【改正】(解散した公益法人等の納税義務)

1−1−6 公益法人等、人格のない社団等又は外国法人が解散した場合には、その清算中の各事業年度の所得及び清算所得については、清算所得に対する法人税は課されないが、これらの所得のうち収益事業から生じた所得及び国内源泉所得に係る所得について各事業年度の所得に対する法人税が課されるのであるから留意する。
 ただし、公益法人等が清算中に内国法人である普通法人又は協同組合等に該当することとなる場合において、その該当することとなる日以後は、清算所得について清算所得に対する法人税が課されることとなる。

【解説】

1  公益法人等及び人格のない社団等は、収益事業から生じた所得がある場合に、これについて各事業年度の所得に対する法人税が課税され、これらの法人が解散をして、清算中に所得が生じた場合又は清算の結了に伴って清算所得が生じた場合でも、これらについて清算所得に対する法人税は課税されないこととされている(法7)。
 他方、普通法人及び協同組合等に対しては、各事業年度の所得について各事業年度の所得に対する法人税が、清算所得について清算所得に対する法人税が課税されることとされている(法5)。

2  平成20年度の税制改正において、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の規定に基づいて行政庁の認定を受けた公益社団法人及び公益財団法人並びに一般社団法人及び一般財団法人のうち税法上の一定の要件に該当して非営利型法人となるものは、法人税法上、公益法人等とされ、非営利型法人に該当しない一般社団法人及び一般財団法人は普通法人とされた。
 そこで、例えば、公益社団法人が解散して清算中に公益認定を取り消され、かつ、非営利型法人の要件に該当しない場合や、非営利型法人が解散して清算中にその要件に該当しないこととなった場合には、これらの法人は普通法人となる。
 このように、公益法人等が清算中に普通法人又は協同組合等に該当することとなった場合には、その該当することとなった日以後は、清算所得について清算所得に対する法人税が課されることとなる。本通達のただし書では、このことを留意的に明らかにしている。

【新設】(非営利型法人における特別の利益の意義)

1−1−8 令第3条第1項第3号及び第2項第6号《非営利型法人の範囲》に規定する「特別の利益を与えること」とは、例えば、次に掲げるような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう。

  • (1) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。
  • (2) 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。
  • (3) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。
  • (4) 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。
  • (5) 法人が、特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。
  • (6) 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。
     なお、「特別の利益を与えること」には、収益事業に限らず、収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれることに留意する。

【解説】

1  平成20年度の税制改正において、一般社団法人・一般財団法人のうち一定の要件に該当するものが非営利型法人と定義され(法2九の二)、法人税法別表第二の「公益法人等」の範囲に追加された。これにより、非営利型法人については、収益事業を行う場合に限り法人税の納税義務が生ずる(法41)とともに、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになる(法7)。
 この非営利型法人には、次の二つの類型が設けられている。

  • (1) その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であってその事業を運営するための組織が適正であるもの(法2九の二イ)
  • (2) その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であってその事業を運営するための組織が適正であるもの(法2九の二ロ)
     非営利型法人に該当するかどうかについては、その類型ごとに要件が設けられているが、いずれの類型にも共通するものとして、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと」という要件が規定されている(令31三、2六)。

2  本通達では、この「特別の利益を与えること」の意義について、例示により明らかにしている。
 (1)から(6)までは、いずれも特定の個人又は団体に対する経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付の例示である。この規定が実質的な剰余金の分配や残余財産の分配又は引渡しといった利益移転に該当する行為も要件違反の対象とする趣旨であることからすれば、「特別の利益を与えること」とは、通常、経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付を伴うものと考えられるが、例えば役員の選任や事業の運営に関して与えられる優遇などが必ずしもこれに当たらないということではなく、ケースバイケースで判断することになろう。
 また、「特別の利益」に当たるかどうかは、一般的には、その法人が行う事業の具体的な内容等に基づいて個別に判断することになるのであるが、その場合、単に経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が行われたかどうかだけでなく、それが社会通念上不相当なものであるかどうかにより判断する必要がある。例えば、法人が特定の個人に対してその所有する建物を通常よりも低い家賃で貸し付けていたとしても、それが特定の個人に対して給与課税が行われない、あるいは寄附金とされない程度のものであれば、社会通念上不相当なものとは言えず、特別の利益には当たらないこととなる。
 なお、公益社団法人又は公益財団法人に対して当該法人が行う公益を目的とする事業のためにする寄附等は、一般的には特定の団体に対する特別の利益供与には該当しない。

3  本通達のなお書きにおいて、「特別の利益を与えること」には、収益事業に限らず、収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれることを留意的に明らかにしている。例えば、法人が収益事業以外の事業において特定の理事から土地、建物を通常よりも高い賃借料により賃借しており、当該理事に対して給与課税が行われるような場合には、当該理事に対して「特別の利益」を与えたことになり、この要件に該当しないこととなる。
 このほかにも、法人が収益事業以外の事業において収入を除外し、あるいは経費の水増し計上を行って、これにより捻出した資金をもって特定の理事に簿外の給与を支給するなどの行為を行っているような場合があれば、社会通念上不相当なものとして、当該理事に対して「特別の利益」を与えたこととなるのは当然であろう。

