4 第67条の3《農業生産法人の肉用牛の売却に係る所得の課税の特例》関係

〔制度の概要〕

 この制度は、農業生産法人が、昭和56年4月1日から平成24年3月31日までの期間内の日を含む各事業年度において、その飼育した肉用牛を家畜市場、中央卸売市場等において売却した場合等において、その売却した肉用牛のうちに免税対象飼育牛があるときは、その売却による利益の額(年2,000頭を超える場合には超える部分の利益の額を除く。)に相当する金額を、その売却した日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができるというものである(措法67の3)。

1 適用対象法人
 本制度の適用対象法人は、農地法第2条第7項に規定する農業生産法人とされている(措法67の3丸1)。
2 適用対象となる免税対象飼育牛
 本制度の適用対象となる免税対象飼育牛は、肉用牛(農業災害補償法第111条第1項に規定する肉用牛等及び乳牛の雌等(乳牛の雌のうち子牛の生産の用に供されたもの及び牛の胎児を除く。))のうち、家畜改良増殖法第32条の2第1項の規定による農林水産大臣の承認を受けた同項に規定する登録規程に基づく一定の登録がされているもの又はその売却価額が100万円未満(ホルスタイン種、ジャージー種又は乳用種である乳牛に該当する場合には、50万円未満)であるものとされている(措法67の3丸1丸2、措令39の26丸1丸4、措規22の16丸1)。
3 適用対象となる売却
  • (1) 家畜取引法第2条第3項に規定する家畜市場、中央卸売市場又は家畜取引法第27条第1項の規定による届出に係る市場等において行う売却の方法により、農業生産法人が飼育した肉用牛を売却した場合。
  • (2) 肉用子牛生産安定等特別措置法第6条第2項に規定する指定協会から同法第7条第2項に規定する生産者補給金交付業務に関する事務の委託を受けている農業協同組合又は農業協同組合連合会で農林水産大臣が指定したものに委託して行う売却の方法により、農業生産法人が飼育した生産後1年未満の肉用牛を売却した場合。
    (措法67の3丸1、措令39の26丸2丸3

【新設】(免税対象飼育牛の売却利益の額の計算)

67の3−1 措置法第67条の3第1項に規定する免税対象飼育牛に該当する肉用牛の頭数の合計が年2,000頭を超える場合において、同項の規定により損金の額に算入される年2,000頭までの売却による利益の額がいずれの肉用牛の売却による利益の額の合計額であるかは、法人の計算による。

【解説】

1  本制度は、農業生産法人がその飼育した肉用牛を家畜市場、中央卸売市場等において売却した場合等において、その売却した肉用牛のうちに免税対象飼育牛があるときは、その売却による利益の額に相当する金額を、その売却をした日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができるというものである(措法67の3丸1)。

2  平成20年度の税制改正により、免税対象飼育牛の売却頭数の合計が年2,000頭を超える場合には、その超える部分の売却による利益の額については、免税対象から除外された。この改正により、免税対象飼育牛の売却頭数の合計が年2,000頭以内である場合には、その売却したすべての免税対象飼育牛の売却による利益の額について本制度を適用することができるが、年2,000頭を超える場合に損金の額に算入される年2,000頭までの売却による利益の額がいずれの免税対象飼育牛の売却によるものとすべきなのかといった疑問が生じる。
 この点、法令上は何ら限定されておらず、また、本制度が年2,000頭までの肉用牛の売却による所得を全免するものであり、個々の売却による利益の大小に着目した制度でないことからすれば、免税対象飼育牛の売却頭数の合計が年2,000頭を超える場合には、損金の額に算入される年2,000頭までの売却による利益の額がいずれの免税対象飼育牛の売却によるものかは、法人の計算によることとして差し支えないものと考えられる。本通達ではこのことを明らかにしている。

3  なお、免税対象飼育牛の売却による利益の額は、一頭ごとに計算するのではなく、選択した2,000頭すべてに係る収益の額からその収益に係る原価の額とその売却に係る経費の額との合計額を控除した金額となる(措令39の26丸5)。したがって、2,000頭のうちに、一頭ごとに計算すると損失が生じる免税対象飼育牛があったとしても、これを除外して免税対象飼育牛の売却による利益の額を計算することはできない。また、本制度の適用を受けるためには、2,000頭すべてについての証明書類が確定申告書等に添付されている必要がある(措法67の3丸3)のであるから、その点、留意する必要がある。

4  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の101《農業生産法人の肉用牛の売却に係る連結所得の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の101−1)を新たに定めている。