1 第42条の7《事業基盤強化設備を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除》関係

 平成20年度の税制改正により、中小企業者に該当する法人又は農業協同組合等で青色申告書を提出するものの平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に開始する各事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の事業年度を除く。)において、その事業年度の労務費の額のうちに教育訓練費の額(その教育訓練費に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額)の占める割合が0.15%以上である場合には、その教育訓練費の額に一定の税額控除割合を乗じて計算した金額を法人税額から控除することができる制度が本制度に追加された(措法42の7丸5)。

1 適用対象法人
 本制度の適用対象法人は、中小企業者に該当する法人又は農業協同組合等で青色申告書を提出するものである。
(注) 中小企業者とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人(その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人及びその発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人を除く。)又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいう(措法42の4丸12五、措令27の4丸10)。
2 適用対象となる教育訓練費の範囲
 本制度の適用対象となる教育訓練費とは、法人がその使用人(その法人の役員と特殊の関係のある者及び使用人兼務役員を除く。)の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次のものをいう(措法42の7丸6一、措令27の7丸8丸10、措規20の3丸6丸9)。
区分 対象となる教育訓練費
丸1 法人がその使用人に対して教育、訓練、研修、講習その他これらに類するもの(以下「教育訓練等」という。)を自ら行う場合
  • ・ 教育訓練等のために講師又は指導者(その法人の役員又は使用人である者を除く。)に対して支払う報酬、旅費などの費用及び専門的知識を有する者に対して支払う教育訓練等に関する計画又は内容の作成の委託費用
  • ・ 教育訓練等のための施設、設備その他の資産の賃借費用及びコンテンツの使用料
丸2 法人から委託を受けた他の者(その法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む。)が教育訓練等を行う場合
  • ・ 教育訓練等のために当該他の者に対して支払う費用
丸3 法人がその使用人を他の者が行う教育訓練等に参加させる場合
  • ・ 授業料、受講料、受験手数料その他の当該他の者が行う教育訓練等に対する対価として支払うもの
丸4 法人が教育訓練等の用に供する教科書その他の教材の購入又は委託製作をした場合
(注) その教材が減価償却資産である場合には、法令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》の規定の適用を受けるものに限る。
  • ・ 教科書等の教材の購入に要する費用又はその委託製作のために他の者に支払う費用(その教科書等が丸1丸3に掲げる場合において使用されるものである場合には、丸1丸3に定める費用に該当するものを除く。)
(注) その法人の役員と特殊の関係のある者とは、次に掲げる者をいう(措令27の7丸8)。
  • 丸1 役員の親族
  • 丸2 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  • 丸3 上記丸1丸2に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
  • 丸4 上記丸2丸3に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
3 税額控除限度額
 税額控除限度額は、次の算式により計算した金額である。ただし、控除を受ける金額は適用年度の所得に対する法人税額の20%相当額を限度とする。

〔算式〕

教育訓練費割合が0.25%以上の場合
税額控除限度額 = 教育訓練費の額 × 12%
教育訓練費割合が0.15%以上0.25%未満の場合
税額控除限度額 = 教育訓練費の額 × (8%+(教育訓練費割合(注1)−0.15%)×40)(注2)
(注1)「教育訓練費割合」=適用年度の教育訓練費の額/適用年度の労務費の額
(注2) この割合に小数点以下3位未満の端数があるときは、これを切り捨てる。
(※) 「労務費」とは、所得税法第28条第1項に規定する給与等(使用人に対して支給するものに限る。)、法定福利費(法令の規定により事業主が負担することとされているものに限る。)及び教育訓練費の合計額をいう(措法42の7丸6二、措令27の7丸11、措規20の3丸10)。

【新設】(他の者から支払を受ける金額の範囲)

42の7−11 措置法第42条の7第5項の規定の適用上、同条第6項第1号に規定する教育訓練費(以下「教育訓練費」という。)の額から控除する「他の者(当該法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む。)から支払を受ける金額」には、次に掲げる金額が含まれる。

  • (1) 国等からその教育訓練費に充てるために交付を受けた補助金
  • (2) 販売業者等である法人がその使用人の教育訓練費に充てるために当該法人の取扱商品の製造業者等から交付を受けた金銭の額

