2 外国子会社から受ける配当等

 平成21年度の税制改正により、内国法人が外国子会社(内国法人の外国法人に対する保有割合が25%以上であり、かつ、その状態が剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上継続している外国法人をいう。)から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、その剰余金の配当等の額からこれに係る費用の額に相当する額(剰余金の配当等の額の5%相当額)を控除した金額を益金の額に算入しないことができる制度(外国子会社配当益金不算入制度)が創設された。

【新設】(外国子会社の要件のうち「その状態が継続していること」の意義)

3−3−1 単体申告を行う連結法人が、令第22条の3第1項《外国子会社の要件等》の剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上継続しているかどうかを判定する場合において、当該連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人が当該剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月の期間(以下3−3−3において「株式保有期間」という。)継続して連結法人であったかどうかは問わないことに留意する。

【解説】

1  連結法人である内国法人が外国法人の株式等(株式又は出資をいう。以下同じ。)を保有している場合の当該外国法人が、本制度の適用対象となる外国子会社に該当するかどうかの判定においては、内国法人及び当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人が保有している外国法人の株式等の合計数のその発行済株式等(当該外国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数に占める割合等が25%以上であり、かつ、「その状態」が剰余金の配当等の額(剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配の額をいう。以下同じ。)の支払義務が確定する日以前6月以上継続していることが要件とされている(法令22の31)。
 これは、連結納税制度が連結グループをあたかも一の法人として課税関係を考えることにかんがみ、保有割合が25%以上であるかについても各連結法人ごとに判定するのではなく、グループ全体で判定することとされたものである。

2  ところで、連結親法人事業年度の中途において連結親法人との間に連結完全支配関係を有しなくなった連結法人は、その連結親法人事業年度開始の日からその有しなくなった日の前日までの期間を一事業年度として単体申告を行うこととされている(法15の21四)。
 この単体申告を行う連結法人が外国法人の株式等を保有している場合の当該外国法人が、本制度の適用対象となる外国子会社に該当するかについても、上記と同様に、連結グループ全体で25%以上の株式等を6月以上継続して保有しているかどうかにより判定することになるのであるが、この場合の「その状態」とは、「25%以上の株式等を保有している状態」をいうのであり、「連結法人として25%以上の株式等を保有している状態」をいうのではない。
 つまり、連結法人が単体申告を行う事業年度において外国法人から配当等の額を受けた場合、連結グループ全体で当該外国法人の株式等の25%以上を、その配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上継続して保有しているかどうかは、次の1及び2の法人が保有する株式等により判定することとなるのである。

  • 1 単体申告を行う連結法人
  • 2 配当等の額の支払義務確定日において1の連結法人との間に連結完全支配関係のある他の連結法人

 したがって、2の他の連結法人において、配当等の額の支払義務確定日以前6月の期間内に連結法人でない期間が含まれていたとしても、そのことをもって当該要件を満たさないことにはならない。本通達においては、このことを留意的に明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−3−1)を定めている。

【新設】(一の事業年度に2以上の剰余金の配当等を同一の外国法人から受ける場合の外国子会社の判定)

3−3−2 内国法人が一の事業年度に2以上の剰余金の配当等(法第23条第1項第1号《受取配当等の益金不算入》に規定する剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配をいう。以下3−3−2において同じ。)を同一の外国法人から受ける場合において、当該外国法人が外国子会社(法第23条の2第1項《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》に規定する「外国子会社」をいう。以下3−3−3において同じ。)に該当するかどうかは、それぞれの剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日(令第22条の3第1項《外国子会社の要件等》に規定する「支払義務が確定する日」をいう。)において当該内国法人の保有する当該外国法人の株式又は出資の数又は金額に基づいて判定することに留意する。

【解説】

1  内国法人が法人税法第23条の2第1項に規定する「外国子会社」から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、同条の外国子会社配当益金不算入制度を適用することができる。この「外国子会社」とは、外国法人の発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額(又はこれらのうち議決権のあるもの)の25%以上に相当する数又は金額の株式又は出資(又は議決権のある株式又は出資)を、内国法人がその受ける剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上継続して保有している場合の当該外国法人をいうものとされている(法23の21、法令22の31)。

2  ところで、内国法人が一事業年度中に同一の外国法人から剰余金の配当等を2回以上受ける場合があるが、このような場合であっても、当該外国法人が本制度の適用がある外国子会社に該当するかどうかは、それぞれの剰余金の配当等の額ごとに、その支払義務が確定する日以前6月の期間において当該内国法人の保有する当該外国法人の株式又は出資の数又は金額に基づいて判定することとなる。本通達において、このことを留意的に明らかにしている。
 したがって、例えば、外国法人からの剰余金の配当が年2回あるケースで、1回目の剰余金の配当の額の支払義務が確定する日以前6月間のうちいずれかの期間において株式保有割合が25%以上ではなかったが、株式を買い増したことなどにより、2回目の剰余金の配当の額の支払義務が確定する日以前6月間を通じて株式保有割合が25%以上となったときには、1回目の剰余金の配当については本制度の適用はないが、2回目の剰余金の配当については本制度の適用があることとなる。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−3−2)を定めている。

【新設】(租税条約の適用がある場合の外国子会社の判定)

