1 納税地及び納税義務

【新設】(収益事業を行っていないことの判定)

1−1−11 一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人又は公益財団法人を除く。以下1−1−11において「一般社団法人等」という。)が、事務処理の受託の性質を有する業務を行う場合において、当該業務が法令の規定、行政官庁の指導又は当該業務に関する規則、規約若しくは契約に基づき実費弁償(その委託により委託者から受ける金額が当該業務のために必要な費用の額を超えないことをいう。)により行われるものであり、かつ、そのことにつきあらかじめ一定の期間(おおむね5年以内の期間とする。)を限って所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長)の確認を受けたときは、その確認を受けた期間については、当該業務は、その委託者の計算に係るものとし、当該一般社団法人等の収益事業としないものとして令第3条第2項第3号《非営利型法人の範囲》の要件に該当するかどうかの判定を行うこととする。

【解説】

1  平成20年度の税制改正において、一般社団法人・一般財団法人のうち一定の要件に該当するものは非営利型法人として公益法人等とされ、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることとされた。
 そして、非営利型法人のうち、いわゆる共益的活動を目的とする法人の要件の一つとして、「その主たる事業として収益事業を行っていないこと」(法令32三)と規定されている。
 ところで、公益法人等が行う事業が法人税の課税対象となる収益事業に該当するかどうかを判定する場面において、公益法人等が行う事務処理の受託の性質を有する業務がいわゆる実費弁償方式により行われている場合には、所轄税務署長又は国税局長の確認を受けた期間に限り、当該業務を収益事業として取り扱わないこととしている(基通15−1−28)。
 これと同様に、いわゆる共益的活動を目的とする一般社団法人・一般財団法人が非営利型法人に該当するかどうかを判定する場面においても、実費弁償方式により行われている業務は収益事業に当たらないとして上記の要件を判定することになるのかといった疑問が生ずる。

2  いわゆる共益的活動を目的とする非営利型法人は、「その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であってその事業を運営するための組織が適正であるもの」(法2九の二ロ)をいい、会員から受け入れる会費により事業を行うことが求められるから、実費弁償方式により行われているとしても、会費以外で運営されているものはこれに該当しないとも考えられる。
 しかしながら、法人税法施行令第3条第4項の読替えにより、本要件の判定に当たって、例えば、一般社団法人・一般財団法人が行う一定の医療保健業(法令51二十九リ〜ル、ヨ、タ)が収益事業から除かれていることからすれば、本要件は、必ずしも会員からの会費によって運営されていることを厳密に求めているものではないと考えられる。
 また、本要件は、「その主たる事業として収益事業を行っていない」かどうかにより判定するところ、仮に収益事業を行っていたとしても、それが実費弁償方式によっていることにより、法人税の課税対象となる収益事業に当たらないとして取り扱っているものを、本要件の判定では収益事業に当たるとして取り扱う理由も見当たらない。
 以上のことから、本要件の判定に当たっても、実費弁償方式により行われている業務は収益事業に当たらないとして取り扱うことが適当である。本通達では、このことを明らかにしている。
 なお、本通達は、一般社団法人・一般財団法人がいわゆる共益的活動を目的とする非営利型法人に該当するかどうかを判定する場面での取扱いを明らかにしたものであることから、具体的には、次のような場合に適用することになる。

  • 1 一般社団法人・一般財団法人を新たに設立した場合
  • 2 公益社団法人・公益財団法人が公益認定を取り消されて一般社団法人・一般財団法人となった場合
  • 3 いわゆる非営利性が徹底された非営利型法人(法2九の二イ)がその要件に該当しないこととなった場合

3  ところで、例えば、人格のない社団等が新たに一般社団法人・一般財団法人を設立した場合において、その人格のない社団等が設立の日を含む期間について既に法人税基本通達15−1−28の確認を受けているときにも、改めて本通達による確認を要するのかという疑問が生ずる。

(注) 上記の例以外にも、次のような場合が考えられる。
  •  公益社団法人・公益財団法人が公益認定を取り消された後に、いわゆる共益的活動を目的とする非営利型法人(法2九の二ロ)に該当するかどうかを判定する場合において、その取消しの日を含む期間について、公益目的事業以外の事業に対し、取消し前の公益社団法人・公益財団法人が法人税基本通達15−1−28の確認を受けているとき
  •  いわゆる非営利性が徹底された非営利型法人(法2九の二イ)がその要件(法令31)に該当しなくなった後に、いわゆる共益的活動を目的とする非営利型法人(法2九の二ロ)に該当するかどうかを判定する場合において、その該当しなくなった日を含む期間について、当該要件に該当しなくなる前の非営利型法人が同通達の確認を受けているとき

 この点、新たに法人格を取得する場合には、通常、法人のガバナンスも整備されることなどから、その時点での事業実態を確認する必要があると考えられる。また、公益認定を取り消される場合や一の類型の非営利型法人がその要件に該当しないこととなる場合には、法人の事業実態に変更がある場合も考えられる。これらのことから、いずれの場合についても、改めて本通達による確認を要することとなる。
 なお、特例民法法人が一般社団法人・一般財団法人に移行した場合において、移行の日を含む期間について既に法人税基本通達15−1−28の確認を受けているときの取扱いについては、本改正通達の経過的取扱い(2)において明らかにしている。

4  また、本通達による確認は、あらかじめ一定の期間を限って確認を受けることとされていることから、例えば新設法人の設立1期目については確認することができないのではないかという疑問が生ずる。
 この点、あらかじめ確認を受けることとされているのは、一般社団法人・一般財団法人が既に受けた確認期間の満了により再度申請を行うなど継続的に確認を行う場面を前提にしたものであり、新設法人の設立1期目の場合のようにそもそも事前に確認を行うことができないものについては、設立後速やかに所轄税務署長又は国税局長の確認を受けることにより進行年度分(設立1期目)から本通達の取扱いの適用を受けることは可能であろう。