【解説】

1  本制度は、当該事業年度において教育訓練費の額がある場合に、その教育訓練費の額が当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される労務費の額に占める割合(「教育訓練費割合」という。)が0.15%以上であるときは、当該教育訓練費の額の総額に教育訓練費割合に応じた一定の割合を乗じて計算した金額を、それぞれ当該事業年度の法人税額(その20%が限度とされる。)から控除することができる制度である(措法42の7丸5)。
 本制度の適用対象となる教育訓練費の額は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額に限られるのであるが、その教育訓練費に充てるため他の者から支払いを受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額とされている(措法42の7丸5)。
 本通達においては、適用対象となる教育訓練費の額に含めないこととされる「他の者から支払を受ける金額」の範囲について、例示により明らかにしている。
 すなわち、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金」などで、教育訓練費に充てるために国等から交付を受けた補助金のほか、販売店がその使用人に対して販売促進等の目的で実施した教育訓練等に要した費用に充てるため、その取扱商品に係るメーカー等から交付を受けた金銭の額などがこれに含まれる。

2  ところで、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合には、その教育訓練等に要した費用の総額を合理的な基準によって按分する方法で計算した自社負担分の金額だけが本制度の適用対象である教育訓練費の額となる(措通42の7−12の(注)参照)。
 したがって、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合において、その教育訓練等に要した費用の総額をいったん立替払いし、その費用の総額を合理的な基準によって按分する方法で計算した関連会社等の負担分の金額を受け取ったときは、この受け取った金額は立替金の清算金に過ぎず、自社の使用人の教育訓練費に充てるために支払を受けたものではないことから、「他の者から支払を受ける金額」には該当しない。
 ただし、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合において、合理的な基準によって按分する方法で計算した関連会社等の負担分の金額を超える金額の支払を受けたときは、その超える部分の金額は関連会社等から贈与されたものであり、「他の者から支払を受けた金額」に該当することになる。

3  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の12《事業基盤強化設備を取得した場合等の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(連措通68の12−11)を定めている。

【新設】(教育訓練費の範囲)

42の7−12 教育訓練費は、法人が自己の使用人に対して行う教育訓練等(措置法令第27条の7第9項第1号に規定する教育訓練等をいう。以下同じ。)の費用に限られるのであるが、一の教育訓練等に自己の工場又は店舗等内で当該法人の事業に従事する専属下請先等の従業員で自己の使用人と同等の事情にある者が含まれている場合であって、その者の数が極めて少数であるときには、その一の教育訓練等の費用の全額を当該法人の教育訓練費の額とすることができるものとする。

(注) 一の教育訓練等に自己の使用人とそれ以外の者が含まれている場合には、当該法人の教育訓練費の額は、本文の取扱いを適用する場合を除き、当該教育訓練等の費用の額を自己の使用人の受講者数とそれ以外の受講者数との比等の合理的な基準によってあん分する方法で計算した金額になることに留意する。

【解説】

1  本制度の適用対象となる教育訓練費とは、法人がその使用人の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用とされており(措法42の7丸6一)、原則として、自社と雇用関係のある使用人(自社の役員と特殊の関係のある者及び自社の使用人としての職務を有する役員を除く。)に対して実施する教育訓練等に要した費用に限られる。
 したがって、一の教育訓練等の対象者の中に自社の使用人以外の者が一人でも含まれている場合には、本制度の適用対象となる教育訓練費は、その教育訓練等に要した費用の総額ではなく、その総額のうち自社の使用人以外の者の部分を除いた金額を厳密に計算すべきという考え方もある。

2  この点、一の教育訓練等の対象者の中に自社の工場又は店舗等内で自社の事業に従事する専属下請先等の従業員が含まれる場合であっても、その者が自社の使用人と同等の事情にある者であるときは、その教育訓練等を実施した効果は自社の事業に対して反映されるため、教育訓練の奨励を目的とした本制度の趣旨に合致するものと考えられる。
 そこで、一の教育訓練に法人の使用人以外の者が含まれている場合であっても、その者が当該法人の使用人と同等の事情にあり、かつ、その者の数が極めて少数であるときは、その者の部分を含めた教育訓練等に要した費用の全額を本制度の適用対象となる教育訓練費に含めることができるものとして取り扱うこととしたものである。このことを本通達の本文において明らかにしている。
 なお、この「極めて少数」であるかどうかの判断については、教育訓練等の対象者全体に占める専属下請先等の従業員の割合によって判断するのではないかと考える向きもあろうが、その教育訓練等の規模にかかわらず一律に「受講者全体の何%以下」であれば「極めて少数」として取り扱うこととすると、その教育訓練等の規模が小さいことをもって、一人の対象者も含めることができないこととなり、適当ではないと考えられる。したがって、その教育訓練等の規模によっては、その専属下請先等の従業員が数名程度であっても「極めて少数」として取り扱って差し支えないものと考えられる。