【新設】(特別の利益に係る要件を欠くこととなった場合)

1−1−9 令第3条第1項第3号又は第2項第6号《非営利型法人の範囲》に規定する要件を欠くことにより普通法人に該当することとなった一般社団法人又は一般財団法人は、その該当することとなった日の属する事業年度以後の事業年度において、非営利型法人に該当することはないことに留意する。

【解説】

1  平成20年度の税制改正において、一般社団法人・一般財団法人のうち一定の要件に該当するものは非営利型法人として公益法人等とされ、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることとされた。
 非営利型法人については、その類型に応じて要件が定められているが、その一つとしてそれぞれ次のような定めが置かれている。

  • (1) いわゆる非営利性が徹底された法人(法2九の二イ)
     定款の定め(注)に反する行為(他の要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと(令31三)。
    (注)
    •  1 剰余金の分配を行わない旨の定め
    •  2 解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は一定の法人に帰属する旨の定め
  • (2) いわゆる共益的活動を目的とする法人(法2九の二ロ)
     他の要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと(令32六)。

2  上記(1)の類型の非営利型法人が、剰余金の分配又は残余財産の帰属に関する定款の定めに反する行為を行うことを決定し又は行った場合には、この要件に該当しないこととなり普通法人に該当することになるから、1定款で定めた事業年度開始の日から要件に該当しないこととなった日の前日までの期間及び2その要件に該当しないこととなった日から定款で定めた事業年度終了の日までの期間が事業年度とみなされ(法14二十二)、1の事業年度については非営利型法人として収益事業課税が、2の事業年度については普通法人として全所得課税が適用されることとなる。
 そして、法令上、「定款の定めに反する行為を行うことを決定し、又は行ったことがないこと」と規定されていることから明らかなように、非営利型法人が定款違反行為を行って普通法人となった場合には、2の事業年度以後の事業年度において再び(1)の類型の非営利型法人に該当することはない。
 同様に、上記(1)又は(2)の類型の非営利型法人が、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し又は与えたことによって普通法人となった場合にも、それ以後の事業年度において同じ類型の非営利型法人に該当することはないのである。本通達では、このことを留意的に明らかにしている。

3  なお、法令上、「(他の)要件のすべてに該当していた期間において」と定められていることから、例えば、理事の親族要件(令31四、2七)に該当しないことにより非営利型法人に該当しない法人が、その非営利型法人に該当しない期間中に特定の個人又は団体に特別の利益を与えたとしても、特別の利益に係る要件に該当しないことにはならず、その後に理事の親族要件に該当した場合には、他の要件に該当している限り、理事の親族要件に該当した日から非営利型法人に該当することになる。

【新設】(主たる事業の判定)

1−1−10 令第3条第2項第3号《非営利型法人の範囲》に規定する「主た る事業として収益事業を行っていない」場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定する。この場合において、主たる事業であるかどうかは、法人の事業の態様に応じて、例えば収入金額や費用の金額等の合理的と認められる指標(以下1−1−10において「合理的指標」という。)を総合的に勘案し、当該合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるかどうかにより判定することとなる。
 ただし、その法人の行う事業の内容に変更があるなど、収益事業の割合と収益事業以外の事業の割合の比に大きな変動を生ずる場合を除き、当該事業年度の前事業年度における合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるときには、その法人は、当該事業年度の開始の日において「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当しているものと判定して差し支えない。

  • (注) 本文後段の判定を行った結果、収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えないとしても、そのことのみをもって「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当しないことにはならないことに留意する。

【解説】

1  平成20年度の税制改正において、一般社団法人・一般財団法人のうち一定の要件に該当するものは非営利型法人として公益法人等とされ、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることとされた。
 そして、非営利型法人のうち、いわゆる共益的活動を目的とする法人(法2九の二ロ)の要件の一つとして、「その主たる事業として収益事業を行っていないこと」(令32三)と規定されている。

2  本通達の本文前段では、まず、この要件の原則的な判定の方法を明らかにしている。
 すなわち、「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定することとしている。ここでいう「常態」とは、過去における収益事業の実施状況を参考にしつつ、現状において主たる事業として収益事業を行っていないという状態にあるかどうかにより判定するということを意味している。したがって、例えば、過去には収益事業を相当の規模で行っていたような場合であっても、現状においてそのような状態になければ、「主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていない」と判定されるのである。なお、主たる事業として収益事業を行っている法人が、その事業を行わないこととなった場合であっても、短期間の経過後に再びその事業を行うことを予定しているようなときには、その事業を行っていない期間があることをもって「主たる事業として収益事業を行っていない」場合には該当するとは言わないことに留意する必要がある。
 この場合の「主たる事業」が法人の行ういずれの事業であるかは、法人の事業の態様に応じて合理的と認められる指標(合理的指標)を総合的に勘案して判定することとしている。例えば、会員からの会費に収益事業による利益を加えて、それをもって共益的活動を行っているといった例を考えてみると、その法人の主たる事業を判定する指標としては、収入金額、費用の金額、資産の価額、従事者の数など、様々なものが考えられるが、それらのうちから、法人の事業の態様に応じた合理的指標を決定することになる。そして、その合理的指標による割合が現状においておおむね50%を超える事業(主たる事業)が収益事業以外の事業である場合には、この要件に該当することになるのである。
 なお、「主たる事業」の判定を「おおむね50%を超える」としているのは、公益認定の基準において、「公益目的事業比率が百分の五十以上となると見込まれるものであること」(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律5八)とされていることを参考としたものである。

