【新設】(評価方法の変更に関する届出書の提出)

5-2-14 令第30条第6項《棚卸資産の評価の方法の変更手続》に規定する届出書は、公益法人等又は人格のない社団等が収益事業の廃止等の事情により法人税の納税義務を有しなくなった後に、次に掲げる事情により再び法人税の納税義務が生じた場合において、既に選定していた評価方法を変更しようとするときに提出することに留意する。

  • (1) 公益法人等又は人格のない社団等が収益事業を開始したこと
  • (2) 公益法人等(収益事業を行っていないものに限る。)が普通法人又は協同組合等に該当することとなったこと

   令第52条第6項《減価償却資産の償却の方法の変更の手続》、令第119条の6第6項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法の変更の手続》及び第122条の6第6項《外貨建資産等の期末換算の方法の変更の手続》に規定する届出書についても、同様とする。

【解説】

1  本通達では、公益法人等又は人格のない社団等が法人税法施行令第30条第6項《棚卸資産の評価の方法の変更手続》に規定する届出書を提出するのはどのような場合かということを明らかにしている。

2  次に掲げる内国法人は、それぞれ次の日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、棚卸資産につき事業の種類及び資産の区分ごとに評価方法を選定して納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこととされている(令292二、三)。

  • 1 新たに収益事業を開始した内国法人である公益法人等及び人格のない社団等 新たに収益事業を開始した日
  • 2 公益法人等(収益事業を行っていないものに限る。)に該当していた普通法人又は協同組合等 普通法人又は協同組合等に該当することとなった日

   ただし、上記1又は2の法人が、事業の種類を同じくする棚卸資産について、それぞれ上記1又は2の日の属する事業年度前の事業年度において評価方法の選定に関する届出を行っている場合又は法定の評価方法により評価すべきこととされている場合には、届出は不要とされている(令292)。
 これは、過去に収益事業を行っていた公益法人等又は人格のない社団等が、いったん収益事業を廃止し、その後に収益事業を再開した場合にも、「新たに」収益事業を開始したことになるのであるが、法人が確定申告をしていたときの評価方法の選定については、その後に収益事業が廃止される等の事情によって納税義務が生じなくなったとしてもその効力は持続していると考えられることから、収益事業を再開して再び納税義務が生じた場合において、既に選定していた評価方法を変更しないときには、届出が不要とされているものである。
 また、過去に収益事業を行っていて、いったん収益事業を廃止し、その後に普通法人又は協同組合等に該当することとなった場合にも、既に有効に評価方法が選定されていることから、同様の取扱いとされている。

3  次に、法人が棚卸資産につき選定した評価方法を変更しようとする場合には、その新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければならないこととされている(令3012)。
 ところで、公益法人等又は人格のない社団等が事業年度の中途において新たに収益事業を開始した場合には、その開始した日から定款で定めた事業年度終了の日までの期間が事業年度とみなされる(法14二十一)。また、公益法人等が事業年度の中途において普通法人又は協同組合等に該当することとなった場合には、定款で定めた事業年度開始の日から該当することとなった日の前日までの期間及びその該当することとなった日から定款で定めた事業年度終了の日までの期間がそれぞれ事業年度とみなされる(法14二十二)。
 したがって、法人税法施行令第30条第1項及び第2項の規定によれば、上記のように過去に収益事業を行っていた公益法人等又は人格のない社団等が、既に選定していた評価方法を変更しようとする場合には、収益事業を再開した日の前日又は普通法人若しくは協同組合等に該当することとなった日の前日までに変更承認申請書を提出しなければならないが、提出期限において納税義務のないこれらの法人が変更承認申請書を提出することは事実上不可能である。
 そこで、このような場合において、上記1又は2の日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、公益法人等又は人格のない社団等が評価方法の変更の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その届出書をもって変更承認申請書とみなし、その届出書の提出をもって納税地の所轄税務署長の承認があったものとみなすこととされている(令306)。
 この評価方法の変更の届出書は、過去に収益事業を行っていた公益法人等又は人格のない社団等が、収益事業の廃止等の事情により法人税の納税義務を有しなくなった後に、収益事業を再開したこと又は普通法人若しくは協同組合等に該当することにより再び法人税の納税義務が生じた場合において、既に選定していた評価方法を変更しようとするときに提出することになる。本通達ではこのことを留意的に明らかにしている。

  • (注) この場合には、「公益法人等が特定の要件に該当する場合における評価方法等の変更に関する届出書」を使用する。

4  なお、法人税法施行令第52条第6項《減価償却資産の償却の方法の変更の手続》、同令第119条の6第6項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法の変更の手続》及び同令第122条の6第6項《外貨建資産等の期末換算の方法の変更の手続》が棚卸資産の評価方法の変更手続と同様に定められており、各規定における届出についても同様の取扱いをする旨を本通達の後段において明らかにしている。