3  また、本通達の(注)において、関連会社等と共同で教育訓練等を実施した場合のように、一の教育訓練等に自社の使用人とそれ以外の者が含まれている場合の原則的な取扱いを留意的に明らかにしている。
  すなわち、上記2の取扱いを適用する場合を除き、当該法人の教育訓練費は、その教育訓練等に要した費用の総額を自社が負担すべき金額と関連会社等が負担すべき金額とに合理的な基準によってあん分する方法で計算した金額となる。この場合の「合理的な基準」とは、例えば、それぞれの受講者数の比や、これに間接経費等の額を勘案した比などが考えられる。

4  次に、自社の使用人に対して実施する教育訓練等に要した費用が本制度の対象となることは上記1のとおりであり、この場合の「使用人」とは、通常、正社員、契約社員、パート・アルバイト(以下「正社員等」という。)といった自己と雇用関係のある者をいうものと考えられる。
 したがって、自己と雇用関係のない派遣社員や請負労働者については、一義的には派遣先や注文主の使用人に該当しないことになるのであるから、派遣社員や請負労働者のように雇用関係のない者については、すべからく本制度の適用対象となる「使用人」に当たらないものとして厳密に取り扱うべきという考えもある。
 この点、これらの者のうち派遣社員(派遣労働者)の派遣先は、いわゆる労働者派遣法の適用を受け、労働者の危険・健康障害防止措置、労働時間の遵守等の責務を負い、派遣社員との間において指揮命令関係を有するものであることから、派遣社員は正社員等たる使用人と同等の立場にあるという側面も有している。さらに、個々の派遣社員の職務や教育訓練等の実態によっては、当該個々の派遣社員を本制度の適用における「使用人」に該当するものとして取り扱い得る場合も考えられる。
 そこで、この派遣先の企業と指揮命令関係にある派遣社員が、丸1当該企業に使用される正社員等と同一の職務に従事しており、丸2当該同一の職務に係る一の教育訓練等(当該正社員等を主体としたものに限る。)に参加している場合には、本制度の適用上、その企業の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための支出を増加させるという趣旨に鑑み、当該派遣社員に係る教育訓練費の額を派遣先の企業の教育訓練費の額に含めても差し支えないものと考える。
 他方、請負労働者については、注文主との間で派遣社員のような指揮命令関係がないことから、上記のような取扱いはなく、本通達の本文の取扱いに従い、その者の数が極めて少数である場合に限り、本制度の適用対象となる。

5  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の12《事業基盤強化設備を取得した場合等の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(連措通68の12−12)を定めている。

【新設】(中小企業者等であるかどうかの判定の時期)

42の7−13 法人が措置法第42条の7第5項の中小企業者等に該当するかどうかは、当該事業年度終了の時の現況によって判定するものとする。

【解説】

1  中小企業者等の教育訓練費に係る税額控除制度(措法42の7丸5)は、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人(大法人の子会社等を除く。)、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人又は農業協同組合等(措法42の4丸12五、措令27の4丸10)について適用があるが、その適用対象法人に該当するかどうかをいつの時点で判定するかが問題となる。
 この点、本制度は一事業年度を通じた教育訓練費の額を対象として特別税額控除を行うものであるから、事業年度の中途で適用対象法人に該当するかどうかを判定するという考え方にはなじまない。
 そこで、本通達において、法人が本制度の適用対象法人に該当する法人であるかどうかは、各事業年度終了の時の現況によって判定するものとしている。

2  連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の12《事業基盤強化設備を取得した場合等の法人税額の特別控除》についても、同様の通達(連措通68の12−13)を定めている。