外国子会社からの剰余金の配当等の額について課されたものである場合には、同様に外国税額控除の対象から除外されるのである。

2  ところで、外国税額控除の対象外とされた上記1から3までの外国法人税の額のそれぞれにおいてかっこ書されている「剰余金の配当等の額の計算の基礎となった…所得のうち内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額」とは、具体的にどのようなものをいうのか疑問が生じる。
 この点について、この外国法人税の額には、その所在地国でいわゆるパス・スルー課税(その所在地国において事業体や組織体が課税の主体にならず、その構成員(出資者)が課税の主体とされるもの)が適用される事業体で、我が国においては外国法人に該当するものの所得のうち、その所在地国において構成員である内国法人に帰せられるものとして計算される金額に対して課される外国法人税の額が含まれる。本通達ではこのことを明らかにしている。

3  その所在地国でパス・スルー課税が適用される事業体で、我が国において外国法人に該当するものの具体的な例としては、米国のリミテッド・ライアビリティー・カンパニー(Limited Liability Company、以下「米国LLC」という。)で、米国の租税法上パス・スルー課税を選択したものが挙げられる。
 パス・スルー課税を選択し、その適用を受ける米国LLCについては、原則的には我が国の税務上「外国法人」として取り扱われる(9−5−5の解説の(参考)参照。)ことから、その米国LLCから構成員である内国法人が受ける利益の分配は、我が国からすると子会社からの配当として取り扱われることとなる。
 また、米国の税制では、米国LLCの利益分配時には源泉徴収されず、その構成員が米国の非居住者である場合には、その前段階であるその所得の分配額が確定した段階で構成員に対し課税が行われるが、このような分配確定段階において構成員である内国法人に帰せられるものとして計算される金額を課税標準として当該内国法人に対して課される外国法人税の額についても、上記1から3までの剰余金の配当等の額を課税標準として課される外国法人税の額に含まれることとなり、外国税額控除の対象とならないこととなる。

4  連結納税制度においても、同様の通達(連基通19−3−36)を定めている。