3−3−3 内国法人(連結法人に限る。)に係る外国子会社の判定において、その判定の対象となる外国法人が租税条約の二重課税排除条項(令第22条の3第4項《外国子会社の要件等》に規定する「二重課税排除条項」をいう。以下3−3−3において同じ。)により当該外国法人の法第23条の2第1項《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》に規定する発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額に係る保有割合が軽減されている相手国の外国法人である場合には、当該内国法人及び当該内国法人との間に連結完全支配関係を有する連結法人が保有している当該外国法人の発行済株式又は出資の数又は金額を合計した数又は金額の保有割合が25%未満であっても、当該内国法人が当該租税条約の二重課税排除条項に定める保有割合以上の株式又は出資を株式保有期間を通じて有するときは、当該内国法人については同項の規定の適用があることに留意する。

【解説】

1  連結法人である内国法人が外国法人の株式等(株式又は出資をいう。以下同じ。)を保有している場合の当該外国法人が、外国子会社配当益金不算入制度の適用対象となる外国子会社に該当するかどうかの判定において、外国法人の株式等の保有割合が25%以上であるかどうかは、内国法人及び当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人が保有する外国法人の株式等の合計数を基礎として、すなわち連結グループ全体で判定することとされている(法23の21、法令22の31一かっこ書)。
 また、租税条約の二重課税排除条項において外国法人の株式等の保有割合が軽減されている場合には、その軽減された保有割合によって外国子会社の判定を行うこととされているが(法令22の34)、連結法人においては、その軽減された保有割合についても連結グループ全体で判定するのかという疑問が生じる。
 具体的には、例えば、日米租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約、平成16年3月30日付条約第2号)では、その二重課税排除条項において株式等の保有割合が10%に軽減されているが、連結法人である内国法人が本制度の適用を受けようとする場合において、米国の居住者である外国法人が外国子会社に該当するかどうかは、連結グループ全体で10%以上保有しているかどうかにより判定することになるのか、それとも連結法人である当該内国法人1社で10%以上保有しているかどうかにより判定することになるのかという疑問である。

2  この点、例えば、日米租税条約の第23条1(b)では「合衆国の居住者である法人により、その議決権のある株式の10%以上を配当の支払義務が確定する日に先立つ6箇月の期間を通じて所有する日本国の居住者である法人……」と規定され、条約締結国の一の外国法人と一の内国法人との関係が定められており、他の条約締結国との条約も同様の規定振りであることからすれば、この場合の10%という保有割合は、あくまで一の内国法人が保有している外国法人の株式等の数を基礎とする場合に適用されることになる。
 したがって、連結法人である内国法人が本制度の適用を受けようとする場合において、連結グループ全体の保有割合で外国子会社の判定を行うときには、10%という租税条約の二重課税排除条項において軽減された割合は適用されず、法人税法及び同施行令に定められた25%という割合が適用されることになるのである。
 換言すれば、米国の居住者である外国法人を例に、継続保有要件を満たしていることを前提とすれば、連結グループ全体で当該外国法人の株式等の25%以上を保有している場合には、連結グループに属する各連結法人の保有割合にかかわらず、連結法人のすべてに本制度が適用される。
 他方、連結グループ全体で当該外国法人の株式等の25%以上を保有していない場合であっても、連結グループに属する連結法人が単独で当該外国法人の株式等の10%以上を保有しているときには、当該連結法人には本制度が適用されることになる。
 本通達において、このことを留意的に明らかにしている。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−3−3)を定めている。

【新設】(外国源泉税等の額を課されたことを証する書類)

3−3−4 規則第8条の5第3号《外国子会社から受ける配当等の益金不算入に関する書類》の「外国源泉税等の額を課されたことを証する……その納付を証する書類」には、申告書の写し又は現地の税務官署が発行する納税証明書等のほか、更正若しくは決定に係る通知書、賦課決定通知書、納税告知書、源泉徴収の外国源泉税等に係る源泉徴収票その他これらに準ずる書類又はこれらの書類の写しが含まれる。

【解説】

1  外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける場合には、外国子会社から受ける剰余金の配当等の額に係る一定の書類を保存する必要があるが、この際、当該剰余金の配当等に係る法人税法第39条の2《外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等の損金算入》に規定する外国源泉税等の額があるときには、当該外国源泉税等の額を課されたことを証する申告書の写し等の一定の書類(既に納付済みの場合はその納付を証する書類を含む。)を保存する必要がある(法23の22、法規8の5三)。
 したがって、剰余金の配当等に係る外国源泉税等の額がある場合において、これに係る源泉徴収票等の書類の保存がないときには、たとえ法人税施行規則第8条の5第1号に掲げる書類(外国子会社に該当することを証する書類)及び同条第2号に掲げる書類(外国子会社の財務諸表等)の保存があったとしても、本制度の適用を受けるための書類の保存要件を満たしたことにはならない。
 源泉徴収票等の書類の保存を求める趣旨は、剰余金の配当等に係る外国源泉税等の額がある場合、内国親法人に受取配当等の額として具体的にキャッシュインされる金額は当該外国源泉税等の額が控除された後の金額となるため、この外国源泉税等の額が明らかにされないと、本制度の適用対象となる剰余金の配当等の額そのものが明らかとされないといった実務上の問題等があるからである。
 本通達においては、この保存書類の範囲に含まれるものが列挙されている。本通達に列挙されているもの以外のものでも、その外国源泉税等を課された国の税制等からみて、当該外国源泉税等の課税事実ないしは納付事実を証明することができるものであればよいのであるが、一般的に考えられるのは、ここに列挙されているような書類が外国源泉税等の課税事実又は納付事実を証明することになろう。

2  連結納税制度においても、同様の通達(連基通3−3−4)を定めている。