1 外国法人の納税義務(課税標準)

【新設】(独立代理人に該当する者)

20−2−5 令第186条《外国法人の置く代理人等》の「その者が、その事業に係る業務を、当該各号に規定する外国法人に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合における当該者」とは、次に掲げる要件のいずれも満たす者をいうことに留意する。

  • (1) 代理人として当該業務を行う上で、詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有するなど本人である外国法人から法的に独立していること。
  • (2) 当該業務に係る技能と知識の利用を通じてリスクを負担し、報酬を受領するなど本人である外国法人から経済的に独立していること。
  • (3) 代理人として当該業務を行う際に、代理人自らが通常行う業務の方法又は過程において行うこと。

【解説】

1  国内で事業を行う外国法人については、その事業を行うために有する恒久的施設(PE)の態様に応じて法人税の課税範囲が定められており、国内に自己のために契約を締結する権限のある者等(以下「代理人等」という。)を置く外国法人は我が国に恒久的施設を有するものとされている(法141三)。
 その一方で、我が国の締結している租税条約及び主として先進国間の二国間条約の基礎となるOECDモデル租税条約においては、上記のような権限を有する代理人であっても独立の地位を有する代理人(以下「独立代理人」という。)は恒久的施設とされる代理人の範囲から除かれていることを踏まえ、この取扱いと同様となるよう、平成20年度の税制改正により、租税条約上のいわゆる「独立代理人」に相当する規定を国内法に導入し、国内法に規定する代理人等の範囲から独立代理人を除外することとされた(法令186)。

2 租税条約上の独立代理人であるかの判断基準については、OECDモデル租税条約コメンタリーに考え方が示されている。同コメンタリーでは、独立代理人の要件として、代理人が本人(非居住者又は外国法人)の事業に係る業務を、本人に対して独立で行い、かつ、通常の方法により行っているというためには、代理人が、1法的にも経済的にも本人から独立していること(「法的独立性」及び「経済的独立性」)、かつ、2本人に代わって行動する際に、代理人の事業の通常の過程において行動する(「通常業務性」)必要があるとされている(OECDモデル租税条約第5条コメンタリー・パラ37)。
 上記の改正の経緯等を踏まえれば、税務上の独立代理人とは、本人である外国法人のために、その外国法人の事業に係る業務を外国法人とは独立して行い、かつ、その業務を通常の方法により行う代理人をいい、その判断基準は、租税条約上の取扱いと同様のものとなろう。
 このため、「独立して」行っているか否かについては、代理人が本人である外国法人の業務を行う際、本人からの詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有して自らの事業を行っているかどうか(法的独立性)、代理人が、当該業務に係る技能と知識の利用を通じてリスクを負担し、報酬を受領するなど企業家として行う事業活動に係るリスクを自ら負担しているかどうか(経済的独立性)、等の観点から判断されることになる。
 また、「通常の方法」により行っているか否かについては、本人の事業に係る代理人の業務が、その代理人が通常行う業務の方法又は過程により行われているかどうか、その業務が、代理人が行う取引において慣習的に行われるかどうか(通常業務性)、等の観点から判断されることになる。
 そこで、本通達では、税務上の独立代理人であるかどうかの判断基準として、上記の3つの要件を掲げ、これらの要件をいずれも満たす者がこれに該当することを留意的に明らかにしている。