3  次に、本通達の本文後段では、原則的な判定方法以外にこの要件を判定する方法を示している。
 原則的な判定は、事業年度中、常に現状における収益事業の実施状況を判定することになるのであるが、事業年度中に事業内容に変更がないような場合には、あえてこのような判定を行う必要もないものと考えられる。そこで、法人の行う事業の内容に変更があるなど、収益事業の割合と収益事業以外の事業の割合の比に大きな変動を生ずる場合を除き、前事業年度における事業の実施状況の実績によって判定するという簡便的な方法を原則的な判定方法以外の方法として示している。例えば、事業年度の中途において、不動産貸付の用に供するための貸しビルを購入したことによって、その後は収益事業の割合が大きくなるというような場合には、前事業年度における実績によって判定を行うことはできず、貸しビルを購入した時点で原則的な判定を行うことになるのである。
 この本文後段の判定方法による場合には、事業内容の変更等がなければ事業年度中の判定は行わないのであるから、当該事業年度の開始の日において「主たる事業として収益事業を行っていない」と判定した場合には、当該事業年度中に事業内容の変更等がない限り、次回は翌事業年度開始の日において同様の判定が行われることになる。

4  なお、本文後段の判定を行った結果、当該事業年度の前事業年度における収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えない場合であっても、そのことのみをもって直ちにこの要件に該当しないということではなく、当該事業年度開始の日において原則的な判定を行い、その結果、収益事業以外の事業の割合がその時点においておおむね50%を超えるときには、当該事業年度開始の日において「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当することになる。本通達の注書では、このことを留意的に明らかにしている。

【新設】(理事の親族等の割合に係る要件の判定)

1−1−11 令第3条第1項第4号及び第2項第7号《非営利型法人の範囲》に規定する要件に該当するかどうかの判定は、原則として、判定される時の現況によることに留意する。
 ただし、例えば、非営利型法人が理事の退任に基因して当該要件に該当しなくなった場合において、当該該当しなくなった時から相当の期間内に理事の変更を行う等により、再度当該要件に該当していると認められるときには、継続して当該要件に該当しているものと取り扱って差し支えない。

【解説】

1  平成20年度の税制改正において、一般社団法人・一般財団法人のうち一定の要件に該当するものは非営利型法人として公益法人等とされ、収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることとされた。
 非営利型法人の要件の一つとして、「各理事(清算人を含む。)について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と…特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。」(令31四、2七)と規定されている。

2  本通達の前段では、この要件の判定は原則として判定される時の現況によることを明らかにしている。したがって、非営利型法人が事業年度を通じてこの要件に該当しているかどうかを判定する場合において、例えば、その判定される時に、理事とその親族等である理事の合計数が理事の総数の3分の1を超えているときには、その時点でこの要件に該当しないこととなる。その結果、1定款で定めた事業年度開始の日から要件に該当しないこととなった日の前日までの期間及び2その要件に該当しないこととなった日から定款で定めた事業年度終了の日までの期間が事業年度とみなされ(法14二十二)、1の事業年度については非営利型法人として収益事業課税が、2の事業年度については普通法人として全所得課税が適用されることとなる。

3  このように、原則は判定時の現況によるのであるが、事業年度の中途において、非営利型法人の理事が退任し、それに基因してその時点でこの要件に該当しなくなるようなこともあり得るところであり、そのような場合にまで一律にその時の現況により判定し、要件に該当しないこととなった日以後は普通法人として取り扱うというのも実情にそぐわないと考えられる。
 そこで、このような場合であっても、要件に該当しなくなった時から相当の期間内に理事の変更を行う等により、再度要件に該当していると認められるときには、継続してこの要件に該当しているものと取り扱って差し支えないことを本通達の後段で明らかにしている。
 ここでいう「相当の期間」とは、再度要件に該当している状態になるために通常行われるべき努力に要する期間という意味であり、個々の法人の事情により異なると考えられるが、候補者の選定や変更手続等の日数を考慮すれば、要件に該当しなくなった時から3〜4か月程度で理事の変更等が行われていれば、「相当の期間」内に再度要件に該当しているものと判断することになろう。

4  一般財団法人においては、理事は3人以上でなければならないこととされている(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律653、1701、177)が、一般社団法人に置かなければならない理事は、1人又は2人以上とされている(同法601)。したがって、一般社団法人によっては理事が1人又は2人ということもあり得るが、この場合には、理事とその親族等である理事の合計数が理事の総数に占める割合は常に3分の1を超えることとなり、この要件に該当しないこととなる。換言すれば、一般社団法人にあっては、少なくとも3人以上の理事が置かれていなければ非営利型法人にはなり得ないということになる。